ニキビ跡の美容治療|種類と効果的なアプローチ
- ✓ ニキビ跡には炎症後紅斑、色素沈着、陥凹性瘢痕など複数の種類があり、それぞれ原因と特徴が異なります。
- ✓ 陥凹性瘢痕はアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つに分類され、治療法もそれぞれ異なります。
- ✓ レーザー治療、マイクロニードリング、サブシジョンなど、ニキビ跡の種類に応じた多様な美容医療が存在します。
ニキビ跡の種類と原因とは?

ニキビ跡は、ニキビ(尋常性ざ瘡)の炎症が治まった後に皮膚に残る変化の総称であり、その見た目や原因によっていくつかの種類に分類されます。適切な治療法を選択するためには、まずご自身のニキビ跡がどのタイプに該当するのかを正確に把握することが重要です。
炎症後紅斑(PIE)と炎症後色素沈着(PIH)
ニキビの炎症が治まった後に赤みや茶色いシミとして残るのが、炎症後紅斑(PIE)と炎症後色素沈着(PIH)です。これらは厳密には瘢痕(傷跡)とは異なり、時間とともに自然に薄くなることもありますが、適切なケアで改善を早めることができます。
- 炎症後紅斑(PIE: Post-inflammatory Erythema): 炎症が強かった部位に生じる赤みで、毛細血管の拡張や新生が原因とされています。特に色白の方に目立ちやすい傾向があります。
- 炎症後色素沈着(PIH: Post-inflammatory Hyperpigmentation): 炎症によってメラニン色素が過剰に生成され、皮膚に茶色や黒っぽいシミとして残るものです。紫外線に当たると悪化しやすく、日本人を含むアジア人に多く見られます。
当院では、初診時に「ニキビは治ったのに、顔の赤みが全然引かない」「シミみたいになってしまって、メイクで隠しきれない」と相談される患者さまが少なくありません。問診の際に、いつ頃からニキビができ始めたのか、どのような治療を試したのか、そして日焼け対策の習慣など、生活習慣も含めて詳しく伺うようにしています。
陥凹性瘢痕(凹んだニキビ跡)
ニキビの炎症が真皮層にまで及ぶと、コラーゲン組織が破壊され、皮膚が陥没して凹んだ瘢痕(傷跡)が形成されます。これを陥凹性瘢痕と呼び、自然治癒は難しく、美容医療による積極的な介入が必要となるケースがほとんどです[4]。
- 陥凹性瘢痕(かんおうせい はんこん)
- ニキビの炎症が真皮層にまで達し、組織が破壊されることで皮膚が凹んでできる傷跡のこと。自己修復が難しく、美容医療の対象となることが多い。
陥凹性瘢痕は、その形状によって主に以下の3つのタイプに分類されます。
- アイスピック型(Icepick scars): 表面の開口部が狭く、深部に向かってV字型に深く陥没しているタイプです。まるでアイスピックで刺したような形状から名付けられました。真皮深層まで達していることが多く、治療が難しいとされています。
- ボックスカー型(Boxcar scars): 表面の開口部が広く、底面が平坦で垂直な壁を持つ四角い形状の陥凹です。水疱瘡の跡に似ていることもあります。深さは様々ですが、比較的浅いものから深いものまであります。
- ローリング型(Rolling scars): 表面はなだらかに波打つような形状で、皮膚の下の線維組織が引っ張られることで生じます。凹みの境界が不明瞭で、広範囲にわたって見られることが多いです。
これらのタイプを正確に診断することが、効果的な治療計画を立てる上で不可欠です。当院では、患者さまのニキビ跡のタイプを医師が丁寧に診察し、それぞれの状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。
肥厚性瘢痕・ケロイド(盛り上がったニキビ跡)
稀に、ニキビの炎症が治まった後に、皮膚が過剰に修復されて盛り上がるタイプのニキビ跡もあります。これは肥厚性瘢痕やケロイドと呼ばれます。
- 肥厚性瘢痕(ひこうせい はんこん): 傷の範囲内で赤く盛り上がる傷跡です。時間とともに自然に平坦になることもありますが、数ヶ月から数年かかることもあります。
- ケロイド: 傷の範囲を超えて広がり、かゆみや痛みを伴うことがある、より重度の盛り上がった傷跡です。体質的な要因が大きく関与すると考えられています。
これら盛り上がったニキビ跡は、特に胸や背中、顎のラインに発生することが多く、見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みを伴うこともあります。診察の中で、患者さまが「以前のニキビ跡がどんどん大きくなってきた」と不安を訴えられるケースをよく経験します。特にケロイド体質の方は再発リスクも考慮し、慎重な治療計画が必要です。
ニキビ跡の治療は、現在のニキビが活動期にある場合はまずニキビそのものの治療を優先します。活動性のニキビがある状態でニキビ跡治療を行うと、炎症が悪化したり、新たなニキビ跡が形成されたりするリスクがあるためです。当院では、ニキビの状態を慎重に評価し、最適な治療開始時期をご提案しています。
ニキビ跡の美容医療にはどのような方法がある?

