桂枝加竜骨牡蛎湯とは?効果と副作用を医師が解説
- ✓ 桂枝加竜骨牡蛎湯は、神経過敏や不眠、小児夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 体力中等度以下で、疲れやすく、興奮しやすい方の症状に効果が期待されます。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチーに注意が必要です。
桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)とは?

桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)は、漢方医学における古典「金匱要略(きんきようりゃく)」に収載されている処方です。主に、神経過敏や不眠、小児の夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症、陰萎(勃起不全)などの症状に用いられます[1]。この処方は、体力が中等度以下で、疲れやすく、興奮しやすい方の精神神経症状を改善することを目的としています。
当院の皮膚科外来では、ストレスや精神的な緊張が原因で皮膚症状が悪化する患者さまに、補助的な治療として桂枝加竜骨牡蛎湯を処方することがあります。例えば、アトピー性皮膚炎の患者さまが夜間の掻痒で眠れない、あるいは掻きむしってしまうといった場合に、精神的な安定を図る目的で検討することがあります。
- 桂枝加竜骨牡蛎湯
- 神経過敏や不眠、小児夜泣きなど、精神神経症状を伴う体力中等度以下の患者に用いられる漢方薬。桂枝湯をベースに竜骨と牡蛎を加えた処方です。
桂枝加竜骨牡蛎湯の構成生薬と作用メカニズム
桂枝加竜骨牡蛎湯は、以下の8種類の生薬から構成されています[1]。
- 桂皮(ケイヒ):体を温め、血行を促進し、発汗を促す作用があります。
- 芍薬(シャクヤク):鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげます。
- 大棗(タイソウ):滋養強壮、精神安定作用があり、他の生薬の調和を図ります。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、消化を助け、吐き気を抑える作用があります。
- 甘草(カンゾウ):鎮痛、抗炎症作用があり、生薬間の調和を図ります。
- 竜骨(リュウコツ):精神安定、鎮静作用があり、動悸や不眠、興奮を抑えます。
- 牡蛎(ボレイ):精神安定、鎮静作用があり、動悸や不眠、興奮を抑えるとともに、発汗を抑える効果も期待されます。
これらの生薬が組み合わさることで、自律神経のバランスを整え、過敏になった神経を鎮静化し、精神的な不安定さを改善すると考えられています。特に竜骨と牡蛎は、精神安定作用が強く、動悸や不安感、不眠といった症状に対して重要な役割を果たします。桂枝加竜骨牡蛎湯は、心身の緊張を緩和し、穏やかな状態へと導くことで、患者さまのQOL(生活の質)向上に寄与します。
桂枝加竜骨牡蛎湯はどのような症状に効果が期待できますか?
桂枝加竜骨牡蛎湯は、主に精神神経症状を伴う、体力が中等度以下の患者さまに用いられます。具体的な適応症は以下の通りです[1]。
- 神経症、不眠症:不安感、イライラ、動悸、寝つきが悪い、眠りが浅いといった症状に。
- 小児夜泣き、夜尿症:夜間に泣き止まない、おねしょをしてしまうなど、興奮しやすいお子さまに。
- 眼精疲労:目の疲れだけでなく、それに伴う頭痛や肩こり、精神的な疲労感にも。
- 陰萎(勃起不全):精神的な要因が関与する勃起不全に対して。
- てんかん:精神的な興奮を伴う場合に補助的に用いられることがあります。
これらの症状は、現代医学では自律神経失調症や不安障害、心身症などと診断されるケースも多く、桂枝加竜骨牡蛎湯は心と体のバランスを整えることで、これらの症状の緩和を目指します。皮膚科の日常診療では、アトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹の患者さまが、精神的なストレスにより症状が悪化し、夜間の掻痒で不眠に陥るケースが少なくありません。このような場合、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬と併用して、桂枝加竜骨牡蛎湯を処方することで、患者さまの睡眠の質の改善や精神的な安定に繋がり、結果として皮膚症状の改善にも良い影響を与えることがあります。
| 症状 | 桂枝加竜骨牡蛎湯の期待される効果 |
|---|---|
| 不眠症・神経症 | 精神安定、鎮静作用により寝つきの改善、不安感の軽減 |
| 小児夜泣き・夜尿症 | 興奮を鎮め、精神的な落ち着きを促す |
| 眼精疲労 | 精神的な疲労緩和、自律神経のバランス調整 |
| 心身症に伴う皮膚症状 | ストレス軽減、掻痒による不眠の改善 |
実際の診察では、患者さまから「夜中に何度も目が覚めてしまう」「些細なことでイライラしてしまう」といった具体的な訴えを聞くことがよくあります。このような心身の不調が皮膚症状に影響を与えていると判断した場合に、桂枝加竜骨牡蛎湯を提案し、患者さまの全体的な状態の改善を目指します。
桂枝加竜骨牡蛎湯の正しい飲み方と注意点

