薏苡仁湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 薏苡仁湯は、いぼや皮膚のあれに用いられる漢方薬で、皮膚科領域で広く使用されています。
- ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、副作用に注意しながら服用することが重要です。
- ✓ 効果の実感には個人差があり、数週間から数ヶ月の継続服用が必要となる場合があります。
薏苡仁湯(ヨクイニントウ)とは?その特徴と効果

薏苡仁湯(ヨクイニントウ)は、いぼや皮膚のあれ、関節痛、筋肉痛などに用いられる漢方薬です。特に皮膚科領域では、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい、いわゆる「いぼ」)や、皮膚の乾燥やざらつきといった「皮膚のあれ」に対して処方されることが多いです。
薏苡仁湯は、以下の生薬から構成されています[1]。
- ヨクイニン(ハトムギの種皮を除いた種子)
- 麻黄(マオウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 甘草(カンゾウ)
- 当帰(トウキ)
- 白朮(ビャクジュツ)または蒼朮(ソウジュツ)
これらの生薬が組み合わさることで、体の水分の巡りを改善し、皮膚の新陳代謝を促進する作用が期待されます。特にヨクイニンは、古くからいぼ取りや肌荒れ改善に用いられてきた生薬として知られています。当院の皮膚科外来では、特に難治性のいぼや、広範囲にわたる皮膚のざらつきに対して、他の治療と併用して薏苡仁湯を処方するケースが多いです。患者さまからは「肌の調子が良くなった」「いぼが小さくなってきた気がする」といった声が聞かれることもあります。
薏苡仁湯の作用メカニズム
薏苡仁湯の作用メカニズムは、複数の生薬の複合的な効果によるものと考えられています。主な作用は以下の通りです。
- 抗ウイルス作用・免疫調節作用: ヨクイニンには、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるいぼに対して、ウイルスの増殖を抑制したり、体の免疫力を高めてウイルスを排除するのを助ける作用が示唆されています。
- 皮膚の新陳代謝促進作用: ヨクイニンやその他の生薬が、皮膚のターンオーバーを正常化し、古い角質や異常な細胞の排出を促すことで、皮膚のあれやいぼの改善に寄与すると考えられています。
- 抗炎症作用・鎮痛作用: 麻黄、桂皮、芍薬などには、炎症を抑えたり痛みを和らげたりする作用があり、関節痛や筋肉痛の緩和にも効果を発揮します。
- 血行促進作用: 当帰などは血行を改善する作用があり、皮膚への栄養供給を促進し、健康な皮膚の維持に役立ちます。
これらの作用が総合的に働き、いぼの改善や皮膚の状態を整える効果をもたらします。
薏苡仁湯の適切な用法・用量と服用上の注意点
薏苡仁湯を効果的かつ安全に服用するためには、添付文書に記載された用法・用量を守ることが非常に重要です。自己判断での増量や減量は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます[1]。
- 食前: 食事の約30分前
- 食間: 食事と食事の間(食後約2時間後)
顆粒タイプの漢方薬は、お湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の成分が吸収されやすくなると言われています。お湯に溶かすことで、独特の風味も和らぎ、飲みやすくなる患者さまもいらっしゃいます。当院では、特に初めて漢方薬を服用される患者さまには、飲み方について丁寧に説明し、継続しやすい方法を一緒に検討するようにしています。
服用上の注意点
以下のような場合は、服用前に医師または薬剤師に相談が必要です[1]。
- 医師の治療を受けている方
- 妊婦または妊娠している可能性のある方
- 高齢者
- 胃腸の弱い方
- 発汗傾向の著しい方
- 心臓病、高血圧、腎臓病、甲状腺機能亢進症、重症筋無力症、糖尿病、排尿障害のある方
- 他の薬を服用している方
麻黄が含まれているため、交感神経刺激作用により、動悸、不眠、発汗過多などの症状が現れることがあります。また、甘草が含まれているため、長期連用や他の甘草含有製剤との併用により、偽アルドステロン症などの副作用に注意が必要です。必ず医師の指示に従い、定期的な診察を受けるようにしてください。
薏苡仁湯の副作用と注意すべき症状

