たるみの原因と治療|医師が解説する対策
- ✓ たるみは加齢による皮膚構造の変化や生活習慣が複合的に影響して生じます。
- ✓ 紫外線対策や適切なスキンケアがたるみの進行を遅らせる上で重要です。
- ✓ 美容医療では、症状や希望に応じて多様な治療法が選択可能です。
たるみの原因とは?皮膚の構造と加齢の影響

たるみは、皮膚の弾力性やハリが失われ、重力によって皮膚が下方に垂れ下がって見える状態を指します。この現象は、皮膚の構造的な変化と、加齢や外部要因による影響が複合的に絡み合って生じます。
皮膚の構造とたるみのメカニズム
皮膚は大きく分けて、表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。たるみは主に真皮と皮下組織の変化によって引き起こされます。
- 真皮: コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった成分が豊富に含まれており、皮膚の弾力性やハリを保つ重要な役割を担っています。コラーゲンは皮膚の構造を支える線維状のタンパク質で、エラスチンは皮膚に伸縮性を与えるタンパク質です。ヒアルロン酸は水分を保持し、皮膚の潤いを保ちます。
- 皮下組織: 主に脂肪細胞で構成され、皮膚を支えるクッションのような役割を果たします。
加齢とともにこれらの成分の生成能力が低下し、既存の成分も劣化します。特に、コラーゲンやエラスチンの減少・変性は、皮膚の支持構造を弱め、たるみを引き起こす主要な原因となります[1]。また、皮下組織の脂肪が減少したり、移動したりすることも、皮膚のボリュームロスやたるみに影響します。
たるみを引き起こす主な要因
たるみの原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。
- 加齢: 自然な老化プロセスにより、真皮のコラーゲンやエラスチンの生成が減少し、分解が進みます。これにより皮膚の弾力性が失われ、たるみが生じます[1]。当院では、30代後半から「顔の輪郭がぼやけてきた」「ほうれい線が深くなった」とおっしゃる方が多く、加齢による変化を実感されているケースをよく経験します。
- 紫外線(光老化): 紫外線は、コラーゲンやエラスチンを破壊する酵素の活性を高め、皮膚の老化を加速させます。これを「光老化」と呼び、たるみだけでなく、シミやシワの原因にもなります[2]。長年、屋外でスポーツをされていた患者さまの中には、同年代の方と比較して顔や首のたるみが顕著な方がいらっしゃり、紫外線対策の重要性を改めて実感します。
- 乾燥: 皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下し、真皮の構造が不安定になりやすくなります。これにより、たるみが進行しやすくなる可能性があります。
- 生活習慣: 喫煙は血管を収縮させ、皮膚への栄養供給を阻害するため、コラーゲンやエラスチンの生成に悪影響を与えます。また、睡眠不足や不規則な食生活も、皮膚の再生能力を低下させ、たるみを悪化させる要因となり得ます。急激な体重の増減も、皮膚の伸び縮みによって弾力性を失わせ、たるみを引き起こすことがあります。
- 表情筋の衰え: 顔の表情筋は皮膚を支える役割も持っています。表情筋の衰えや使い方の癖も、たるみの一因となることがあります。
- GLP-1受容体作動薬の使用: 最近の研究では、GLP-1受容体作動薬(糖尿病治療薬や肥満治療薬として使用される)による急激な体重減少が、顔や皮膚のたるみを加速させる可能性が示唆されています[4]。当院でも、GLP-1受容体作動薬を服用されている患者さまから「痩せたのは嬉しいけど、顔がこけて老けたように見える」というご相談を受けることがあり、急速な体重減少に伴うたるみへの対処も重要な課題となっています。
これらの要因は単独で作用するだけでなく、複合的に影響し合い、たるみを進行させます。特に加齢と紫外線は、たるみの二大要因として認識されています。
- 光老化とは
- 紫外線への長期的な曝露によって引き起こされる皮膚の老化現象です。シミ、シワ、たるみ、皮膚の弾力性低下などが特徴で、自然な加齢による老化(内因性老化)とは異なるメカニズムで進行します[2]。
たるみの進行は一度始まると完全に元に戻すことは困難です。そのため、早期からの予防と適切なケアが非常に重要となります。特に紫外線対策は、若年層から意識して行うべきです。
たるみの美容医療とは?多様な治療法とその効果