ニキビ跡の美容医療は、その種類や重症度に応じて多岐にわたります。近年では、様々なエネルギーデバイスや手技が開発され、より効果的で安全な治療が提供できるようになっています[1][4]。ここでは、主な美容医療について解説します。
レーザー治療
レーザー治療は、ニキビ跡の種類に応じて様々な波長のレーザーが使い分けられます。皮膚の深部に熱エネルギーを届け、コラーゲンの生成を促進したり、異常な色素や血管に働きかけたりすることで改善を目指します。
- フラクショナルレーザー: 皮膚にごく微細な穴を多数開け、周囲の正常な組織を残しながら、皮膚の再生を促す治療です。凹んだニキビ跡(陥凹性瘢痕)の改善に特に有効とされています。アブレイティブ(皮膚を蒸散させる)とノンアブレイティブ(皮膚を蒸散させない)の2種類があり、ダウンタイムや効果に違いがあります。治療を始めて数ヶ月ほどで「肌の凹凸がなめらかになってきた」「化粧ノリが良くなった」とおっしゃる方が多いです。
- ピコレーザー: 短いパルス幅で強力なエネルギーを照射し、メラニン色素を細かく粉砕することで、炎症後色素沈着の改善に効果が期待できます。また、低出力で真皮層に作用させることで、コラーゲン生成を促し、肌のハリや凹凸の改善にも寄与すると考えられています。
- Vビームレーザー(色素レーザー): 炎症後紅斑の赤みの原因となる拡張した毛細血管に選択的に作用し、赤みを軽減します。
当院では、患者さまのニキビ跡の深さ、色、肌質などを総合的に判断し、最適なレーザーの種類や設定を提案しています。例えば、アイスピック型の深い凹みにはフラクショナルレーザーを、広範囲の赤みにはVビームレーザーを組み合わせるなど、オーダーメイドの治療計画を立てています。
マイクロニードリング・ダーマペン
マイクロニードリングは、極細の針で皮膚に微細な穴を開けることで、皮膚の自然治癒力を高め、コラーゲンやエラスチンの生成を促進する治療法です。特に凹んだニキビ跡(陥凹性瘢痕)の改善に有効性が報告されています[2]。
- ダーマペン: ペン型の医療機器で、高速で微細な針を垂直に刺入することで、均一に穴を開けることができます。成長因子や美容成分を塗布しながら行うことで、成分の浸透を促進し、より高い効果が期待できます。
- RF(高周波)マイクロニードリング: マイクロニードリングと高周波エネルギーを組み合わせた治療法です。針の先端から高周波を照射することで、真皮層に直接熱エネルギーを届け、より強力なコラーゲン生成と組織の引き締め効果が期待できます[3]。
実際の診療では、マイクロニードリングの治療を受けた患者さまから「肌の弾力が増した」「毛穴が目立たなくなった」といった声を聞くことが多く、ニキビ跡だけでなく肌全体の質感改善にも寄与することを実感しています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
サブシジョン
サブシジョンは、特にローリング型のニキビ跡や、深いボックスカー型のニキビ跡に有効な手技です。皮膚の表面を凹ませている線維性のバンドを、針やカニューレを用いて物理的に切断することで、皮膚の陥没を解除し、持ち上げることを目指します。この手技は、他の治療法と組み合わせることで、より高い効果を発揮することがあります。
ケミカルピーリング・TCAピーリング
- ケミカルピーリング: サリチル酸やグリコール酸などの薬剤を皮膚に塗布し、古い角質を除去することで、肌のターンオーバーを促進します。炎症後色素沈着や軽度の凹凸、肌のざらつきの改善に効果が期待できます。
- TCAピーリング(TCA CROSS): 高濃度のトリクロロ酢酸(TCA)をアイスピック型や狭いボックスカー型のニキビ跡の底にピンポイントで塗布し、強い炎症を起こしてコラーゲン生成を促す治療です。周囲の皮膚へのダメージを最小限に抑えつつ、深い凹みを持ち上げることを目指します。
その他の治療法
- ダーマローラー: 多数の微細な針が付いたローラーを皮膚の上で転がし、マイクロニードリングと同様の効果を狙います。
- ヒアルロン酸注入: 深い陥凹性瘢痕の底にヒアルロン酸を注入することで、一時的に凹みを持ち上げ、目立たなくする効果があります。持続期間は限られますが、即効性があります。
- PRP(多血小板血漿)療法: 患者さま自身の血液から抽出した多血小板血漿を皮膚に注入することで、成長因子がコラーゲン生成を促進し、皮膚の再生を促します。
