- ✓ ニキビ・肌荒れ治療における漢方薬は、体の内側からバランスを整えるアプローチです。
- ✓ 十味敗毒湯は化膿性ニキビや湿疹に、清上防風湯は赤みや炎症を伴うニキビに特に有効とされています。
- ✓ 漢方薬の選択と服用は専門医の診断が不可欠であり、体質や症状に合わせたオーダーメイド治療が重要です。
ニキビ・肌荒れに漢方薬は有効ですか?

ニキビや肌荒れは、皮膚の表面的な問題だけでなく、体の内側のバランスの乱れが原因で起こることが少なくありません。漢方薬は、この内側のバランスを整えることで、根本的な改善を目指す治療法として注目されています。実際に、伝統的な漢方医学はニキビ治療に用いられてきた歴史があり、その有効性に関する研究も進められています[1]。
当院では、西洋医学的な治療と並行して、漢方薬を希望される患者さまも多くいらっしゃいます。特に、抗生物質や外用薬だけでは改善が見られない方、体質改善を望む方には、漢方薬が有効な選択肢となるケースをよく経験します。問診の際に患者さまの生活習慣や体質、ニキビ以外の症状(例えば冷え性や便秘など)を詳しく伺うようにしており、それらが漢方薬の選定に大きく影響します。
漢方医学におけるニキビの考え方とは?
漢方医学では、ニキビを単なる皮膚疾患として捉えるのではなく、全身の不調のサインと考えます。例えば、「熱(ねつ)」が体内にこもることで炎症性のニキビが発生したり、「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血流の滞りがニキビの慢性化や色素沈着を引き起こしたりすると考えられています。また、消化器系の不調やストレス、ホルモンバランスの乱れなどもニキビの原因として重視されます[4]。
西洋医学的なアプローチがニキビ菌の抑制や皮脂分泌のコントロールに重点を置くのに対し、漢方医学は個々の体質や症状に合わせて、体全体のバランスを調整することで、ニキビができにくい体質へと導くことを目指します。このため、漢方薬の選択には、患者さま一人ひとりの「証(しょう)」と呼ばれる体質診断が不可欠です。
- 証(しょう)
- 漢方医学における体質や病状の類型を指す言葉です。患者さまの体格、体力、症状、既往歴、生活習慣などを総合的に判断し、適切な漢方薬を選択するための重要な指標となります。
ニキビ・肌荒れに用いられる代表的な漢方薬:十味敗毒湯
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、化膿性のニキビや湿疹、皮膚炎など、炎症を伴う皮膚疾患に広く用いられる漢方薬です。江戸時代の名医、華岡青洲によって創られた処方であり、皮膚の「毒」を排出する作用があるとされています[5]。
この漢方薬は、炎症を鎮め、膿を排出する効果が期待できます。特に、赤く腫れて痛みがあるニキビや、膿を持っているニキビに効果を発揮することが多く、当院でも「膿を持ったニキビが早く引いた」「赤みが落ち着いてきた」とおっしゃる方が多いです。化膿性のニキビで悩む患者さまに対して、抗生物質の内服と併用することで、より効果的な改善が見られるケースもあります。
十味敗毒湯の構成生薬と作用機序
十味敗毒湯は、以下の10種類の生薬から構成されています[5]。
- 柴胡(サイコ):炎症を鎮め、解熱作用があります。
- 桔梗(キキョウ):排膿作用があり、化膿した患部の膿を出すのを助けます。
- 川芎(センキュウ):血行を促進し、炎症性物質の排出を助けます。
- 独活(ドクカツ):鎮痛作用や抗炎症作用があります。
- 防風(ボウフウ):発汗を促し、体表の邪気を発散させます。
- 茯苓(ブクリョウ):利水作用があり、余分な水分を排出します。
- 荊芥(ケイガイ):解表作用があり、体表の熱を冷まします。
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の調和を図り、抗炎症作用も持ちます。
- 桜皮(オウヒ):炎症を鎮め、皮膚の回復を助けます。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、消化器系の働きを助けます。
これらの生薬が複合的に作用することで、皮膚の炎症を抑え、膿を排出し、体全体の免疫力を高めることで、ニキビの改善を促します。特に、桔梗や桜皮は皮膚の炎症に対する効果が期待されており、化膿性のニキビに対して良い適応となります。
ニキビ・肌荒れに用いられる代表的な漢方薬:清上防風湯

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)は、顔や上半身にできる赤く炎症を伴うニキビ、特に思春期ニキビや脂性肌の方に多く用いられる漢方薬です。顔の「熱」を冷まし、炎症を鎮める作用があるとされています[6]。当院では、赤ニキビやニキビ跡の赤みに悩む患者さまから「顔のほてりが楽になった」「赤みが引いてきた」といった声を聞くことが多く、特に顔のニキビに特化した効果を実感しています。
