甘麦大棗湯

【甘麦大棗湯の効果と副作用】|皮膚科医が解説

甘麦大棗湯の効果と副作用|皮膚科医が解説

最終更新日: 2026-05-02
📋 この記事のポイント
  • 甘麦大棗湯は精神神経症状や夜泣き、小児夜尿症に用いられる漢方薬です。
  • ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、副作用に注意して服用することが重要です。
  • ✓ 医師の診察を受け、症状や体質に合わせた適切な処方を受けることが大切です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

甘麦大棗湯(ツムラ72)とは?

甘麦大棗湯(ツムラ72)の薬効成分と精神安定作用のメカニズムを解説する図
甘麦大棗湯の効能と成分
甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)は、漢方医学で「婦人の臓躁(ぞうそう)」と呼ばれる症状、すなわち精神不安、不眠、いらいら、悲哀感などの精神神経症状や、小児の夜泣き、夜尿症などに用いられる漢方薬です[1]。この薬は、甘草(カンゾウ)、小麦(ショウバク)、大棗(タイソウ)の3つの生薬から構成されており、これらが協調して心身の緊張を和らげ、精神的な安定をもたらすと考えられています。
臓躁(ぞうそう)
漢方医学における病態の一つで、精神的な不安や興奮、不眠、悲哀感、感情の不安定さなどを特徴とする症候群を指します。主に女性に多く見られ、更年期障害や自律神経失調症と関連することがあります。
当院の皮膚科外来では、皮膚疾患に伴うかゆみや痛み、あるいは治療への不安から不眠やイライラを訴える患者さまに対し、症状緩和の一助として甘麦大棗湯を処方することがあります。特に、アトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹などで夜間の掻痒が強く、それが不眠につながっているケースでは、心身の緊張を和らげる目的で検討することがあります。実際の診察では、患者さまから「皮膚のかゆみで夜眠れない」「イライラして集中できない」といった相談を受けることが多く、このような精神的な負担を軽減することも治療の重要な側面と考えています。

甘麦大棗湯の構成生薬とその作用

甘麦大棗湯は、以下の3つの生薬から構成されています。
  • 甘草(カンゾウ): 鎮痛、鎮痙、抗炎症作用があるとされ、他の生薬の作用を調和させる働きも持ちます。
  • 小麦(ショウバク): 精神安定作用があるとされ、不安や不眠の緩和に寄与すると考えられています。
  • 大棗(タイソウ): 滋養強壮作用や精神安定作用があるとされ、心身の疲労回復や不安の軽減に役立つとされています。
これらの生薬が組み合わさることで、神経の興奮を鎮め、心身のバランスを整える効果が期待されます。特に、小麦は精神的な緊張を和らげる効果が注目されており、甘麦大棗湯の主要な作用の一つを担っています。

甘麦大棗湯はどのような効果が期待できる?

甘麦大棗湯は、精神神経症状や小児の夜泣き・夜尿症に対して効果が期待されます。その作用機序は複雑ですが、主に脳内の神経伝達物質のバランスを整えたり、自律神経の働きを調整したりすることで、心身の緊張を緩和すると考えられています。

具体的な適応症と効果

添付文書によると、甘麦大棗湯の効能・効果は「精神不安、不眠、いらいら、悲哀感などの精神神経症状、夜泣き、小児夜尿症」と記載されています[1]
  • 精神不安・不眠・いらいら: 日常生活でのストレスや心身の疲労からくる精神的な不安定さ、寝つきの悪さ、夜中に目が覚めるなどの不眠症状、些細なことで感情的になるいらいら感に対して、心を落ち着かせ、安眠を促す効果が期待されます。
  • 悲哀感: 特に理由もなく悲しくなったり、気分が落ち込んだりする症状に、精神的な安定をもたらすことが期待されます。
  • 夜泣き・小児夜尿症: 小児の精神的な興奮や緊張が原因で起こる夜泣きや、睡眠中の排尿コントロールが難しい夜尿症に対しても、神経の過敏性を鎮めることで症状の改善に寄与すると考えられています。
皮膚科の日常診療では、特に夜間の掻痒による不眠や、慢性的な皮膚症状による精神的ストレスを抱える患者さまに、補助的な治療として甘麦大棗湯を検討することがあります。当院では、甘麦大棗湯を処方した患者さまから、「以前より夜中に目が覚める回数が減った」「気持ちが落ち着いてきた気がする」といったフィードバックをいただくことが多いです。ただし、効果の発現には個人差があり、数週間から数ヶ月の服用で徐々に効果を実感される方が多い印象です。
⚠️ 注意点

甘麦大棗湯は、あくまで症状の緩和を目的とした漢方薬であり、精神疾患そのものを治療するものではありません。重度の精神疾患が疑われる場合は、精神科や心療内科の専門医の診察を受けることが重要です。

用法・用量は?服用方法は?

