- ✓ 荊芥連翹湯は、慢性鼻炎や慢性扁桃炎、にきびなどの炎症性疾患に用いられる漢方薬です。
- ✓ ニキビ治療においては、炎症を抑え、体質改善を促すことで効果が期待されますが、即効性よりも継続的な服用が重要です。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチーなどに注意し、皮膚科医の指導のもとで服用することが大切です。
荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)とは?

荊芥連翹湯(ツムラ50)は、漢方医学における「清熱解毒(せいねつげどく)」の考え方に基づき、体内の余分な熱を取り除き、炎症を鎮める作用を持つ漢方薬です。主に、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、アデノイド、湿疹・皮膚炎、そしてニキビなどの炎症性疾患に用いられます。当院の皮膚科外来では、特に西洋薬での治療が難しい、あるいは体質改善も視野に入れたいニキビの患者さまに処方することが多いです。
この漢方薬は、17種類の生薬(荊芥、連翹、当帰、芍薬、川芎、地黄、黄芩、黄連、黄柏、山梔子、薄荷、柴胡、桔梗、枳実、甘草、白芷、防風)から構成されており、それぞれの生薬が相乗的に作用することで、炎症を抑え、排膿を促し、皮膚の状態を改善する効果が期待されます[5]。特に、顔や体の赤みを伴う炎症性のニキビに対して、体質改善を促しながら症状を和らげる目的で選択されることがあります。
- 清熱解毒(せいねつげどく)
- 漢方医学における治療原則の一つで、体内の過剰な熱(炎症)を取り除き、毒素(病原体や老廃物)を排出することで、病状を改善する考え方です。ニキビ治療においては、炎症性の赤みや膿を伴う症状に対してこの原則が適用されます。
ニキビへの効果は?
荊芥連翹湯は、ニキビ(尋常性ざ瘡)に対して、炎症を鎮め、肌の状態を整える効果が期待される漢方薬です。ニキビは毛包の炎症性疾患であり、皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖などが複合的に関与して発生します[3]。荊芥連翹湯は、これらの要因のうち、特に炎症反応に対してアプローチします。
具体的な作用機序としては、配合されている生薬が持つ抗炎症作用や、血行促進作用、排膿作用などが挙げられます。例えば、黄芩(オウゴン)や黄連(オウレン)は、漢方医学で「清熱」作用を持つとされ、体内の炎症を抑える効果が期待されます。また、当帰(トウキ)や川芎(センキュウ)は血行を促進し、肌の新陳代謝を助けると考えられています。実際の診察では、患者さまから「肌の赤みが引いてきた」「ニキビの治りが早くなった気がする」といったフィードバックをいただくことが多いです。
ニキビ治療における荊芥連翹湯の効果を評価した研究も存在します。ある研究プロトコルでは、荊芥連翹湯エキスと鍼治療の併用がニキビの男性患者に与える影響について、無作為化比較対照試験が計画されています[1]。これは、漢方薬がニキビ治療の選択肢の一つとして注目されていることを示唆しています。ただし、ニキビ治療は多岐にわたり、レーザー治療や外用薬、内服薬など様々なアプローチがあります[2][4]。荊芥連翹湯は、体質改善を促しながら、穏やかに症状を改善していくことを目指す治療法として位置づけられます。
漢方薬は体質や症状によって効果の出方が異なります。ニキビ治療においては、荊芥連翹湯がすべての人に同じように効果を発揮するわけではありません。個々の患者さまの肌の状態や体質を詳細に診察し、最適な治療法を選択することが重要です。
用法・用量と服用方法は?

荊芥連翹湯(ツムラ50)の用法・用量は、添付文書に記載されている通り、年齢や症状によって調整されます。一般的に、成人には1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します[6]。食間とは、食事と食事の間、食後約2時間を目安とします。顆粒製剤が一般的で、水に溶かして飲むことも可能です。
小児への投与については、年齢や体重に応じて減量されます。具体的な用量については、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。皮膚科の臨床経験上、特に漢方薬の服用に慣れていない患者さまには、少量から開始し、徐々に慣らしていくことをお勧めすることがあります。また、味が苦手な方もいらっしゃるため、飲み方を工夫するようアドバイスすることもあります。
服用期間については、漢方薬は西洋薬のように即効性があるわけではなく、体質改善を目的とするため、ある程度の期間継続して服用することが重要です。外来で荊芥連翹湯を使用した経験では、効果を実感されるまでに数週間から数ヶ月かかる方が多い印象です。途中で自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従って継続することが大切です。
飲み忘れを防ぐためには、毎日決まった時間に服用する習慣をつけることが有効です。例えば、朝食前と夕食前など、ご自身のライフスタイルに合わせて服用タイミングを設定すると良いでしょう。もし飲み忘れてしまった場合は、気づいた時点で服用し、次の服用時間まで十分な間隔が空いていることを確認してください。ただし、一度に2回分を服用することは避けてください。
荊芥連翹湯に関する患者さまからのご質問
副作用と注意点は?