たるみの美容医療は、加齢や生活習慣によって生じた皮膚のたるみを改善し、若々しい印象を取り戻すことを目的とした治療の総称です。メスを使わない非侵襲的な治療から、外科的なアプローチまで、患者さまの状態や希望に応じて様々な選択肢があります。
非侵襲的なたるみ治療
メスを使わず、肌の内部に働きかけることでたるみを改善する治療法です。ダウンタイムが少なく、比較的気軽に受けられるのが特徴です。
- 高周波(RF)治療: ラジオ波と呼ばれる高周波エネルギーを皮膚の深部に照射し、真皮層のコラーゲン線維を収縮させ、新たなコラーゲン生成を促進します。代表的なものにサーマクールなどがあります。治療後すぐに引き締め効果を感じる方もいれば、数ヶ月かけて徐々に効果が現れる方もいらっしゃいます。当院では、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「肌にハリが出てきた」「フェイスラインがすっきりした」とおっしゃる方が多いです。
- 高密度焦点式超音波(HIFU)治療: 超音波エネルギーを皮膚の深部にあるSMAS層(筋膜)に集中的に照射し、熱凝固点を作ることで、たるみを引き上げます。ウルセラやダブロなどが有名です。SMAS層へのアプローチにより、リフトアップ効果が期待できます。治療直後から効果を実感される方もいますが、コラーゲン生成による効果は数ヶ月かけて現れることが多いです。
- 注入治療(ヒアルロン酸・コラーゲン注入など): ボリュームロスによって生じるたるみや凹みに対して、ヒアルロン酸やコラーゲンなどを注入し、皮膚の内側から持ち上げます。特にこめかみや頬のボリューム減少によるたるみに有効です。当院では、初診時に「目の下がくぼんで疲れて見える」「頬がこけて老けて見える」と相談される患者さまも少なくありません。このようなケースでは、適切な部位にヒアルロン酸を少量注入することで、自然な若返り効果を期待できます。
- 糸リフト(スレッドリフト): 特殊な医療用の糸を皮膚の下に挿入し、たるんだ皮膚を物理的に引き上げる治療です。糸の周りにコラーゲン生成が促されることで、長期的なハリ改善効果も期待できます。
外科的なたるみ治療
より重度のたるみや、非侵襲的な治療では満足できない場合に選択されるのが外科手術です。効果は大きいですが、ダウンタイムやリスクも伴います。
- フェイスリフト: 余分な皮膚を切除し、SMAS層を含む組織を引き上げて固定することで、大幅なたるみ改善を目指します。顔全体や首のたるみに効果的です。
- ミニリフト: フェイスリフトよりも切開範囲が小さく、主に頬や顎のたるみに特化した手術です。
治療選択のポイントと注意点
たるみ治療を選択する際には、患者さまのたるみの程度、年齢、予算、ダウンタイムの許容範囲、期待する効果などを総合的に考慮することが重要です。実際の診療では、問診の際に患者さまのライフスタイルや美容医療に対する期待値を詳しく伺うようにしています。例えば、「仕事の関係でダウンタイムは避けたい」という方には非侵襲的な治療を、「一度でしっかり効果を出したい」という方には外科的治療も視野に入れた上で、最適なプランを提案します。
| 治療法 | 主な効果 | ダウンタイム | 持続期間(目安) |
|---|---|---|---|
| 高周波(RF) | 肌の引き締め、ハリ改善 | ほぼなし〜数日 | 半年〜1年 |
| HIFU | リフトアップ、引き締め | ほぼなし〜数日 | 半年〜1年半 |
| ヒアルロン酸注入 | ボリューム補填、凹み改善 | 数日〜1週間 | 半年〜2年 |
| 糸リフト | 物理的な引き上げ、ハリ改善 | 数日〜2週間 | 1年〜2年 |
| フェイスリフト | 大幅なたるみ改善、リフトアップ | 数週間〜数ヶ月 | 5年〜10年以上 |
どの治療法もメリットとデメリットがあり、期待できる効果やリスク、費用も異なります。また、遺伝子治療などの新しいアプローチも研究段階にあります[3]。当院では、患者さま一人ひとりの肌の状態、たるみの原因、生活背景を詳しく診察し、最適な治療プランを提案することを心がけています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
まとめ

たるみは、加齢による皮膚の構造変化や、紫外線、生活習慣など複数の要因が複合的に絡み合って生じる皮膚の悩みです。真皮のコラーゲンやエラスチンの減少、皮下組織の変化が主な原因となります。たるみの進行を遅らせるためには、紫外線対策や適切なスキンケアが重要です。美容医療では、高周波やHIFUといった非侵襲的な治療から、ヒアルロン酸注入、糸リフト、そしてフェイスリフトのような外科的治療まで、多様な選択肢があります。ご自身のたるみの状態やライフスタイル、希望する効果に応じて、医師と相談しながら最適な治療法を選択することが大切です。
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- Françoise Boismal, Kevin Serror, Gabor Dobos et al.. [Skin aging: Pathophysiology and innovative therapies].. Medecine sciences : M/S. 2021. PMID: 33296633. DOI: 10.1051/medsci/2020232
- Julie Rorteau, Fabien P Chevalier, Bérengère Fromy et al.. [Functional integrity of aging skin, from cutaneous biology to anti-aging strategies].. Medecine sciences : M/S. 2021. PMID: 33296632. DOI: 10.1051/medsci/2020223
- Fawzy A Saad. Gene Therapy for Skin Aging.. Current gene therapy. 2024. PMID: 38529607. DOI: 10.2174/0115665232286489240320051925
- Zainab Ridha, Sabrina Guillen Fabi, Raheel Zubar et al.. Decoding the Implications of Glucagon-like Peptide-1 Receptor Agonists on Accelerated Facial and Skin Aging.. Aesthetic surgery journal. 2024. PMID: 38874170. DOI: 10.1093/asj/sjae132
