治打撲一方の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 治打撲一方は打撲や捻挫、骨折後の痛みや腫れを和らげる漢方薬です。
- ✓ 炎症を抑え、血行を促進する作用が期待でき、皮膚科領域では外傷後の内出血や腫れの改善に用いられます。
- ✓ 副作用は比較的少ないですが、胃部不快感や発疹などに注意し、症状があれば医師に相談が必要です。
治打撲一方とは?その特徴と歴史的背景

治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)は、打撲、捻挫、骨折後の痛みや腫れ、内出血などの症状に用いられる漢方薬です。その名前の通り、「打撲を治す一方(漢方薬)」という意味を持ち、古くから外傷治療に活用されてきました。江戸時代の外科医である華岡青洲によって創製されたとされており、その有効性は現代においても多くの臨床現場で認識されています。
この漢方薬は、トウキ、センキュウ、ケイヒ、サイコ、カンゾウ、ダイオウ、カミツレ(またはボウフウ)といった生薬を配合しており、それぞれの生薬が持つ薬理作用が複合的に働くことで、打撲や捻挫による局所の炎症を鎮め、血行を促進し、痛みを緩和する効果が期待されます。特に、打撲による内出血(青あざ)や腫れの軽減に有効であるとされています[1]。当院の皮膚科外来では、転倒による打撲やスポーツ外傷後の内出血、腫れに対して処方することが多く、患者さまから「早く青あざが引いた」「痛みが楽になった」といった声をいただくことがあります。
- 漢方薬
- 中国伝統医学を基盤とし、日本で独自に発展した伝統医学体系に基づいた薬。複数の生薬を組み合わせることで、生体が本来持つ自然治癒力を高め、症状の改善を目指します。
治打撲一方の作用メカニズムと期待される効果とは?
治打撲一方の作用メカニズムは、配合されている複数の生薬の相乗効果によって成り立っています。主な生薬とその働きは以下の通りです。
- トウキ、センキュウ:血行促進作用があり、打撲による血行不良や瘀血(おけつ)を改善し、内出血の吸収を促します。
- ケイヒ:体を温め、血行を促進する作用があり、痛みの緩和に寄与します。
- サイコ:炎症を鎮める作用や、痛みを和らげる作用が期待されます。
- カンゾウ:他の生薬の作用を調和させるとともに、抗炎症作用や鎮痛作用を持ちます。
- ダイオウ:緩下作用があるため、便秘を伴う場合に効果を発揮することがありますが、少量配合されているため、主に血行改善や炎症抑制に寄与すると考えられています。
- カミツレ(またはボウフウ):抗炎症作用や鎮痛作用が期待されます。
これらの生薬の組み合わせにより、治打撲一方には主に以下の効果が期待されます。
- 鎮痛作用:打撲や捻挫による痛みを和らげます。
- 抗炎症作用:患部の腫れや熱感を軽減します。
- 血行促進作用:内出血(青あざ)の吸収を早め、組織の修復を助けます。
実際の診察では、患者さまから「打撲でできた大きな青あざが、飲み始めてから早く薄くなった気がする」と質問されることがよくあります。治打撲一方の血行促進作用が、瘀血の改善に寄与していると考えられます。また、動物実験においても、治打撲一方の鎮痛作用や抗炎症作用が確認されています[1]。
治打撲一方の正しい用法・用量と服用時の注意点

