苓桂朮甘湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 苓桂朮甘湯は、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛など、水滞が原因とされる症状に用いられる漢方薬です。
- ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、食前または食間に水またはぬるま湯で服用することが基本です。
- ✓ 重大な副作用として偽アルドステロン症やミオパチー、その他の副作用として消化器症状や発疹などが報告されています。
苓桂朮甘湯とは?その定義とメカニズム

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)は、漢方医学における「水滞(すいたい)」、すなわち体内の水分の代謝異常によって引き起こされる様々な症状を改善するために用いられる漢方薬です。主に、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、息切れ、神経症などに効果があるとされています[3]。
この漢方薬は、以下の4種類の生薬から構成されています。
- 茯苓(ブクリョウ): 利水作用があり、体内の余分な水分を排出するのを助けます。
- 桂皮(ケイヒ): 身体を温め、血行を促進し、気の巡りを整える作用があります。
- 白朮(ビャクジュツ): 消化機能を高め、水分代謝を改善する作用があります。
- 甘草(カンゾウ): 他の生薬の働きを調和させ、鎮痛・抗炎症作用も持ちます。
これらの生薬が組み合わさることで、体内の水分バランスを整え、自律神経の乱れを改善し、めまいや動悸といった症状を和らげる効果が期待されます。特に、胃内停水(胃に水分がたまる状態)がある「水毒」の患者さまに有効とされています。
- 水滞(すいたい)とは
- 漢方医学における概念で、体内の水分の代謝が悪くなり、余分な水分が停滞している状態を指します。これにより、めまい、むくみ、頭痛、吐き気、下痢、関節痛など様々な不調が生じると考えられています。
苓桂朮甘湯はどのような症状に効果がある?
苓桂朮甘湯は、主に「水滞」による症状に対して効果を発揮します。当院の皮膚科外来では、めまいや立ちくらみ、動悸といった症状で来院される患者さまの中には、自律神経の乱れや体内の水分バランスの不調が背景にあるケースも少なくありません。そのような場合に、西洋薬と併用して苓桂朮甘湯を処方することがあります。
具体的な適応症は以下の通りです[3]。
- めまい、立ちくらみ: 特に、ふわふわするような浮動性めまいや、起立時に目の前が暗くなるような立ちくらみに有効とされます。自律神経失調症によるものや、起立性調節障害の改善に寄与する可能性も報告されています[1]。
- 動悸、息切れ: 精神的な緊張や不安、心臓神経症などによる動悸や、少しの運動で息が切れるといった症状に用いられます。
- 頭痛、頭重感: 水分代謝の異常による頭部の重さや、締め付けられるような頭痛に効果が期待されます。
- 神経症: 不安感、不眠、イライラなど、自律神経の乱れからくる精神的な不調にも応用されます。
- 耳鳴り: めまいを伴う耳鳴りなど、水滞が関与すると考えられる場合に処方されることがあります。
これらの症状は、西洋医学的な検査では異常が見つからないことも多く、患者さまが「どこに行っても良くならない」と訴えるケースも少なくありません。漢方医学的なアプローチとして、体質や症状の全体像を把握し、苓桂朮甘湯が適していると判断された場合に処方されます。実際の診察では、患者さまから「特に朝起きる時にフラフラする」「ストレスを感じると動悸がする」といった具体的な訴えを聞き取り、舌の状態や脈拍なども確認しながら、その方に合った漢方薬を選択しています。
苓桂朮甘湯の用法・用量と服用時の注意点

