当帰四逆加呉茱萸生姜湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は冷えによる諸症状に用いられる漢方薬です。
- ✓ 血行促進作用や鎮痛作用により、手足の冷えやしもやけ、頭痛などに効果が期待できます。
- ✓ 医師の指示に従い、適切な用法・用量で服用することが重要です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯とは?その特徴と効果

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)は、手足の冷えやしもやけ、頭痛など、冷えに起因する様々な症状の改善に用いられる漢方薬です[5]。特に、体力が低下し、冷えによって血行が悪くなっている方に適しているとされています。
この漢方薬は、当帰(トウキ)、桂皮(ケイヒ)、細辛(サイシン)、木通(モクツウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)など、9種類の生薬が配合されており、それぞれが協調して作用します。主な作用としては、体を温めて血行を促進する作用、鎮痛作用、利尿作用などが挙げられます。当院の皮膚科外来では、冬場に手足のしもやけや冷えに悩む患者さまから「毎年冬がつらい」「指先が紫色になる」といった相談を受けることが多いです。そのような際に、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を検討することがあります。
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
- 冷え症、しもやけ、頭痛、腰痛、下腹部痛など、特に手足の冷えが強く、血行不良を伴う症状に用いられる漢方薬。体を温め、血行を促進する作用が期待されます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成生薬と作用メカニズム
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成生薬は、それぞれが特定の働きを持ち、相乗効果を発揮します。例えば、当帰は血を補い、血行を促進する「補血活血」の作用があり、桂皮や細辛、呉茱萸、生姜は体を温める「温経散寒」の作用が強いとされています。木通は利尿作用により体内の余分な水分を排出し、大棗と甘草は他の生薬の働きを調和させるとともに、滋養強壮や鎮痛作用も持ち合わせています。
これらの生薬の組み合わせにより、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えによって収縮した血管を拡張させ、血流を改善することで、手足の冷えや痛み、しびれといった症状を緩和すると考えられています。また、鎮痛作用により、冷えからくる頭痛や生理痛、腰痛などにも効果が期待できます。韓国で行われた研究では、手足の冷えを訴える患者に対する当帰四逆加呉茱萸生姜湯の効果と安全性を検証する臨床試験が実施されています[2]。
どのような症状に処方される?適応症と効果
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えが原因で起こる様々な症状に処方されます。主な適応症は以下の通りです[5]。
- 冷え症
- しもやけ
- 頭痛
- 腰痛
- 下腹部痛
- 神経痛
これらの症状は、特に手足が冷えて血色が悪く、しもやけができやすい、あるいは冷えによって手足に痛みやしびれを感じる方に多く見られます。当院では、手足の冷えがひどく、冬になると毎年しもやけを繰り返す患者さまに処方することが多いです。実際の診察では、患者さまから「手足が氷のように冷たくて眠れない」といった具体的な訴えを聞くことがよくあります。このような場合、血行改善を目的として本剤を処方し、冷えの改善だけでなく、それに伴う痛みや不快感の軽減を目指します。
冷え症と当帰四逆加呉茱萸生姜湯
冷え症は、手足の末端が冷えるだけでなく、全身の倦怠感や肩こり、頭痛など様々な不調を引き起こすことがあります。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、体を内側から温め、血流を改善することで、これらの冷え症に伴う症状全般の緩和に寄与すると考えられます。特に、冷えによって起こる血管の収縮や血行不良が原因の冷え症に効果が期待されます。
しもやけへの効果
しもやけは、寒さによって血行が悪くなり、皮膚が炎症を起こすことで生じます。手足の指や耳たぶなどに赤み、腫れ、かゆみ、痛みが現れるのが特徴です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、血行促進作用により、しもやけの症状を緩和し、再発を予防する効果が期待できます。当院では、しもやけで受診された患者さまに、外用薬と併用して本剤を処方することがあります。外用薬で炎症を抑えつつ、内服薬で体質改善を図ることで、より効果的な治療を目指します。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の用法・用量と服用上の注意点