清上防風湯の構成生薬と作用機序
清上防風湯は、以下の12種類の生薬から構成されています[6]。
- 黄芩(オウゴン):清熱解毒作用があり、炎症を抑えます。
- 黄連(オウレン):強力な清熱解毒作用で、特に顔面の熱を冷まします。
- 黄柏(オウバク):清熱燥湿作用があり、炎症と湿気を抑えます。
- 山梔子(サンシシ):清熱瀉火作用があり、体の熱を取り除きます。
- 連翹(レンギョウ):清熱解毒作用があり、炎症や腫れを抑えます。
- 薄荷(ハッカ):清熱作用があり、頭部や顔面の熱感を和らげます。
- 桔梗(キキョウ):排膿作用があり、炎症部位の膿を排出します。
- 防風(ボウフウ):発汗を促し、体表の邪気を発散させます。
- 川芎(センキュウ):血行を促進し、炎症性物質の排出を助けます。
- 白芷(ビャクシ):消炎・鎮痛作用があり、皮膚の炎症を和らげます。
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の調和を図り、抗炎症作用も持ちます。
- 大黄(ダイオウ):瀉下作用があり、便通を整え、体内の熱を排出します。
清上防風湯は、特に「清熱(せいねつ)」作用を持つ生薬が多く配合されており、顔に集まった熱を取り除き、炎症を鎮めることに特化しています。これにより、赤みや腫れを伴うニキビの改善が期待できます。また、大黄が含まれているため、便秘傾向のある方にも適応となることがあります。
十味敗毒湯と清上防風湯、どちらを選ぶべきですか?
ニキビや肌荒れに対する漢方薬の選択は、患者さまの体質や症状の具体的な状態によって異なります。十味敗毒湯と清上防風湯は、どちらもニキビに用いられる代表的な漢方薬ですが、それぞれ適応となる症状や体質に違いがあります。
| 項目 | 十味敗毒湯 | 清上防風湯 |
|---|---|---|
| 主な適応症状 | 化膿性ニキビ、湿疹、皮膚炎、赤みと腫れを伴うニキビ | 顔や上半身の赤く炎症を伴うニキビ(赤ニキビ)、脂性肌、顔のほてり |
| 体質(証) | 比較的体力があり、皮膚に熱感や腫れ、化膿傾向がある方 | 比較的体力があり、顔面が赤く、のぼせやすい、脂っぽい肌の方 |
| 作用の特徴 | 排膿、抗炎症、解毒 | 清熱(顔の熱を冷ます)、抗炎症、皮脂分泌抑制 |
| 含まれる生薬の特徴 | 桔梗、桜皮など排膿・解毒作用が強い | 黄芩、黄連、山梔子など清熱作用が強い |
当院の診療では、患者さまのニキビの状態を細かく観察し、問診で生活習慣や体質を詳しく伺うことで、どちらの漢方薬がより適しているかを判断します。例えば、膿を伴う大きなニキビが中心であれば十味敗毒湯を、顔全体に赤みのあるニキビが広がり、顔のほてりを訴える方には清上防風湯を検討することが多いです。また、便秘がちな方には大黄を含む清上防風湯が便通改善にも寄与する可能性があります。
自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師にご相談ください。漢方薬は体質に合わない場合、効果が期待できないだけでなく、副作用のリスクもあります。
漢方薬治療の注意点と副作用は何ですか?
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。体質に合わない場合や、過剰に服用した場合、以下のような副作用が現れることがあります。
- 胃腸症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。
- 皮膚症状:発疹、かゆみなど。
- 肝機能障害:まれに、肝機能の数値が悪化することがあります。
- 偽アルドステロン症:甘草を多く含む漢方薬で、むくみや血圧上昇、脱力感などが現れることがあります。
当院では、漢方薬を処方する際には、これらの副作用について十分に説明し、服用後のフォローアップを重視しています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。特に、胃腸症状は比較的起こりやすいため、服用開始後に何か異変を感じたらすぐに相談していただくようお伝えしています。
漢方薬は、他の薬剤やサプリメントとの飲み合わせによって、効果が強まったり弱まったり、あるいは副作用のリスクが高まることがあります。現在服用中の薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。また、妊娠中や授乳中の方、持病をお持ちの方も、服用前に必ず相談が必要です。
漢方薬と西洋薬の併用は可能ですか?

