抑肝散 不眠

【抑肝散 不眠】|抑肝散と不眠|皮膚科医が解説する効果と副作用

抑肝散と不眠|皮膚科医が解説する効果と副作用

最終更新日: 2026-05-02
📋 この記事のポイント
  • ✓ 抑肝散は神経症や不眠症、小児の夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
  • ✓ 興奮を鎮め、精神的な症状や身体症状を改善する効果が期待されます。
  • ✓ 副作用として肝機能障害や偽アルドステロン症などに注意が必要です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

抑肝散(ヨクカンサン)とは?その定義とメカニズム

抑肝散の生薬成分である柴胡、当帰、川芎、茯苓、白朮、甘草、釣藤鈎が並べられた様子
抑肝散を構成する生薬

抑肝散(ヨクカンサン)は、神経症、不眠症、小児の夜泣き、疳症(かんしょう)、更年期障害など、幅広い精神神経症状やそれに伴う身体症状に用いられる漢方薬です[5]。特に、イライラや興奮、不眠といった症状を和らげる目的で処方されることが多い生薬の組み合わせです。この漢方薬は、神経過敏や精神不安が原因で起こる様々な症状に対して、心身のバランスを整えることで効果を発揮すると考えられています。

抑肝散は、以下の7種類の生薬から構成されています[5]

  • 柴胡(サイコ):炎症を抑え、ストレスによる興奮を鎮める作用が期待されます。
  • 当帰(トウキ):血行を促進し、体を温め、精神を安定させる効果があるとされます。
  • 川芎(センキュウ):血行を改善し、鎮痛・鎮静作用を持つとされます。
  • 茯苓(ブクリョウ):利尿作用や鎮静作用があり、精神的な安定に寄与するとされます。
  • 白朮(ビャクジュツ):消化機能を整え、体内の余分な水分を排出する作用があるとされます。
  • 甘草(カンゾウ):炎症を抑え、他の生薬の作用を調和させる効果が期待されます。
  • 釣藤鈎(チョウトウコウ):鎮静作用があり、興奮やけいれんを抑える効果があるとされます。

これらの生薬が複合的に作用することで、中枢神経系に働きかけ、GABA神経系の活性化やセロトニン神経系の調整、NMDA受容体の抑制など、複数の経路を通じて精神安定作用を発揮すると考えられています[1]。特に、興奮や攻撃性、不眠などの症状に対して有効性が報告されており、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)への応用も研究されています[1][2]

漢方薬
中国の伝統医学を基盤とし、日本で独自に発展した医療体系で、複数の生薬を組み合わせて作られる薬です。個々の症状だけでなく、体質や全身の状態を考慮して処方されるのが特徴です。

抑肝散の主な効果と適応症とは?

抑肝散は、精神神経症状やそれに伴う身体症状に対して、その効果が期待される漢方薬です。添付文書に記載されている主な効能・効果は以下の通りです[5]

  • 神経症
  • 不眠症
  • 小児夜泣き
  • 疳症(かんしょう)
  • 更年期障害
  • 血の道症

これらの症状の中でも、特にイライラしやすい、怒りっぽい、興奮しやすいといった「肝」の機能が亢進している状態に効果的とされています。不眠症においても、精神的な興奮や不安が原因で寝つきが悪い、途中で目が覚める、熟睡できないといった症状に用いられることがあります。

不眠症への効果

抑肝散は、不眠症の中でも特に精神的な興奮や不安が背景にある場合に有効性が期待されます。単なる不眠だけでなく、イライラや焦燥感、怒りやすさといった精神症状が不眠に繋がっている場合に、これらの症状を和らげることで睡眠の質を改善する可能性があります。当院の皮膚科外来では、湿疹やアトピー性皮膚炎によるかゆみで不眠に悩む患者さまから「かゆみでイライラして眠れない」という相談を受けることが多いです。そのような場合、かゆみ止めと併用して抑肝散を処方することで、精神的な落ち着きが得られ、結果的に睡眠の質が向上したというフィードバックをいただくことがあります。実際に、がん患者の周術期の不安やせん妄予防において、ベンゾジアゼピン系薬剤の代替薬として抑肝散が検討されたケース報告も存在します[2]

小児の夜泣き・疳症への効果

小児の夜泣きや疳症(かんしょう)は、興奮しやすく、ちょっとしたことで泣き止まない、キーキー声を出す、食欲不振、下痢などの症状を指します。抑肝散は、これらの症状を持つ小児に対しても、精神的な興奮を鎮めることで効果を発揮するとされています。実際の診察では、患者さまから「夜泣きがひどくて家族みんなが寝不足」と質問されることがよくあります。小児への処方では、体重に応じた用量調整が重要であり、保護者の方には症状の観察と正確な服用方法を丁寧に説明しています。

その他の適応症

更年期障害や血の道症(月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴う精神神経症状や身体症状)においても、イライラ、不安、不眠などの症状がみられる場合に抑肝散が用いられることがあります。また、認知症に伴う周辺症状(BPSD)である興奮、易怒性、徘徊、幻覚などに対しても、その有効性が示唆されており、臨床研究も進められています[1][3][4]。皮膚科の日常診療では、皮膚疾患そのものによるストレスや不眠、または高齢の患者さまの精神的な不安定さに対して、他の治療薬との兼ね合いも考慮しつつ、抑肝散を補助的に処方することがあります。

