最終更新日: 2026-04-24
📋 この記事のポイント
- ✓ 当帰飲子は、冷え性や乾燥肌、かゆみを伴う湿疹などに用いられる漢方薬です。
- ✓ 皮膚の乾燥やかゆみに対して、内側から体質を改善し、皮膚のバリア機能の回復を目指します。
- ✓ 症状や体質に合わせて適切な用法・用量で服用することが重要で、医師の指導のもとで安全に使用しましょう。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。
📑 目次
当帰飲子(トウキインシ)とは?その特徴と皮膚科での役割

当帰飲子の構成生薬と作用メカニズム
当帰飲子は、以下の12種類の生薬から構成されています[5]。- 当帰(トウキ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 川芎(センキュウ)
- 地黄(ジオウ)
- 黄耆(オウギ)
- 防風(ボウフウ)
- 荊芥(ケイガイ)
- 細辛(サイシン)
- 甘草(カンゾウ)
- 蒺藜子(シツリシ)
- 何首烏(カシュウ)
- 木通(モクツウ)
- 漢方医学における「血虚(けっきょ)」とは
- 漢方医学の概念で、体内の「血」が不足している状態を指します。血は全身に栄養を運び、皮膚や髪、爪などを潤す役割を持つと考えられています。血虚の状態では、皮膚の乾燥、かゆみ、髪のパサつき、爪が割れやすいといった症状が現れることがあります。当帰飲子はこの血虚を改善することで、皮膚の乾燥やかゆみにアプローチします。
当帰飲子が効果を示す症状とは?乾燥肌・かゆみへの作用
当帰飲子は、皮膚の乾燥を伴う様々な症状に効果が期待される漢方薬です。特に、高齢者や冷え性の方に多く見られる皮膚トラブルに対して、その効果を発揮すると考えられています。皮膚科の日常診療では、外用薬だけでは改善しにくい全身性の乾燥や、慢性的なかゆみに悩む患者さまに内服薬として処方することが多いです。乾燥肌(乾皮症)と当帰飲子
乾燥肌、特に乾皮症は、皮膚のバリア機能が低下し、水分が失われやすくなることで生じます。これにより、皮膚がカサつき、ひび割れ、そして強いかゆみを伴うことがあります。当帰飲子は、血行を促進し、皮膚への栄養供給を改善することで、皮膚の潤いを内側からサポートすると考えられています[5]。当院では、保湿剤を塗ってもなかなか改善しない頑固な乾燥肌の患者さまに、当帰飲子を併用することで、皮膚のしっとり感が向上し、かゆみが軽減したというフィードバックをいただくことが多いです。特に、加齢に伴う皮膚の乾燥は避けられない部分もありますが、漢方薬で体質改善を図ることで、症状の緩和を目指します。かゆみを伴う湿疹・皮膚炎への応用
当帰飲子は、かゆみを伴う湿疹や皮膚炎にも用いられます。例えば、アトピー性皮膚炎の患者さまが、冷えを訴え、皮膚の乾燥とかゆみが強い場合に処方することがあります。漢方医学的には、かゆみは「風(ふう)」の邪が原因となることがあり、当帰飲子に含まれる防風や荊芥といった生薬が、この「風」を鎮める作用を持つとされています[5]。また、皮膚の炎症を抑える作用も期待できるため、慢性的な皮膚炎の症状緩和にも寄与すると考えられます。実際の臨床経験上、かゆみには個人差が大きく、外用薬で一時的に抑えられても、内側からのアプローチで体質を整えることが、長期的な症状の安定につながると感じています。⚠️ 注意点
当帰飲子は体質や症状によって効果が異なります。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な診断と処方のもとで服用してください。特に、胃腸が弱い方や、他の薬剤を服用中の方は注意が必要です。
当帰飲子の正しい用法・用量と服用上の注意点

ツムラ当帰飲子(医療用)の用法・用量
ツムラ当帰飲子エキス顆粒(医療用)の一般的な用法・用量は以下の通りです[6]。- **成人:** 1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用する。
- **年齢、体重、症状により適宜増減する。**
服用時の注意点
- **飲み忘れに注意:** 漢方薬は継続して服用することで効果が期待できます。飲み忘れた場合は、気づいた時点で服用し、次の服用時間を調整してください。ただし、一度に2回分を服用することは避けてください。
- **他の薬との飲み合わせ:** 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、甘草が含まれているため、他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。
- **アレルギー歴:** 過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある場合は、必ず申し出てください。
- **妊娠・授乳中の方:** 妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。一部の生薬は、妊娠中の服用に注意が必要な場合があります[5]。
- **高齢者・小児:** 高齢者や小児への投与は、慎重に行う必要があります。特に小児では、体重や年齢に応じた用量調整が必須です。
当帰飲子に副作用はある?頻度と対処法
当帰飲子を含む漢方薬も、医薬品である以上、副作用が生じる可能性があります。しかし、一般的に西洋薬と比較して副作用の頻度は低いとされています。皮膚科の臨床経験上、当帰飲子で重篤な副作用を経験することは稀ですが、患者さまには服用前にしっかりと説明し、異変を感じたらすぐに相談するようお伝えしています。重大な副作用
頻度は不明ですが、以下のような重大な副作用が報告されています[5]。- **偽アルドステロン症:** 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に進行する。カリウム値の低下、血圧上昇、むくみなどの症状が見られることがあります。甘草含有製剤との併用や、長期服用でリスクが高まる可能性があります。
- **ミオパチー:** 偽アルドステロン症の進行により、横紋筋融解症に至ることがあります。
- **肝機能障害、黄疸:** 全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れることがあります。
その他の副作用
比較的頻度の低い副作用として、以下のようなものが報告されています[5]。- **消化器症状:** 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- **皮膚症状:** 発疹、かゆみなど
