- ✓ 薬剤のベース剤(クリーム、ローションなど)は、有効成分の皮膚への浸透性や使用感に大きく影響します。
- ✓ クリームは保湿力が高く、乾燥肌や広範囲の塗布に適していますが、ローションはべたつきにくく、頭皮など有毛部に使いやすい特性があります。
- ✓ 患者さまの肌質、治療部位、生活習慣を考慮し、最適なベース剤を選択することが治療効果の最大化と継続につながります。
ベース剤とは?なぜ重要なのでしょうか?

外用薬のベース剤とは、有効成分を皮膚に届けるための媒体となる部分を指します。有効成分そのものだけでなく、このベース剤が皮膚への浸透性、使用感、安定性、そして治療効果に大きく影響するため、適切な選択が非常に重要です。
外用薬は、有効成分を皮膚の患部に直接作用させることで、全身的な副作用を抑えつつ効果を発揮することを目指します。しかし、皮膚にはバリア機能があるため、有効成分が皮膚の表面から目的の層まで到達するには、ベース剤の物理化学的特性が大きく関わってきます[2]。例えば、親油性の高い成分は油性のベース剤に溶けやすく、皮膚の脂質層を通過しやすい傾向があります。当院では、患者さまの症状だけでなく、肌の乾燥具合や敏感さ、アレルギー歴なども考慮してベース剤を選定するようにしています。
- ベース剤(基剤)
- 外用薬において、有効成分を溶解・分散させ、皮膚に塗布するための媒体となる部分。薬の浸透性、安定性、使用感、保湿性などを決定する重要な要素です。
ベース剤の主な種類と特性
外用薬のベース剤には、主に以下のような種類があります。それぞれの特性を理解することが、適切な選択につながります。
- 軟膏(Ointment):油性成分が主体の半固形製剤で、最も保湿力が高く、皮膚を保護する作用に優れています。刺激が少なく、皮膚の乾燥がひどい場合や、保護が必要な病変に適しています。べたつきが気になることがあります。
- クリーム(Cream):油性成分と水性成分が乳化された半固形製剤で、軟膏よりべたつきが少なく、伸びが良いのが特徴です。保湿力も適度にあり、広範囲に塗布しやすいです。
- ローション(Lotion):水性成分を多く含む液状製剤で、さらっとしており、べたつきが少ないのが特徴です。頭皮など有毛部や、広範囲にわたる病変、湿潤性の皮膚炎などに適しています。アルコールを含むものは乾燥を招くことがあるため注意が必要です。
- ゲル(Gel):高分子ポリマーを水に分散させた半固形製剤で、透明でべたつきが少なく、速乾性があります。清涼感があり、にきび治療薬などに用いられることがあります。
- フォーム(Foam):泡状の製剤で、塗布しやすく、頭皮など有毛部に特に適しています。
クリームとローション、それぞれの特徴とメリット・デメリットは?
外用薬のベース剤として特に広く用いられるクリームとローションには、それぞれ明確な特徴とメリット・デメリットがあります。これらを理解することで、患者さまご自身も治療薬をより効果的に、そして快適に使用できるようになります。
クリームの特徴とメリット・デメリット
クリームは、水と油が乳化して作られた半固形の製剤です。軟膏と比較してべたつきが少なく、伸びが良いのが特徴です。多くの有効成分がクリーム製剤として提供されており、幅広い皮膚疾患に用いられます。
- メリット:
- 保湿効果が高い: 適度な油分を含むため、皮膚の水分蒸散を防ぎ、保湿効果が期待できます。特に乾燥性の皮膚炎やアトピー性皮膚炎の患者さまには有効です。
- 伸びが良い: 比較的広範囲に均一に塗布しやすく、使用感が良いと感じる方が多いです。
- 浸透性: 有効成分の種類にもよりますが、皮膚への浸透性も良好であることが多いです[1]。
- デメリット:
- べたつき: ローションに比べると、ややべたつきを感じることがあります。
- 刺激: 乳化剤や防腐剤などが含まれることがあり、敏感肌の患者さまには刺激となる可能性もゼロではありません。
当院では、特に乾燥肌で広範囲に炎症がある患者さまにはクリームを処方することが多いです。「塗った後もカサカサしないので助かります」とおっしゃる方が多く、保湿と治療を両立できる点が好評です。
ローションの特徴とメリット・デメリット
ローションは、水性成分が主体で、さらっとした液状または乳液状の製剤です。皮膚に塗布するとすぐに乾き、べたつきが少ないのが最大の特徴です。
- メリット:
- べたつきが少ない: 塗布後の不快感が少なく、日常生活に支障が出にくいです。特に夏場や汗をかきやすい方には好まれます。
- 頭皮など有毛部に適している: 液状であるため、髪の毛に絡みにくく、頭皮や体毛の多い部位にも容易に塗布できます。
- 広範囲に塗布しやすい: 液状で伸びが非常に良いため、全身など広範囲の病変にも効率的に塗布できます。
- デメリット:
- 保湿力が低い: 油分が少ないため、乾燥肌には保湿力が不足することがあります。アルコールを含むものは、かえって皮膚を乾燥させる可能性もあります。
