葛根湯と蕁麻疹:皮膚科医が効果・副作用を解説
- ✓ 葛根湯は蕁麻疹の補助療法として用いられる漢方薬です。
- ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、副作用に注意して服用することが重要です。
- ✓ 慢性蕁麻疹やアレルギー性の蕁麻疹には、他の治療法と併用されることが多いです。
葛根湯(ツムラ1)とは?その特徴と作用機序

葛根湯(カッコントウ)は、古くから東洋医学で用いられてきた代表的な漢方薬の一つであり、特に風邪の初期症状や肩こりなどに広く処方されています。その構成生薬は7種類からなり、それぞれが持つ薬理作用によって総合的な効果を発揮します。葛根湯が蕁麻疹に用いられることがあるのは、その発散作用や血行促進作用が、皮膚の炎症や痒みの緩和に寄与すると考えられているためです。
葛根湯は、葛根、麻黄、大棗、桂皮、芍薬、甘草、生姜の7つの生薬から構成されています。これらの生薬が持つ作用は多岐にわたります。例えば、麻黄に含まれるエフェドリン類は発汗を促し、身体を温めることで解熱作用や鎮痛作用を発揮します。葛根は、主に首や肩の凝りを和らげる作用があるとされ、また、皮膚の血行を改善する効果も期待されます。芍薬は鎮痛・鎮痙作用を持ち、甘草は炎症を抑える作用や他の生薬の作用を調和させる働きがあります。これらの生薬が複合的に作用することで、体表の血行を改善し、発汗を促すことで、体内の熱や老廃物を排出する手助けをすると考えられています[1]。当院の皮膚科外来では、特に冷えを伴う蕁麻疹や、ストレスによる症状悪化を訴える患者さまに、補助的な治療として葛根湯を検討することがあります。
- 葛根湯の構成生薬と主な作用
- 葛根湯は、葛根、麻黄、大棗、桂皮、芍薬、甘草、生姜の7種類の生薬から構成される漢方薬です。それぞれの生薬が持つ発汗、解熱、鎮痛、血行促進、抗炎症などの作用が組み合わさり、体全体のバランスを整えることで効果を発揮します。
葛根湯が蕁麻疹に用いられるのはなぜ?具体的な効果
葛根湯は、一般的に風邪の初期症状に用いられることが多いですが、皮膚科領域では蕁麻疹、特に寒冷蕁麻疹や慢性蕁麻疹の一部のタイプに対して補助的に使用されることがあります。その効果は、主に「発散作用」と「血行促進作用」に基づくものです。蕁麻疹は、皮膚の肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで、皮膚に膨疹(ぼうしん)と呼ばれる盛り上がりや痒みが生じる疾患です。葛根湯は、これらの化学伝達物質の放出を直接的に抑制する作用は弱いものの、体表の血行を改善し、身体を温めることで、皮膚の代謝を促進し、痒みや炎症を間接的に軽減する可能性が指摘されています。
特に、冷えによって症状が悪化する寒冷蕁麻疹の場合、葛根湯の温める作用が有効な場合があります。また、ストレスや疲労が原因で自律神経のバランスが乱れ、蕁麻疹が悪化するケースも少なくありません。葛根湯は、身体全体の調子を整えることで、このような自律神経の乱れに起因する症状の緩和にも寄与することが期待されます。実際の診察では、患者さまから「冷えると痒みが増す」「肩こりがひどい時に蕁麻疹も出やすい」と質問されることがよくあります。このような訴えがある場合、抗ヒスタミン薬と併用して葛根湯を処方し、症状の改善を図ることがあります。ただし、葛根湯が蕁麻疹の根本治療薬となるわけではなく、あくまで症状緩和のための補助療法として位置づけられます。蕁麻疹の治療においては、原因の特定と除去、そして抗ヒスタミン薬の内服が中心となります。
葛根湯の正しい使い方と服用方法(用法・用量)