甘麦大棗湯(ツムラ72)の正しい服用方法と用量に関する注意点をまとめた表
甘麦大棗湯の服用方法と用量
甘麦大棗湯の用法・用量は、患者さまの年齢や症状によって異なりますが、添付文書に記載された標準的な服用方法を遵守することが重要です[1]

標準的な用法・用量

通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。小児への投与量は、年齢や体重に応じて調整されます。ツムラの医療用漢方製剤であるツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒(医療用)の場合、以下の用法・用量が一般的です[2]
対象 1日量 服用回数
成人 7.5g 2〜3回に分割
小児(7歳以上15歳未満) 成人の2/3量 2〜3回に分割
小児(4歳以上7歳未満) 成人の1/2量 2〜3回に分割
小児(2歳以上4歳未満) 成人の1/3量 2〜3回に分割
服用は、通常、水またはぬるま湯で食前または食間に服用します。食間とは、食事と食事の間、食後約2時間を目安とします。顆粒剤の場合、口に含んでから水で流し込むか、少量のお湯に溶かして服用することも可能です。当院では、特に小児の患者さまや漢方薬の味が苦手な方には、服用しやすい方法を具体的に説明し、継続しやすいようにアドバイスしています。例えば、「少量のヨーグルトに混ぜてみてください」といった具体的な提案をすることもあります。

服用上の注意点

  • 持病がある場合: 高血圧、心臓病、腎臓病、むくみのある患者さまは、服用前に必ず医師に相談してください。甘草の成分が症状を悪化させる可能性があります。
  • 他の薬との併用: 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、相互作用の可能性があるため、必ず医師または薬剤師に伝えてください。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、甘草の過剰摂取につながる可能性があるため注意が必要です。
  • 妊娠・授乳中の方: 妊娠中または授乳中の方は、服用前に医師に相談してください。
  • 効果の評価: 数週間服用しても症状の改善が見られない場合は、漫然と服用を継続せず、再度医師の診察を受けてください。

甘麦大棗湯の副作用はある?

甘麦大棗湯は比較的副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。特に、配合されている甘草による副作用には注意が必要です[1]

重大な副作用

甘草の大量摂取や長期服用により、以下の重大な副作用が報告されています[1]
  • 偽アルドステロン症: 尿量が減少したり、顔や手足がむくんだり、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がる、頭痛などの症状が現れることがあります。これは、体内の電解質バランスが崩れることで起こる病態です。
  • ミオパチー: 偽アルドステロン症の結果として、脱力感、筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。
これらの症状に気づいた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。皮膚科の臨床経験上、甘草による偽アルドステロン症は稀ではありますが、特に高齢者や腎機能が低下している患者さま、あるいは他の甘草含有製剤を併用している患者さまでは注意が必要です。処方する際は、患者さまの既往歴や併用薬を詳細に確認し、定期的な血圧測定や血液検査で電解質バランスをモニタリングすることを考慮しています。

その他の副作用

頻度は不明ですが、以下のような副作用が報告されています[1]
  • 消化器症状: 胃部不快感、吐き気、下痢など。
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど。
これらの症状が現れた場合も、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。当院では、新しい漢方薬を処方する際には、患者さまに「何か気になる症状が出たらすぐに連絡してくださいね」と具体的に伝え、安心して服用を継続できるようサポートしています。特に、皮膚科領域ではアレルギー体質の患者さまも多いため、発疹やかゆみといった過敏症状には注意深く対応しています。
⚠️ 注意点

副作用の発現には個人差があります。体質や既往歴、他の薬剤との併用状況などによってリスクが変動するため、必ず医師の指示に従って服用し、気になる症状があれば速やかに医療機関を受診してください。

