床ずれの治療とケア

【床ずれの治療とケア】|皮膚科医が解説する保存的・外科的治療と在宅ケア

床ずれの治療とケア|皮膚科医が解説する保存的・外科的治療と在宅ケア

最終更新日: 2026-05-10
📋 この記事のポイント
  • ✓ 床ずれの保存的治療では、適切な外用薬とドレッシング材の選択が重要です。
  • ✓ 重症化した床ずれには、デブリードマンや植皮術などの外科的治療が検討されます。
  • ✓ 在宅での床ずれケアは予防が最も重要であり、早期の皮膚科受診が治癒を早めます。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

床ずれ(褥瘡)は、体の同じ部位に長時間圧力がかかり続けることで血流が悪くなり、皮膚や皮下組織が損傷する状態を指します。特に寝たきりの方や車椅子を使用されている方に多く見られ、適切な治療とケアが不可欠です。この記事では、床ずれの保存的治療、外科的治療、そして在宅でのケアと皮膚科受診のタイミングについて詳しく解説します。

床ずれの保存的治療(外用薬・ドレッシング材の選び方)とは?

床ずれの保存的治療に用いられる外用薬と様々なドレッシング材の選択肢
床ずれ治療の外用薬とドレッシング材

床ずれの保存的治療は、主に軽度から中等度の床ずれに対して行われる治療法で、手術をせずに外用薬やドレッシング材を用いて創傷の治癒を促進します。この治療の目的は、創部の清潔保持、感染予防、適切な湿潤環境の維持、そして肉芽形成(新しい組織の生成)と上皮化(皮膚の再生)の促進です。

外用薬の種類と選び方

床ずれの治療には、その状態に応じて様々な外用薬が使用されます。主な種類としては、抗菌薬、肉芽形成促進薬、壊死組織融解薬などがあります。例えば、感染が疑われる場合は、細菌の増殖を抑える抗菌薬の軟膏が選択されます。壊死組織がある場合には、その除去を助けるプロテアーゼなどの酵素製剤が用いられることがあります。肉芽形成が不十分な場合は、成長因子を含む軟膏などが検討されることもあります[1]。当院では、患者さまの床ずれの状態を詳細に観察し、細菌培養検査の結果なども踏まえて、最も効果的と考えられる外用薬を慎重に選定しています。特に、緑膿菌感染が疑われるケースでは、適切な抗菌薬を選択することが治療の鍵となります。

ドレッシング材の役割と適切な選択

ドレッシング材は、創部を保護し、治癒に適した湿潤環境を維持するために不可欠です。湿潤環境は、創傷治癒の速度を速め、痛みを軽減し、瘢痕形成を抑える効果が報告されています[2]。ドレッシング材には、ハイドロコロイド、ポリウレタンフォーム、アルギン酸塩、ハイドロファイバーなど多種多様なものがあります。それぞれの素材には、滲出液の吸収能力、粘着性、通気性、クッション性などの特性があり、床ずれの深さ、滲出液の量、感染の有無などによって使い分けが必要です。

湿潤環境療法とは
傷口を乾燥させずに、滲出液を適度に保持することで、自己治癒力を高める治療法です。傷口が乾燥するとかさぶたができ、治癒が遅れる可能性がありますが、湿潤環境では細胞の増殖や移動が促進され、痛みの軽減にもつながります。

例えば、滲出液が多い場合はアルギン酸塩やハイドロファイバーが、比較的乾燥している場合はハイドロコロイドやポリウレタンフォームが適しています。当院の診察では、患者さまの床ずれがジュクジュクしているのか、乾燥しているのか、また周囲の皮膚の状態はどうかを丁寧に確認し、最適なドレッシング材を選定します。治療を始めて数週間で「痛みが和らいだ」「傷がきれいになってきた」とおっしゃる方が多いのは、適切なドレッシング材による湿潤環境の維持が大きく寄与していると実感しています。

外用薬とドレッシング材の比較

項目外用薬ドレッシング材
主な役割創部の治療促進(抗菌、肉芽形成、壊死組織融解など)創部の保護、湿潤環境の維持、滲出液管理
選択基準創部の感染状況、肉芽形成の有無、壊死組織の有無滲出液の量、創部の深さ、感染の有無、周囲皮膚の状態
使用頻度1日1〜数回数日〜1週間に1回交換(製品による)
主な効果治癒の促進、感染の抑制疼痛緩和、治癒促進、感染予防、外部刺激からの保護
⚠️ 注意点

自己判断で外用薬やドレッシング材を選ぶと、かえって症状を悪化させる可能性があります。必ず医師や看護師の指導のもと、適切な製品を使用してください。

床ずれの外科的治療(デブリードマン・植皮術)とは?