葛根湯の服用にあたっては、添付文書に記載された用法・用量を厳守することが非常に重要です。漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、医薬品であるため、誤った使い方をすると効果が得られないばかりか、副作用のリスクを高める可能性があります。ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)の場合、通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割して、食前または食間に経口服用します。食前とは食事の30分から1時間前、食間とは食事と食事の間、つまり食後2時間程度の空腹時を指します。水またはぬるま湯で服用してください[1]。
葛根湯は、症状が改善したら漫然と服用を続けるべきではありません。特に、発汗を促す作用があるため、汗をかきすぎると体力を消耗する可能性があります。また、胃腸の弱い方や高齢者、妊娠中の方などは、服用前に必ず医師や薬剤師に相談してください。自己判断での服用は避け、必ず専門家の指示に従うようにしましょう。
小児への投与に関しては、年齢、体重、症状に応じて適宜減量されますが、具体的な用量は医師の判断が必要です。当院では、小児の患者さまに葛根湯を処方する際は、保護者の方に服用方法だけでなく、お子様の体調変化にも注意深く観察していただくようお伝えしています。顆粒が飲みにくいお子様には、少量の水で溶いて飲ませる方法を指導することもあります。皮膚科の日常診療では、特に寒冷蕁麻疹や、風邪をひきやすい体質の患者さまに、予防的な意味合いで短期間処方することもありますが、その場合も効果と副作用のバランスを常に考慮しています。
葛根湯の副作用とは?頻度別に解説
葛根湯は漢方薬であり、一般的に西洋薬に比べて副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。特に体質や体調によっては、いくつかの副作用が現れる可能性があります。添付文書には、重大な副作用およびその他の副作用が記載されています[1]。
重大な副作用
頻度は不明とされていますが、以下のような重大な副作用が報告されています。
- 偽アルドステロン症:尿量が減少したり、顔や手足がむくんだり、まぶたが重くなったり、手足がしびれたり、つっぱったりする症状が現れることがあります。血圧上昇を伴う場合もあります。甘草の大量摂取や長期服用によって引き起こされる可能性があります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の結果として、脱力感、筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。当院では、特に高齢の患者さまや、高血圧などの持病をお持ちの患者さまには、処方する際にこれらの重大な副作用のリスクについて丁寧に説明し、定期的な血圧測定やむくみの有無の確認をお願いしています。
その他の副作用
比較的頻度は低いですが、以下のような症状が報告されています[1]。
- 消化器系:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など
- 精神神経系:不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身倦怠感、精神興奮など(麻黄の作用による)
- 泌尿器系:排尿障害
- 皮膚:発疹、痒み
これらの症状が出た場合も、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。特に、皮膚の発疹や痒みが悪化するようであれば、葛根湯が原因である可能性も考慮し、別の治療法を検討する必要があります。皮膚科の臨床経験上、麻黄による動悸や不眠を訴える患者さまは稀にいらっしゃいます。そのような場合は、服用量や服用タイミングの調整、あるいは他の漢方薬への切り替えを検討します。
| 副作用の種類 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 重大な副作用(頻度不明) | 偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、脱力感)、ミオパチー(筋力低下、筋肉痛) | 直ちに服用中止、医師の診察 |
| その他の副作用(頻度不明) | 消化器症状(食欲不振、悪心、下痢)、精神神経症状(不眠、動悸)、皮膚症状(発疹、痒み) | 服用中止、医師・薬剤師に相談 |
葛根湯に関する患者さまからのご質問

葛根湯のジェネリック医薬品について
葛根湯には、複数の製薬会社からジェネリック医薬品が販売されています。ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効能・効果、用法・用量が認められた医薬品のことです。開発コストが抑えられるため、先発医薬品よりも安価に提供されることが特徴です。
ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)は、医療用漢方製剤の代表的なブランドですが、他の製薬会社からも「葛根湯エキス顆粒」としてジェネリック医薬品が製造・販売されています。これらのジェネリック医薬品も、ツムラの葛根湯と同様に、日本薬局方に基づいた品質基準を満たしており、同等の効果が期待できます。当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品の処方も可能です。ジェネリック医薬品の選択は、医療費の負担軽減にもつながるため、ご希望される場合は遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。ただし、漢方薬の場合、生薬の産地や抽出方法などによって、わずかな風味や溶けやすさの違いを感じる方もいらっしゃいます。これらは効果に直接影響するものではありませんが、気になる場合はお気軽にご相談ください。
まとめ
葛根湯は、風邪の初期症状だけでなく、皮膚科領域においても蕁麻疹、特に冷えを伴うタイプや慢性蕁麻疹の補助療法として用いられる漢方薬です。その作用は、身体を温め、血行を促進し、発汗を促すことによって、皮膚の炎症や痒みを間接的に和らげることにあります。服用にあたっては、添付文書に記載された用法・用量を守り、偽アルドステロン症やミオパチーといった重大な副作用、あるいは消化器症状や精神神経症状などのその他の副作用に注意が必要です。特に、高血圧や心臓病などの持病がある方、高齢者、妊娠中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。葛根湯は漢方薬ですが、医薬品であるため、自己判断での服用は避け、医師や薬剤師の指導のもとで適切に使用することが重要です。ジェネリック医薬品も存在し、医療費の負担軽減に役立つ場合があります。
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