越婢加朮湯

【越婢加朮湯の効果と副作用】|皮膚科医が解説

越婢加朮湯の効果と副作用|皮膚科医が解説

最終更新日: 2026-05-02
📋 この記事のポイント
  • ✓ 越婢加朮湯は、浮腫や関節痛を伴う湿疹・皮膚炎、水虫などに用いられる漢方薬です。
  • ✓ 臨床では、むくみや炎症を抑える効果が期待され、特に手足の腫れや痛みに対して処方されることがあります。
  • ✓ 重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチーに注意が必要です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

越婢加朮湯(ツムラ28)とは?

越婢加朮湯の処方箋とツムラ28のパッケージ、漢方薬の全体像
ツムラ28越婢加朮湯の概要
越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)は、漢方医学における「越婢湯」に「蒼朮(ソウジュツ)」または「白朮(ビャクジュツ)」を加えた処方で、主に体内の余分な水分を取り除き、炎症を鎮める作用を持つ漢方薬です。特に、浮腫(むくみ)や関節の腫れ、痛み、皮膚の炎症を伴う疾患に用いられます[5]。当院の皮膚科外来では、特に湿疹・皮膚炎に伴うむくみや、水虫による足の腫れ、また、手のひらや足の裏にできる手足症候群の症状緩和を目的として処方する機会が多いです。

越婢加朮湯の構成生薬と作用メカニズム

越婢加朮湯は、以下の生薬から構成されています[5]
  • 麻黄(マオウ):発汗、利尿、鎮痛作用。
  • 石膏(セッコウ):炎症を鎮め、熱を冷ます作用。
  • 生姜(ショウキョウ):体を温め、発汗を促す作用。
  • 大棗(タイソウ):滋養強壮、緩和作用。
  • 甘草(カンゾウ):炎症を抑え、痛みを和らげる作用。
  • 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ):体内の余分な水分を排出し、消化機能を助ける作用。
これらの生薬が複合的に作用することで、体内の水分代謝を改善し、炎症反応を抑制すると考えられています。特に、麻黄と石膏の組み合わせは、熱感や腫れを伴う急性期の炎症に有効とされています。また、蒼朮や白朮が加わることで、むくみの改善効果が強化されます。実際の診察では、患者さまから「足がパンパンにむくんで痛い」「湿疹が熱を持って腫れている」と訴えられることがよくあり、このような症状に対して越婢加朮湯を処方することで、症状の緩和を目指します。
手足症候群とは
がん化学療法の一環として用いられる一部の抗がん剤(例: カペシタビン)によって引き起こされる副作用で、手や足のひらに赤み、腫れ、痛み、しびれ、水ぶくれなどが生じる状態を指します。日常生活に支障をきたすことが多く、適切なケアが必要です。

越婢加朮湯の適応症と効果は?

越婢加朮湯は、体内の水分代謝異常や炎症を原因とする様々な症状に効果を発揮します。添付文書に記載されている適応症は以下の通りです[5]
  • 浮腫(むくみ)を伴う関節炎
  • 湿疹・皮膚炎
  • 水虫
  • 夜尿症
  • 腎炎
  • 気管支喘息
皮膚科領域では、特に湿疹・皮膚炎や水虫に伴う浮腫や炎症に対して処方されます。例えば、水虫が悪化して足全体が腫れ上がったり、湿疹が広範囲に及んで熱感やむくみを伴う場合に有効性が期待されます。また、近年では、抗がん剤治療による手足症候群の予防や症状緩和への応用も研究されており、ある研究ではカペシタビンによる手足症候群の予防効果が示唆されています[1]。当院では、がん治療中の患者さまが手足の痛みや腫れを訴えられた際に、主治医と連携しながら越婢加朮湯を補助的に処方し、症状の軽減を図ることがあります。患者さまからは「足のむくみが楽になった」「痛みが和らいだ」といったフィードバックをいただくことが多いです。 さらに、リンパ管奇形(lymphatic malformations)の治療薬としての可能性も示唆されており、小児のリンパ管奇形に対する非ランダム化臨床試験で効果が報告されています[2]。稀なケースですが、鼠径陰嚢部リンパ管奇形による後天性停留精巣の症例報告もあります[3]。アレルギー疾患への効果も研究されており、マウスモデルにおいて食物アレルギーを抑制する効果が報告されています[4]。これらの研究は、越婢加朮湯が持つ抗炎症作用や水分代謝改善作用が、幅広い疾患に応用される可能性を示唆しています。

越婢加朮湯の用法・用量と服用方法は?

