- ✓ 四物湯は血虚を改善し、月経不順や更年期障害、皮膚疾患など幅広い症状に用いられる漢方薬です。
- ✓ 皮膚科領域では、乾燥肌や湿疹、脱毛症など、血行不良や栄養不足が関与する疾患に対して補助的に処方されることがあります。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、胃腸症状や発疹などの一般的な副作用に注意し、体質や症状に合わせて医師と相談の上で服用することが重要です。
四物湯(シモツトウ)とは?その基本的な作用

四物湯は、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)、川芎(センキュウ)の4つの生薬から構成される漢方薬です。これらの生薬が「血(けつ)」の不足を補い、巡りを改善することで、全身の機能を整えることを目的としています。漢方医学において「血」は、西洋医学の血液だけでなく、全身に栄養を供給し、精神活動を支えるエネルギー源と考えられています。
四物湯は、主に「血虚(けっきょ)」と呼ばれる状態の改善に用いられます。血虚とは、血が不足している状態を指し、貧血、月経不順、冷え性、乾燥肌、脱毛、精神不安など、多岐にわたる症状を引き起こす可能性があります。当院の皮膚科外来では、特に女性の患者さまから「肌の乾燥がひどい」「抜け毛が増えた」「生理前になると体調が悪い」といった血虚に関連する相談を受けることが多く、四物湯を検討するケースも少なくありません。
四物湯の構成生薬とそれぞれの働き
四物湯の各生薬は、それぞれ異なる役割を担いながら、総合的に血虚の改善に寄与します。
- 当帰(トウキ):血を補い、血行を促進する作用があります。特に婦人科領域で広く用いられ、月経不順や生理痛の改善に効果が期待されます。
- 芍薬(シャクヤク):血を補い、鎮痛・鎮痙作用があります。筋肉の緊張を和らげ、痛みを鎮める効果が期待されます。
- 地黄(ジオウ):血を補い、滋養強壮作用があります。体の潤いを保ち、乾燥を防ぐ効果も期待されます。
- 川芎(センキュウ):血行を促進し、気の巡りを改善する作用があります。頭痛や肩こり、冷え性の改善に効果が期待されます。
これらの生薬が組み合わさることで、血の生成を助け、全身への血の巡りを改善し、血虚による様々な症状の緩和を目指します。当院では、患者さまの体質や症状を詳細に問診し、四物湯が適切であると判断した場合に処方しています。
- 血虚(けっきょ)とは
- 漢方医学における概念で、全身に栄養を供給する「血」が不足している状態を指します。顔色が悪く、めまい、動悸、月経不順、皮膚の乾燥、脱毛、精神不安などの症状が現れることがあります。西洋医学の貧血と重なる部分もありますが、より広範な概念を含みます。
四物湯の皮膚科領域における効果と適応症
四物湯は、その血虚改善作用から、皮膚科領域においても様々な症状の補助療法として用いられることがあります。特に、血行不良や栄養不足が皮膚のトラブルに関与していると考えられる場合に検討されます。実際の診察では、患者さまから「皮膚の乾燥がひどくて、保湿剤だけでは追いつかない」「アトピー性皮膚炎で常に肌がカサカサしている」といった訴えを聞くことがよくあります。このような場合、全身的な血の巡りや栄養状態の改善が、皮膚症状の緩和につながる可能性があるため、四物湯の処方を検討することがあります。
皮膚の乾燥・かゆみに対する効果
血虚の状態では、皮膚に十分な栄養や潤いが届きにくくなり、乾燥やかゆみが悪化することがあります。四物湯は、血を補い、血行を促進することで、皮膚の新陳代謝を活発にし、潤いを保つ効果が期待されます。特に、加齢による乾燥肌や、アトピー性皮膚炎などの慢性的な皮膚疾患に伴う乾燥・かゆみに対して、西洋薬と併用することで症状の改善を促すことがあります。当院では、外用薬での治療効果が限定的であった患者さまに四物湯を併用したところ、肌のしっとり感が増した、かゆみが軽減したというフィードバックをいただくことがあります。
月経不順に伴う皮膚症状