🩺 診察でよく聞かれる質問
Q. 甘麦大棗湯はどのくらいで効果が出始めますか?
A. 実際の処方では、効果を実感するまでの期間には個人差が大きいと感じています。精神的な症状の場合、早い方で数日から1週間程度で「少し落ち着いた気がする」と感じ始める方もいらっしゃいますが、多くは2週間から1ヶ月程度の継続服用で徐々に効果を実感されることが多いです。小児の夜泣きや夜尿症の場合も、即効性があるというよりは、体質改善を促しながら徐々に症状が安定していく傾向にあります。当院では、少なくとも2週間から1ヶ月は継続して様子を見ることをお勧めしています。
Q. 眠気が出ることはありますか?服用後に運転しても大丈夫ですか?
A. 甘麦大棗湯は精神的な緊張を和らげる作用があるため、人によっては軽い眠気を感じることがあります。特に服用開始初期や、体質によっては眠気が強く出ることがあるかもしれません。当院では、服用開始直後はご自身の体調の変化に注意し、もし眠気を感じるようであれば、車の運転や危険を伴う機械の操作は控えるよう患者さまにお伝えしています。夜間の服用であれば、むしろ安眠につながることも期待できます。
Q. 小児に服用させる際の注意点はありますか?
A. 小児への処方では、まず年齢に応じた適切な用量を守ることが最も重要です。当院では、保護者の方に正確な計量方法を指導し、無理なく服用できるよう工夫を凝らしています。また、小児は味に敏感なことが多いため、水に溶かして飲ませる、少量のジュースや牛乳に混ぜるなど、服用しやすい方法を一緒に検討します。何か異常があった場合は、すぐに服用を中止し、医師に相談するよう指導しています。特に甘草による偽アルドステロン症のリスクは、小児でもゼロではないため、定期的な診察で体調の変化を確認しています。
Q. 長期間服用しても大丈夫ですか?
A. 甘麦大棗湯は比較的穏やかな作用を持つ漢方薬ですが、長期間の服用には注意が必要です。特に甘草の成分が含まれているため、偽アルドステロン症などの副作用のリスクがわずかながら高まる可能性があります。当院では、症状が改善した場合は徐々に減量や中止を検討し、漫然と長期服用を続けることは避けるように指導しています。定期的な診察で、効果と副作用のバランスを評価しながら、継続の必要性を判断することが重要です。
Q. 他の精神安定剤や睡眠導入剤と一緒に服用できますか?
A. 他の精神安定剤や睡眠導入剤との併用は、慎重な判断が必要です。甘麦大棗湯も精神を落ち着かせる作用があるため、併用することで過度な鎮静作用や眠気が強く出る可能性があります。また、薬剤によっては相互作用が生じることも考えられます。当院では、患者さまが現在服用しているすべての薬剤を正確に把握し、相互作用のリスクを評価した上で、併用の可否を判断しています。自己判断での併用は避け、必ず医師にご相談ください。
Q. 妊娠中や授乳中に服用しても安全ですか?
A. 妊娠中や授乳中の服用については、安全性が確立されているわけではありません。添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されています[1]。当院では、妊娠中や授乳中の患者さまには、治療の必要性とリスクを十分に説明し、代替治療の有無なども含めて慎重に検討します。服用が必要な場合は、最小限の用量で、医師の厳重な管理のもとで行うことが原則です。必ず事前に医師に相談してください。

ジェネリック医薬品はある?

甘麦大棗湯のジェネリック医薬品の有無と選択肢を比較検討する資料
甘麦大棗湯のジェネリック医薬品
甘麦大棗湯は、ツムラから「ツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒(医療用)」として供給されていますが、他の製薬会社からも同成分の医療用漢方製剤が製造・販売されています。

甘麦大棗湯のジェネリック医薬品について

漢方薬の場合、西洋薬のような「ジェネリック医薬品」という概念は厳密には当てはまりにくい側面があります。これは、漢方薬が複数の生薬の組み合わせであり、製造方法や生薬の品質、抽出方法などによって、同じ処方名でも製品ごとにわずかな違いが生じる可能性があるためです。 しかし、一般的に「ジェネリック医薬品」という言葉が指す、特許期間が満了した後に他の製薬会社が製造する同等品という意味合いでは、甘麦大棗湯についても複数のメーカーから同成分・同効能の漢方製剤が販売されています。これらは「後発医薬品」や「同種同効品」として扱われ、薬価が安価であることが多いです。
項目 先発品(ツムラ72) 後発品(他社品)
製品名例 ツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒(医療用) コタロー甘麦大棗湯エキス細粒、クラシエ甘麦大棗湯エキス細粒など
有効成分 甘草、小麦、大棗 甘草、小麦、大棗
薬価 比較的高価 比較的安価
品質・効果 厳格な品質管理 同等の品質・効果が期待されるが、メーカーにより製造工程が異なる場合あり
当院では、患者さまの希望や経済的な負担も考慮し、後発品についても情報提供を行っています。ただし、漢方薬は生薬の品質や配合バランスが重要であるため、医師や薬剤師と相談の上、ご自身に合った製品を選択することが大切です。

