茵蔯五苓散の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 茵蔯五苓散は、黄疸や口渇を伴う急性胃腸炎、浮腫、二日酔いなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 水分代謝を調整し、炎症を鎮める作用が期待できます。
- ✓ 比較的安全性の高い薬ですが、まれに肝機能障害や偽アルドステロン症などの副作用に注意が必要です。
茵蔯五苓散(インチンゴレイサン)とは?

茵蔯五苓散は、漢方医学における「利水剤」の一つであり、体内の水分バランスを調整し、余分な水分や湿気を排出することで様々な症状の改善を目指す漢方薬です。特に、口渇がありながら尿量が少ない、あるいは浮腫を伴うような病態に用いられます。構成生薬は、インチンコウ、タクシャ、チョレイ、ブクリョウ、ビャクジュツ、ケイヒの6種類です。これらの生薬が協力し合うことで、水分代謝の促進、利尿作用、そして炎症抑制作用を発揮すると考えられています[5]。
当院の皮膚科外来では、湿疹や皮膚炎で浮腫を伴う患者さまや、じんましんで体内の水分バランスの乱れが疑われる方に対して、補助的に茵蔯五苓散を処方することがあります。特に、湿度の高い季節に症状が悪化する方や、胃腸の調子を崩しやすい方から「体が重だるい」「むくみが気になる」といった相談を受けることが多いです。
- 利水剤(りすいざい)
- 漢方医学において、体内の余分な水分を排出し、水分代謝を改善する作用を持つ生薬や処方の総称です。浮腫や下痢、めまいなどの「水滞(すいたい)」と呼ばれる病態に用いられます。
茵蔯五苓散はどのような症状に効果が期待できる?
茵蔯五苓散は、主に体内の水分代謝異常によって引き起こされる様々な症状に効果が期待されます。添付文書に記載されている効能・効果は「口渇、尿量減少を伴う急性胃腸炎、暑気あたり、むくみ」です[5]。具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
急性胃腸炎や暑気あたりによる症状への効果
口が渇くにもかかわらず尿量が少ない、あるいは嘔吐や下痢を伴う急性胃腸炎や、夏の暑さによる体調不良(暑気あたり)に用いられます。茵蔯五苓散は、消化器系の水分バランスを整えることで、これらの症状の緩和を助けます。特に、飲食物を摂ってもすぐに吐いてしまう、あるいは下痢が止まらないといった場合に、体内の水分を適切に保持しつつ、余分な湿気を排出する作用が期待されます。
むくみ(浮腫)への効果
全身や顔、手足のむくみにも効果が期待されます。体内の余分な水分を尿として排出することで、浮腫の軽減に寄与します。当院では、特に腎機能に問題がなく、体質的にむくみやすいとおっしゃる患者さまに、生活習慣の改善と併せて処方することがあります。実際の診察では、患者さまから「夕方になると足がパンパンになる」「顔がむくみやすい」と質問されることがよくあります。茵蔯五苓散は、体質改善の一環として、長期的に服用することでむくみにくい体質へと導く可能性も期待されます。
二日酔いへの効果は?
茵蔯五苓散は、二日酔いの症状、特に吐き気や頭重感、口渇、尿量減少といった症状にも用いられることがあります。アルコールの代謝によって生じる体内の水分バランスの乱れを整え、利尿作用により体内の有害物質の排出を促すことで、二日酔いの不快な症状の緩和に役立つと考えられています[5]。また、肝機能への影響を検討した研究も過去には存在します[1]。
| 症状 | 期待される効果 | 主な作用メカニズム |
|---|---|---|
| 急性胃腸炎(口渇、尿量減少、嘔吐、下痢) | 消化器症状の緩和、水分バランス調整 | 利水作用、炎症抑制作用 |
| 暑気あたり | 全身倦怠感、頭重感の緩和 | 水分代謝改善、解熱作用(間接的) |
| むくみ(浮腫) | 体内の余分な水分排出、むくみ軽減 | 利尿作用、水分バランス調整 |
| 二日酔い(吐き気、頭重感、口渇) | 症状緩和、アルコール代謝促進 | 利水作用、肝機能サポート(間接的) |
茵蔯五苓散の用法・用量と服用時の注意点