当帰飲子に関する患者さまからのご質問
🩺 診察でよく聞かれる質問
Q. 当帰飲子はどのくらいで効果が出ますか?
A. 効果の実感には個人差がありますが、当院で当帰飲子を処方した患者さまからは、早い方で2週間程度、多くの方は1ヶ月〜3ヶ月程度で乾燥肌やかゆみの改善を実感されることが多い印象です。漢方薬は体質改善を目指すため、西洋薬のように即効性があるわけではありませんが、継続することで根本的な改善につながることが期待できます。
Q. 長期間服用しても大丈夫ですか?
A. 医師の指示のもとであれば、長期間服用することも可能です。ただし、定期的に診察を受けて、効果や副作用の有無を確認することが重要です。特に、甘草による偽アルドステロン症のリスクを考慮し、定期的な血液検査でカリウム値などをチェックすることもあります。
Q. 飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
A. 飲み忘れても、気づいた時点で服用していただいて構いません。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばして次の服用時間から再開してください。決して2回分を一度に服用しないようにしてください。継続が大切ですので、飲み忘れが続く場合は、服用タイミングを調整するなど、ご相談ください。
Q. 他の漢方薬やサプリメントと一緒に飲んでも大丈夫ですか?
A. 他の漢方薬やサプリメントとの併用は、必ず医師や薬剤師に相談してください。特に、甘草を含む漢方薬を複数服用すると、偽アルドステロン症のリスクが高まる可能性があります。また、サプリメントの中には薬と相互作用を起こすものもあるため、全てお伝えいただくことが大切です。
Q. 食前・食間以外に服用しても効果はありますか?
A. 添付文書では食前または食間が推奨されていますが、飲み忘れを防ぐために食後に服用していただくこともあります。漢方薬は継続が重要ですので、ご自身の生活リズムに合わせて無理なく続けられるタイミングで服用することが大切です。ただし、効果の感じ方に個人差が出る可能性はありますので、気になる場合はご相談ください。
Q. 妊娠中や授乳中に服用できますか?
A. 妊娠中や授乳中の服用は、必ず事前に医師に相談してください。当帰飲子に含まれる生薬の中には、妊娠中に注意が必要なものもあります。診察の現場では、患者さまの状況を慎重に判断し、リスクとベネフィットを考慮した上で処方を検討します。
ジェネリック医薬品について:ツムラ86と他社製品

ツムラ当帰飲子と他社製品の比較
当帰飲子のエキス顆粒は、ツムラ以外にもクラシエ、コタロー、オースギなど複数のメーカーから販売されています。これらの製品は、日本薬局方収載の当帰飲子エキスを製造しており、基本的な生薬の配合や効能・効果は同じです。しかし、製造方法や賦形剤(添加物)、顆粒の味や溶けやすさには違いがある場合があります。| 項目 | ツムラ当帰飲子(86) | 他社当帰飲子エキス顆粒 |
|---|---|---|
| 有効成分 | 日本薬局方当帰飲子エキス | 日本薬局方当帰飲子エキス |
| 効能・効果 | 冷え症で皮膚が乾燥し、かゆみを伴う湿疹・皮膚炎 | 冷え症で皮膚が乾燥し、かゆみを伴う湿疹・皮膚炎 |
| 製造工程 | 各社の品質管理基準に基づく | 各社の品質管理基準に基づく |
| 味・風味 | メーカーにより異なる場合あり | メーカーにより異なる場合あり |
| 薬価 | メーカー間で差がある場合あり | メーカー間で差がある場合あり |
ジェネリック医薬品選択のポイント
漢方薬の場合、西洋薬のジェネリック医薬品のように「有効成分が全く同じで、生物学的同等性が保証されている」という厳密な定義は適用されにくい側面があります。これは、漢方薬が生薬の組み合わせであり、生薬の産地や収穫時期、抽出方法などによって、微妙な成分バランスが異なる可能性があるためです。しかし、日本薬局方で定められた基準を満たしている限り、基本的な効果は同等であると考えられます。もし特定のメーカーの漢方薬で効果を感じにくい場合や、味・服用感に不満がある場合は、遠慮なく医師や薬剤師に相談し、他のメーカーの製品を試してみることも可能です。当帰飲子と併用したいスキンケア・生活習慣の改善
当帰飲子による内服治療は、乾燥肌やかゆみの改善に有効ですが、外側からの適切なスキンケアや生活習慣の改善と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。皮膚科の治療では、内服薬だけでなく、患者さまの日常生活全体を見直すことが治療のポイントになります。乾燥肌対策のスキンケア
- **保湿剤の適切な使用:** 入浴後や洗顔後など、皮膚がまだ潤っているうちに保湿剤を塗布することが重要です。セラミド、ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質など、保湿成分が豊富な製品を選びましょう。当院では、患者さまの皮膚の状態や季節に応じて、最適な保湿剤の選び方や塗り方を具体的に指導しています。