桂枝加竜骨牡蛎湯の用法・用量は、添付文書に記載されている通り、年齢や症状によって調整されます。一般的には、成人で1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します[1]。小児の場合は、年齢や体重に応じて減量されます。
服用方法のポイント
- 食前または食間:漢方薬は一般的に胃が空の状態で服用する方が吸収が良いとされています。食間とは、食事と食事の間、食後約2時間後のことです。
- ぬるま湯で服用:顆粒の場合は、少量のぬるま湯に溶かして服用すると、生薬の成分がより効果的に吸収されると考えられています。
- 継続が重要:漢方薬は即効性よりも、体質改善や症状の根本的な緩和を目指すため、効果を実感するまでに時間がかかることがあります。医師の指示に従い、継続して服用することが大切です。
当院では、桂枝加竜骨牡蛎湯を処方する患者さまには、特に「継続して服用することの重要性」を丁寧にお伝えしています。外来で桂枝加竜骨牡蛎湯を使用した経験では、効果を実感されるまでに数週間から1ヶ月程度かかる方が多い印象です。すぐに効果が出ないからといって自己判断で中断せず、まずは指示された期間、服用を続けていただくようアドバイスしています。
服用上の注意点
妊娠中または授乳中の女性、高齢者、他の薬剤を服用している方は、必ず医師または薬剤師に相談してください。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、副作用のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
また、アレルギー体質の方や、過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある方は、服用前に医師に申し出るようにしてください。桂枝加竜骨牡蛎湯の成分にアレルギー反応を示す可能性もゼロではありません。当院では、問診時にアレルギー歴や併用薬について詳細に確認し、安全に服用できるよう配慮しています。
桂枝加竜骨牡蛎湯に副作用はある?
桂枝加竜骨牡蛎湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、医薬品である以上、副作用のリスクは存在します。添付文書に記載されている副作用情報に基づき、頻度別に整理して解説します[1]。
重大な副作用
頻度は極めて稀ですが、以下の重大な副作用が報告されています。
- 偽アルドステロン症:体内の電解質バランスが崩れ、血圧上昇、むくみ、体重増加、頭痛、手足のしびれ・こわばり、脱力感などが現れることがあります。これは、生薬の甘草に含まれるグリチルリチン酸が原因となることがあります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行により、筋肉の障害が起こり、脱力感、筋肉痛、四肢のけいれん、麻痺などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。特に、甘草を多く含む他の漢方薬やグリチルリチン製剤との併用は、これらの副作用のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。当院では、患者さまに処方する際に、これらの重大な副作用について説明し、異常を感じたらすぐに連絡するよう指導しています。
その他の副作用
比較的まれですが、以下の副作用が報告されることがあります。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。
- 過敏症:発疹、かゆみなど。
これらの症状も、もし現れた場合は医師や薬剤師に相談してください。症状が軽度であれば、服用を継続できる場合もありますが、症状が悪化したり、日常生活に支障をきたす場合は、服用中止や他の治療法への変更を検討します。皮膚科の臨床経験上、漢方薬で消化器症状を訴える患者さまは稀にいますが、多くの場合、服用方法の調整や一時的な休薬で改善することが多いです。また、アレルギー反応としての皮膚症状が出た場合は、直ちに中止し、適切な処置を行います。
桂枝加竜骨牡蛎湯に関する患者さまからのご質問

桂枝加竜骨牡蛎湯とジェネリック医薬品について
桂枝加竜骨牡蛎湯には、ツムラから製造販売されている「ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)」の他に、複数のメーカーからジェネリック医薬品(後発医薬品)が販売されています。
ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)の特許期間が満了した後に製造・販売される、先発医薬品と同じ有効成分、同じ効能・効果、用法・用量を持つ医薬品のことです。開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも安価に提供されることが特徴です。
- 有効成分:先発医薬品と全く同じ有効成分を含んでいます。
- 効能・効果:先発医薬品と同じ効能・効果が認められています。
- 品質・安全性:国の厳しい基準をクリアしており、先発医薬品と同等の品質、有効性、安全性が確認されています。
- 価格:先発医薬品よりも安価であることが一般的です。
漢方薬のジェネリック医薬品も、これらの原則に則って製造されています。ツムラの桂枝加竜骨牡蛎湯も、ツムラ以外のメーカーから「ケイシカリュウコツボレイトウエキス顆粒」としてジェネリック医薬品が販売されています。
ジェネリック医薬品の選択
当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品の処方も可能です。ジェネリック医薬品を選択することで、医療費の負担を軽減できるメリットがあります。ただし、漢方薬の場合、生薬の産地や抽出方法、賦形剤の種類など、メーカーによって細かな違いがある可能性もゼロではありません。そのため、患者さまによっては、特定のメーカーの漢方薬の方が体質に合うと感じる方もいらっしゃいます。処方する際は、患者さまのこれまでの服薬経験や希望を考慮して、最適な選択肢を提案しています。ご希望があれば、遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。
まとめ
桂枝加竜骨牡蛎湯は、神経過敏や不眠、小児夜泣きなど、心身の不調を抱える体力中等度以下の患者さまに効果が期待される漢方薬です。桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、竜骨、牡蛎といった生薬の組み合わせにより、自律神経のバランスを整え、精神的な安定をもたらすことで、様々な症状の改善を目指します。
服用にあたっては、添付文書に記載された用法・用量を守り、継続して服用することが重要です。稀ではありますが、偽アルドステロン症やミオパチーといった重大な副作用のリスクも存在するため、体調に異変を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。当院では、患者さま一人ひとりの体質や症状、生活習慣を丁寧に伺い、安全かつ効果的な治療を提供できるよう努めています。ご自身の症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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