- ✓ 柴胡清肝湯は、アトピー性皮膚炎や湿疹、神経症など幅広い症状に用いられる漢方薬です。
- ✓ 体質や症状に合わせて処方され、特に「イライラしやすく、皮膚症状が悪化しやすい方」に適応します。
- ✓ 副作用は比較的少ないですが、体質に合わない場合は消化器症状やアレルギー反応に注意が必要です。
柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)とは?

柴胡清肝湯(ツムラ80)は、主に皮膚疾患や神経症に対して用いられる漢方薬です。肝の熱を冷まし、血の滞りを改善することで、炎症や精神的な興奮を鎮める効果が期待されます。当院の皮膚科外来では、特にアトピー性皮膚炎や湿疹の患者さまで、イライラしやすい、怒りっぽいといった精神症状を伴う方に処方することが多いです。
この漢方薬は、体内の「肝」の働きが乱れ、「熱」がこもりやすい体質の方に適しているとされています。具体的には、皮膚のかゆみが強く、掻きむしって悪化しやすい、皮膚が赤く炎症を起こしやすい、不眠やイライラなどの精神的な不安定さを伴うといった症状を持つ方に考慮されます。柴胡清肝湯は、これらの症状に対して、体質改善を促しながら穏やかに作用することを目指します[1]。
- 柴胡清肝湯
- 漢方医学における処方の一つで、柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、連翹(れんぎょう)、甘草(かんぞう)、桔梗(ききょう)、牛蒡子(ごぼうし)、薄荷(はっか)、木通(もくつう)などの生薬から構成されます。肝の熱を冷まし、血を補い、巡りを改善することで、炎症性皮膚疾患や精神神経症状の緩和を目指します。
柴胡清肝湯はアトピー性皮膚炎にどう作用する?
柴胡清肝湯がアトピー性皮膚炎に作用する機序は、漢方医学的な観点から「肝熱(かんねつ)」や「血虚(けっきょ)」の改善にあります。アトピー性皮膚炎の患者さまの中には、ストレスや過労によってイライラしやすく、それがかゆみや炎症の悪化につながるケースが少なくありません。漢方ではこれを「肝の気の滞りや熱」と捉え、柴胡清肝湯がその熱を冷まし、気の巡りを整えることで、皮膚の炎症やかゆみを鎮めると考えられています。
また、アトピー性皮膚炎の患者さまは、皮膚の乾燥やバリア機能の低下を伴うことが多く、漢方ではこれを「血虚」と捉えることがあります。柴胡清肝湯に含まれる当帰や地黄などの生薬は、血を補い、皮膚に潤いを与えることで、乾燥やかゆみの軽減に寄与するとされています[1]。実際の臨床経験上、アトピー性皮膚炎の治療において、ステロイド外用薬や保湿剤と併用することで、かゆみの軽減や皮膚の状態改善に良い影響が見られる患者さまが多い印象です。特に、炎症が強く、掻き壊しがちな部位に効果を実感される方がいます。
ただし、柴胡清肝湯はすべてのアトピー性皮膚炎患者さまに効果があるわけではありません。患者さまの体質や症状のタイプによって、他の漢方薬が適している場合もあります。診察の現場では、患者さまの舌の状態、脈、お腹の触診なども含めて総合的に判断し、最適な処方を選択しています。
柴胡清肝湯の用法・用量と注意点