苓桂朮甘湯の用法・用量は、製品によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下の通りです[3]。
標準的な用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します。年齢や体重、症状によって適宜増減されることがあります。当院では、患者さまの症状の重さや体質を考慮し、最適な用法・用量を決定しています。特に、高齢の患者さまや胃腸が弱い患者さまには、少量から開始し、徐々に増量していくこともあります。
食前または食間とは、食事の約30分〜1時間前、または食後2〜3時間を指します。胃の中に食べ物が入っていない状態で服用することで、生薬の吸収が良くなると考えられています。ただし、胃腸が弱い方は食後に服用するなど、医師や薬剤師の指示に従ってください。
服用時の注意点
- 飲み忘れに注意: 毎日決まった時間に服用することで、効果が安定しやすくなります。
- 他の薬との併用: 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に甘草を含む漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。
- 妊娠・授乳中の方: 妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
- アレルギー体質の方: 過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある方は、医師に申し出てください。
- 効果の実感まで: 漢方薬は一般的に効果が現れるまでに時間がかかることがあります。数日〜数週間服用を続けても症状が改善しない場合は、医師に相談してください。当院では苓桂朮甘湯を処方した患者さまから、「めまいが軽減された」というフィードバックをいただくことが多いですが、効果を実感するまでの期間には個人差があり、数週間程度で効果を実感される方が多い印象です。
苓桂朮甘湯の副作用にはどのようなものがある?
苓桂朮甘湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、全く副作用がないわけではありません。特に、体質や体調によっては副作用が出ることがあります。処方する際は、患者さまの既往歴や併用薬を詳しく確認し、副作用のリスクを最小限に抑えるよう努めています。
重大な副作用
頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が報告されています[3]。
- 偽アルドステロン症: 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がる、頭痛などの症状が現れることがあります。これは、甘草の成分であるグリチルリチン酸が原因となることが知られており、特に長期連用や他の甘草含有製剤との併用でリスクが高まります[2]。
- ミオパチー: 脱力感、手足のつっぱりやこわばりに加えて、麻痺、筋肉痛などが現れることがあります。偽アルドステロン症の進行によって引き起こされることもあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。当院では、漢方薬を処方する際には、これらの重大な副作用について患者さまに十分に説明し、異変を感じた際にはすぐに連絡するよう指導しています。特に、高齢の患者さまや腎機能が低下している患者さまには、より慎重な経過観察が必要です。
その他の副作用
頻度は不明ですが、以下の副作用が報告されています[3]。
- 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
- 過敏症: 発疹、蕁麻疹など。
これらの症状が現れた場合も、医師や薬剤師に相談してください。多くの場合、服用を中止することで改善します。皮膚科の臨床経験上、漢方薬による発疹は比較的稀ですが、体質によっては起こりうるため、注意深く観察する必要があります。
苓桂朮甘湯に関する患者さまからのご質問

ジェネリック医薬品について
苓桂朮甘湯は、漢方製剤であるため、一般的に「ジェネリック医薬品」という概念は西洋薬とは少し異なります。漢方製剤は、生薬の配合比率や製造方法が各メーカーで厳密に定められており、その品質や効果が保証されています。
「ツムラ39 苓桂朮甘湯」は、株式会社ツムラが製造販売している医療用漢方製剤です。他のメーカーからも同様の生薬を配合した苓桂朮甘湯が販売されており、これらは「同種同効薬」として扱われます。例えば、クラシエやコタロー、オースギなど、複数のメーカーが苓桂朮甘湯を製造しています。当院では、患者さまの状況や薬局での取り扱い状況に応じて、これらの同種同効薬を処方する場合があります。
| 項目 | ツムラ39 苓桂朮甘湯 | 他メーカーの苓桂朮甘湯(例:クラシエ) |
|---|---|---|
| 製造販売元 | 株式会社ツムラ | クラシエ薬品株式会社など |
| 有効成分 | 茯苓、桂皮、白朮、甘草 | 茯苓、桂皮、白朮、甘草(同配合) |
| 剤形 | 顆粒 | 顆粒 |
| 薬価 | メーカーごとに異なる | メーカーごとに異なる |
| 品質・効果 | 同等とみなされる | 同等とみなされる |
重要なのは、どのメーカーの苓桂朮甘湯も、日本の医薬品医療機器等法に基づいて製造・管理されており、品質や有効性、安全性については同等であるとされています。薬局で「ツムラ以外の苓桂朮甘湯でも良いですか?」と尋ねられることがありますが、医師の指示や薬剤師の説明に従って服用すれば問題ありません。当院では、特定のメーカーに限定せず、患者さまの利便性も考慮して処方を行っています。
まとめ
苓桂朮甘湯は、体内の水分代謝の異常である「水滞」を改善し、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、神経症などの症状に効果が期待できる漢方薬です。茯苓、桂皮、白朮、甘草の4つの生薬が協力し、水分バランスを整え、自律神経の乱れを改善します。服用に際しては、添付文書に記載された用法・用量を守り、食前または食間に服用することが一般的です。重大な副作用として偽アルドステロン症やミオパチー、その他の副作用として消化器症状や発疹などが報告されており、これらの症状が現れた場合は速やかに医師に相談することが重要です。他のメーカーからも同種同効薬が販売されており、品質や効果は同等とされています。患者さま一人ひとりの体質や症状に合わせて、適切な服用方法や注意点を医師や薬剤師と相談しながら治療を進めることが大切です。
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よくある質問(FAQ)
- Masahiro Sakata, Hideaki Egami. Successful treatment of orthostatic dysregulation with Japanese (Kampo) herbal medicine ryokeijutsukanto.. Explore (New York, N.Y.). 2022. PMID: 32335006. DOI: 10.1016/j.explore.2020.04.003
- Kazushi Uneda, Yuki Kawai, Akira Kaneko et al.. Analysis of clinical factors associated with Kampo formula-induced pseudoaldosteronism based on self-reported information from the Japanese Adverse Drug Event Report database.. PloS one. 2024. PMID: 38165850. DOI: 10.1371/journal.pone.0296450
- 苓桂朮甘湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