越婢加朮湯の正しい服用方法を示す、水と薬を飲む手のクローズアップ
越婢加朮湯の正しい服用方法
越婢加朮湯の用法・用量は、患者さまの年齢や症状、体質によって調整されます。添付文書では、通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割して、食前または食間に経口服用すると記載されています[5]。小児への投与も可能ですが、年齢や体重に応じて減量されます。当院では、患者さまの生活習慣や他の内服薬との兼ね合いも考慮し、最適な服用方法を指導しています。

服用時の注意点

  • 食前・食間服用:漢方薬は一般的に胃が空っぽの状態で服用する方が吸収が良いとされています。食前(食事の約30分前)または食間(食事と食事の間、食後約2時間後)に服用することが推奨されます。
  • お湯に溶かして:顆粒をそのまま水で服用することも可能ですが、少量のお湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の成分が吸収されやすくなると言われています。
  • 継続的な服用:漢方薬は即効性よりも、継続して服用することで体質改善や症状の緩和を目指すものです。医師の指示に従い、根気強く服用を続けることが重要です。
皮膚科の臨床経験上、越婢加朮湯は比較的効果を実感しやすい漢方薬の一つですが、効果の発現には個人差があります。外来で越婢加朮湯を使用した経験では、むくみや炎症の軽減は数日から1週間程度で何らかの変化を実感される方が多い印象です。しかし、症状が慢性化している場合や体質的な要因が強い場合は、効果を実感するまでに数週間から数ヶ月かかることもあります。患者さまには、効果を焦らず、継続して服用することの重要性をお伝えしています。また、服用中に気になる症状があれば、すぐに相談するよう促しています。
⚠️ 注意点

自己判断での服用中止や増量は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。特に、他の薬を服用している場合や持病がある場合は、相互作用や副作用のリスクがあるため、事前に医師に伝えてください。

越婢加朮湯の副作用と注意すべき点は?

越婢加朮湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、副作用が全くないわけではありません。特に、構成生薬である甘草(カンゾウ)や麻黄(マオウ)には注意が必要です。副作用は頻度別に整理して解説します[5]

重大な副作用

頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が報告されています。
  • 偽アルドステロン症:体内の電解質バランスが崩れ、血圧上昇、むくみ、体重増加、頭痛、手足のしびれ・こわばり、脱力感などが現れることがあります。これは、甘草の成分がアルドステロンというホルモンに似た作用を持つためと考えられています。
  • ミオパチー:筋肉の障害で、脱力感、筋肉痛、手足のしびれ・こわばりなどが現れることがあります。偽アルドステロン症の症状と関連して生じることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。当院では、特に高齢の患者さまや、高血圧、心臓病、腎臓病などの既往がある患者さまには、処方時にこれらの副作用について詳しく説明し、定期的な血圧測定や血液検査で電解質バランスを確認するよう指導しています。実際の臨床では、これらの重大な副作用は稀ですが、初期症状を見逃さないよう、患者さまとのコミュニケーションを密に取るように心がけています。

その他の副作用

頻度は不明ですが、以下のような副作用も報告されています。
  • 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。
  • 精神神経系症状:不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身倦怠感など(麻黄の作用による)。
  • 過敏症:発疹、じんましんなど。
これらの症状が現れた場合も、医師や薬剤師に相談してください。特に麻黄による精神神経系の症状は、カフェインを多く摂取する方や、他の興奮作用のある薬を服用している場合に注意が必要です。当院では、患者さまの生活習慣や併用薬について問診で詳しく確認し、これらの副作用のリスクを最小限に抑えるよう努めています。

