- ✓ 当帰芍薬散は、冷え症や月経不順、むくみなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 血行促進や水分代謝改善など複数の作用で、特に「水毒」体質の方に効果が期待されます。
- ✓ 比較的副作用は少ないですが、胃腸症状などが出ることがあり、医師や薬剤師への相談が重要です。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)とは?

当帰芍薬散(ツムラ23)は、冷え症や月経不順、生理痛、むくみ、めまい、頭重など、主に女性に多い症状に用いられる代表的な漢方薬です。この漢方薬は、血行を改善し、体内の水分バランスを整えることで、これらの症状の緩和を目指します。当院の皮膚科外来では、特に手足の冷えを訴える女性患者さまに、保険診療内で処方する機会が多い漢方薬の一つです。
当帰芍薬散は、以下の6種類の生薬から構成されています[5]。
- 当帰(トウキ):血行を促進し、体を温める作用があります。
- 芍薬(シャクヤク):鎮痛作用や鎮痙作用があり、生理痛の緩和に役立ちます。
- 川芎(センキュウ):血行を改善し、冷えや痛みを和らげます。
- 茯苓(ブクリョウ):体内の余分な水分を排出し、むくみを改善します。
- 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ):茯苓と同様に水分代謝を改善し、消化機能を助けます。
- 沢瀉(タクシャ):利尿作用があり、むくみの改善に寄与します。
これらの生薬が複合的に作用することで、血の巡りを良くし、体の冷えを改善するとともに、体内の余分な水分を排出してむくみを取り除く効果が期待されます。特に、当院の診察では、患者さまが「冷え性で、特に夕方になると足がむくむ」といった訴えをされる場合に、当帰芍薬散の適応を検討することが多いです。
- 水毒(すいどく)
- 漢方医学における概念の一つで、体内に余分な水分が滞留し、それが様々な不調(むくみ、冷え、めまい、頭痛など)を引き起こしている状態を指します。当帰芍薬散は、この水毒の改善に効果が期待されます。
当帰芍薬散の期待される効果とは?
当帰芍薬散は、その構成生薬の働きにより、多岐にわたる症状の改善が期待できます。主な効果としては、冷え症の改善、月経関連症状の緩和、むくみの軽減などが挙げられます。実際の臨床現場では、これらの症状に悩む多くの患者さまに処方し、良好な結果を得ています。
冷え症・貧血症状の改善
当帰芍薬散は、血行を促進し、体を内側から温める作用があるため、特に手足の冷えや全身の冷え症に効果が期待されます。冷えは万病の元とも言われ、様々な不調を引き起こす原因となるため、その改善は生活の質の向上に直結します。当院の診察では、冷え性で悩む患者さまから「当帰芍薬散を飲み始めてから、以前よりも手足が温かくなった」というフィードバックをいただくことも少なくありません。
また、貧血症状に対しても効果が示唆されています。子宮筋腫による貧血患者を対象とした研究では、当帰芍薬散が経口鉄剤と比較してヘモグロビン値を改善する可能性が報告されています[2]。これは、当帰芍薬散が血行を改善し、造血機能をサポートする働きがあるためと考えられます。ただし、重度の貧血には鉄剤治療が優先される場合もありますので、医師の判断が必要です。
動物実験においても、当帰芍薬散が冷水浸漬後の体温低下を、血流の早期回復を通じて改善することが示されています[3]。これは、当帰芍薬散が末梢の血流改善に寄与する可能性を示唆しており、冷え症に対する作用機序の一端を解明するものです。
月経不順・生理痛の緩和
当帰芍薬散は、女性ホルモンバランスの乱れに起因する月経不順や生理痛(月経困難症)にも効果が期待されます。当帰や川芎が血行を改善し、芍薬が鎮痛・鎮痙作用を発揮することで、子宮の収縮を和らげ、痛みを軽減する働きがあります。ある二重盲検試験では、当帰芍薬散が原発性月経困難症の鎮痛効果を持つことが報告されています[1]。当院では、生理痛がひどく、日常生活に支障をきたしている患者さまに対して、当帰芍薬散を処方することで症状の改善が見られるケースも多く経験しています。生理痛の薬
むくみ・めまい・頭重の改善
茯苓、蒼朮(白朮)、沢瀉といった生薬は、体内の余分な水分を排出し、水分代謝を改善する作用があります。これにより、むくみ(浮腫)の軽減が期待できます。特に、冷えとむくみを併発している患者さまには、当帰芍薬散が有効な選択肢となることが多いです。また、水分代謝の異常は、めまいや頭重感の原因となることもあり、当帰芍薬散がこれらの症状を和らげることもあります。診察の現場では、患者さまから「朝起きたときの顔のむくみが減った」「立ちくらみが軽くなった」といった声を聞くことがあります。
その他の効果
当帰芍薬散は、妊娠中の足のむくみや冷えにも比較的安全に用いられることがあります。また、近年では嗅覚神経の再生に影響を与える可能性も示唆されており、その作用機序は多岐にわたると考えられています[4]。
当帰芍薬散は、体質や症状によって効果の現れ方が異なります。自己判断せずに、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な診断と処方を受けるようにしてください。
当帰芍薬散の用法・用量と服用時の注意点

当帰芍薬散の適切な服用は、効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるために非常に重要です。添付文書に記載された用法・用量を守り、不明な点があれば必ず医師や薬剤師に確認するようにしてください。