- **洗浄方法の見直し:** 熱すぎるお湯での入浴や、洗浄力の強いボディソープの使用は、皮膚のバリア機能を損ない、乾燥を悪化させることがあります。ぬるま湯で、刺激の少ない洗浄剤を使い、優しく洗いましょう。
- **紫外線対策:** 紫外線は皮膚の乾燥や老化を促進させます。日中の外出時には日焼け止めを使用し、帽子や日傘で物理的に遮光することも大切です。
生活習慣の改善
- **室内の湿度管理:** 特に冬場は空気が乾燥しやすいため、加湿器などを用いて室内の湿度を50〜60%に保つように心がけましょう。
- **バランスの取れた食事:** 皮膚の健康を保つためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取することが不可欠です。特に、ビタミンA、C、Eや亜鉛などは皮膚の再生やバリア機能の維持に関与します。
- **十分な睡眠:** 睡眠不足は免疫力の低下や皮膚のターンオーバーの乱れにつながり、乾燥やかゆみを悪化させる可能性があります。質の良い睡眠を十分にとるようにしましょう。
- **ストレス管理:** ストレスは自律神経のバランスを乱し、皮膚の症状を悪化させることがあります。適度な運動や趣味などでストレスを解消する工夫も大切です。
まとめ
当帰飲子は、冷え性で皮膚が乾燥し、かゆみを伴う湿疹や皮膚炎に用いられる漢方薬です。12種類の生薬が複合的に作用し、血行促進、皮膚への栄養供給改善、かゆみや炎症の抑制を通じて、皮膚のバリア機能回復と体質改善を目指します。特に高齢者の乾燥肌や慢性的なかゆみに効果が期待され、外用薬だけでは改善しにくい症状に対して内側からのアプローチを提供します。服用に際しては、添付文書に準じた用法・用量を守り、胃腸症状や偽アルドステロン症などの副作用に注意が必要です。効果の実感には個人差がありますが、継続的な服用と、適切なスキンケア、生活習慣の改善を組み合わせることで、より良い治療効果が期待できます。ツムラ以外にも複数のメーカーから同処方の漢方薬が販売されており、基本的な効果は同等と考えられますが、服用感に違いがある場合もあります。医師や薬剤師と相談しながら、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
よくある質問(FAQ)
📖 参考文献
- Fang Lei, You-Ling Tang, Wei-Guo Xie et al.. [Treatment of facial pigmentation after burns with traditional Chinese medicine mask and skin care].. Zhonghua shao shang za zhi = Zhonghua shaoshang zazhi = Chinese journal of burns. 2012. PMID: 21223651
- Ya-Yue Yang, Li-Xia Du, Jian-Yu Zhu et al.. Antipruritic effects of geraniol on acute and chronic itch via modulating spinal GABA/GRPR signaling.. Phytomedicine : international journal of phytotherapy and phytopharmacology. 2023. PMID: 37516088. DOI: 10.1016/j.phymed.2023.154969
- Thanyaluck Siriyong, Sanan Subhadhirasakul, Somporn Chanwanitsakul et al.. Therapeutic effects of traditional Thai herbal blood and wind tonic formulations for treatment of menopausal symptoms.. Explore (New York, N.Y.). 2022. PMID: 34193369. DOI: 10.1016/j.explore.2021.06.002
- Fuzhen Yang, Mengfei Cao, Lian Zhong et al.. Sub-chronic and developmental toxicity of transdermal delivery of Renzhu ointment in young SD rats.. Cutaneous and ocular toxicology. 2022. PMID: 35712753. DOI: 10.1080/15569527.2022.2088781
- 当帰飲子 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ツムラ86 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
🏛️ ガイドライン・公的資料
この記事の監修医
👨⚕️
倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長
