- ✓ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は冷えによる痛みやしびれ、しもやけなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 添付文書に記載された用法・用量を守り、体質や症状に合わせて医師と相談しながら服用することが重要です。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、皮膚症状や消化器症状などの注意点も理解しておく必要があります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(ツムラ38)とは?

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、冷えによって引き起こされる様々な症状に用いられる漢方薬です。特に手足の冷え、しもやけ、腰痛、下腹部痛、頭痛、神経痛など、血行不良や冷えが原因と考えられる症状に効果が期待されます。当院の皮膚科外来では、冬場に手足のひどい冷えやしもやけで悩まれる患者さまから「何か良い薬はないか」という相談を受けることが多く、この漢方薬を処方する機会も少なくありません。
どのような生薬が配合されている?
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、以下の9種類の生薬から構成されています[1]。
- 当帰(トウキ):血行を促進し、体を温める作用があります。
- 桂皮(ケイヒ):体を温め、血行を改善する作用があります。
- 芍薬(シャクヤク):鎮痛作用があり、筋肉の緊張を和らげます。
- 細辛(サイシン):体を温め、鎮痛作用があります。
- 木通(モクツウ):利尿作用があり、体内の余分な水分を排出します。
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の作用を調和させ、炎症を抑える作用があります。
- 大棗(タイソウ):滋養強壮作用があり、消化器系の働きを助けます。
- 呉茱萸(ゴシュユ):体を温め、鎮痛作用や吐き気を抑える作用があります。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、消化を助ける作用があります。
これらの生薬が協調して働き、冷えによる血行不良を改善し、痛みやしびれを和らげることを目指します。特に、呉茱萸と生姜は体を温める作用が強く、当帰四逆湯にこれらが加わることで、より強力な温め効果が期待できるとされています。
どのような体質や症状に処方される?
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、一般的に「虚証(きょしょう)」で「寒証(かんしょう)」の体質の方に適しているとされています。虚証とは体力がなく、疲れやすい、顔色が悪いなどの状態を指し、寒証とは体が冷えやすい、寒がりであるといった状態を指します。具体的な症状としては、以下のようなものに処方されることが多いです。
- 手足の冷え、しもやけ
- 冷えによる腰痛、下腹部痛
- 神経痛、関節痛
- 頭痛、偏頭痛
- 月経痛、月経不順
実際の診察では、患者さまから「冬になると指先が真っ白になって痛み、ひどいしもやけになる」「冷えると足の感覚がなくなる」といった具体的な訴えを伺い、脈や舌の状態なども確認しながら、この漢方薬が適しているかを判断します。特に、冷えが原因で皮膚に血行障害が生じているケースでは、西洋薬と併用して処方することで、より効果的な治療を目指すことがあります。
- 虚証(きょしょう)
- 体力がなく、抵抗力が弱い体質を指す漢方医学の概念。疲れやすい、顔色が悪い、声に力がないなどの特徴が見られます。
- 寒証(かんしょう)
- 体が冷えやすく、寒さを感じやすい体質を指す漢方医学の概念。手足の冷え、胃腸の不調、痛みが冷えで悪化するなどの特徴が見られます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の期待できる効果とは?
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えに起因する様々な症状の改善に効果が期待されます。その作用機序は、生薬の組み合わせによる血行促進、鎮痛、温める効果にあります。当院では、特にレイノー現象やしもやけの治療補助として処方することが多く、患者さまからは「手足の冷えが和らいだ」「しもやけの痛みが軽減された」といったフィードバックをいただくことがあります。
冷えによる痛みやしびれの改善
この漢方薬の主たる効果の一つは、冷えによる痛みやしびれの改善です。当帰、桂皮、呉茱萸、生姜といった体を温める生薬が血行を促進し、冷えによって滞りがちな血液の流れを改善します。血流が改善されることで、末梢の組織への酸素や栄養の供給が促進され、痛み物質の排出もスムーズになります。芍薬や細辛には鎮痛作用もあり、冷えからくる神経痛や関節痛、腰痛などの痛みを和らげる効果が期待できます。
特に、冬場の冷え込みで悪化する手足のしびれや、冷えが原因で起こる神経痛の患者さまに処方した場合、数週間から数ヶ月の服用で症状の緩和が見られるケースが多いです。皮膚科の日常診療では、冷えによる血行障害が原因で起こる皮膚のトラブルも多く、この薬が血流改善に寄与することで、症状の軽減につながると考えています。
しもやけ(凍瘡)への効果
しもやけは、寒さによって手足の末梢血管が収縮し、血行障害を起こすことで生じる炎症です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、このしもやけの治療にも有効であるとされています。体を温め、血行を促進する作用により、末梢の血流を改善し、しもやけの症状であるかゆみ、痛み、腫れを和らげることが期待されます。
当院でしもやけの患者さまに当帰四逆加呉茱萸生姜湯を処方した経験では、特に慢性的にしもやけを繰り返す方や、冷えが強く他の治療法では改善しにくい方に有効な場合があります。外来でこの薬を使用した経験では、冷え対策と併用することで、例年よりも症状が軽くなった、あるいは発症しにくくなったという声をいただくことがあります。ただし、すでに皮膚に潰瘍ができているような重度のしもやけには、他の治療法との併用や医師の診察が不可欠です。
その他の適応症
添付文書には、「冷え症、しもやけ、頭痛、腰痛、下腹部痛、月経痛、神経痛」が効能・効果として記載されています[1]。冷えが原因で起こるこれらの症状に対して、総合的に体を温め、血行を改善することで効果を発揮します。月経痛や下腹部痛も、冷えによる血行不良が原因で悪化することが多いため、この漢方薬が選択肢となることがあります。
皮膚科の臨床経験上、冷え症の患者さまは、肌の乾燥やターンオーバーの乱れなど、他の皮膚トラブルを併発していることも少なくありません。当帰四逆加呉茱萸生姜湯による全身の血行改善は、これらの皮膚状態の改善にも間接的に良い影響を与える可能性も考えられます。ただし、あくまで補助的な治療であり、個々の症状に応じた適切な皮膚科治療も重要です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の正しい用法・用量とは?