柴胡清肝湯の用法・用量は、添付文書に記載されている内容に基づき、患者さまの年齢や体重、症状によって調整されます。一般的に、成人には1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します[1]。小児への投与も可能ですが、年齢に応じた減量が必要です。処方する際は、患者さまの生活習慣や他の服用薬との兼ね合いを考慮して、最適な用法を選択しています。
服用時の一般的な注意点
- 指示された用量を守る:自己判断で増量・減量せず、医師や薬剤師の指示に従ってください。
- 食前・食間服用:漢方薬は一般的に食前(食事の約30分前)または食間(食事と食事の間で食後約2時間後)に服用することで、生薬の吸収が良くなるとされています。
- 飲み忘れに注意:飲み忘れた場合は、気づいた時点で服用し、次の服用時間を調整してください。ただし、一度に2回分を服用することは避けてください。
- 長期服用の場合:長期にわたって服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、効果や副作用の有無を確認することが重要です。
柴胡清肝湯は、構成生薬の甘草により、偽アルドステロン症などの副作用を引き起こす可能性があります。むくみや血圧上昇などの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談してください。また、他の漢方薬との併用には注意が必要です。
柴胡清肝湯の副作用とジェネリック医薬品
柴胡清肝湯は比較的副作用が少ないとされていますが、体質や体調によってはいくつかの副作用が現れる可能性があります。実際の診察では、患者さまから「胃の不快感がある」「お腹がゆるくなった」といった消化器症状の訴えをいただくことがあります。皮膚科の臨床経験上、漢方薬は西洋薬に比べて穏やかな作用を示すことが多いですが、個人差が大きいと感じています。
重大な副作用
- 偽アルドステロン症:尿量が減る、むくみ、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、血圧上昇などの症状が現れることがあります。これは、甘草の大量摂取や長期服用によって引き起こされる可能性があります[1]。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行により、筋肉の障害(ミオパチー)が起こることがあります[1]。
- 肝機能障害、黄疸:まれに、全身のだるさ、皮膚や白目が黄色くなる、食欲不振などの肝機能障害の症状が現れることがあります[1]。
その他の副作用
これらの症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。特に、他の漢方薬を併用している場合は、甘草の重複摂取に注意が必要です。
ジェネリック医薬品について
柴胡清肝湯には、ツムラから販売されているものの他に、いくつかの製薬会社からジェネリック医薬品(後発医薬品)が販売されています。これらは、ツムラの柴胡清肝湯と同じ有効成分を含み、同等の効果が期待できるとされています。ジェネリック医薬品は、開発費用が抑えられるため、一般的に先発医薬品よりも安価で提供されます。当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品を処方することも可能です。ただし、製品によっては添加物が異なる場合があるため、アレルギー体質の方などは医師や薬剤師に相談してください。
柴胡清肝湯が適応となるその他の症状

柴胡清肝湯は、アトピー性皮膚炎以外にも、その薬効から幅広い症状に適用されることがあります。添付文書には、湿疹・皮膚炎、じんましん、あせも、神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(かんしょう)などが記載されています[1]。これらの症状は、漢方医学的に「肝の熱」や「気の滞り」が関与していると考えられ、柴胡清肝湯が持つ清熱作用や疏肝作用が有効に働く可能性があります。
| 症状カテゴリ | 具体的な症状 | 柴胡清肝湯の期待される作用 |
|---|---|---|
| 皮膚疾患 | アトピー性皮膚炎、湿疹、じんましん、あせも、皮膚のかゆみ・炎症 | 肝の熱を冷まし、炎症やかゆみを鎮める |
| 精神神経症状 | 神経症、不眠症、イライラ、怒りっぽい、落ち着きがない | 気の滞りを改善し、精神的な興奮を鎮める |
| 小児疾患 | 小児夜泣き、小児疳症(キーキー声を出す、食欲不振、落ち着きがないなど) | 小児特有の興奮や不調を和らげる |
当院では、アトピー性皮膚炎の患者さまだけでなく、ストレス性のじんましんで夜間にかゆみが悪化し、不眠を訴える方にも柴胡清肝湯を処方することがあります。また、小児の患者さまで、夜泣きがひどく、皮膚を掻きむしってしまうといったケースにも、西洋薬と併用して漢方薬を検討することがあります。皮膚科の臨床経験上、皮膚症状と精神症状が密接に関連しているケースは多く、柴胡清肝湯のような漢方薬がその両面にアプローチできる点で有用だと感じています。
まとめ
柴胡清肝湯(ツムラ80)は、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患や、神経症、不眠症など幅広い症状に用いられる漢方薬です。特に、イライラしやすく、皮膚の炎症やかゆみが強いといった「肝熱」の症状を伴う方に適しています。用法・用量を守り、医師や薬剤師の指示に従って服用することが重要です。比較的副作用は少ないとされていますが、偽アルドステロン症などの重大な副作用や、消化器症状などのその他の副作用に注意し、異常を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。ジェネリック医薬品も存在し、患者さまの選択肢の一つとなります。皮膚症状だけでなく、精神的な側面にもアプローチできる漢方薬として、個々の患者さまの体質や症状に合わせて適切に処方されることで、治療効果が期待されます。
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