苓桂朮甘湯

【苓桂朮甘湯の効果と副作用】|皮膚科医が解説

最終更新日: 2026-04-25
📋 この記事のポイント
  • ✓ 苓桂朮甘湯は「水毒」を改善し、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛などに効果が期待できます。
  • ✓ 用法・用量は添付文書に準拠し、体質や症状に合わせて調整することが重要です。
  • ✓ 重大な副作用として偽アルドステロン症やミオパチーがあり、定期的な経過観察が必要です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)は、漢方医学で「水毒(すいどく)」と呼ばれる体内の水分代謝異常を改善することを目的とした漢方薬です。めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛などの症状に用いられ、特に体力が中程度以下で、冷えやむくみを伴う方に処方されることが多いです。

苓桂朮甘湯とは?その特徴と適応症状

苓桂朮甘湯の顆粒が手のひらに乗せられており、漢方薬の効能を連想させる
苓桂朮甘湯の顆粒と漢方薬

苓桂朮甘湯は、桂枝(ケイシ)、茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、甘草(カンゾウ)の4つの生薬から構成される漢方薬です。これらの生薬が協力し、体内の水分バランスを整え、めまいや頭痛、動悸などの症状を緩和する効果が期待されます。当院の皮膚科外来では、自律神経の乱れからくるめまいや立ちくらみを訴える患者さまに、西洋薬と併用して処方するケースも少なくありません。

構成生薬とその働き

苓桂朮甘湯の主要な生薬とその働きは以下の通りです。

  • 桂枝(ケイシ): 身体を温め、血行を促進し、のぼせや動悸を鎮める作用があります。
  • 茯苓(ブクリョウ): 利水作用があり、体内の余分な水分を排出し、めまいやむくみを改善します。
  • 蒼朮(ソウジュツ): 胃腸の働きを整え、水分代謝を改善する作用があります。
  • 甘草(カンゾウ): 他の生薬の働きを調和させ、炎症を抑え、痛みを和らげる作用があります。

これらの生薬の組み合わせにより、苓桂朮甘湯は特に「水毒」と呼ばれる状態、すなわち体内の水分代謝が滞り、その結果として様々な不調が現れる病態に効果を発揮すると考えられています[1]。実際の診察では、患者さまから「フワフワするめまいがする」「立ち上がるとクラっとする」といった訴えを聞くことがよくあります。このような症状に対して、苓桂朮甘湯が有効な選択肢となることがあります。

どのような症状に用いられる?

苓桂朮甘湯の適応症は、添付文書によると「めまい、ふらつきがあり、または動悸があり、ときにのぼせや頭痛があるものの次の諸症:神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛」とされています[3]。具体的には以下のような症状に対して処方されることがあります。

  • めまい・立ちくらみ: 特に起立性調節障害などで見られる、立ち上がった際のふらつきやめまいに効果が期待されます[1]
  • 動悸・息切れ: 不安や緊張に伴う動悸や、心臓神経症のような症状に用いられることがあります。
  • 頭痛・頭重感: 特に水分の停滞による頭重感や、冷えを伴う頭痛に有効な場合があります。
  • 神経症・ノイローゼ: 不安感や神経過敏といった精神的な症状にも、体質改善の一環として処方されることがあります。

皮膚科の日常診療では、アトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹の患者さまが、ストレスや自律神経の乱れからくるこれらの症状を併発している場合に、補助的に苓桂朮甘湯を処方することがあります。全身状態を整えることで、皮膚症状の改善にも繋がるケースがあるためです。

水毒(すいどく)
漢方医学における概念の一つで、体内の水分代謝が滞り、余分な水分が停滞することで引き起こされる様々な不調の総称です。めまい、むくみ、頭重感、吐き気、下痢、関節痛などが含まれます。

苓桂朮甘湯の正しい用法・用量とは?

苓桂朮甘湯は、その効果を最大限に引き出すために、正しい用法・用量で服用することが重要です。当院では、患者さまの体質や症状、生活習慣を詳しく問診した上で、添付文書の記載に基づき最適な服用方法をご説明しています。

添付文書に基づく用法・用量

ツムラ39「苓桂朮甘湯」の添付文書に記載されている用法・用量は以下の通りです[3]

  • 成人: 1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。
  • 小児: 体重、年齢、症状に応じて適宜減量されます。医師または薬剤師の指示に従ってください。

食前とは食事の30分〜1時間前、食間とは食事と食事の間(食後2時間程度)を指します。お湯に溶かして温かい状態で服用すると、吸収が良くなり、生薬の香りも感じやすくなるため、より効果を実感しやすいとされています。実際の処方では、患者さまのライフスタイルに合わせて、朝食後と夕食前など、服用しやすい時間帯を考慮して指示を出すこともあります。