床ずれの外科的治療であるデブリードマンと植皮術の手順を示す医療処置
床ずれの外科的治療と手術

床ずれが進行し、保存的治療だけでは治癒が難しい場合や、感染が重篤な場合には、外科的治療が検討されます。外科的治療の主な目的は、壊死組織の除去によって感染源を取り除き、健康な肉芽組織の形成を促し、最終的に創部を閉鎖することです。

デブリードマン(壊死組織除去術)

デブリードマンとは、床ずれの創部に存在する壊死した組織や感染した組織を取り除く手術です。壊死組織は細菌の温床となり、創傷治癒を妨げるだけでなく、全身感染症のリスクを高めます。デブリードマンには、メスやハサミを用いた外科的デブリードマン、酵素製剤を用いた化学的デブリードマン、自家融解を促すドレッシング材を用いた生物学的デブリードマンなどがあります。特に重度の床ずれでは、外科的デブリードマンが最も迅速かつ効果的に壊死組織を除去できる方法とされています[3]。当院では、壊死組織の範囲や深さ、患者さまの全身状態を考慮し、最適なデブリードマンの方法を提案しています。壊死組織が広範囲に及ぶケースでは、手術室での処置が必要となることもあります。

植皮術(皮膚移植術)

デブリードマンによって創部が清潔になり、健康な肉芽組織が形成された後、大きな創部を閉鎖するために植皮術が検討されます。植皮術とは、患者さま自身の健康な皮膚の一部(ドナーサイト)を採取し、床ずれの創部(レシピエントサイト)に移植する手術です。これにより、創部の閉鎖を早め、感染のリスクを低減し、機能回復を促すことが期待できます。

  • 分層植皮術: 皮膚の表皮と真皮の一部を採取する方法で、比較的広範囲の創部に対応できます。ドナーサイトの治癒が早く、瘢痕も目立ちにくい傾向があります。
  • 全層植皮術: 皮膚の表皮と真皮の全てを採取する方法で、より厚みのある皮膚を移植できます。顔面や関節部など、機能性や美容性が重視される部位に用いられることが多いですが、ドナーサイトの治癒に時間がかかり、瘢痕が残りやすいという特徴があります。

植皮術の成功には、レシピエントサイトの良好な血流と感染のない状態が不可欠です。当院では、植皮術を検討する患者さまに対して、術前の栄養状態の改善や感染コントロールを徹底しています。以前、「大きな床ずれがいつになったら閉じるのか不安で…」と相談された患者さまが、植皮術後に「こんなに早く傷が塞がるとは思わなかった」と大変喜んでくださったケースをよく経験します。術後の適切な圧迫管理やリハビリテーションも、植皮片の生着と機能回復には欠かせない要素です。

外科的治療の適応と注意点

外科的治療は、保存的治療で効果が見られない場合や、以下のような状況で検討されます。

  • 広範囲にわたる壊死組織が存在し、感染のリスクが高い場合
  • 骨や関節にまで及ぶ深い床ずれの場合
  • 重度の感染症(敗血症など)を合併している場合
  • 保存的治療では治癒に長期間を要すると予測される場合

外科的治療は全身麻酔を伴うことが多く、患者さまの全身状態(心臓病、糖尿病などの合併症)を十分に評価し、手術のリスクとメリットを慎重に検討する必要があります。術後も、再発予防のための体位変換や栄養管理、リハビリテーションが非常に重要です。

在宅での床ずれケアと皮膚科受診のタイミングとは?

在宅での床ずれケアは、発生予防が最も重要であり、もし床ずれができてしまった場合には、早期発見と適切な処置、そして専門医への適切なタイミングでの受診が治癒を大きく左右します。

在宅での床ずれ予防と日常ケア

床ずれの予防は、在宅ケアの最も重要な柱です。以下の点に注意して日常ケアを行いましょう。

  • 体位変換: 最も基本的な予防策です。寝たきりの場合は2時間ごと、車椅子に座っている場合は1時間ごとに体位変換を行い、圧力が集中する部位を変えることが重要です。体位変換の際には、皮膚を摩擦しないように注意し、ゆっくりと動かすようにしましょう。
  • 皮膚の清潔と保湿: 排泄物による汚染は皮膚のバリア機能を低下させ、床ずれのリスクを高めます。排泄後は速やかに清潔にし、乾燥を防ぐために保湿剤を使用しましょう。ただし、過度な摩擦は避けてください。
  • 栄養管理: 十分なタンパク質、ビタミン、ミネラルを摂取することは、皮膚の健康を保ち、創傷治癒を促進するために不可欠です。特に高齢者では低栄養になりやすいため、バランスの取れた食事を心がけ、必要に応じて栄養補助食品の活用も検討します。
  • 除圧用具の活用: エアーマットレスやクッションなど、体圧を分散させるための用具を適切に活用しましょう。これらの用具は、特定の部位への圧力を軽減し、床ずれの発生リスクを大幅に低下させます。