女性ホルモンのバランスの乱れは、月経不順だけでなく、ニキビや肌荒れ、乾燥肌などの皮膚症状を引き起こすことがあります。四物湯は、婦人科領域で血の巡りを整える効果が知られており、月経周期の安定化を通じて、ホルモンバランスの乱れに伴う皮膚トラブルの改善にも寄与する可能性があります。当院の臨床経験上、月経前症候群(PMS)に伴う肌荒れに悩む患者さまに四物湯を処方したところ、肌の調子が安定したという声も聞かれます。
脱毛症への応用
漢方医学では、髪の毛は「血の余り」と考えられており、血虚は脱毛の原因の一つとされています。四物湯は、血を補い、頭皮への血行を改善することで、毛髪の成長を促し、脱毛の進行を抑制する効果が期待されます。特に、びまん性脱毛症や産後の脱毛など、全身的な栄養状態の低下や血行不良が関与していると考えられる場合に、補助的に用いられることがあります。実際の診察では、患者さまから「抜け毛が減った」「髪にハリが出てきた」といった効果を実感される方がいらっしゃいます。ただし、脱毛症の治療は多岐にわたるため、他の治療法と組み合わせることが一般的です。
| 適応症状 | 四物湯が期待される効果 | 皮膚科における処方例 |
|---|---|---|
| 乾燥肌・かゆみ | 血を補い、皮膚に潤いと栄養を供給。新陳代謝を促進。 | 加齢性乾燥肌、アトピー性皮膚炎の補助療法 |
| 月経不順に伴う肌荒れ・ニキビ | 血の巡りを整え、ホルモンバランスの安定をサポート。 | 月経前症候群(PMS)による皮膚症状 |
| 脱毛症 | 頭皮への血行を改善し、毛髪の成長を促進。 | びまん性脱毛症、産後脱毛の補助療法 |
| 冷え性・貧血傾向 | 全身の血行を改善し、冷えや貧血症状を緩和。 | 全身症状が皮膚症状に影響している場合 |
ツムラ71「四物湯」の用法・用量と服用時の注意点

ツムラ71「四物湯」は、医療用漢方製剤として、医師の処方に基づいて服用されます。用法・用量は、患者さまの年齢、体重、症状によって調整されますが、添付文書に記載されている標準的な用法・用量に準拠します[6]。
標準的な用法・用量
- 成人:通常、1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します[5]。
- 小児:年齢、体重、症状に応じて適宜減量されます。
食前または食間とは、食事の約30分前、または食後2時間程度を指します。お湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の成分が吸収されやすくなると言われています。当院では、患者さまの生活習慣に合わせて、無理なく継続できる服用方法を具体的にアドバイスしています。
服用時の注意点
- アレルギー歴:過去に漢方薬や特定の生薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
- 妊娠・授乳中:妊娠中または授乳中の女性は、服用前に医師と相談してください。
- 併用薬:他の医療用医薬品や一般用医薬品、サプリメントなどを服用している場合は、相互作用の可能性があるため、必ず医師に報告してください。
- 症状の悪化:服用中に症状が悪化したり、新たな症状が現れた場合は、速やかに医師に相談してください。
- 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害や黄疸が現れることがあります。全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が見られた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。特に胃腸が弱い方は注意が必要です。
- 過敏症:発疹、蕁麻疹など。アレルギー体質の方は注意が必要です。
漢方薬は体質や症状によって効果や副作用が異なります。自己判断で服用を開始・中止せず、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。特に、他の薬剤を服用している場合や、持病がある場合は、事前に医師に相談することが重要です。
皮膚科の日常診療では、患者さまが複数の医療機関を受診している場合や、市販薬を併用している場合も少なくありません。そのため、処方時には必ず服用中の薬剤について詳しく確認し、安全性を確保するよう努めています。
四物湯の副作用:どのような症状に注意すべきか?