治打撲一方の用法・用量は、製品によって多少異なる場合がありますが、一般的には以下の通りです。
- 成人:1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します。
- 小児:年齢、体重、症状に応じて適宜減量します。
服用にあたっては、医師や薬剤師の指示に従うことが重要です。特に漢方薬は、体質や症状によって効果の出方が異なるため、自己判断での服用は避けましょう。
服用時の注意点としては、以下の点が挙げられます。
- 空腹時服用:漢方薬は一般的に食前または食間に服用することで、生薬成分の吸収が良くなるとされています。
- 飲み忘れに注意:効果を安定させるためには、指示された時間に継続して服用することが大切です。
- 他の薬剤との併用:他の薬剤を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。特に、他の漢方薬や、ダイオウを含む下剤などとの併用には注意が必要です。
- アレルギー歴:過去に薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
皮膚科の日常診療では、打撲や捻挫の急性期に処方することが多いですが、効果実感には個人差があります。外来で治打撲一方を処方した経験では、軽度の打撲であれば数日〜1週間程度で痛みが和らぎ、内出血も徐々に引いていくのを実感される方が多い印象です。しかし、症状が重い場合や、長期間服用しても改善が見られない場合は、再度診察を受けて原因を特定し、治療方針を再検討する必要があります。
治打撲一方の服用は、あくまで医師の診断と指示に基づいて行ってください。特に妊娠中や授乳中の方、持病をお持ちの方は、必ず事前に医師に相談が必要です。
治打撲一方に副作用はある?頻度と対処法
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、治打撲一方にも全く副作用がないわけではありません。体質や体調によっては、いくつかの副作用が現れる可能性があります。
重大な副作用
添付文書に記載されている重大な副作用は、極めて稀ですが、以下のものが挙げられます。
- 間質性肺炎:発熱、咳、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)などが現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
- 肝機能障害、黄疸:全身倦怠感、食欲不振、発熱、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れた場合は、服用を中止し、医師の診察を受けてください。
これらの症状は非常に稀ですが、万一現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。
その他の副作用
比較的頻度が高い、または注意が必要なその他の副作用としては、以下のようなものが報告されています。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。ダイオウが含まれているため、体質によっては下痢を起こしやすくなることがあります。
- 過敏症:発疹、かゆみなど。
当院では治打撲一方を処方した患者さまから、「少しお腹がゆるくなった」「胃がもたれる感じがする」というフィードバックをいただくことが多いです。このような症状が現れた場合は、服用量を調整したり、食後に変更したりすることで改善することがあります。症状が続く場合や悪化する場合は、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。皮膚科の臨床経験上、漢方薬による副作用は西洋薬に比べて軽度であることが多いですが、服用を継続するかどうかの判断は重要です。
治打撲一方に関する患者さまからのご質問

治打撲一方と他の漢方薬との使い分け
打撲や捻挫、外傷後の症状に用いられる漢方薬は、治打撲一方以外にもいくつか存在します。それぞれの漢方薬は、配合されている生薬やその作用機序が異なるため、患者さまの症状や体質に合わせて使い分けることが重要です。当院では、患者さまの具体的な訴えや身体の状態を詳しく問診し、最適な漢方薬を選択しています。
| 漢方薬名 | 主な適応 | 特徴的な作用 |
|---|---|---|
| 治打撲一方 | 打撲、捻挫、骨折後の痛み・腫れ・内出血 | 血行促進、瘀血改善、鎮痛、抗炎症 |
| 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | 瘀血による痛み、月経不順、冷え性、しもやけなど | 血行促進、瘀血改善、冷え性改善 |
| 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 冷え性、貧血傾向、むくみ、生理不順など | 血行促進、水分代謝改善、貧血改善 |
| 疎経活血湯(そけいかっけつとう) | 関節痛、神経痛、筋肉痛、しびれなど | 血行促進、鎮痛、筋肉の緊張緩和 |
例えば、打撲後の内出血や腫れが主訴であれば治打撲一方を第一選択とすることが多いですが、慢性的な関節痛や神経痛を伴う場合は疎経活血湯を検討することもあります。また、女性で冷え性や月経不順を伴う瘀血体質の方の打撲には、桂枝茯苓丸や当帰芍薬散が適している場合もあります。皮膚科の日常診療では、外傷後の内出血がなかなか引かない、痛みが長引くといった場合に、治打撲一方の効果を期待して処方することがよくあります。患者さまの体質や、他の漢方薬との飲み合わせも考慮して、最適な処方を選択しています。
まとめ
治打撲一方(ツムラ89)は、打撲、捻挫、骨折後の痛み、腫れ、内出血といった外傷性の症状に有効な漢方薬です。血行促進作用、抗炎症作用、鎮痛作用により、患部の回復を助けることが期待されます。用法・用量を守り、医師や薬剤師の指示に従って服用することが重要です。比較的副作用は少ないですが、胃部不快感や下痢、稀に重大な副作用も報告されているため、異変を感じたら速やかに医療機関を受診してください。ジェネリック医薬品も存在し、患者さまのニーズに合わせて選択肢が広がっています。当院では、患者さま一人ひとりの症状や体質を詳細に把握し、治打撲一方を含む最適な漢方治療を提供しています。
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