床ずれの保存的治療(外用薬・ドレッシング材の選び方)

【床ずれの保存的治療(外用薬・ドレッシング材の選び方)】|床ずれ保存的治療:外用薬・ドレッシング材の選び方

床ずれ保存的治療:外用薬・ドレッシング材の選び方
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • ✓ 床ずれ(褥瘡)の保存的治療では、外用薬とドレッシング材の適切な選択が重要です。
  • ✓ 創部の状態(浸出液の量、感染の有無、壊死組織の有無)に応じて最適な薬剤やドレッシング材を選びます。
  • ✓ 専門医の診断のもと、定期的な評価とケアプランの見直しが治癒への鍵となります。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

床ずれ(褥瘡)とは?そのメカニズムを理解する

皮膚に圧迫と摩擦が加わり床ずれが発生するメカニズム
床ずれ発生のメカニズム
床ずれ(褥瘡)は、身体の同じ部位に長時間圧力がかかり続けることで血流が悪化し、皮膚やその下の組織が損傷を受ける状態を指します。このセクションでは、床ずれの定義と発生メカニズムについて解説します。
褥瘡(じょくそう)
身体の特定の部位に継続的な圧迫や摩擦、ずれの力が加わることで、その部分の血流が阻害され、皮膚や皮下組織が損傷し、壊死(えし)に至る状態です。主に寝たきりの患者さんや車椅子を使用する方に見られます。
床ずれの主な原因は、持続的な圧迫、摩擦、そしてずれの力です。圧迫により血管が圧迫され、組織への酸素や栄養の供給が途絶えることで細胞が死滅します[2]。特に骨の突出部(仙骨部、踵、大転子など)は、体位変換が少ないと持続的な圧迫を受けやすく、床ずれが発生しやすい部位です[1]。 また、皮膚がベッドシーツなどと擦れることによる「摩擦」や、体位変換時に皮膚が引っ張られる「ずれ」の力も、皮膚組織にダメージを与え、床ずれの発生リスクを高めます。これらの要因が複合的に作用することで、床ずれは進行します。 当院の問診では、患者さまやご家族から、発症前の生活状況や体位変換の頻度、栄養状態などを詳しく伺うようにしています。特に、仙骨部にできた床ずれで「最近、食欲が落ちて体重が減った」とおっしゃる方が多く、栄養状態の悪化が褥瘡発生・悪化に大きく関わっていることを実感しています。

床ずれの進行度合いと病期分類とは?

床ずれの治療方針を決定するためには、その進行度合いを正確に評価することが不可欠です。ここでは、国際的な病期分類システムについて解説します。 床ずれは、その深さや組織損傷の程度によっていくつかの病期に分類されます。最も広く用いられているのは、NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)が提唱する分類で、ステージIからステージIV、さらに「判定不能」や「深部組織損傷の疑い」といったカテゴリーがあります[3]
  • ステージI:皮膚は損傷しておらず、発赤(赤み)が消えない状態です。指で押しても白くならない(非虚血性発赤)のが特徴です。
  • ステージII:表皮や真皮の一部が失われ、浅い潰瘍(かいよう)や水疱(すいほう)が形成されます。
  • ステージIII:皮下組織まで損傷が及び、脂肪組織が見えることがあります。骨や腱、筋肉は露出していません。
  • ステージIV:筋肉、骨、腱などが露出するほどの深い組織損傷を伴います。感染のリスクが高まります。
  • 判定不能:壊死組織(黒色痂皮や黄色のスラーなど)で創底が覆われており、深さを正確に評価できない状態です。デブリードマン(壊死組織除去)が必要です。
  • 深部組織損傷の疑い:皮膚は損傷していないものの、深い部分の組織損傷が疑われる状態です。紫色の変色や水疱として現れることがあります。
実際の診療では、初診時に「黒いかさぶたができていて、どこまで深いのか分からない」と相談される患者さまも少なくありません。このような「判定不能」の褥瘡は、壊死組織を取り除き、創部の深さを確認することが治療の第一歩となります。当院では、この病期分類に基づき、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てています。

床ずれの保存的治療の基本原則とは?

床ずれの保存的治療における基本的なケア手順とポイント
保存的治療の基本原則
床ずれの保存的治療は、単に傷を治すだけでなく、患者さまの全身状態を改善し、再発を防ぐことを目的とします。ここでは、保存的治療の基本的なアプローチについて説明します。 保存的治療の基本は、以下の3つの柱に基づいています[4]
  1. 除圧(じょあつ):最も重要な治療原則であり、原因となる圧迫を取り除くことです。体位変換の頻度を増やす、体圧分散寝具(エアマットなど)を使用する、クッションを適切に配置するなどの方法があります。
  2. 局所治療:創部の状態に応じた適切な外用薬やドレッシング材を用いて、創環境を整え、治癒を促進します。これには、壊死組織の除去、感染の管理、浸出液のコントロールなどが含まれます。
  3. 全身管理:栄養状態の改善、基礎疾患(糖尿病など)の管理、疼痛コントロールなど、患者さまの全身状態を良好に保つことが治癒に不可欠です。特に低栄養状態は褥瘡の治癒を著しく遅らせるため、高タンパク・高カロリー食の提供や栄養補助食品の活用が推奨されます。
当院では、これらの原則に基づき、医師、看護師、理学療法士、栄養士などが連携してチーム医療を提供しています。特に、ご自宅で介護されている患者さまの場合、体位変換の介助方法や栄養摂取の工夫について、ご家族への指導も重要なポイントになります。治療を始めて数ヶ月ほどで「傷が小さくなってきただけでなく、食事もしっかり摂れるようになってきた」とおっしゃる方が多く、全身管理の重要性を改めて実感しています。
⚠️ 注意点

