防風通聖散とは?その特徴と適応症

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、漢方の古典である『宣明論』に収載されている処方で、18種類の生薬から構成される漢方薬です。この処方は、体格がしっかりしていて、お腹周りに脂肪がつきやすく、便秘がちな方の肥満症やむくみ、便秘、高血圧に伴う症状(動悸・肩こり・のぼせ)などに用いられます[5]。特に、いわゆる「お腹の脂肪」が気になる方によく処方されます。
当院の皮膚科外来では、生活習慣病の改善を目指す中で、肥満が関与する皮膚疾患(例:アトピー性皮膚炎の悪化、間擦疹など)の患者さまに対して、食事指導や運動療法と合わせて防風通聖散の処方を検討することがあります。肥満は様々な健康問題の根源となるため、漢方薬も選択肢の一つとして活用しています。
防風通聖散の構成生薬と作用メカニズム
防風通聖散は、以下に示す18種類の生薬が組み合わさることで、多角的な作用を発揮します[5]。
- 発汗・解熱作用: 麻黄、生姜、薄荷、防風、荊芥など
- 利尿作用: 芒硝、滑石、白朮、甘草など
- 瀉下(便通改善)作用: 大黄、芒硝など
- 抗炎症・鎮痛作用: 桔梗、石膏、黄芩、山梔子など
- 血行促進作用: 当帰、川芎、芍薬など
これらの生薬が協調して働き、体内の余分な熱や水分、老廃物を排出することで、肥満に伴う症状の改善を目指します。特に、大黄や芒硝による便通改善作用は、便秘がちな方にとって重要な効果の一つです。
- 証(しょう)とは
- 漢方医学における「証」とは、患者さまの体質、体力、症状、病気の進行度などを総合的に判断した病態のことで、これに基づいて適切な漢方薬が選択されます。防風通聖散は、一般的に「実証」と呼ばれる、体力があり、比較的がっしりした体格の方に適しているとされます。
防風通聖散の科学的エビデンスと効果は?
防風通聖散は、長年にわたり臨床で用いられてきた漢方薬ですが、近年ではその効果を裏付ける科学的な研究も進められています。特に肥満に対する効果については、複数の報告があります。
肥満症に対する効果
システマティックレビューとメタアナリシスによると、防風通聖散は肥満症の参加者においてBMIの改善に寄与する可能性が示唆されています[2]。また、高脂肪食誘発肥満マウスモデルを用いた研究では、防風通聖散が脂肪蓄積や腸内細菌叢に異なる影響を与えることが報告されており、その作用メカニズムの解明が進んでいます[1]。さらに、加齢に伴う肥満の進行を改善する効果も示唆されています[3]。
皮膚科の日常診療では、肥満が原因で悪化する皮膚疾患の治療において、体重管理は重要なポイントになります。防風通聖散を処方する際は、患者さまの体質や生活習慣、他の併用薬などを考慮して、個々に合った用法を選択しています。
内臓脂肪への影響と腸内環境
防風通聖散は、内臓脂肪の減少にも関連する可能性が指摘されています。マウスを用いた研究では、防風通聖散が腸管バリア機能を改善し、腸内細菌の一種であるアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の増加を促すことで、高脂肪食誘発肥満マウスの糖代謝を改善することが報告されています[4]。このアッカーマンシア・ムシニフィラは、腸の健康や代謝に良い影響を与えることで知られており、防風通聖散が腸内環境を介して肥満に作用する可能性を示唆しています。
実際の診察では、患者さまから「漢方薬で本当に痩せるの?」と質問されることがよくあります。防風通聖散は、あくまで生活習慣の改善をサポートするものであり、食事や運動と組み合わせることで、より効果が期待できることを丁寧に説明するようにしています。
| 項目 | 防風通聖散の主な作用 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 脂肪燃焼 | 代謝促進作用 | 腹部脂肪(特に内臓脂肪)の減少 |
| 便通改善 | 大黄・芒硝による瀉下作用 | 便秘の改善、老廃物排出促進 |
| むくみ改善 | 利尿作用 | 体内の余分な水分排出 |
| 高血圧随伴症状 | 炎症抑制、血行促進 | 動悸、肩こり、のぼせの緩和 |
| 腸内環境 | 腸管バリア機能改善、特定の腸内細菌増加 | 代謝改善への寄与 |
防風通聖散の用法・用量と服用上の注意点