抑肝散の用法・用量と注意点

抑肝散の服用方法を示すカレンダーと薬のシート、正しい用量で不眠改善を目指す
抑肝散の正しい服用方法

抑肝散は、漢方薬であるため、患者さまの体質や症状によって適切な用法・用量が異なります。必ず医師や薬剤師の指示に従って服用してください。

標準的な用法・用量

添付文書に記載されている標準的な用法・用量は以下の通りです[5]

  • 成人: 通常、1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。
  • 小児: 用量は年齢、体重、症状に応じて適宜減量されます。

食前または食間とは、食事の約30分前、または食後2時間程度を指します。お湯に溶かして温かい状態で服用すると、吸収が良く、効果が高まると言われています。当院では、粉薬が苦手な患者さまには、少量の水で練ってから服用する方法や、オブラートを使用する方法も提案しています。

服用上の注意点

抑肝散を服用する際には、いくつかの注意点があります。特に、以下の点に留意してください。

  • 持病やアレルギー: 他の病気で治療中の場合や、過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。特に、高血圧、心臓病、腎臓病のある方は注意が必要です。
  • 併用薬: 他の漢方薬や西洋薬、サプリメントなどを服用している場合は、相互作用の可能性があるため、必ず医師や薬剤師に相談してください。特に甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。
  • 妊娠・授乳中: 妊娠中または授乳中の場合は、服用前に医師に相談してください。
  • 効果の感じ方: 漢方薬は即効性よりも、体質改善を促し、徐々に効果が現れることが多いです。効果を実感するまでには数週間かかることもあります。当院では抑肝散を処方した患者さまから、「1週間くらいで少し落ち着いた気がする」「2週間ほどで夜中に目が覚める回数が減った」というフィードバックをいただくことが多いです。しかし、効果には個人差があるため、焦らず継続することが大切です。
⚠️ 注意点

自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりしないでください。症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医師に相談しましょう。

抑肝散の副作用と注意すべき症状

抑肝散は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、全く副作用がないわけではありません。特に注意すべき重大な副作用と、その他の一般的な副作用について理解しておくことが重要です[5]

重大な副作用

頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が報告されています。

  • 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に進行する。カリウム値の異常や血圧上昇を伴うことがあります。甘草の過剰摂取や他の甘草含有製剤との併用でリスクが高まります。
  • ミオパチー:偽アルドステロン症の症状に加えて、横紋筋融解症の可能性もあります。
  • 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの上昇を伴う肝機能障害や、皮膚や白目が黄色くなる黄疸があらわれることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。皮膚科の臨床経験上、特に高齢の患者さまや複数の薬剤を服用されている患者さまには、定期的な血液検査で肝機能や電解質のチェックを推奨することがあります。当院では、抑肝散を処方する際には、これらの重大な副作用について十分に説明し、異変を感じたらすぐに連絡するよう患者さまにお願いしています。

その他の副作用

比較的まれですが、以下のような副作用が報告されています[5]

  • 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
  • 過敏症:発疹、かゆみなど。

これらの症状が現れた場合も、症状の程度に応じて医師や薬剤師に相談してください。皮膚科の視点からは、発疹やかゆみといった過敏症の症状が出た場合は、他の皮膚疾患との鑑別も必要となるため、速やかな受診が望ましいです。

副作用の種類症状の例対応
偽アルドステロン症手足のだるさ、しびれ、脱力感、筋肉痛、血圧上昇直ちに服用中止し医療機関受診
肝機能障害・黄疸全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目の黄染直ちに服用中止し医療機関受診
消化器症状食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢症状が続く場合は医師に相談
過敏症発疹、かゆみ症状が続く場合は医師に相談