ニキビ治療において、漢方薬と西洋薬の併用は有効なアプローチとなることがあります。西洋薬が即効性や特定の症状への対処に優れる一方、漢方薬は体質改善や根本的な治療を目指すため、両者を組み合わせることでより高い治療効果が期待できる場合があります。実際に、ニキビ治療における伝統的な漢方薬の有効性は、様々な研究で示されており、西洋医学的治療との併用も検討されています[2][3]。
当院では、重症のニキビに対しては、まず西洋薬で炎症を速やかに抑え、その後、漢方薬を導入して体質改善を図るケースや、軽症〜中等症のニキビで西洋薬の副作用が気になる方、あるいはより根本的な体質改善を希望される方に漢方薬を提案することがあります。特に、漢方薬は長期的な服用で効果を発揮することが多いため、西洋薬で初期の症状をコントロールしつつ、漢方薬でニキビができにくい肌を目指すという治療計画を立てることも可能です。
ただし、漢方薬と西洋薬の併用は、医師の専門的な判断が必要です。相互作用や副作用のリスクを考慮し、個々の患者さまに最適な治療計画を立てることが重要になります。自己判断で併用することは避け、必ず医師に相談してください。
渋谷でニキビ・肌荒れの漢方治療を受けるには?
渋谷エリアでニキビや肌荒れの漢方治療を検討されている方は、皮膚科や美容皮膚科、あるいは漢方専門医を受診することをおすすめします。漢方薬は、患者さま一人ひとりの体質や症状、生活習慣などを総合的に判断して処方されるオーダーメイド治療が基本となるため、専門医による丁寧な問診と診断が不可欠です。
当院では、初診時に患者さまのニキビの状態だけでなく、肌質、生活習慣、ストレス、睡眠、食事内容、生理周期など、多岐にわたる情報を詳しく伺います。これは、漢方医学における「証」を正確に判断し、最も効果的な漢方薬を選定するために非常に重要なプロセスです。例えば、問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしており、遺伝的な要素や体質的な傾向も考慮に入れます。
また、当院ではオンライン診療も実施しており、遠方にお住まいの方や、忙しくて来院が難しい方でも、自宅からニキビの漢方治療に関する相談が可能です。オンライン診療では、ビデオ通話を通じて顔色や舌の状態などを確認し、詳細な問診を行うことで、対面診療に近い質の高い診断を心がけています。処方された漢方薬はご自宅へ郵送されるため、継続的な治療もスムーズに行えます。
ニキビや肌荒れは、見た目の問題だけでなく、精神的な負担も大きいものです。一人で悩まず、ぜひ専門医にご相談ください。あなたの体質に合った漢方薬を見つけることで、ニキビのできにくい健康な肌を目指しましょう。
まとめ
ニキビや肌荒れに対する漢方薬治療は、体の内側からバランスを整え、根本的な改善を目指す有効なアプローチです。十味敗毒湯は化膿性ニキビや湿疹に、清上防風湯は顔の赤みや炎症を伴うニキビに特に適応があります。漢方薬の選択には、個々の体質や症状に応じた「証」の診断が不可欠であり、専門医による丁寧な問診と診断が重要です。副作用のリスクも考慮し、医師の指導のもとで適切に服用することで、西洋薬との併用も含め、より効果的なニキビ治療が期待できます。渋谷エリアで漢方治療を検討される方は、専門医に相談し、ご自身の体質に合った治療法を見つけることが大切です。
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よくある質問(FAQ)
- Jie Gong, Jiahao Zhang, Yuan Li et al.. Traditional Chinese medicine in acne treatment: From classical formulas to bioactive phytoconstituents and mechanisms.. Journal of ethnopharmacology. 2026. PMID: 42061568. DOI: 10.1016/j.jep.2026.121786
- Adone Baroni, Eleonora Ruocco, Teresa Russo et al.. The use of traditional Chinese medicine in some dermatologic diseases: Part I–Acne, psoriasis, and atopic dermatitis.. Skinmed. 2015. PMID: 25842471
- Yina Sheng, Xiuwen Zheng, Jiaming Xu. Anti-acne mechanisms of Yuqingyan, a novel multi-herbal formula derived from traditional Chinese medicine.. Journal of ethnopharmacology. 2025. PMID: 41349703. DOI: 10.1016/j.jep.2025.121002
- M P M Law, A A T Chuh, N Molinari et al.. An investigation of the association between diet and occurrence of acne: a rational approach from a traditional Chinese medicine perspective.. Clinical and experimental dermatology. 2010. PMID: 19549242. DOI: 10.1111/j.1365-2230.2009.03360.x
- 十味敗毒湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- 清上防風湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