茵蔯五苓散の用法・用量は、一般的に成人に対して1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用するとされています[5]。ただし、年齢や体重、症状に応じて医師が適宜増減することがあります。当院では、患者さまの体質や症状の程度、他の併用薬などを考慮して、最適な用法・用量を決定しています。特に、胃腸が弱い方や、他の漢方薬を服用している方には、慎重に処方量を調整することがあります。
服用時の注意点
- 食前・食間服用が基本: 漢方薬は一般的に、胃の中に食べ物がない状態で服用することで吸収が良くなるとされています。食前(食事の30分〜1時間前)または食間(食後2時間程度)に服用することが推奨されます。
- 水またはぬるま湯で服用: 粉薬の場合は、少量の水またはぬるま湯で溶いてから服用すると、飲みやすくなります。
- 飲み忘れに注意: 効果を安定させるためには、指示された用法・用量を守り、規則的に服用することが重要です。
- 長期服用の場合: 長期にわたって服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、効果や副作用の有無を確認することが大切です。
皮膚科の臨床経験上、漢方薬は西洋薬に比べて効果の実感に時間がかかる場合があります。外来で茵蔯五苓散を使用した経験では、効果を実感されるまでに数週間から1ヶ月程度かかる方が多い印象です。しかし、体質改善を目指す場合は、継続的な服用が重要になります。患者さまには、焦らずにじっくりと服用を続けていただくようアドバイスしています。
自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりすることは避けてください。必ず医師の指示に従って服用しましょう。また、他の薬やサプリメントを併用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えましょう。
茵蔯五苓散の副作用にはどのようなものがある?
茵蔯五苓散は比較的安全性の高い漢方薬ですが、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。副作用は、添付文書に記載されている情報を基に、頻度別に整理して解説します[5]。
重大な副作用
頻度は非常にまれですが、以下の重大な副作用が報告されています。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
- 間質性肺炎: 発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)などが現れることがあります。
- 偽アルドステロン症: 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がる、頭痛などの症状が現れることがあります。これらは、体内の電解質バランスの異常によって引き起こされます。
- ミオパチー: 脱力感、手足のけいれんや麻痺、筋肉痛などが現れることがあります。偽アルドステロン症の症状の一つとして現れることもあります。
- 肝機能障害、黄疸: 全身のだるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる、褐色尿などが現れることがあります。
これらの重大な副作用は極めてまれですが、特に長期服用の場合や、他の疾患を抱えている患者さまにおいては注意が必要です。当院では、長期処方を行う際には定期的に血液検査を行い、肝機能や電解質バランスに異常がないかを確認しています。
その他の副作用
比較的頻度の低いものですが、以下のような副作用が報告されています。
- 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。
- 過敏症: 発疹、蕁麻疹など。
これらの症状が現れた場合は、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。皮膚科の日常診療では、漢方薬による発疹や蕁麻疹の相談を受けることもあります。その際は、他の薬との関連性も考慮し、慎重に原因を特定するようにしています。
茵蔯五苓散のジェネリック医薬品について

茵蔯五苓散は、ツムラから「ツムラ茵蔯五苓散エキス顆粒(医療用)」として販売されていますが、これは特定の製薬会社が製造する医療用漢方製剤の商品名です。漢方薬の場合、西洋薬のような「先発医薬品」と「ジェネリック医薬品」という厳密な区分けは一般的ではありません。
しかし、茵蔯五苓散と同じ生薬構成(インチンコウ、タクシャ、チョレイ、ブクリョウ、ビャクジュツ、ケイヒ)を持つ漢方製剤は、ツムラ以外の複数の製薬会社からも販売されています。これらは「同等処方」や「後発漢方製剤」と表現されることが多く、成分や効果は基本的に同じであると考えられています。例えば、クラシエやコタローなどのメーカーからも茵蔯五苓散が製造されています。
当院では、患者さまの経済的負担を考慮し、また供給状況に応じて、これらの同等処方の漢方製剤を処方する場合があります。どのメーカーの製剤も、国の承認を得て製造されており、品質や有効性には問題がないとされています。実際の処方では、患者さまから「他のメーカーの漢方薬でも効果は同じですか?」と質問されることがよくありますが、基本的には同等の効果が期待できることを説明しています。
まとめ
茵蔯五苓散は、体内の水分代謝を調整し、むくみや急性胃腸炎、暑気あたり、二日酔いなどの症状に効果が期待できる漢方薬です。口渇がありながら尿量が少ない、あるいは浮腫を伴う病態に特に適しています。用法・用量を守り、食前または食間に服用することが推奨されます。
重大な副作用として、まれに間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害などが報告されていますが、全体としては比較的安全性の高い薬です。服用中に気になる症状が現れた場合は、速やかに医師や薬剤師に相談してください。妊娠中や授乳中の方、他の薬を服用中の方は、必ず医師にその旨を伝えてください。ツムラ以外のメーカーからも同等処方の漢方製剤が販売されており、これらも選択肢となります。
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よくある質問(FAQ)
- K Matsuoka, S Nonaka, T Ohgami et al.. In vitro analysis of polychlorinated biphenyls (PCBs) and 2,3,4,7,8-pentachlorodibenzofuran (PCDF) cellular toxicity in PLC/PRF/5 cell proliferation–the effect of ursodeoxycholic acid, inchin-gorei-san and shou-saiko-to on cell toxicity.. Fukuoka igaku zasshi = Hukuoka acta medica. 1991. PMID: 1916593
- 茵蔯五苓散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