用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢や体重、症状に応じて適宜増減されることがあります[5]。当院では、患者さまの生活スタイルや症状の重さに合わせて、1日2回または3回に分けて服用するよう指導しています。特に、食前や食間の服用は、漢方薬の吸収を良くし、効果を高めるために推奨されることが多いです。
- 食前:食事の約30分前
- 食間:食事と食事の間(食後約2時間後)
お湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の香りも楽しめ、より効果を実感しやすいと感じる患者さまもいらっしゃいます。しかし、飲みづらい場合は水で服用しても問題ありません。
服用時の注意点
- 飲み忘れに注意:漢方薬は継続して服用することで効果が期待できるため、飲み忘れがないように注意しましょう。当院では、スマートフォンのリマインダー機能などを活用していただくようアドバイスすることもあります。
- 他の薬剤との併用:他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。生薬の重複や相互作用により、思わぬ副作用が生じる可能性があります。
- 妊娠・授乳中の方:妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。当帰芍薬散は比較的安全とされていますが、個々の状況によって判断が必要です。
- アレルギー体質の方:過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある方は、服用前に医師または薬剤師に申し出てください。
皮膚科の日常診療では、患者さまが「いつまで飲めばいいですか?」と質問されることがよくあります。当帰芍薬散は体質改善を目指す漢方薬であるため、効果を実感するまでに数週間から数ヶ月かかることもあります。効果の現れ方には個人差がありますが、当院では、症状の改善が見られた後も、体質を維持するためにしばらく継続して服用することをお勧めすることが多いです。定期的な診察で効果や副作用を確認しながら、服用期間を調整していきます。
当帰芍薬散の副作用と注意すべき症状
当帰芍薬散は一般的に副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。体質や体調によっては、いくつかの症状が現れることがあります。副作用を早期に発見し、適切に対処するためには、服用中に体調の変化がないか注意深く観察することが大切です。
重大な副作用
当帰芍薬散で報告されている重大な副作用は極めて稀ですが、以下の症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください[5]。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に強くなる。むくみ、血圧上昇。
- ミオパチー:偽アルドステロン症と同様の症状で、特に筋肉の障害が顕著な場合。
これらの症状は、特に甘草(カンゾウ)という生薬を含む漢方薬で注意が必要とされています。当帰芍薬散には甘草は含まれていませんが、他の漢方薬を併用している場合は注意が必要です。
その他の副作用
比較的頻度は低いものの、以下の症状が現れることがあります[5]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など
- 過敏症:発疹、かゆみなど
当院で当帰芍薬散を処方した患者さまの中には、「飲み始めに少し胃がもたれる感じがした」とおっしゃる方が稀にいらっしゃいます。多くの場合、服用を継続するうちに症状は落ち着きますが、症状が続く場合や悪化する場合は、遠慮なくご相談ください。また、漢方薬は特有の風味があるため、それが原因で服用が難しいと感じる方もいらっしゃいます。その際は、服用方法の工夫や、他の漢方薬への切り替えも検討します。
副作用は個人差が大きく、上記以外の症状が現れる可能性もあります。何か異常を感じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
当帰芍薬散に関する患者さまからのご質問
ジェネリック医薬品について

当帰芍薬散には、ジェネリック医薬品が存在します。ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効能・効果、安全性を持つと国によって認められた医薬品です。開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも安価で提供されることが多く、患者さまの経済的負担を軽減するメリットがあります。
| 項目 | 先発医薬品(ツムラ当帰芍薬散) | ジェネリック医薬品(例:コタロー当帰芍薬散) |
|---|---|---|
| 有効成分 | 当帰芍薬散エキス | 当帰芍薬散エキス |
| 効能・効果 | 同等 | 同等 |
| 安全性 | 同等 | 同等 |
| 薬価 | 比較的高価 | 比較的安価 |
| 剤形 | 顆粒 | 顆粒、錠剤などメーカーによる |
当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品の処方も可能です。ジェネリック医薬品に切り替えることで、長期的な治療における医療費の負担を軽減できる場合があります。ただし、メーカーによって添加物や風味、剤形(顆粒、錠剤など)が異なることがあるため、気になる点があれば処方時に医師や薬剤師にご相談ください。特に漢方薬の場合、風味の違いが服用継続に影響することもあるため、患者さまの声を丁寧に聞き、最適な選択をサポートしています。
当帰芍薬散と生活習慣の改善