床ずれの治療は長期にわたることが多く、自己判断での処置は症状を悪化させる可能性があります。必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。

外用薬の選び方:創部の状態に応じた使い分けとは?

床ずれの局所治療において、外用薬は創部の環境を整え、治癒を促進するために重要な役割を果たします。創部の状態は常に変化するため、それに合わせて外用薬を適切に選択し、使い分けることが求められます。 外用薬の選択は、主に以下の要素によって決定されます。
  • 壊死組織の有無:黒色痂皮(かひ)や黄色のスラー(slough)などの壊死組織がある場合は、それらを除去する作用のある薬剤を選びます。
  • 浸出液の量:浸出液が多い場合は、吸収性の高い薬剤や乾燥を促す薬剤を、少ない場合は保湿性の高い薬剤を選びます。
  • 感染の有無:感染が疑われる場合は、抗菌作用のある薬剤を使用します。
  • 肉芽形成(にくげけいせい)の状態:創が治癒に向かい、肉芽組織が形成されている場合は、その保護と成長を促す薬剤を選びます。

壊死組織除去を目的とした外用薬

壊死組織は細菌の温床となり、創傷治癒を妨げるため、除去が必要です。外科的デブリードマンが困難な場合、外用薬による化学的デブリードマンが選択されます。
  • プロテアーゼ含有軟膏:壊死組織を分解する酵素を含み、選択的に壊死組織を除去します。例:フィブリン溶解酵素製剤。
  • 尿素軟膏:角質軟化作用があり、硬い壊死組織を柔らかくして除去しやすくします。

感染管理を目的とした外用薬

創部に感染が認められる場合、抗菌作用のある外用薬を使用します。感染の兆候としては、発赤、腫脹、疼痛、熱感、膿性浸出液などがあります。
  • 抗菌薬含有軟膏:スルファジアジン銀、ポビドンヨードなどが代表的です。これらの薬剤は幅広い細菌に効果を示しますが、長期使用は耐性菌の出現や皮膚刺激のリスクがあるため、医師の指示に従う必要があります。

肉芽形成・上皮化促進を目的とした外用薬

壊死組織が除去され、感染がコントロールされた創部では、肉芽組織の形成と上皮化を促進する薬剤を使用します。
  • 成長因子含有軟膏:肉芽組織の成長を促進する作用があります。例:bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)製剤。
  • 亜鉛華軟膏:軽度の炎症を抑え、皮膚を保護する作用があります。浸出液が少ない創部や上皮化段階で使用されることがあります。
当院では、創部の状態を毎日観察し、浸出液の量や色、壊死組織の有無、肉芽の状態などを詳細に評価した上で、その日に最適な外用薬を選択しています。特に、感染の兆候が見られた際には、培養検査を行い、適切な抗菌薬を選ぶようにしています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。

ドレッシング材の選び方:湿潤環境の維持と保護

床ずれの治癒段階に合わせた適切なドレッシング材の選択
ドレッシング材の適切な選び方
ドレッシング材は、創部を保護し、適切な湿潤環境を維持することで、創傷治癒を促進する役割を担います。外用薬と同様に、創部の状態に応じて最適なドレッシング材を選ぶことが重要です。

湿潤療法とは?

従来の「乾燥させてかさぶたを作る」という治療法とは異なり、湿潤療法(モイストヒーリング)は、創部を適度な湿潤状態に保つことで、細胞の活動を活発にし、早くきれいに治すことを目指します。これにより、痛みも軽減される傾向があります。 湿潤環境を維持するドレッシング材は、主に以下の機能を持っています。
  • 浸出液の吸収:過剰な浸出液を吸収し、創周囲の皮膚の浸軟(しんじゅん)を防ぎます。
  • 創部の保護:外部からの細菌感染や物理的な刺激から創部を守ります。
  • 保温:創部の温度を適切に保ち、細胞の活動を助けます。