漢方薬の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるためには、正しい用法・用量を守ることが非常に重要です。当帰四逆加呉茱萸生姜湯の用法・用量は、添付文書に明確に記載されています[1]。
一般的な用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。これはツムラのエキス顆粒の場合の標準的な用量です。年齢、体重、症状によって適宜増減されることがありますので、必ず医師の指示に従ってください。
- 服用回数:1日2〜3回
- 服用タイミング:食前または食間
- 服用方法:水またはぬるま湯で服用する。お湯に溶かして飲むことも可能です。
当院では、患者さまに服用方法を説明する際、「食前とは食事の30分〜1時間前、食間とは食事と食事の間(食後2時間程度)を指します」と具体的に伝えるようにしています。飲み忘れを防ぐため、朝食前と夕食前など、ご自身の生活リズムに合わせたタイミングで服用を継続することが大切です。
服用上の注意点
- 飲み忘れ:飲み忘れた場合は、気がついた時点で服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばし、次の服用時間から再開してください。2回分を一度に服用することは避けてください。
- 長期服用:症状が改善しても、自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従ってください。特に、長期にわたる服用が必要な場合は、定期的な診察で体調の変化を確認することが重要です。
- 他の薬剤との併用:他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。生薬の重複や相互作用によって、副作用のリスクが高まる可能性があります。
皮膚科の診察では、患者さまがすでに他の医療機関で処方された薬や市販薬を服用していることが多いため、必ず問診で確認し、相互作用がないか注意深く判断しています。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があるため、慎重な検討が必要です。
漢方薬は体質や症状によって効果が異なります。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談し、指示された用法・用量を守って服用してください。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の副作用と注意点はある?
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、医薬品である以上、副作用のリスクはゼロではありません。添付文書には、重大な副作用とその他の副作用が記載されており、これらを理解しておくことが重要です[1]。
重大な副作用
発生頻度は極めて稀ですが、以下の重大な副作用が報告されています。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に進行する。むくみ、血圧上昇が見られることもあります。甘草の成分が原因となることがあります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行により、横紋筋融解症に至ることもあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。当院では、特に高齢の患者さまや、他の疾患で複数の薬剤を服用されている患者さまには、これらの副作用のリスクについて丁寧に説明し、定期的な血液検査で電解質バランスなどを確認することがあります。
その他の副作用
比較的頻度は低いものの、以下のような副作用が報告されています[1]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。呉茱萸や生姜などの刺激性の生薬が原因となることがあります。
- 皮膚症状:発疹、発赤、かゆみなど。アレルギー反応として現れることがあります。
これらの症状が現れた場合も、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。特に皮膚症状は皮膚科医として注意深く観察するポイントです。当院では、服用開始後に皮膚のかゆみや発疹を訴える患者さまがいらっしゃった場合、他の薬剤との関連性や体質的なアレルギー反応の可能性も考慮し、適切な対応を検討します。
服用できない方・慎重な服用が必要な方
- 妊娠中・授乳中の女性:妊娠中の服用については安全性が確立されていないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ服用を検討します。授乳中の服用も医師と相談してください。
- 高齢者:生理機能が低下していることが多いため、減量するなど注意が必要です。
- 胃腸が弱い方:消化器症状が出やすい可能性があるため、慎重に服用する必要があります。
- 高血圧、心臓病、腎臓病のある方:偽アルドステロン症のリスクがあるため、医師と相談の上、慎重に服用してください。
診察の現場では、患者さまの既往歴や現在服用中の薬を詳しく伺い、服用が適切かどうかを判断します。特に、冷え症の患者さまの中には、他の持病をお持ちの方もいらっしゃるため、総合的な視点での判断が不可欠です。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯に関する患者さまからのご質問
当帰四逆加呉茱萸生姜湯のジェネリック医薬品について

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、ツムラが製造販売する医療用漢方製剤(ツムラ38)が広く知られていますが、他にも複数の製薬会社から同成分の医療用漢方製剤が販売されています。漢方薬の場合、一般的に「ジェネリック医薬品」という表現はあまり使われませんが、これは西洋薬におけるジェネリック医薬品と同様に、先発品と同等の品質、効き目、安全性が確認された後発品と考えることができます。