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、添付文書に記載された用法・用量を守って服用することが重要です[5]。自己判断での増量や減量は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
標準的な用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢や体重、症状によって適宜増減されることがあります。顆粒製剤の場合、水またはぬるま湯で服用してください。食間とは、食事と食事の間、つまり食後約2時間後の空腹時を指します。
漢方薬は体質や症状によって効果の出方が異なります。服用中に体調の変化を感じた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談してください。特に、胃腸が弱い方や、他の薬を服用している方は、事前に医師に伝えるようにしましょう。
服用上の注意点
- 飲み忘れに注意: 飲み忘れた場合は、気がついた時点で服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばし、次の時間から服用を再開してください。2回分を一度に服用することは避けてください。
- 保管方法: 直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所に保管してください。小児の手の届かない場所に保管することも重要です。
- 他の薬剤との併用: 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。
- 妊娠・授乳中の服用: 妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
皮膚科の日常診療では、患者さまが複数の医療機関を受診し、複数の薬剤を服用しているケースも少なくありません。そのため、処方する際は、お薬手帳などで現在服用中の薬剤を必ず確認し、相互作用のリスクがないかを慎重に判断しています。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の副作用について
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、副作用が全くないわけではありません。服用中に気になる症状が現れた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談してください[5]。
重大な副作用
頻度は稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています。
- 偽アルドステロン症: 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がるなどの症状が現れることがあります。甘草の大量摂取や長期連用によって起こる可能性があります。
- ミオパチー: 脱力感、手足のけいれんや麻痺などの症状が現れることがあります。
- 肝機能障害、黄疸: 全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。稀なケースではありますが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の服用が可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)を誘発した可能性が示唆された報告もあります[1]。そのため、服用中に頭痛が悪化するなどの異変を感じた場合も、速やかに医療機関を受診することが重要です。
その他の副作用
比較的頻度の高い副作用としては、以下のようなものがあります。
- 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
- 皮膚症状: 発疹、かゆみなど。
これらの症状は軽度であることが多いですが、症状が続く場合や悪化する場合は、医師に相談してください。当院では当帰四逆加呉茱萸生姜湯を処方した患者さまから、「少し胃がもたれる感じがする」というフィードバックをいただくことが稀にあります。その際は、服用方法の調整や、他の漢方薬への切り替えを検討することもあります。
| 副作用の種類 | 具体的な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸 | 直ちに服用中止、医療機関受診 |
| その他の副作用 | 食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢、発疹、かゆみ | 症状が続く場合や悪化する場合は医師に相談 |
当帰四逆加呉茱萸生姜湯に関する患者さまからのご質問

ジェネリック医薬品について
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、ツムラから「ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒(医療用)」として販売されています[5]。漢方製剤においては、一般的に「ジェネリック医薬品」という概念は西洋薬とは少し異なります。
西洋薬のジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同じ有効成分を同じ量含み、生物学的同等性が確認された後発医薬品を指します。一方、漢方製剤の場合、各メーカーが独自に生薬の配合割合や抽出方法を研究し、製造しています。そのため、同じ処方名の漢方薬であっても、メーカーによって生薬の配合量やエキス量が異なる場合があり、厳密な意味でのジェネリック医薬品とは言えないことがあります。
しかし、保険診療上は、複数のメーカーから同じ処方名の漢方製剤が販売されており、これらは一般的に「後発品」として扱われ、薬価も異なります。患者さまの経済的負担を軽減するため、当院では患者さまのご希望に応じて、後発品を処方することも可能です。ただし、メーカーによって味や溶けやすさ、効果の実感に個人差を感じる方もいらっしゃるため、処方時にはその点も説明し、患者さまに合った選択をサポートしています。
まとめ
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷え症、しもやけ、頭痛、腰痛、下腹部痛、神経痛など、冷えに起因する様々な症状に効果が期待できる漢方薬です。体を温め、血行を促進することで、これらの症状の緩和を目指します。服用にあたっては、用法・用量を守り、副作用に注意することが重要です。特に、他の薬剤との併用や、妊娠・授乳中の服用については、必ず医師や薬剤師に相談してください。ご自身の症状や体質に合った治療法を見つけるためにも、専門医にご相談いただくことをお勧めします。
お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
よくある質問(FAQ)
- Haruka Hatakeyama, Haruka Ouchi, Kana Inoue et al.. [Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome (RCVS) Induced by a Chinese Herbal Medicine; Tokishigyakukagoshuyushokyoto].. Brain and nerve = Shinkei kenkyu no shinpo. 2019. PMID: 31289255. DOI: 10.11477/mf.1416201355
- Youme Ko, Ho-Yeon Go, Yoon-Young Cho et al.. The efficacy and safety of Danggui-Sayuk-Ga-Osuyu-Saenggang-tang on Korean patients with cold hypersensitivity in the hands: study protocol for a pilot, double-blind, randomized, placebo-controlled, parallel-group clinical trial.. Trials. 2018. PMID: 28595610. DOI: 10.1186/s13063-017-2002-8
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