当院では、初診時に「家族が床ずれで困っているが、どうすれば良いかわからない」と相談される患者さまも少なくありません。その際、問診の際に患者さまの生活習慣や介護状況を詳しく伺い、体位変換の方法や除圧用具の選び方、栄養指導など、具体的な在宅ケアのアドバイスを行うようにしています。介護者の方々が無理なく継続できるケアプランを一緒に考えることが、予防と早期治癒には不可欠です。

皮膚科受診のタイミングと重要性

床ずれは進行すると治療が難しくなるため、早期の皮膚科受診が非常に重要です。以下のような症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 皮膚が赤くなり、指で押しても色が消えない(発赤が持続する)
  • 水ぶくれができている
  • 皮膚にただれや潰瘍ができている
  • 創部から悪臭がする、膿が出ている
  • 発熱や全身倦怠感など、全身症状がある

これらの症状は、床ずれが進行しているサインや感染の兆候である可能性があります。特に、発赤が持続する段階(Ⅰ度褥瘡)で受診できれば、適切な処置により悪化を防ぎ、比較的短期間での治癒が期待できます。当院では、オンライン診療も活用し、患者さまやご家族が来院しにくい場合でも、早期に専門的なアドバイスを受けられる体制を整えています。診察の中で、床ずれのステージを正確に評価し、その状態に応じた治療計画を立てることが、治癒への近道であると実感しています。

医療連携の重要性

床ずれの治療とケアは、医師だけでなく、看護師、理学療法士、栄養士、ケアマネージャーなど、多職種連携が非常に重要です。在宅で療養されている患者さまの場合、訪問看護師による定期的な創部処置や、ケアマネージャーを通じた介護サービスの調整が不可欠となります。当院では、地域の医療機関や介護施設と密に連携し、患者さまが安心して在宅での療養を続けられるようサポートしています。連携を通じて、治療効果の具体的な描写として、「訪問看護師さんから『傷の周りの赤みが引いてきた』と報告を受け、治療の方向性が正しいことを再確認できる」といったフィードバックを得ることも多く、チーム全体で患者さまのQOL向上を目指しています。

まとめ

床ずれの治療とケアの全体像を示す複数の医療器具と患者への配慮
床ずれの治療とケアの全体像

床ずれの治療とケアは、患者さまの生活の質(QOL)に直結する重要な課題です。保存的治療では、適切な外用薬とドレッシング材の選択が治癒を促進し、湿潤環境を維持することが鍵となります。重症化した床ずれに対しては、デブリードマンや植皮術といった外科的治療が有効な選択肢となり得ます。そして、在宅でのケアにおいては、体位変換、皮膚の清潔と保湿、栄養管理、除圧用具の活用による予防が最も重要です。床ずれの兆候が見られた場合は、進行を防ぎ、早期に治癒させるためにも、速やかに皮膚科専門医を受診することが推奨されます。医療機関と介護者が連携し、患者さま一人ひとりに合わせた最適な治療とケアを提供することで、床ずれによる苦痛を軽減し、より快適な生活を送ることに貢献できるでしょう。

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よくある質問(FAQ)

床ずれの初期症状はどのようなものですか?
床ずれの初期症状としては、体の骨が出ている部分(仙骨部、かかと、くるぶしなど)に、指で押しても赤みが消えない持続性の発赤が見られることが多いです。痛みや熱感を伴うこともあります。この段階で早期に発見し、適切なケアを開始することが非常に重要です。
在宅で床ずれをケアする際に、家族が注意すべき点は何ですか?
ご家族が在宅で床ずれをケアする際には、まず定期的な体位変換(2時間ごとが目安)を徹底し、圧力が集中する部位を分散させることが重要です。また、皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐための保湿ケアも欠かせません。栄養状態の維持も大切ですので、バランスの取れた食事を心がけましょう。少しでも症状が悪化したり、感染の兆候が見られたりした場合は、速やかに医療機関を受診してください。
床ずれの治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
床ずれの治癒期間は、その重症度、患者さまの全身状態(栄養状態、基礎疾患など)、適切なケアが継続できるかによって大きく異なります。軽度の床ずれであれば数週間で改善が見られることもありますが、深い床ずれや感染を伴う場合は数ヶ月から年単位の治療が必要となることもあります。早期発見と継続的な適切な治療・ケアが治癒期間を短縮する鍵となります。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長