抑肝散に関する患者さまからのご質問

医師が患者の質問に丁寧に答える様子、抑肝散の副作用や不眠への効果について説明
抑肝散に関する医師の説明
🩺 診察でよく聞かれる質問
Q. 抑肝散はどれくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
A. 漢方薬は体質改善を目指すため、効果を実感するまでに時間がかかることがあります。当院では、患者さまの症状や体質にもよりますが、まずは数週間から1ヶ月程度継続して服用していただき、その後の経過を診察で確認することが多いです。症状が安定してきたら、徐々に減量したり中止したりすることも検討しますが、自己判断せずに必ず医師と相談してください。
Q. 他の薬との飲み合わせで注意することはありますか?
A. はい、注意が必要です。特に、甘草を含む他の漢方薬(例: 葛根湯、芍薬甘草湯など)との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。また、利尿剤やステロイド剤など、電解質に影響を与える可能性のある薬剤との併用も慎重に行う必要があります。実際の処方では、患者さまが服用中のすべての薬やサプリメントを詳しくお伺いし、相互作用がないかを確認しています。
Q. 抑肝散を飲んで眠気が強くなることはありますか?
A. 抑肝散は精神的な興奮を鎮める作用があるため、人によっては服用初期に軽い眠気を感じることがあるかもしれません。しかし、一般的にはベンゾジアゼピン系睡眠薬のような強い催眠作用はありません。むしろ、不眠の原因となっているイライラや不安が軽減されることで、自然な眠りにつながることが期待されます。もし過度な眠気を感じる場合は、一度ご相談ください。
Q. 食前・食間服用とありますが、食後に飲んでも効果はありますか?
A. 漢方薬は一般的に空腹時に服用することで吸収が良くなると考えられており、食前や食間が推奨されています。しかし、飲み忘れを防ぐためや、胃腸が弱い方で食後に服用したいというご希望がある場合は、食後でも問題ないことが多いです。当院では、患者さまのライフスタイルに合わせて、無理なく継続できる服用タイミングを一緒に検討しています。大切なのは、毎日忘れずに服用することです。
Q. 小児に処方する際の注意点はありますか?
A. 小児への処方では、体重や年齢、症状の程度に応じて用量を細かく調整することが重要です。また、苦味があるため、飲みにくいと感じるお子さんもいます。当院では、少量の水で溶いてペースト状にして飲ませる方法や、服薬ゼリーなどを活用する方法を保護者の方にご案内しています。効果の出方や副作用の有無は、お子さんの様子を注意深く観察していただくようお伝えしています。
Q. 抑肝散は皮膚科で処方されることはありますか?
A. はい、皮膚科でも処方することがあります。特に、アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など、かゆみが強く、それによって不眠やイライラといった精神的な症状を伴う患者さまに対して、補助的に抑肝散を処方することがあります。皮膚症状の改善だけでなく、精神的な安定を図ることで、全体の治療効果を高めることを目指します。皮膚科の日常診療では、皮膚症状と精神症状の関連性を考慮し、患者さま一人ひとりに合わせた治療プランを立てています。

ジェネリック医薬品について

抑肝散は、古くから使われている漢方薬であり、様々な製薬会社から製造販売されています。ツムラ社製の「ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)」が代表的ですが、他にもクラシエ、コタロー、オースギなど、複数の製薬会社が同様の抑肝散エキス顆粒を製造しています。

漢方薬における「ジェネリック医薬品」という概念は、西洋薬のそれとは少し異なります。西洋薬のジェネリックは、先発医薬品と全く同じ有効成分を同じ量含み、同等の効果・安全性が期待できる後発医薬品を指します。一方、漢方薬の場合は、同じ処方名であっても、使用される生薬の産地、品質、抽出方法、エキス量などがメーカーによって異なる場合があります。そのため、厳密には「ジェネリック医薬品」というよりは「同種同効薬」と表現されることが多いです。

しかし、医療現場では、ツムラ以外のメーカーの抑肝散も広く使用されており、効果や安全性に大きな違いはないとされています。患者さまにとっては、薬価が異なる場合があるため、経済的な負担を軽減できる可能性があります。当院では、患者さまのご希望や薬局での取り扱い状況に応じて、複数のメーカーの抑肝散を処方する場合があります。処方する際は、メーカーによる違いについて説明し、患者さまに合った選択肢を提供できるよう心がけています。不明な点があれば、医師や薬剤師に遠慮なくご質問ください。

まとめ

抑肝散は、神経症、不眠症、小児の夜泣き、更年期障害など、精神的な興奮や不安を伴う症状に有効性が期待される漢方薬です。柴胡、当帰、川芎、茯苓、白朮、甘草、釣藤鈎の7種類の生薬が複合的に作用し、心身のバランスを整えることで症状の改善を目指します。不眠症においては、特にイライラや焦燥感が原因で眠れない場合に効果を発揮する可能性があります。服用に際しては、用法・用量を守り、偽アルドステロン症や肝機能障害といった重大な副作用に留意する必要があります。また、他の薬剤との併用や持病がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。ジェネリック医薬品も存在し、患者さまの状況に応じた選択が可能です。症状の改善には個人差がありますが、焦らず継続して服用し、気になる症状があれば速やかに医療機関を受診することが大切です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 抑肝散は保険適用されますか?
A. はい、抑肝散は医療用医薬品として承認されており、医師が処方した場合、保険適用となります。ただし、保険適用となるのは、医師が医学的に必要と判断した場合に限られます。
Q. 抑肝散は市販されていますか?
A. はい、医療用医薬品とは別に、一部の製薬会社から一般用医薬品(OTC医薬品)としても抑肝散が販売されています。これらは薬局やドラッグストアで購入できますが、医療用とは成分量や用法・用量が異なる場合があり、自己判断での長期服用は避けるべきです。症状が改善しない場合は、医療機関を受診して医師の診断を受けることをお勧めします。
Q. 抑肝散を服用中にアルコールを摂取しても大丈夫ですか?
A. 抑肝散とアルコールの直接的な相互作用は報告されていませんが、アルコールは精神状態や睡眠の質に影響を与える可能性があります。特に不眠症や神経症で抑肝散を服用している場合、アルコール摂取が症状を悪化させたり、薬の効果を妨げたりする可能性も考えられます。服用中は、アルコールの摂取を控えるか、医師に相談して適量を守るようにしてください。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長