ジェネリック医薬品の選択肢
ツムラ以外のメーカーからも、当帰四逆加呉茱萸生姜湯のエキス顆粒が製造・販売されており、これらは保険適用となります。例えば、コタロー、クラシエ、オースギなどのメーカーから同様の漢方製剤が提供されています。これらの製品は、配合されている生薬の種類や分量は基本的に同じですが、製造方法や賦形剤(添加物)が異なる場合があります。
当院では、患者さまの希望や薬局での取り扱い状況、あるいは特定のメーカーの製品でアレルギー反応が出た経験がある場合などを考慮し、他社の同等品を処方することもあります。実際のところ、多くの患者さまはメーカーの違いによる効果や副作用の差を実感することは少ないですが、稀に「このメーカーの漢方薬は飲みやすい」といった声を聞くこともあります。
| 項目 | ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯 | 他社製当帰四逆加呉茱萸生姜湯(例: クラシエ) |
|---|---|---|
| 製造販売元 | 株式会社ツムラ | クラシエ薬品株式会社など |
| 製品番号(ツムラ) | 38 | なし(各社独自の製品コード) |
| 有効成分 | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス |
| 保険適用 | あり | あり |
| 剤形 | 顆粒 | 顆粒 |
ジェネリック医薬品を選ぶメリット
ジェネリック医薬品(同等品)を選択する主なメリットは、医療費の負担軽減です。一般的に、ジェネリック医薬品は先発品よりも薬価が安く設定されているため、患者さまの窓口負担を抑えることができます。これは、特に長期にわたって服用が必要な漢方薬において、経済的なメリットが大きいと言えます。
当院では、患者さまの経済的負担を考慮し、ジェネリック医薬品の選択肢がある場合にはその情報を提供しています。ただし、どのメーカーの製品を処方するかは、医師の判断と患者さまの同意に基づいて決定されます。薬局によっては特定のメーカーの製品しか取り扱っていない場合もあるため、事前に確認することをお勧めします。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯と生活習慣の改善
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えによる症状の改善に有効な漢方薬ですが、薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善と併用することで、より効果的な治療が期待できます。特に皮膚科の診療では、冷えが原因で起こる皮膚トラブルに対して、内服薬と外用薬、そして生活習慣指導を組み合わせた総合的なアプローチを重視しています。
体を温める生活習慣
冷え症の改善には、日々の生活の中で体を温める工夫を取り入れることが重要です。当院では、以下の点を患者さまにアドバイスしています。
- 適度な運動:ウォーキングや軽いストレッチなど、継続できる運動で血行を促進しましょう。特に下半身の筋肉を動かすことで、全身の血流が改善されます。
- 体を温める食事:根菜類、生姜、唐辛子などの体を温める食材を積極的に摂りましょう。冷たい飲み物や食べ物は控えめにし、温かいものを摂るように心がけてください。
- 入浴:シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かることで体の芯から温まり、血行が促進されます。
- 服装の工夫:首、手首、足首など「首」とつく部位を温めることで、全身の冷え対策になります。重ね着や保温性の高い素材の衣類を選ぶことも有効です。
- 十分な睡眠:質の良い睡眠は、自律神経のバランスを整え、血行改善にもつながります。
皮膚科の日常診療では、冷えが原因で起こる乾燥肌や肌荒れの患者さまも多く、血行改善は皮膚のバリア機能維持にも寄与すると考えています。薬の効果を最大限に引き出すためにも、これらの生活習慣の改善は非常に重要です。
ストレス管理の重要性
ストレスは自律神経のバランスを乱し、血管の収縮を引き起こして冷えを悪化させることが知られています。そのため、冷え症の改善にはストレス管理も重要な要素となります。リラックスできる時間を作る、趣味に没頭する、十分な休息を取るなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
当院の診察では、冷え症の患者さまの中には、仕事や人間関係などで強いストレスを抱えている方も少なくありません。そのような場合、薬物治療と並行して、ストレス軽減のためのアドバイスや、必要に応じて専門機関への紹介を検討することもあります。心身のバランスを整えることが、冷え症の根本的な改善につながると考えています。
まとめ
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(ツムラ38)は、冷えによる痛み、しびれ、しもやけ、腰痛、頭痛、月経痛などの症状に用いられる漢方薬です。当帰、桂皮、呉茱萸、生姜などの生薬が配合されており、血行促進作用や体を温める作用を通じて症状の改善を目指します。用法・用量を守り、医師の指示に従って服用することが重要です。重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチー、消化器症状、皮膚症状などの可能性も理解しておく必要があります。妊娠中や特定の持病がある方は慎重な服用が求められます。ツムラ以外にも同成分の医療用漢方製剤があり、これらはジェネリック医薬品と同様に医療費の負担軽減に役立ちます。薬物治療と並行して、適度な運動、体を温める食事、十分な睡眠、ストレス管理といった生活習慣の改善も、冷え症の根本的な解決には不可欠です。
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