四物湯は一般的に安全性の高い漢方薬ですが、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。副作用の頻度は高くありませんが、どのような症状に注意すべきかを知っておくことは重要です。当院では、処方時に副作用について丁寧に説明し、患者さまが安心して服用できるよう努めています。
重大な副作用
四物湯で報告されている重大な副作用は極めて稀ですが、以下の症状に注意が必要です[5]。
これらの症状は非常に稀ですが、万が一現れた場合は迅速な対応が必要です。当院では、定期的な血液検査で肝機能の状態を確認することもあります。
その他の副作用
比較的多く見られる可能性のある副作用としては、以下のようなものがあります[5]。
これらの症状が現れた場合は、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。皮膚科の臨床経験上、漢方薬による胃腸症状は、服用量を調整したり、食後に変更したりすることで軽減されるケースが多いです。また、発疹などの過敏症は、他の薬剤と同様に注意深く観察する必要があります。
何らかの異変を感じた場合は、自己判断で服用を継続せず、速やかに処方医または薬剤師に相談してください。症状によっては、他の漢方薬への切り替えや、対症療法が必要となることがあります。
四物湯に関する患者さまからのご質問
四物湯とジェネリック医薬品の選択肢

ツムラ71「四物湯」は、株式会社ツムラが製造販売する医療用漢方製剤です。医療用漢方製剤には、ツムラ製品以外にも複数のメーカーから同じ処方の漢方薬が販売されており、これらは一般的に「ジェネリック医薬品」に相当するものとして扱われます。ただし、漢方薬の場合は、生薬の品質や抽出方法によって、製品ごとに風味や効果にわずかな違いが生じる可能性も指摘されることがあります。
ジェネリック医薬品の現状
漢方製剤におけるジェネリック医薬品は、西洋薬のような厳密な生物学的同等性試験が義務付けられていません。しかし、同一の生薬構成と製造基準に基づいて作られているため、効果や安全性は同等であると考えられています。当院では、患者さまの希望や薬局での在庫状況に応じて、ツムラ製品以外の四物湯を処方することもあります。実際の処方では、患者さまから「特に違いは感じない」という声がほとんどですが、もし服用中に気になる点があれば、遠慮なくご相談いただくようお伝えしています。
| 項目 | ツムラ71 四物湯(先発品に相当) | 他社製 四物湯(ジェネリックに相当) |
|---|---|---|
| 製造メーカー | 株式会社ツムラ | コタロー、クラシエなど複数のメーカー |
| 品質管理 | 厳格な品質基準に基づき製造 | 各メーカーの品質基準に基づき製造 |
| 有効性・安全性 | 臨床実績が豊富 | 同等の有効性・安全性が期待される |
| 価格(薬価) | 比較的高価 | 比較的安価 |
選択のポイント
ジェネリック医薬品を選択することで、患者さまの医療費負担を軽減できる可能性があります。しかし、漢方薬の場合は、メーカーによって賦形剤(添加物)が異なることや、生薬の産地や加工方法のわずかな違いが、味や飲みやすさに影響を与えることもあります。当院では、患者さまが安心して治療を継続できるよう、これらの点を踏まえ、ご希望があればジェネリック医薬品についても説明し、選択肢を提供しています。重要なのは、どの製品を選ぶにしても、医師の指示のもとで正しく服用することです。
四物湯の科学的根拠と研究動向
四物湯は古くから用いられてきた漢方薬ですが、近年ではその作用メカニズムや効果について、科学的な研究も進められています。これらの研究は、漢方薬の現代医療における位置づけを確立する上で非常に重要です。
動物実験による効果の検証
四物湯の構成生薬や、四物湯そのものが持つ生物学的活性について、様々な動物実験が行われています。例えば、ある研究では、四物湯が子宮内膜癌の予防に寄与する可能性が示唆されています[1]。また、別の研究では、四物湯が網膜血管新生を抑制する効果を持つことが報告されており、眼科領域への応用も期待されています[2]。これらの研究は、四物湯が単に血を補うだけでなく、より複雑な生理作用を持つことを示唆しています。
皮膚科の臨床現場では、患者さまの体質や症状を総合的に判断して漢方薬を処方しますが、このような基礎研究の進展は、漢方薬の作用機序をより深く理解し、今後の治療選択に役立つものと期待しています。
ストレスとの関連性
