桂枝加朮附湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 桂枝加朮附湯は、関節痛や神経痛、しびれなど、冷えを伴う痛みに用いられる漢方薬です。
- ✓ 添付文書の用法・用量を守り、副作用に注意しながら服用することが重要です。
- ✓ 臨床では、冷え性や関節の痛みを訴える患者さまに処方し、症状の改善を期待します。
桂枝加朮附湯(ツムラ18)とは?

桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)は、漢方の古典である『金匱要略』に収載されている処方で、冷えを伴う関節痛や神経痛、しびれなどに用いられる漢方薬です。ツムラ18番として知られ、医療現場で広く処方されています。
この漢方薬は、体を温め、痛みを和らげる作用が期待されており、特に「冷え」が症状の悪化因子となっている場合に適応されます。当院の皮膚科外来では、冷えによって悪化する関節の痛みや、神経痛様のしびれを訴える患者さまに、西洋薬と併用して処方するケースも少なくありません。
- 桂枝加朮附湯の構成生薬
- 桂枝(ケイシ)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、朮(ジュツ)、附子(ブシ)の7種類の生薬から構成されています。これらの生薬が協調して作用し、体を温め、血行を促進し、痛みを鎮める効果を発揮します。
桂枝加朮附湯の適応症と期待される効果は?
桂枝加朮附湯は、冷えによって悪化する様々な症状に効果が期待されます。添付文書に記載されている効能・効果は「体力虚弱で、汗が出て、手足の冷えと痛みがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛」です。
具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
- 関節痛:特に冷えによって悪化する膝や肩などの関節の痛み。変形性膝関節症の患者を対象とした臨床試験では、膝の痛みの改善に有効性が示唆されています[1]。
- 神経痛:冷えや気候の変化で痛みが増す神経痛。帯状疱疹後神経痛で冷感により増悪する症例への有効性も報告されています[2]。
- しびれ:手足の冷えに伴うしびれ。抗がん剤による神経障害の軽減にも応用されることがあります[3]。
- 冷え性:全身の冷えや手足の冷え。
当院では、特に冬場に「体が冷えると膝が痛む」「手足が冷えてしびれる」といった訴えの患者さまに処方することが多いです。実際の診察では、患者さまから「冷えが和らいで、痛みが少し楽になった」というフィードバックをいただくこともあり、冷えに対する効果を実感される方が多い印象です。
桂枝加朮附湯の用法・用量と服用上の注意点は?

桂枝加朮附湯の用法・用量は、添付文書の記載に準拠することが基本です。
標準的な用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。小児への投与は、医師の判断のもと、体重や症状に応じて減量して処方されます。
食前または食間とは、食事の約30分〜1時間前、または食後2〜3時間後を指します。胃に内容物がない状態で服用することで、生薬の吸収が良くなると考えられています。ただし、胃腸が弱い方や、食前・食間の服用が難しい場合は、食後に服用することも可能です。必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
服用上の注意点
- 体質・症状の確認:漢方薬は個人の体質や症状によって効果が異なります。服用前に必ず医師の診察を受け、自身の状態を正確に伝えることが重要です。
- 他の薬剤との併用:他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。
- アレルギー歴:過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある場合は、必ず申告してください。
- 妊娠・授乳中の方:妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。附子(ブシ)は少量ですが、妊娠中の服用には注意が必要です。
皮膚科の日常診療では、患者さまの生活習慣や他の疾患の有無を詳細に問診し、桂枝加朮附湯が最適であるかを判断します。特に、冷えの程度や痛みの性質、消化器症状の有無などを確認し、患者さまに合った用法を選択しています。
桂枝加朮附湯の副作用と対処法は?
桂枝加朮附湯は一般的に安全性の高い漢方薬ですが、副作用が全くないわけではありません。特に、配合されている生薬の特性上、注意すべき副作用があります。
重大な副作用
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に進行する。尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、血圧が高くなる、頭痛などの症状が現れることがあります。これは甘草の大量摂取により起こる可能性があり、特に他の漢方薬との併用でリスクが高まります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の症状の一つとして、脱力感、筋肉痛、筋力低下などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
その他の副作用
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
- 過敏症:発疹、かゆみなど。
これらの症状が現れた場合も、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。特に附子(ブシ)は、加工が不十分な場合や過量摂取でしびれや動悸などを引き起こす可能性がありますが、医療用漢方製剤では適切な加工と量が管理されています。
当院では、桂枝加朮附湯を処方した患者さまには、初回時に副作用について丁寧に説明し、特に偽アルドステロン症の初期症状(むくみ、だるさなど)に注意するようお伝えしています。フォローアップの際には、これらの症状の有無や、消化器症状が出ていないかを確認しています。
ジェネリック医薬品について