- 浸透性: 成分によっては、クリームや軟膏と比較して皮膚への浸透性が劣る場合があります[2]。
頭皮の脂漏性皮膚炎や、背中などの広範囲にわたるニキビ治療では、ローションを第一選択とすることがよくあります。患者さまからは「髪がべたつかないので、朝でも使いやすい」といった声を聞くことが多いです。
| 項目 | クリーム | ローション |
|---|---|---|
| 主な構成 | 水と油の乳化製剤 | 水性成分主体 |
| 使用感 | 伸びが良い、ややべたつき | さらっとしている、べたつきにくい |
| 保湿力 | 高い | 低い(乾燥を招く可能性も) |
| 適した部位 | 顔、体幹、四肢(乾燥部位) | 頭皮、有毛部、広範囲、湿潤部位 |
| 主な用途 | 乾燥性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹 | 脂漏性皮膚炎、ニキビ、虫刺され、痒み止め |
有効成分の浸透性への影響は?

ベース剤の種類は、有効成分が皮膚にどれだけ浸透し、作用するかという点に大きく影響します。皮膚は外部からの異物の侵入を防ぐバリア機能を持つため、有効成分がこのバリアを乗り越えて目的の部位に到達するには、ベース剤の工夫が不可欠です。
一般的に、油性の強いベース剤(軟膏など)は、皮膚の脂質層との親和性が高く、有効成分を皮膚深部へ浸透させやすい傾向があります。これは、皮膚の角質層が脂質を多く含むためです。一方で、水性の強いベース剤(ローションなど)は、皮膚表面に留まりやすく、速やかに蒸発するため、皮膚深部への浸透は油性のベース剤に比べて劣ることがあります。しかし、特定の有効成分は水溶性であるため、水性のベース剤の方が安定して配合でき、皮膚表面での効果を発揮しやすいケースもあります[3]。
当院では、同じ有効成分でも、患者さまの症状や治療目標に応じて、より浸透性を高める必要がある場合はクリームや軟膏を、広範囲にわたる塗布や清涼感を重視する場合はローションを使い分けるようにしています。例えば、乾癬の治療では、角質が厚くなっている部位には浸透性の高い軟膏を、頭皮にはローションを処方するなど、部位や病態に合わせた選択が重要です。
市販薬の中には、同じ有効成分でも異なるベース剤で提供されているものがあります。自己判断で選択せず、薬剤師や医師に相談し、ご自身の肌質や症状に合ったものを選ぶようにしましょう。
患者さまの肌質や生活習慣、治療部位はどのように考慮すべきですか?
外用薬のベース剤を選択する際には、有効成分の特性だけでなく、患者さま一人ひとりの肌質、治療部位、そして日常生活での使用状況を総合的に考慮することが非常に重要です。これらを無視して選択すると、治療効果が十分に得られないだけでなく、患者さまの治療継続意欲が低下してしまうこともあります。
肌質とベース剤の選び方
- 乾燥肌: 保湿力が高いクリームや軟膏が適しています。特に冬場やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している場合は、軟膏でしっかり保護することが推奨されます。
- 脂性肌(オイリー肌): べたつきの少ないローションやゲルが好まれます。クリームや軟膏は毛穴を詰まらせたり、べたつきによる不快感で治療が中断される可能性があります。
- 敏感肌: 刺激の少ない軟膏が第一選択となることが多いです。クリームやローションに含まれる乳化剤や防腐剤、アルコールなどが刺激となることがあるため、成分をよく確認する必要があります。
初診時に「以前使っていた薬はべたついて続けられなかった」と相談される患者さまも少なくありません。問診の際には、肌質だけでなく、普段使っているスキンケア用品や化粧品についても詳しく伺うようにしています。これにより、患者さまが抵抗なく治療を継続できるベース剤を提案することが可能になります。
治療部位と生活習慣
- 頭皮や有毛部: ローションやフォームが適しています。クリームや軟膏は髪の毛に絡みつき、べたつきや不快感を引き起こしやすいため不向きです。
- 顔面: べたつきが少なく、化粧の邪魔にならないクリームやゲルが選ばれることが多いです。特に敏感な部位なので、刺激の少ないものを選びます。
- 関節部や摩擦の多い部位: 軟膏やクリームでしっかり保護し、外部からの刺激から守ることが重要です。
- 生活習慣: 日中活動する方や仕事で手を頻繁に使う方には、べたつきの少ないローションやゲルが好まれます。夜間は保湿力の高いクリームや軟膏を使用するなど、時間帯によって使い分けることも有効です。
実際の診療では、「仕事中に塗っても気にならないものが良い」「寝る前にしっかり保湿したい」といった患者さまの声を聞きながら、最適なベース剤を一緒に検討します。例えば、手荒れのひどい患者さまには、日中はべたつかないローション、夜間は保護力の高い軟膏を処方し、手袋をして寝ることを勧めるなど、患者さまのライフスタイルに合わせた提案を心がけています。
オンライン診療でのベース剤選択プロセスは?