服用期間と効果の実感

漢方薬は一般的に、西洋薬と比較して効果の発現に時間がかかることがあります。苓桂朮甘湯の場合も、数日から数週間で効果を実感し始める方が多い印象です。当院では苓桂朮甘湯を処方した患者さまから、「飲み始めてから1週間くらいで、朝の立ちくらみが少し楽になった」「2週間ほどで、めまいの頻度が減った」というフィードバックをいただくことが多いです。しかし、効果の感じ方には個人差が大きいため、症状が改善しない場合や悪化する場合は、遠慮なく再受診していただくようお伝えしています。

⚠️ 注意点

自己判断で服用量を増減したり、服用を中止したりすることは避けてください。必ず医師や薬剤師の指示に従い、適切な用法・用量を守って服用しましょう。特に、他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、相互作用の可能性もあるため、必ず事前に医師に伝えてください。

苓桂朮甘湯の副作用はある?

薬の副作用を説明する医師と不安な表情の患者、リスク説明の様子
副作用について説明する医師

どのような薬にも副作用のリスクは存在します。苓桂朮甘湯も例外ではなく、服用によっていくつかの副作用が報告されています。皮膚科の臨床経験上、患者さまには副作用について十分に理解していただくことが、安全な治療の継続には不可欠だと考えています。

重大な副作用

苓桂朮甘湯の重大な副作用として、以下のものが添付文書に記載されています[3]

  • 偽アルドステロン症: 尿量が減少したり、顔や手足がむくんだり、まぶたが重くなったり、手がこわばったり、血圧が上がったりする症状が現れることがあります。これは甘草に含まれるグリチルリチン酸が原因となることがあります[2]
  • ミオパチー: 偽アルドステロン症の結果として、脱力感、筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。特に、甘草を含む他の漢方薬やグリチルリチン酸製剤との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。当院では、患者さまの既往歴や併用薬を詳細に確認し、リスクを最小限に抑えるよう努めています。

その他の副作用

重大な副作用ほどではないものの、以下のような副作用が報告されることがあります[3]

  • 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
  • 過敏症: 発疹、蕁麻疹など。

これらの症状も、もし現れた場合は医師や薬剤師に相談してください。特に皮膚症状が出た場合は、皮膚科医としてその原因が薬によるものか、他の要因によるものかを鑑別し、適切な対処法をアドバイスしています。当院では、処方する際に「何かいつもと違う症状が出たらすぐに連絡してください」と患者さまにお伝えし、安心して治療を受けていただけるよう心がけています。

副作用の種類具体的な症状発生時の対応
重大な副作用偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇)、ミオパチー(脱力感、筋肉痛)直ちに服用中止し、医師の診察を受ける
その他の副作用食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢、発疹、蕁麻疹症状が続く場合や悪化する場合は医師に相談

苓桂朮甘湯に関する患者さまからのご質問

診察の現場では、苓桂朮甘湯の服用に関して患者さまから様々な質問をいただきます。ここでは、特に頻繁に聞かれる質問とその回答を、私の臨床経験を交えてご紹介します。

🩺 診察でよく聞かれる質問
Q. 苓桂朮甘湯と他の漢方薬を併用しても大丈夫ですか?
A. 漢方薬同士の併用は、生薬の重複や相互作用によって副作用のリスクを高める可能性があります。特に甘草を含む漢方薬を複数併用すると、偽アルドステロン症のリスクが上がることがあります。当院では、患者さまが服用しているすべての漢方薬やサプリメントについて確認し、安全性を考慮した上で処方を判断していますので、必ず医師に伝えてください。
Q. 飲み忘れてしまった場合、どうすれば良いですか?
A. 飲み忘れた場合は、気づいた時点で1回分を服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、忘れた分は服用せず、次の服用時間から通常通り服用してください。2回分を一度に服用することは避けてください。当院では、服用を習慣化するために、お薬カレンダーの利用や、食事の準備と同時に服用するなどの工夫をお勧めしています。
Q. どのくらい飲み続ければ効果が出ますか?
A. 効果の実感には個人差がありますが、当院の患者さまでは、めまいや立ちくらみの症状が改善するまでに数週間から1ヶ月程度かかる方が多い印象です。症状が安定した後も、体質改善のためにしばらく継続していただくこともあります。定期的な診察で効果を確認し、必要に応じて処方内容を調整していきます。
Q. 妊娠中や授乳中に服用しても安全ですか?
A. 妊娠中や授乳中の服用については、安全性が確立されていないため、原則として避けるか、医師と十分に相談の上で慎重に検討する必要があります。当院では、妊娠を希望されている方や妊娠の可能性がある方には、必ずその旨を申告していただくようお願いしており、リスクとベネフィットを総合的に判断して処方を決定しています。
Q. 市販の漢方薬と医療用漢方薬の違いは何ですか?
A. 医療用漢方薬は、医師の診断に基づいて処方され、一般的に市販薬よりも生薬の含有量が多い傾向があります。また、保険適用となるため費用負担も軽減されます。市販薬は手軽に入手できますが、自己判断での服用は思わぬ副作用や症状の悪化を招く可能性もあります。当院では、患者さまの症状や体質を正確に把握し、最適な医療用漢方薬を処方することで、より安全で効果的な治療を目指しています。
Q. 苓桂朮甘湯を飲むと眠くなりますか?
A. 苓桂朮甘湯には直接的に眠気を誘発する成分は含まれていません。しかし、めまいや動悸などの症状が緩和されることで、心身がリラックスし、結果的に眠りやすくなる、という方はいるかもしれません。もし服用後に過度な眠気を感じる場合は、他の原因も考えられるため、当院にご相談ください。

