苓姜朮甘湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 苓姜朮甘湯は、関節痛や神経痛、腰痛など、特に冷えや湿気によって悪化する症状に用いられる漢方薬です。
- ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、食前または食間に服用することが一般的です。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、間質性肺炎や肝機能障害などが報告されており、体調の変化には注意が必要です。
苓姜朮甘湯(ツムラ118)とは?その特徴と効果

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)は、冷えや湿気によって悪化する関節痛、神経痛、腰痛、坐骨神経痛などに用いられる漢方薬です。ツムラ118番として知られ、医療現場で広く処方されています。
この漢方薬は、体の余分な水分(湿)を取り除き、体を温めることで痛みを和らげることを目的としています。特に、関節が冷えてこわばる、重だるい、動きにくいといった症状に効果が期待されます。当院の皮膚科外来では、冷えによって悪化する関節の痛みや、湿疹に伴う関節の不調を訴える患者さまに、体質や症状を総合的に判断して処方することがあります。
構成生薬と薬理作用
苓姜朮甘湯は、以下の4つの生薬から構成されています[5]。
- 茯苓(ブクリョウ):利水作用があり、体内の余分な水分を排出し、むくみや重だるさを改善します。
- 乾姜(カンキョウ):体を温める作用があり、冷えによる痛みを和らげます。
- 白朮(ビャクジュツ):健脾利水作用があり、消化吸収を助け、体内の水分代謝を整えます。
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の働きを調和させ、鎮痛作用や抗炎症作用も持ちます。
これらの生薬が協調して作用することで、体内の「湿」を取り除き、「寒」を散らすことで、関節や神経の痛みを軽減すると考えられています。特に、湿度の高い時期や寒い季節に症状が悪化しやすい方に適しています。
- 漢方医学における「湿」と「寒」とは?
- 「湿(しつ)」は体内の余分な水分や代謝産物が滞った状態を指し、むくみ、重だるさ、関節の腫れなどの原因となります。「寒(かん)」は体が冷えている状態を指し、痛み、こわばり、血行不良などを引き起こします。苓姜朮甘湯はこれら「湿」と「寒」の両方に対応することで、症状の改善を目指します。
どのような症状に効果が期待できる?
苓姜朮甘湯は、冷えや湿気によって悪化する様々な痛みの症状に効果が期待されます。
具体的には、以下のような症状に用いられます[5]。
- 関節痛:特に膝や腰などの関節が冷えると痛む、重だるいといった症状。
- 神経痛:坐骨神経痛など、冷えや湿気で悪化する神経の痛み。
- 腰痛:特に下半身の冷えを伴う腰の痛み。
- 足腰の冷え:冷えによって足腰が重く感じたり、しびれたりする症状。
実際の診察では、患者さまから「雨の日に膝が痛む」「冬になると腰が重くて辛い」と質問されることがよくあります。このような訴えがある場合、苓姜朮甘湯が適応となるケースが多いです。特に、高齢の患者さまや、冷えやすい体質の方に処方する機会が多いと感じています。
また、神経疾患における漢方薬の有効性に関する研究も進められており、苓姜朮甘湯もその一つとして注目されています[3]。
他の漢方薬との使い分けは?
関節痛や神経痛に用いられる漢方薬は他にも複数あります。例えば、麻黄湯や桂枝加朮附湯なども関節痛に用いられますが、それぞれ適応となる病態が異なります。
| 漢方薬名 | 主な適応 | 特徴的な症状 |
|---|---|---|
| 苓姜朮甘湯 | 関節痛、神経痛、腰痛 | 冷えや湿気で悪化、重だるさ、こわばり |
| 麻黄湯 | 関節痛、感冒の初期 | 悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、汗が出ない |
| 桂枝加朮附湯 | 関節痛、神経痛、しびれ | 冷え、痛み、しびれ、体力が低下している |
当院では、患者さまの体質(証)や症状の具体的な特徴、生活習慣などを詳しく問診し、最も適した漢方薬を選択しています。例えば、冷えが強く、関節の重だるさが顕著な場合は苓姜朮甘湯を、発汗がなく悪寒が強い場合は麻黄湯を検討するなど、使い分けについて説明する機会が多いです。
苓姜朮甘湯の用法・用量と服用上の注意点