ニキビ跡の種類別治療法の比較
ニキビ跡のタイプによって、推奨される治療法は異なります。以下の表に主な治療法とその適応をまとめました。
| ニキビ跡の種類 | 主な治療法 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 炎症後紅斑(PIE) | Vビームレーザー、光治療(IPL) | 赤みの軽減 |
| 炎症後色素沈着(PIH) | ピコレーザー、ケミカルピーリング、外用薬 | 茶色いシミの軽減、肌のトーンアップ |
| アイスピック型瘢痕 | TCA CROSS、フラクショナルレーザー、RFマイクロニードリング | 凹みの改善、皮膚の再生促進 |
| ボックスカー型瘢痕 | フラクショナルレーザー、RFマイクロニードリング、サブシジョン | 凹みの改善、肌のなめらかさ向上 |
| ローリング型瘢痕 | サブシジョン、RFマイクロニードリング、フラクショナルレーザー、ヒアルロン酸注入 | 凹みの改善、皮膚の引き上げ |
| 肥厚性瘢痕・ケロイド | ステロイド注射、レーザー治療、圧迫療法 | 盛り上がりの軽減、かゆみ・痛みの緩和 |
ニキビ跡の治療は、一度で完結するものではなく、複数回の治療と継続的なケアが必要となることがほとんどです。当院では、患者さまの肌の状態やライフスタイル、ダウンタイムの許容度などを考慮し、無理なく続けられる治療プランを一緒に検討しています。
まとめ

ニキビ跡は、炎症の程度や皮膚の反応によって、赤み、色素沈着、凹み、盛り上がりなど様々な形で現れます。それぞれのニキビ跡には異なる特徴があり、効果的な治療のためには正確な診断が不可欠です。美容医療では、レーザー治療、マイクロニードリング、サブシジョン、ピーリングなど、多岐にわたるアプローチが提供されており、ニキビ跡の種類や重症度に応じて最適な治療法が選択されます。複数の治療法を組み合わせることで、より良い結果が期待できる場合も少なくありません。ニキビ跡の治療は長期的な視点が必要であり、専門医との相談を通じて、ご自身の肌に合った治療計画を立てることが重要です。
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- Fares Salameh, Peter R Shumaker, Greg J Goodman et al.. Energy-based devices for the treatment of Acne Scars: 2022 International consensus recommendations.. Lasers in surgery and medicine. 2022. PMID: 34719045. DOI: 10.1002/lsm.23484
- Nisma Mujahid, Faizah Shareef, Mayra B C Maymone et al.. Microneedling as a Treatment for Acne Scarring: A Systematic Review.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2020. PMID: 31356435. DOI: 10.1097/DSS.0000000000002020
- Marcus G Tan, Christine E Jo, Anne Chapas et al.. Radiofrequency Microneedling: A Comprehensive and Critical Review.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2021. PMID: 33577211. DOI: 10.1097/DSS.0000000000002972
- Seyedeh Hoda Qoreishi, Nasim Gholizadeh, Ghasem Rahmatpour Rokni et al.. Advancements in Acne Scar Treatment: Exploring Novel Therapies.. Journal of cosmetic dermatology. 2025. PMID: 40314127. DOI: 10.1111/jocd.70183
- アレジオン(ローリン)添付文書(JAPIC)