ジェネリック医薬品について

ジェネリック医薬品の錠剤が多数並べられ、コスト削減のメリットを示す
ジェネリック医薬品の錠剤

苓桂朮甘湯には、ツムラの製品以外にもいくつかのメーカーから医療用漢方製剤が販売されており、これらは一般的に「ジェネリック医薬品」として扱われます。ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分、同じ効能・効果を持つ医薬品で、開発費用が抑えられるため、一般的に薬価が安価に設定されています。

ジェネリック医薬品の選択肢

苓桂朮甘湯は、ツムラ(ツムラ漢方苓桂朮甘湯エキス顆粒)以外にも、クラシエ(クラシエ苓桂朮甘湯エキス顆粒)、コタロー(コタロー苓桂朮甘湯エキス細粒)、オースギ(オースギ苓桂朮甘湯エキス顆粒)など、複数の製薬会社から提供されています。これらの製品は、日本薬局方収載の生薬を使用し、製造工程や品質管理基準も厳しく定められているため、効果や安全性は先発品と同等とされています。

当院では、患者さまの希望や薬局での取り扱い状況に応じて、ジェネリック医薬品の選択肢があることを説明しています。費用負担を軽減したいという患者さまには、ジェネリック医薬品の選択をお勧めすることもあります。実際に、多くの患者さまがジェネリック医薬品を選択されており、特に問題なく治療を継続されています。

ジェネリック医薬品を選ぶメリット

  • 薬価の軽減: 医療費の自己負担額を抑えることができます。長期的な服用が必要な場合、このメリットは大きいです。
  • 品質・効果の同等性: 厚生労働省の厳しい基準をクリアしており、先発品と同等の品質、有効性、安全性が保証されています。

ただし、漢方製剤の場合、メーカーによって顆粒の味や溶けやすさ、賦形剤(添加物)が異なることがあります。そのため、特定のメーカーの製品で胃部不快感を感じるなど、個人差が生じる可能性もゼロではありません。当院では、そのような場合は遠慮なくお申し出いただき、必要に応じて他のメーカーの製品への変更を検討しています。

まとめ

苓桂朮甘湯は、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛といった「水毒」に起因する症状に対して有効性が期待される漢方薬です。桂枝、茯苓、蒼朮、甘草の4つの生薬が協調して作用し、体内の水分代謝を整えることで症状の改善を目指します。用法・用量は添付文書に準拠し、食前または食間に服用することが基本です。

副作用としては、重大なものとして偽アルドステロン症やミオパチーがあり、特に甘草の過剰摂取には注意が必要です。その他の副作用として消化器症状や過敏症も報告されています。服用中に異常を感じた場合は、速やかに医師に相談することが重要です。ジェネリック医薬品も存在し、薬価を抑えつつ同等の効果が期待できます。当院では、患者さま一人ひとりの体質や症状、生活習慣を考慮し、最適な治療法を提案しています。漢方薬は個々の体質に合わせたオーダーメイドの治療が基本となるため、自己判断での服用は避け、必ず専門医の診察を受けてください。

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よくある質問(FAQ)

苓桂朮甘湯は保険適用になりますか?
はい、苓桂朮甘湯は医師の処方箋があれば保険適用となります。ただし、市販薬の場合は保険適用外となりますのでご注意ください。
子供が服用しても大丈夫ですか?
小児への投与も可能ですが、体重、年齢、症状に応じて適宜減量する必要があります。必ず医師の診察を受け、指示された用法・用量を守って服用させてください。
服用を中止するタイミングはいつですか?
症状が改善し、安定している場合は、医師と相談の上で服用中止を検討します。自己判断での中止は、症状の再燃を招く可能性があるため避けてください。定期的な診察で、医師が総合的に判断します。
この記事の監修医
👨‍⚕️
倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長