桂枝加朮附湯には、ツムラ以外のメーカーからも同様の成分・効果を持つジェネリック医薬品(後発医薬品)が販売されています。
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分、同じ効能・効果で、品質、有効性、安全性が同等であると国から認められた医薬品です。開発費用が抑えられるため、先発医薬品に比べて安価に提供されることが一般的です。
| 項目 | 先発医薬品(ツムラ桂枝加朮附湯) | ジェネリック医薬品 |
|---|---|---|
| 有効成分 | 桂枝加朮附湯エキス | 桂枝加朮附湯エキス |
| 効能・効果 | 関節痛、神経痛など | 関節痛、神経痛など(先発品と同等) |
| 価格 | 比較的高価 | 比較的安価 |
| 製造販売元 | 株式会社ツムラ | 複数の製薬会社 |
当院では、患者さまのご希望や経済的な負担を考慮し、ジェネリック医薬品の選択肢もご提案しています。ただし、メーカーによって賦形剤や味、溶けやすさなどが若干異なる場合があるため、服用感に違いを感じる方もいらっしゃいます。もしジェネリック医薬品への変更を希望される場合は、医師または薬剤師にご相談ください。
まとめ
桂枝加朮附湯(ツムラ18)は、冷えを伴う関節痛や神経痛、しびれなどに用いられる漢方薬です。体を温め、痛みを和らげる効果が期待され、特に冷えが症状の悪化因子となる場合に有効とされています。服用に際しては、添付文書に記載された用法・用量を守り、偽アルドステロン症などの重大な副作用や消化器症状などのその他の副作用に注意が必要です。他の薬剤との併用や妊娠・授乳中の服用については、必ず医師や薬剤師に相談してください。ジェネリック医薬品も選択肢として存在し、患者さまの状況に応じた選択が可能です。自身の体質や症状に合った適切な治療を受けるためにも、専門医にご相談いただくことをお勧めします。
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よくある質問(FAQ)
- Jae-Uk Sul, Myung Kwan Kim, Jungtae Leem et al.. Efficacy and safety of gyejigachulbutang (Gui-Zhi-Jia-Shu-Fu-Tang, Keishikajutsubuto, TJ-18) for knee pain in patients with degenerative knee osteoarthritis: a randomized, placebo-controlled, patient and assessor blinded clinical trial.. Trials. 2019. PMID: 30782208. DOI: 10.1186/s13063-019-3234-6
- Miho Nakanishi, Junsuke Arimitsu, Mitsuru Kageyama et al.. Efficacy of traditional Japanese herbal medicines-Keishikajutsubuto (TJ-18) and Bushi-matsu (TJ-3022)-against postherpetic neuralgia aggravated by self-reported cold stimulation: a case series.. Journal of alternative and complementary medicine (New York, N.Y.). 2012. PMID: 22830970. DOI: 10.1089/acm.2010.0745
- Takeshi Yamada, Hayato Kan, Satoshi Matsumoto et al.. [Reduction in oxaliplatin-related neurotoxicity by the administration of Keishikajutsubuto(TJ-18)and powdered processed aconite root].. Gan to kagaku ryoho. Cancer & chemotherapy. 2013. PMID: 23152020