オンライン診療においても、対面診療と同様に、患者さまにとって最適な外用薬のベース剤を選択することが重要です。しかし、直接皮膚の状態を視診できないため、より詳細な問診と患者さまからの情報提供が不可欠となります。
オンライン診療における問診のポイント
当院のオンライン診療では、ベース剤の選択にあたり、以下の点を特に重視して問診を行います。
- 現在の症状の詳細: 患部の状態(乾燥、湿潤、かゆみ、赤み、厚みなど)、発症時期、悪化因子などを詳しく伺います。
- 既往歴・アレルギー歴: 過去に皮膚疾患の治療経験があるか、特定の成分でアレルギー反応が出たことがあるかを確認します。
- 肌質: 「普段、肌は乾燥しやすいですか、それともべたつきやすいですか?」「敏感肌ですか?」といった具体的な質問で肌質を把握します。
- 治療部位: 患部が頭皮、顔、体幹、手足など、どの部位にあるかを確認します。
- 生活習慣: 職業、入浴回数、運動習慣、汗をかく頻度、塗布する時間帯(朝、夜など)、塗布後の衣服の着用など、日常生活での塗布状況を想定します。
- 使用感の希望: 「べたつかない方が良い」「しっかり保湿したい」など、患者さまの使用感に関する希望を直接伺います。
オンライン診療では、患者さまに患部の写真を送っていただくこともあります。これにより、視覚的な情報も加味してより正確な判断を下すことが可能になります。しかし、写真だけでは質感や浸潤の程度が分かりにくいため、患者さまの言葉による詳細な説明が非常に重要になります。
処方後のフォローアップ
オンライン診療で外用薬を処方した後も、ベース剤の選択が適切であったかを確認するためのフォローアップは欠かせません。当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして何よりも「使用感に不満はないか」を重点的に確認するようにしています。
もし使用感に不満がある場合、例えば「クリームがべたついて日中使いにくい」といった声があれば、有効成分は同じでもローションタイプに変更するなど、柔軟に対応します。治療効果は、患者さまが薬を継続して使用できて初めて得られるものです。患者さまが快適に治療を続けられるよう、きめ細やかな対応を心がけています。
まとめ
外用薬のベース剤選択は、単なる好みだけでなく、有効成分の皮膚への浸透性、保湿効果、使用感、そして患者さまの治療継続意欲に大きく影響する重要な医療判断です。クリームは保湿力が高く広範囲に塗布しやすい一方、ローションはべたつきが少なく、頭皮など有毛部に適しています。患者さまの肌質、治療部位、生活習慣を総合的に評価し、最適なベース剤を選択することが、治療効果を最大化し、快適な治療を継続するための鍵となります。オンライン診療においても、詳細な問診と丁寧なフォローアップを通じて、患者さま一人ひとりに合わせた最適なベース剤の提案を心がけています。
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よくある質問(FAQ)
- Muhammad Z U Khan, Shujaat A Khan, Muhammad Ubaid et al.. Finasteride Topical Delivery Systems for Androgenetic Alopecia.. Current drug delivery. 2018. PMID: 29366416. DOI: 10.2174/1567201815666180124112905
- Boni E Elewski. Percutaneous absorption kinetics of topical metronidazole formulations in vitro in the human cadaver skin model.. Advances in therapy. 2007. PMID: 17565913. DOI: 10.1007/BF02849891
- Kiran S Avadhani, Jyothsna Manikkath, Mradul Tiwari et al.. Skin delivery of epigallocatechin-3-gallate (EGCG) and hyaluronic acid loaded nano-transfersomes for antioxidant and anti-aging effects in UV radiation induced skin damage.. Drug delivery. 2017. PMID: 28155509. DOI: 10.1080/10717544.2016.1228718