苓姜朮甘湯は、添付文書に定められた用法・用量を守って服用することが重要です。
標準的な用法・用量
一般的に、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します[5]。年齢、体重、症状により適宜増減されます。顆粒剤の場合は、お湯に溶かして温かいうちに服用すると、生薬の香りや成分がより効果的に作用すると言われています。
- 服用タイミング:食前(食事の約30分前)または食間(食事と食事の間、食後約2時間後)
- 服用方法:水または白湯で服用。顆粒の場合はお湯に溶かしても良い。
当院では、患者さまのライフスタイルに合わせて、食前が難しい場合は食間での服用を指導することもあります。飲み忘れを防ぐために、ご自身の生活リズムに合ったタイミングを見つけることが大切です。
服用上の注意点
- 長期服用時:長期間服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、効果や副作用の有無を確認することが重要です。
- 他の薬剤との併用:他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。
- 特定の疾患を持つ方:高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能亢進症などの持病がある方は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 妊婦・授乳婦:妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、服用前に医師に相談してください。
自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりせず、必ず医師の指示に従ってください。症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。
苓姜朮甘湯の副作用はある?
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。苓姜朮甘湯も例外ではなく、体質や体調によっては副作用が現れることがあります[1]。
重大な副作用
頻度は極めて稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています[5]。
- 間質性肺炎:発熱、咳嗽(せき)、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)などが現れることがあります。漢方薬による間質性肺炎は、他の漢方薬でも報告されており、注意が必要です[2][4]。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、血圧上昇、むくみ、尿量減少などが現れることがあります。これは甘草の大量摂取や長期連用によって引き起こされる可能性があります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の結果として、脱力感、筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。
- 肝機能障害:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの上昇、黄疸などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。皮膚科の日常診療では、漢方薬を処方する際に、これらの重大な副作用について患者さまに説明し、体調の変化に注意を払うよう指導しています。
その他の副作用
比較的頻度は低いものの、以下のような副作用が報告されています[5]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。
- 皮膚症状:発疹、じんましんなど。
これらの症状が現れた場合も、医師や薬剤師に相談してください。当院では苓姜朮甘湯を処方した患者さまから、胃の不快感を訴えるフィードバックをいただくことが稀にあります。その際は、服用方法の見直しや、他の漢方薬への変更を検討します。
ジェネリック医薬品について

苓姜朮甘湯には、ツムラ以外のメーカーからもジェネリック医薬品(後発医薬品)が販売されています。
ジェネリック医薬品の選択肢
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効果・効能が期待できると国から認められた医薬品です。ツムラ以外のメーカーからも「苓姜朮甘湯」として複数のジェネリック医薬品が提供されています。これらは、先発品と比較して薬価が安価であることが多いため、医療費の負担軽減につながる可能性があります。
当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品の処方も可能です。ジェネリック医薬品について詳しく知りたい場合は、診察時にお気軽にご相談ください。
先発品とジェネリックの違い
先発品とジェネリック医薬品の主な違いは、以下の点です。
- 薬価:ジェネリック医薬品の方が安価なことが多い。
- 添加物:有効成分は同じですが、賦形剤などの添加物が異なる場合があります。これにより、味や溶けやすさ、アレルギー反応のリスクなどがわずかに異なる可能性はあります。
- 製造元:異なる製薬会社が製造しています。
有効成分や効果・効能は同等とされていますが、添加物の違いによって飲みやすさや体感に差を感じる方もいらっしゃるかもしれません。当院では、患者さまが安心して服用できるよう、ジェネリック医薬品に関する疑問や不安に対して丁寧に説明し、選択をサポートしています。
まとめ
苓姜朮甘湯(ツムラ118)は、冷えや湿気によって悪化する関節痛、神経痛、腰痛などに用いられる漢方薬です。茯苓、乾姜、白朮、甘草の4つの生薬から構成され、体内の余分な水分を排出し、体を温めることで痛みを和らげる効果が期待されます。
用法・用量を守り、食前または食間に服用することが一般的ですが、体質や症状によっては副作用が現れる可能性もあります。特に、間質性肺炎や偽アルドステロン症などの重大な副作用は稀ですが、注意が必要です。症状の改善には個人差があり、数週間から1ヶ月程度の服用で効果を実感される方が多い印象です。ジェネリック医薬品も存在し、医療費の負担軽減に貢献する可能性があります。
漢方薬の服用にあたっては、必ず医師や薬剤師に相談し、ご自身の体質や症状に合った適切な治療を受けることが重要です。
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よくある質問(FAQ)
- Yutaka Shimada. Adverse Effects of Kampo Medicines.. Internal medicine (Tokyo, Japan). 2022. PMID: 33551404. DOI: 10.2169/internalmedicine.6292-20
- Kosaku Komiya, Marcelo Takahiro Mitsui, Toru Watanabe et al.. Sansoninto-induced Lung Injury.. Internal medicine (Tokyo, Japan). 2022. PMID: 35569994. DOI: 10.2169/internalmedicine.9747-22
- Shin-Ichi Muramatsu. [Kampo Medicine for Neurological Diseases].. Brain and nerve = Shinkei kenkyu no shinpo. 2023. PMID: 37194543. DOI: 10.11477/mf.1416202390
- Yasunori Enomoto, Yutaro Nakamura, Noriyuki Enomoto et al.. Japanese herbal medicine-induced pneumonitis: A review of 73 patients.. Respiratory investigation. 2017. PMID: 28274529. DOI: 10.1016/j.resinv.2016.11.007
- 苓姜朮甘湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