主なドレッシング材の種類と特徴

種類特徴適応例
ハイドロコロイド自己粘着性があり、浸出液を吸収してゲル化し、湿潤環境を維持。交換頻度が少ない。軽度〜中等度の浸出液がある浅い褥瘡、肉芽形成期、上皮化期。
ポリウレタンフォーム高い吸収力とクッション性があり、創部を保護。浸出液が多い褥瘡、骨突出部など圧迫を受けやすい部位。
アルギン酸塩海藻由来で、浸出液と反応してゲルを形成。高い吸収力と止血作用。浸出液が非常に多い褥瘡、出血を伴う褥瘡。
ハイドロファイバー浸出液を垂直に吸収し、創周囲の皮膚浸軟を抑制。浸出液が多い褥瘡、ポケットのある褥瘡。
フィルムドレッシング透明で薄く、防水性・防菌性がある。浸出液の少ない創部や皮膚保護に。ステージIの褥瘡、上皮化期の創部、ドレッシング材の固定。
銀含有ドレッシング銀の抗菌作用により、感染リスクを低減。感染が疑われる褥瘡、バイオフィルム形成が懸念される褥瘡。
当院では、患者さまの創部の状態だけでなく、皮膚の脆弱性、アレルギーの有無、交換頻度、さらにはご家族の介護負担なども考慮して、最適なドレッシング材を選定しています。特に、仙骨部にできた褥瘡で「ドレッシング材がすぐに剥がれてしまう」という相談をよく受けます。このようなケースでは、皮膚への刺激が少なく、かつ密着性の高いドレッシング材や、その上から固定するためのテープの選び方についても工夫を凝らしています。

床ずれ治療における経過観察と注意点

床ずれの治療は、一度開始したら終わりではありません。定期的な経過観察と、それに伴う治療計画の見直しが極めて重要です。

経過観察のポイント

  • 創部の状態評価:創部の大きさ、深さ、浸出液の量と性状、壊死組織の有無、肉芽組織や上皮化の状態などを定期的に評価します。写真記録も有効です。
  • 感染の兆候:発赤、腫脹、熱感、疼痛の増強、膿性浸出液、悪臭などの感染兆候がないか注意深く観察します。
  • 全身状態:発熱の有無、栄養状態(体重変化、食事摂取量)、基礎疾患のコントロール状況などを確認します。
  • 周囲皮膚の状態:ドレッシング材による皮膚刺激や浸軟がないか、周囲皮膚の発赤や乾燥がないかを確認します。
これらの評価に基づき、外用薬やドレッシング材の種類、交換頻度、体位変換の計画などを適宜見直します。治療効果が芳しくない場合は、他の治療法(陰圧閉鎖療法など)の検討や、専門医への紹介も視野に入れます。

治療中の注意点

  • 清潔の保持:創部とその周囲を清潔に保つことは、感染予防のために非常に重要です。
  • 過度な刺激の回避:創部を強く擦ったり、刺激の強い消毒薬を使用したりすることは避けるべきです。
  • 栄養管理の徹底:十分な栄養摂取は、褥瘡の治癒に不可欠です。
  • 体位変換の継続:治癒が進んでも、再発予防のためには継続的な除圧が重要です。
診察の中で、患者さまやご家族から「良くなってきたから、少し体位変換をサボってしまった」という声を聞くことがあります。しかし、床ずれは一度治っても、原因となる圧迫が続けば容易に再発してしまうため、油断は禁物です。当院では、治癒後も定期的なフォローアップを行い、再発予防のための生活指導にも力を入れています。

まとめ

床ずれ(褥瘡)の保存的治療は、患者さまの生活の質(QOL)を大きく左右する重要な医療行為です。その治療では、創部の状態を正確に評価し、適切な外用薬とドレッシング材を選択することが不可欠となります。壊死組織の除去、感染の管理、湿潤環境の維持、そして肉芽形成の促進という各段階に応じたケアが求められます。また、局所治療だけでなく、除圧や栄養管理を含む全身管理も治癒には欠かせません。治療は長期にわたることも多く、医療従事者と患者さま、そしてご家族が連携し、継続的な経過観察とケアプランの見直しを行うことが、床ずれの治癒と再発予防への鍵となります。自己判断せず、専門医の指導のもとで適切な治療を進めることが大切です。

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よくある質問(FAQ)

床ずれの治療は自宅でもできますか?
初期の軽度な床ずれであれば、適切な指導のもとで自宅でのケアも可能ですが、進行した床ずれや感染が疑われる場合は、必ず医療機関を受診してください。専門医による診断と治療計画が不可欠です。
ドレッシング材は毎日交換すべきですか?
ドレッシング材の種類や創部の状態によって交換頻度は異なります。一般的に、浸出液が多い場合は頻繁に、ハイドロコロイドなどの一部のドレッシング材は数日に一度の交換で良い場合もあります。必ず医師や看護師の指示に従ってください。
床ずれの予防には何が効果的ですか?
床ずれの予防には、定期的な体位変換、体圧分散寝具の使用、皮膚の清潔保持と保湿、そして十分な栄養摂取が重要です。特に、寝たきりの方や車椅子を利用する方は、これらの予防策を徹底することが推奨されます。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長