当帰芍薬散は、冷えやむくみなどの症状を和らげる効果が期待できますが、薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善と組み合わせることで、より効果的な体質改善を目指すことができます。当院の診察では、薬の処方だけでなく、日々の生活で実践できるアドバイスも積極的に行っています。
体を温める食事と飲み物
- 温かい食事:体を温める効果のある根菜類(ごぼう、にんじん、レンコンなど)や、生姜、にんにく、唐辛子などの香辛料を積極的に取り入れましょう。
- 温かい飲み物:白湯、生姜湯、ハーブティーなどを日常的に飲むことをお勧めします。冷たい飲み物や体を冷やす作用のある食べ物(夏野菜など)は、摂取量を控えめにしましょう。
当院の患者さまには、「朝一番に白湯を飲む習慣をつけたら、体が温まりやすくなった」という声も聞かれます。食事は毎日のことなので、少し意識を変えるだけでも大きな違いが生まれます。
適度な運動と入浴
- 運動:ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、血行が促進され、冷えの改善に繋がります。特に下半身の筋肉を鍛えることは、全身の血流改善に効果的です。
- 入浴:シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かることで、体の芯から温まり、血行が促進されます。38〜40℃程度のぬるめのお湯に15分以上浸かるのが理想的です。
「毎日湯船に浸かるようになってから、寝つきが良くなった」という患者さまもいらっしゃいます。入浴はリラックス効果もあり、ストレス軽減にも役立ちます。
体を冷やさない工夫
- 服装:首、手首、足首の「三首」を温めることを意識しましょう。冷えやすい季節だけでなく、夏場のエアコン対策としても有効です。
- 睡眠:十分な睡眠をとり、体を休ませることも大切です。寝る前に体を温めることで、質の良い睡眠に繋がります。
皮膚科の臨床経験上、冷えには個人差が大きく、季節や環境によっても症状が変動します。当帰芍薬散の服用と並行して、これらの生活習慣を見直すことで、体質改善をより強力にサポートできるでしょう。
まとめ
ツムラ23「当帰芍薬散」は、冷え症、月経不順、生理痛、むくみ、めまい、頭重といった、特に女性に多い症状の改善に用いられる漢方薬です。血行促進作用と水分代謝改善作用により、体質を根本から整えることを目指します。一般的に副作用は少ないとされていますが、胃腸症状などが現れる可能性もゼロではありません。服用に際しては、添付文書の用法・用量を守り、体調の変化に注意し、何か気になる症状があれば速やかに医師や薬剤師に相談することが重要です。ジェネリック医薬品も選択肢としてあり、経済的な負担を軽減できます。薬の効果を最大限に引き出すためには、温かい食事、適度な運動、十分な睡眠など、生活習慣の改善も併せて行うことが推奨されます。当院では、患者さま一人ひとりの体質や症状に合わせた適切な処方と、きめ細やかな生活指導を通じて、健康的な毎日をサポートしています。
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よくある質問(FAQ)
- N Kotani, T Oyama, I Sakai et al.. Analgesic effect of a herbal medicine for treatment of primary dysmenorrhea–a double-blind study.. The American journal of Chinese medicine. 1997. PMID: 9288368. DOI: 10.1142/S0192415X9700024X
- Tomoko Akase, Tomohide Akase, Satoshi Onodera et al.. A comparative study of the usefulness of toki-shakuyaku-san and an oral iron preparation in the treatment of hypochromic anemia in cases of uterine myoma.. Yakugaku zasshi : Journal of the Pharmaceutical Society of Japan. 2004. PMID: 14513774. DOI: 10.1248/yakushi.123.817
- Tomofumi Shimizu, Kiyoshi Terawaki, Kyoji Sekiguchi et al.. Tokishakuyakusan ameliorates lowered body temperature after immersion in cold water through the early recovery of blood flow in rats.. Journal of ethnopharmacology. 2022. PMID: 34896207. DOI: 10.1016/j.jep.2021.114896
- Takuya Noda, Hideaki Shiga, Kentaro Yamada et al.. Effects of Tokishakuyakusan on Regeneration of Murine Olfactory Neurons In Vivo and In Vitro.. Chemical senses. 2020. PMID: 30989168. DOI: 10.1093/chemse/bjz023
- 当帰芍薬散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