荊芥連翹湯(ツムラ50)は、一般的に安全性の高い漢方薬とされていますが、副作用が全くないわけではありません。特に、体質や体調によっては、特定の症状が現れることがあります。皮膚科の日常診療では、患者さまに安心して治療を受けていただくために、副作用についても十分に説明する機会が多いです。
重大な副作用
頻度は極めて稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています[5]。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に強くなる。これは甘草(カンゾウ)の成分が原因となることがあります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行によって起こる筋肉の障害です。
- 肝機能障害、黄疸:全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れることがあります。
これらの症状に気づいた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
その他の副作用
比較的頻度が高い、あるいは注意が必要なその他の副作用としては、以下のようなものがあります[5]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。特に胃腸が弱い方は注意が必要です。
- 皮膚症状:発疹、かゆみなど。アレルギー反応の可能性があります。
これらの症状が現れた場合も、医師や薬剤師に相談してください。症状によっては、服用量の調整や他の漢方薬への変更を検討します。
服用上の注意点
- 持病がある方:高血圧、心臓病、腎臓病、むくみのある方などは、偽アルドステロン症のリスクが高まる可能性があるため、服用前に必ず医師に伝えてください。
- 他の漢方薬との併用:甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
- アレルギー歴:過去に漢方薬や特定の生薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
処方する際は、患者さまの既往歴や併用薬を考慮して、安全に服用できるよう用法を選択しています。
ジェネリック医薬品について
荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)には、ツムラが製造する「ツムラ漢方荊芥連翹湯エキス顆粒(医療用)」が広く知られていますが、他の製薬会社からも同成分のジェネリック医薬品(後発医薬品)が製造・販売されています。ジェネリック医薬品とは、先発医薬品と同じ有効成分を同じ量含み、同等の品質、効き目、安全性が確認された医薬品のことです。
ジェネリック医薬品の最大のメリットは、先発医薬品に比べて薬価が安価である点です。これにより、患者さまの医療費負担を軽減することができます。例えば、ツムラの荊芥連翹湯と、他社のジェネリック品では、薬価に差がある場合があります。
| 項目 | 先発品(ツムラ漢方荊芥連翹湯) | ジェネリック医薬品(例:コタロー、クラシエなど) |
|---|---|---|
| 有効成分 | 荊芥連翹湯エキス | 荊芥連翹湯エキス |
| 品質・効能・安全性 | 同等 | 同等 |
| 薬価 | 比較的高価 | 比較的安価 |
| 剤形 | 顆粒 | 顆粒 |
ジェネリック医薬品を希望される場合は、診察時に医師や薬剤師にその旨をお伝えください。ただし、製薬会社によって添加物や風味に若干の違いがある場合があり、患者さまによっては特定のメーカーのものが飲みやすいと感じることもあります。皮膚科の臨床経験上、漢方薬は特に味や匂いの好みが分かれるため、ジェネリックへの切り替えを検討する際は、患者さまの意向を丁寧に確認するようにしています。
まとめ
荊芥連翹湯(ツムラ50)は、ニキビなどの炎症性疾患に対し、体質改善を促しながら症状を和らげることを目指す漢方薬です。17種類の生薬が複合的に作用し、抗炎症作用や血行促進作用、排膿作用などが期待されます。服用は、成人で1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に服用し、効果を実感するには継続的な服用が重要です。
副作用としては、稀に偽アルドステロン症や肝機能障害などの重大なものがありますが、比較的多いのは消化器症状や皮膚症状です。服用に際しては、持病や他の薬剤との併用状況を医師に伝え、指示された用法・用量を守ることが大切です。また、ジェネリック医薬品も存在し、医療費負担の軽減に繋がります。ニキビ治療においては、症状や体質に合わせた適切な治療選択が重要であり、荊芥連翹湯はその選択肢の一つとして、皮膚科医の指導のもとで有効に活用されることがあります。
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よくある質問(FAQ)
- Kyu Seok Kim, Yoon-Bum Kim. Interaction and efficacy of Keigai-rengyo-to extract and acupuncture in male patients with acne vulgaris: a study protocol for a randomized controlled pilot trial.. Trials. 2011. PMID: 21418585. DOI: 10.1186/1745-6215-12-82
- Julie Bittar, Perry Hooper, Jeffrey S Dover. 1726 nm Lasers for the Treatment of Acne Vulgaris.. Skin therapy letter. 2024. PMID: 38271552
- Lizelle Fox, Candice Csongradi, Marique Aucamp et al.. Treatment Modalities for Acne.. Molecules (Basel, Switzerland). 2017. PMID: 27529209. DOI: 10.3390/molecules21081063
- Kevin M Robertson. Acne vulgaris.. Facial plastic surgery clinics of North America. 2004. PMID: 15261171. DOI: 10.1016/j.fsc.2004.03.002
- 荊芥連翹湯 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ツムラ50 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