甘麦大棗湯の処方を受けるには?

甘麦大棗湯は医療用医薬品であり、医師の診察と処方箋が必要です。自己判断での服用は避け、必ず医療機関を受診してください。

受診のタイミングと診療の流れ

精神的な不安、不眠、いらいら、悲哀感などの症状が続く場合や、お子さまの夜泣きや夜尿症で悩んでいる場合は、医療機関を受診しましょう。皮膚疾患に伴う精神的な不調であれば、当院のような皮膚科でも相談可能です。
  1. 問診: 症状の内容、いつから始まったか、どのような時に悪化するか、既往歴、現在服用中の薬などを詳しくお伺いします。特に、精神的な症状については、患者さまの言葉を丁寧に傾聴することを心がけています。
  2. 診察: 必要に応じて身体診察を行い、症状の原因となる他の疾患がないか確認します。
  3. 診断と処方: 問診と診察の結果に基づき、甘麦大棗湯が適応と判断された場合に処方します。用法・用量、副作用、服用上の注意点などを詳しく説明します。当院では、患者さまが納得して治療を受けられるよう、疑問点があればその場で解消できるよう心がけています。
  4. フォローアップ: 処方後も定期的に受診していただき、効果の確認や副作用の有無、症状の変化などを継続的に評価します。必要に応じて、薬の調整や他の治療法の検討も行います。
当院のオンライン診療では、まず詳細な問診票にご記入いただき、その内容に基づいて医師がビデオ通話で診察を行います。特に精神的な症状は、患者さまの表情や声のトーンからも多くの情報を得られるため、対面診療に近い形で丁寧なコミュニケーションを心がけています。処方の判断基準としては、添付文書の適応症に合致しているか、他の疾患や併用薬との相互作用がないか、患者さまの体質(証)に合っているかなどを総合的に判断します。皮膚科の観点からは、皮膚症状と精神症状の関連性も考慮し、全体的なQOL向上を目指した治療計画を立てています。

まとめ

甘麦大棗湯(ツムラ72)は、精神不安、不眠、いらいら、悲哀感などの精神神経症状や、小児の夜泣き、夜尿症に用いられる漢方薬です。甘草、小麦、大棗の3つの生薬が心身の緊張を和らげ、精神的な安定をもたらす効果が期待されます。服用に際しては、添付文書に記載された用法・用量を守り、特に甘草による偽アルドステロン症などの重大な副作用に注意が必要です。効果の発現には個人差があり、数週間から数ヶ月の継続服用で徐々に効果を実感されることが多いです。医療用医薬品であるため、必ず医師の診察を受け、症状や体質に合わせた適切な処方を受けることが重要です。気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師や薬剤師の指導のもとで安全かつ効果的に服用しましょう。

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よくある質問(FAQ)

Q. 甘麦大棗湯は市販されていますか?
A. はい、甘麦大棗湯は医療用医薬品としてだけでなく、一部の製品は一般用医薬品(OTC医薬品)としても市販されています。ただし、市販薬は医療用医薬品と成分量や添加物が異なる場合があり、自己判断での服用は注意が必要です。症状が改善しない場合や、持病がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
Q. 漢方薬はどのように保管すれば良いですか?
A. 漢方薬は、直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所に保管してください。特に、顆粒剤は湿気を吸いやすいため、開封後は密閉して保管し、なるべく早く使い切るようにしましょう。小児の手の届かない場所に保管することも重要です。
Q. 甘麦大棗湯は保険適用になりますか?
A. 医師の診察に基づき、医療用医薬品として処方された場合、甘麦大棗湯は公的医療保険の適用対象となります。そのため、患者さまは自己負担割合に応じた費用で薬を受け取ることができます。ただし、市販されている一般用医薬品は保険適用外となります。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長