どのような医薬品にも副作用のリスクは存在し、薏苡仁湯も例外ではありません。副作用の症状や頻度を理解し、異変を感じた際には速やかに医療機関を受診することが重要です。
重大な副作用
頻度は不明とされていますが、以下の重大な副作用が報告されています[1]。
- 偽アルドステロン症: 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に強くなる。むくみ、血圧上昇。
- ミオパチー: 偽アルドステロン症と同様の症状(手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばり、脱力感、筋肉痛)が現れる。
- 肝機能障害、黄疸: 全身のだるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。特に、甘草の長期服用や多量摂取によって偽アルドステロン症のリスクが高まるため、定期的な血液検査で電解質バランスを確認することが大切です。当院では、長期処方を行う際には、これらのリスクについて患者さまに丁寧に説明し、自覚症状の有無を定期的に確認しています。
その他の副作用
比較的頻度の低い副作用として、以下の症状が報告されています[1]。
- 消化器系: 吐き気、食欲不振、胃部不快感、下痢
- 皮膚: 発疹、かゆみ
- その他: 動悸、不眠、発汗過多、排尿困難
これらの症状が現れた場合も、自己判断で服用を中止せず、まずは医師や薬剤師に相談してください。症状の程度によっては、服用量の調整や他の薬剤への変更を検討することもあります。実際の診察では、患者さまから「胃の調子が悪い気がする」「少し動悸がする」と質問されることがよくあります。その際は、症状が一時的なものか、継続しているか、他の薬との飲み合わせはどうかなどを詳しく問診し、必要に応じて服用中止や検査を提案しています。
| 副作用の種類 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸 | 直ちに服用中止、医師の診察 |
| その他の副作用 | 吐き気、食欲不振、下痢、発疹、動悸、不眠 | 医師・薬剤師に相談、服用量の調整など |
ジェネリック医薬品について
薏苡仁湯には、ツムラが製造する「ツムラ漢方薏苡仁湯エキス顆粒(医療用)」の他に、複数のメーカーからジェネリック医薬品(後発医薬品)が販売されています。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を、同じ量、同じ剤形で含み、同等の品質、効き目、安全性が確認された医薬品です。
ジェネリック医薬品のメリット
- 薬価が安い: ジェネリック医薬品は開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも薬価が安く設定されています。これにより、患者さまの医療費負担を軽減することができます。
- 選択肢の増加: 複数のメーカーから販売されている場合、味や溶けやすさなど、患者さまの好みに合わせた選択肢が増えることがあります。
当院では、患者さまの意向を尊重し、ジェネリック医薬品を希望される方には積極的に処方しています。ただし、漢方薬の場合、メーカーによって賦形剤や製造工程が異なるため、味や服用感が多少異なることがあります。そのため、ジェネリック医薬品への変更を検討される患者さまには、その点も踏まえて説明し、もし服用しにくいと感じた場合は遠慮なく相談していただくようお伝えしています。
- ジェネリック医薬品(後発医薬品)
- 先発医薬品(新薬)の特許期間満了後に、同じ有効成分、同じ効能・効果で製造・販売される医薬品です。開発費用が抑えられるため、一般的に薬価が安価に設定されています。
薏苡仁湯に関する患者さまからのご質問

まとめ
薏苡仁湯は、いぼや皮膚のあれ、関節痛、筋肉痛などに用いられる漢方薬であり、特に皮膚科領域で広く活用されています。ヨクイニンをはじめとする複数の生薬が、皮膚の新陳代謝促進や免疫調節作用を通じて、症状の改善に寄与すると考えられています。適切な用法・用量を守り、副作用に注意しながら服用することが重要であり、特に重大な副作用である偽アルドステロン症や肝機能障害の初期症状には注意が必要です。効果の実感には個人差があり、数週間から数ヶ月の継続服用が必要となる場合がありますが、根気強く続けることで効果が期待できます。また、ジェネリック医薬品も存在し、医療費負担の軽減に役立つ可能性があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医師や薬剤師に相談し、適切な指示を仰ぐようにしてください。
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