服用に注意が必要な方

  • 心臓病、高血圧、腎臓病のある方:偽アルドステロン症のリスクが高まる可能性があります。
  • 甲状腺機能亢進症の方:麻黄の作用により、症状が悪化する可能性があります。
  • 高齢者:生理機能が低下しているため、副作用が出やすいことがあります。
  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性:服用前に医師に相談してください。
🩺 越婢加朮湯に関する患者さまからのご質問
Q. 越婢加朮湯は、どのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
A. 越婢加朮湯は、症状の改善を目指す漢方薬ですので、症状が落ち着くまでは継続して服用いただくことが基本です。当院では、むくみや炎症が強い急性期には1〜2週間で効果を評価し、症状が改善傾向にあれば、その後も数週間から数ヶ月間継続していただくことが多いです。特に慢性的な皮膚炎や体質改善を目的とする場合は、長期的な服用が必要になることもあります。定期的な診察で効果と副作用を確認しながら、患者さま一人ひとりに合った服用期間を提案しています。
Q. 他の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
A. 越婢加朮湯は、他の薬剤との併用で相互作用を起こす可能性があります。特に、甘草を含む他の漢方薬や、利尿剤、ステロイド剤などとの併用には注意が必要です。当院では、問診時に現在服用されている全ての薬(市販薬やサプリメントを含む)を詳しくお伺いし、相互作用のリスクがないか確認しています。必ず、医師や薬剤師に相談し、指示に従って服用してください。
Q. 飲み忘れてしまった場合はどうすればいいですか?
A. 飲み忘れた場合は、気がついた時点で1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、忘れた分は飲まずに、次の服用時間から通常通り服用してください。2回分を一度に服用することは避けてください。当院では、患者さまが服用を習慣化できるよう、服薬カレンダーの活用や、服用タイミングをアラームで知らせるなどの工夫をお勧めすることもあります。
Q. 越婢加朮湯を飲んでいる間、食事で気をつけることはありますか?
A. 特定の食品を避ける必要は基本的にありませんが、漢方薬は体質改善を目的とするため、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。特に、むくみが気になる場合は、塩分の摂りすぎに注意し、カリウムを多く含む食品(野菜や果物)を積極的に摂ることをお勧めします。また、冷たい飲食物の過剰摂取は、漢方でいう「冷え」を招き、治療効果を妨げる可能性もあるため、適度な摂取を心がけてください。
Q. 越婢加朮湯は眠くなりますか?
A. 一般的に越婢加朮湯には眠気を催す成分は含まれていません。むしろ、構成生薬である麻黄には興奮作用があるため、人によっては不眠や動悸を感じることがあります。当院では、麻黄の影響を考慮し、特に夕方以降の服用で不眠を訴える患者さまには、服用時間を調整するようアドバイスすることがあります。服用後に気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。
Q. 越婢加朮湯と他の漢方薬との使い分けは?
A. 越婢加朮湯は、比較的体力があり、熱感やむくみ、関節の腫れなどを伴う症状に適しています。例えば、冷えを伴うむくみには五苓散、皮膚の乾燥や痒みが強い場合には当帰飲子など、患者さまの「証」(体質や症状のパターン)に合わせて他の漢方薬と使い分けます。当院では、問診や舌診、脈診などを通して患者さまの証を総合的に判断し、最も適した漢方薬を選択するようにしています。越婢加朮湯と五苓散の使い分けについて説明する機会が多いです。
Q. 子供に越婢加朮湯を飲ませても大丈夫ですか?
A. 小児への投与も可能ですが、年齢や体重に応じて減量が必要です。特に小児の場合、麻黄の作用による興奮や不眠に注意が必要です。当院では、小児に処方する際は、保護者の方に副作用について詳しく説明し、少量から開始して様子を見るように指導しています。リンパ管奇形など、小児特有の疾患にも応用される可能性が研究されていますが[2]、必ず医師の指示のもとで服用させてください。