現代社会において、ストレスは様々な身体症状や精神症状を引き起こす要因として知られています[4]。漢方医学では、ストレスが「気」や「血」の巡りを滞らせ、「気滞血瘀(きたいけつお)」などの状態を引き起こすと考えられています。四物湯は直接的なストレス軽減薬ではありませんが、血虚を改善し、全身のバランスを整えることで、ストレスによる身体的な不調(例えば、冷え性や月経不順、肌荒れなど)の緩和に間接的に寄与する可能性も考えられます。当院では、ストレスが皮膚症状に影響していると考えられる患者さまに対して、四物湯を含む漢方薬を補助的に用いることもあります。
今後の展望
漢方薬に関する研究は、伝統的な知見と現代科学を融合させる形で進展しています[3]。四物湯についても、その効果や作用メカニズムをさらに詳細に解明することで、より的確な治療への応用が期待されます。例えば、特定の皮膚疾患における四物湯の有効性を検証する臨床研究が進めば、よりエビデンスに基づいた治療選択が可能になるでしょう。皮膚科の専門医として、これらの研究動向に注目し、患者さまにより良い医療を提供できるよう努めています。
まとめ
ツムラ71「四物湯」は、当帰、芍薬、地黄、川芎の4つの生薬からなる漢方薬で、主に「血虚」と呼ばれる血の不足状態を改善し、全身の血行を促進する作用が期待されます。皮膚科領域では、乾燥肌、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみ、月経不順による肌荒れ、脱毛症など、血行不良や栄養不足が関与する様々な皮膚症状の補助療法として用いられることがあります。用法・用量は添付文書に準拠し、食前または食間に服用することが一般的です。重大な副作用は稀ですが、肝機能障害に注意が必要であり、比較的多く見られる副作用としては胃腸症状や発疹があります。服用に際しては、必ず医師や薬剤師と相談し、自身の体質や併用薬について正確に伝えることが重要です。ジェネリック医薬品も存在しますが、品質や風味にわずかな違いがある可能性も考慮し、医師と相談して選択することが望ましいでしょう。科学的な研究も進んでおり、その作用メカニズムの解明が期待されています。
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よくある質問(FAQ)
- Zenglin Lian, Kenji Niwa, Jingchun Gao et al.. Shimotsu-to is the agent in Juzen-taiho-to responsible for the prevention of endometrial carcinogenesis in mice.. Cancer letters. 2002. PMID: 12175519. DOI: 10.1016/s0304-3835(02)00059-9
- Yun Mi Lee, Chan-Sik Kim, Kyuhyung Jo et al.. Inhibitory effect of Samul-tang on retinal neovascularization in oxygen-induced retinopathy.. BMC complementary and alternative medicine. 2016. PMID: 26264147. DOI: 10.1186/s12906-015-0800-7
- Maria Elena Capra, Nicola Mattia Decarolis, Delia Monopoli et al.. Complementary Feeding: Tradition, Innovation and Pitfalls.. Nutrients. 2024. PMID: 38474864. DOI: 10.3390/nu16050737
- Sheldon Cohen, Peter J Gianaros, Stephen B Manuck. A Stage Model of Stress and Disease.. Perspectives on psychological science : a journal of the Association for Psychological Science. 2017. PMID: 27474134. DOI: 10.1177/1745691616646305
- 四物湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ツムラ71 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