防風通聖散は、その効果を最大限に引き出し、かつ安全に服用するために、添付文書に記載された用法・用量を守ることが重要です。自己判断での増量や減量は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
標準的な用法・用量
ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)の場合、通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します[6]。食前とは食事の約30分前、食間とは食後約2時間後を指します。
- 成人: 1日7.5g(2.5gを3回、または3.75gを2回)
- 服用タイミング: 食前または食間
- 服用方法: 水またはぬるま湯で服用
皮膚科の臨床経験上、漢方薬は継続して服用することで効果を実感される方が多い印象です。特に防風通聖散の場合、便通改善効果は比較的早く現れることがありますが、肥満症に対する効果を実感するには数週間から数ヶ月かかることがあります。
服用上の注意点
- 体質・体力: 体力虚弱な方や胃腸が弱い方には不向きな場合があります。
- 下痢: 大黄や芒硝の作用により、下痢や軟便になりやすい方は注意が必要です。症状が続く場合は医師に相談してください。
- 併用薬: 他の漢方薬や西洋薬との飲み合わせによっては、副作用が増強されたり、効果が減弱したりする可能性があります。必ず医師や薬剤師に相談してください。
- 妊娠・授乳中: 妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 高齢者・小児: 高齢者や小児への投与は、慎重に行う必要があります。
防風通聖散は、体質や症状によって効果の現れ方や副作用のリスクが異なります。自己判断で服用を開始せず、必ず医療機関で相談し、適切な診断と処方を受けるようにしてください。
防風通聖散の副作用とは?
防風通聖散は一般的に安全性の高い漢方薬とされていますが、体質や体調によっては副作用が現れることがあります。副作用の症状や頻度を理解し、異変を感じた際には速やかに医療機関を受診することが重要です。
重大な副作用
頻度は不明とされていますが、以下のような重大な副作用が報告されています[5][6]。
- 間質性肺炎: 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空咳が出る、発熱などがみられる。
- 偽アルドステロン症: 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に強くなる。むくみ、血圧上昇もみられる。
- ミオパチー: 偽アルドステロン症の進行により、脱力感、筋肉痛、四肢痙攣、麻痺などの症状が現れる。
- 肝機能障害、黄疸: 発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振などが現れる。
- 腸間膜静脈硬化症: 長期投与により、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返し現れる。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。皮膚科の臨床経験上、重大な副作用は稀ですが、患者さまには必ず初期症状について説明し、不安な点があればすぐに相談するようお伝えしています。
その他の副作用
比較的頻度が高い、または注意が必要な副作用は以下の通りです[5][6]。
- 消化器: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢
- 皮膚: 発疹、発赤、かゆみ
- その他: 動悸、のぼせ、不眠
これらの症状も、服用を続けることで改善する場合もあれば、中止が必要な場合もあります。特に下痢は、防風通聖散の作用の一つでもありますが、あまりにひどい場合は服用量を調整したり、中止したりすることがあります。当院では防風通聖散を処方した患者さまから、「お腹が緩くなった」というフィードバックをいただくことが多いです。その際は、服用回数や量を調整することで対応しています。
防風通聖散に関する患者さまからのご質問

ジェネリック医薬品について
防風通聖散は、ツムラから「ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)」として販売されていますが、他の製薬会社からも同成分のジェネリック医薬品(後発医薬品)が製造・販売されています。
ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)の特許期間が満了した後に、同じ有効成分、同じ効能・効果で製造・販売される医薬品のことです。開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも安価に提供されることが特徴です。品質、有効性、安全性は先発医薬品と同等であることが国によって保証されています。
当院では、患者さまの医療費負担を軽減するため、ジェネリック医薬品の選択肢がある場合には、積極的に情報提供を行っています。患者さまの希望に応じて、ジェネリック医薬品を処方することも可能です。
- 有効成分: 先発医薬品と同じ
- 効能・効果: 先発医薬品と同じ
- 安全性: 先発医薬品と同等
- 価格: 先発医薬品よりも安価
ただし、漢方薬のジェネリック医薬品の場合、製造方法や賦形剤(有効成分以外の成分)が異なることで、風味や溶けやすさなどに違いを感じる方もいらっしゃいます。もし、ジェネリック医薬品に変更後に何か気になる点があれば、遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。
まとめ
防風通聖散は、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな方の肥満症やむくみ、便秘、高血圧に伴う症状などに用いられる漢方薬です。18種類の生薬が複合的に作用し、代謝促進、便通改善、利尿作用などを通じて、肥満に伴う症状の緩和を目指します。科学的な研究も進んでおり、BMIや内臓脂肪の改善、腸内環境への良い影響も報告されています。服用に際しては、添付文書に記載された用法・用量を守り、特に体力虚弱な方や胃腸が弱い方は注意が必要です。重大な副作用として、間質性肺炎や肝機能障害、偽アルドステロン症などが稀に報告されており、体調の変化には十分注意し、異変を感じた際は速やかに医療機関を受診してください。ジェネリック医薬品も存在し、医療費負担の軽減に貢献しています。防風通聖散は、生活習慣の改善と併用することで、より効果が期待できる漢方薬です。医師の診察を受け、ご自身の体質や症状に合った適切な処方を受けることが重要です。
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よくある質問(FAQ)
- Kosuke Nakamichi, Tetsuhiro Yoshino, Masahiro Akiyama et al.. Three Kampo medicines-bofutsushosan, boiogito, and daisaikoto-have different effects on host fat accumulation and the intestinal microbiota in a high-fat-diet-induced mouse model of obesity.. Journal of natural medicines. 2025. PMID: 40563053. DOI: 10.1007/s11418-025-01917-3
- Kazushi Uneda, Yuki Kawai, Takayuki Yamada et al.. Japanese traditional Kampo medicine bofutsushosan improves body mass index in participants with obesity: A systematic review and meta-analysis.. PloS one. 2022. PMID: 35417488. DOI: 10.1371/journal.pone.0266917
- Takafumi Saeki, Saya Yamamoto, Junji Akaki et al.. Ameliorative effect of bofutsushosan (Fangfengtongshengsan) extract on the progression of aging-induced obesity.. Journal of natural medicines. 2024. PMID: 38662301. DOI: 10.1007/s11418-024-01803-4
- Shiho Fujisaka, Isao Usui, Allah Nawaz et al.. Bofutsushosan improves gut barrier function with a bloom of Akkermansia muciniphila and improves glucose metabolism in mice with diet-induced obesity.. Scientific reports. 2020. PMID: 32218475. DOI: 10.1038/s41598-020-62506-w
- 防風通聖散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ツムラ62 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