越婢加朮湯と他の漢方薬の比較

越婢加朮湯と他の漢方薬の成分や効果を比較した表、違いを明確に提示
越婢加朮湯と他漢方薬の比較
越婢加朮湯は、むくみや炎症に効果を発揮する漢方薬ですが、同様の症状に用いられる他の漢方薬も存在します。ここでは、代表的な漢方薬との比較を通じて、越婢加朮湯の特性をより深く理解します。
項目越婢加朮湯五苓散防已黄耆湯
主な作用利水、清熱、消炎、鎮痛利水、口渇改善利水、補気、止汗
適応症状(皮膚科領域)熱感・腫れを伴う湿疹・皮膚炎、水虫、関節炎、手足症候群水様性下痢、二日酔い、めまい、頭痛、むくみ疲れやすく、汗をかきやすい方のむくみ、肥満症
体質(証)の傾向比較的体力があり、熱感や炎症が強い「実証」口渇があり、尿量減少傾向の「中間証」体力中等度以下で、汗をかきやすい「虚証」
主な構成生薬麻黄、石膏、甘草、蒼朮など沢瀉、猪苓、茯苓、白朮、桂皮防已、黄耆、白朮、甘草、生姜、大棗
麻黄の有無
この比較表からもわかるように、越婢加朮湯は「熱感」や「炎症」が強く、比較的体力のある方に適しているのが特徴です。麻黄が含まれているため、発汗作用や利尿作用が強く、水分の排出を強力に促します。一方、五苓散は口渇を伴うむくみに、防已黄耆湯は体力低下や汗をかきやすい方のむくみに用いられるなど、それぞれ適応する体質や症状が異なります。当院では、患者さまの訴えだけでなく、顔色、舌の状態、脈の状態など、漢方的な診察(望聞問切)を総合的に行い、最適な漢方薬を選択しています。例えば、むくみがあっても、冷えが強い方には越婢加朮湯ではなく、体を温める作用のある漢方薬を検討することもあります。

越婢加朮湯のジェネリック医薬品はある?

越婢加朮湯は、ツムラから「ツムラ漢方越婢加朮湯エキス顆粒(医療用)」として販売されていますが、他の製薬会社からも同成分の医療用漢方製剤が製造・販売されています。これらは、一般的に「ジェネリック医薬品」とは呼ばれず、「後発医薬品」や「同種同効薬」として扱われます。漢方製剤は、生薬の配合割合や抽出方法が各メーカーで若干異なる場合がありますが、有効成分や効能効果は同等とされています。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)の選択

医療用漢方製剤の場合、ツムラの他に、クラシエ、コタロー、オースギ、三和生薬など、複数のメーカーから越婢加朮湯が販売されています。患者さまは、医師や薬剤師と相談の上、希望するメーカーの製品を選択することが可能です。後発医薬品は、先発医薬品と比較して開発費用が抑えられるため、薬価が安価に設定されていることが多く、医療費の負担軽減に繋がります。当院では、患者さまの経済的負担も考慮し、後発医薬品の選択肢があることを説明し、患者さまの意向を尊重して処方しています。ただし、漢方薬は生薬の品質や製造方法によって効果に差が出ると考える医師もいるため、変更を希望される場合は必ず医師に相談してください。

まとめ

越婢加朮湯(ツムラ28)は、浮腫や関節痛を伴う湿疹・皮膚炎、水虫などに用いられる漢方薬です。体内の余分な水分を取り除き、炎症を鎮める作用があり、特に熱感や腫れが強い症状に効果が期待されます。用法・用量は医師の指示に従い、食前または食間に服用することが推奨されます。重大な副作用として偽アルドステロン症やミオパチーがありますが、頻度は稀です。麻黄を含むため、不眠や動悸などの精神神経系症状にも注意が必要です。他の漢方薬と比較して、熱感・炎症が強い「実証」の方に適しています。ツムラ以外にも複数のメーカーから同種同効薬が販売されており、医療費負担の軽減に繋がる可能性があります。服用に際しては、必ず医師や薬剤師と相談し、自身の体質や症状に合った適切な使用を心がけることが重要です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 越婢加朮湯は保険適用になりますか?
A. はい、越婢加朮湯は医療用漢方製剤として、医師の処方に基づき健康保険が適用されます。保険診療として処方された場合、患者さまは自己負担割合に応じた費用を支払うことになります。
Q. 越婢加朮湯は市販されていますか?
A. 越婢加朮湯は、医療用医薬品として医師の処方箋が必要な製剤が一般的ですが、一部のメーカーからドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)としても販売されています。ただし、一般用医薬品は医療用医薬品と成分量や用法・用量が異なる場合があるため、購入の際は薬剤師に相談し、自身の症状や体質に合っているか確認することが重要です。
Q. 越婢加朮湯を服用できない人はいますか?
A. 心臓病、高血圧、腎臓病、甲状腺機能亢進症のある方、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性は、服用に特に注意が必要です。また、過去に越婢加朮湯やその構成生薬でアレルギー反応を起こしたことがある方は服用できません。必ず医師に自身の健康状態や既往歴、現在服用中の薬などを詳細に伝え、服用可能かどうかの判断を仰いでください。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長