マラセチア毛包炎とは?カビが原因のニキビ様症状を医師が解説
- ✓ マラセチア毛包炎は、マラセチア菌という真菌(カビ)が毛穴で過剰に増殖することで起こる皮膚疾患です。
- ✓ 一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)と症状が似ているため、誤診されやすく、適切な治療には専門医による鑑別が重要です。
- ✓ 抗真菌薬による治療が中心となり、内服薬と外用薬を組み合わせることで高い改善が期待できます。
マラセチア毛包炎とは?ニキビとの違いを理解する

マラセチア毛包炎は、皮膚の常在菌であるマラセチア菌(真菌の一種、いわゆるカビ)が毛穴の内部で異常に増殖することで炎症を引き起こし、ニキビに似た発疹が生じる皮膚疾患です。一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)とは原因菌が異なるため、治療法も大きく異なります。
マラセチア毛包炎は、特に高温多湿な環境下や皮脂の分泌が活発な部位に発生しやすく、胸、背中、肩、顔などに赤みを帯びた小さなブツブツが多発するのが特徴です。かゆみを伴うことも少なくありません[3]。当院の診察では、「背中や胸のニキビがなかなか治らない」「かゆみを伴うブツブツが広範囲にできている」と相談される患者さまが少なくありません。特に夏場に症状が悪化する方が多く、問診の際に生活習慣や発汗状況を詳しく伺うようにしています。
マラセチア菌とは?
マラセチア菌は、皮脂を栄養源として増殖する酵母様真菌で、健康な人の皮膚にも常在しています。しかし、特定の条件下でこの菌が過剰に増殖すると、マラセチア毛包炎だけでなく、脂漏性皮膚炎や癜風(でんぷう)といった他の皮膚疾患の原因にもなります。マラセチア菌は主に以下の3つの要因で増殖しやすくなります。
- 皮脂の過剰分泌: ホルモンバランスの乱れやストレス、食生活などが原因で皮脂が増えると、マラセチア菌の栄養源が増加します。
- 高温多湿な環境: 汗をかきやすい季節や、通気性の悪い衣類を着用することで、皮膚表面が高温多湿になり、菌の増殖を促します。
- 免疫力の低下: 疾患や薬剤(特にステロイドの内服など)によって免疫力が低下すると、常在菌のバランスが崩れやすくなります[1]。
一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)との違いは?
マラセチア毛包炎と一般的なニキビは見た目が似ているため、自己判断での区別は困難です。しかし、両者には明確な違いがあり、適切な治療のためにはこの鑑別が非常に重要です。当院では、視診に加え、必要に応じて皮膚の一部を採取して顕微鏡でマラセチア菌の有無を確認する検査を行うことで、正確な診断に努めています。
| 項目 | マラセチア毛包炎 | 尋常性ざ瘡(一般的なニキビ) |
|---|---|---|
| 原因菌 | マラセチア菌(真菌) | アクネ菌(細菌) |
| 症状の特徴 | 均一な大きさの小さな赤いブツブツ、かゆみを伴うことが多い、白ニキビ・黒ニキビは少ない | 様々な大きさのブツブツ(白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ、膿疱)、痛みや炎症が強いことが多い、かゆみは少ない |
| 好発部位 | 胸、背中、肩、顔(特にTゾーン) | 顔(額、頬、顎)、胸、背中 |
| 治療薬 | 抗真菌薬(外用・内服) | 抗菌薬、ピーリング剤、ビタミンA誘導体など |
マラセチア毛包炎に一般的なニキビ治療薬(抗菌薬など)を使用しても効果は期待できません。むしろ、症状を悪化させる可能性もあるため、自己判断で市販薬を使用するのではなく、皮膚科専門医の診断を受けることが重要です。
マラセチア毛包炎の症状と診断方法は?
マラセチア毛包炎の症状は、一般的なニキビと非常に似ているため、正確な診断には専門的な知識と検査が必要です。早期に適切な診断を受けることで、不必要な治療を避け、効果的なケアを開始できます。
どのような症状が現れる?
マラセチア毛包炎の主な症状は以下の通りです[2]。
- 赤い丘疹(きゅうしん): 直径1〜3mm程度の小さな赤いブツブツが多発します。中心に膿を持つこともありますが、一般的なニキビのような面皰(めんぽう、白ニキビ・黒ニキビ)はほとんど見られません。
- かゆみ: 多くの場合、かゆみを伴います。特に汗をかいた後や入浴後に悪化することがあります。
- 好発部位: 胸、背中、肩、首、顔(特に額やTゾーン)など、皮脂腺が発達している部位や汗をかきやすい部位に多く見られます。
- 多発性・対称性: 複数の毛穴に同時に発生し、左右対称に広がる傾向があります。
当院では、患者さまが「背中全体に広がるかゆいブツブツが気になって、温泉やプールに行くのもためらってしまう」とおっしゃるケースをよく経験します。このような広範囲にわたる症状や、かゆみが強い場合は、マラセチア毛包炎を強く疑い、鑑別診断を進めます。特に、一般的なニキビ治療薬を長期間使用しても改善が見られない場合は、マラセチア毛包炎の可能性を考慮することが重要です。
マラセチア毛包炎の診断方法は?
診断は主に以下の方法で行われます[4]。
- 視診・問診: 症状の見た目、発生部位、かゆみの有無、発症時期、一般的なニキビ治療薬の使用歴などを詳しく伺います。
- 顕微鏡検査(KOH直接鏡検): 患部の皮膚を軽くこすり取り、得られた角質や膿を水酸化カリウム(KOH)溶液で処理した後、顕微鏡でマラセチア菌の有無を確認します。マラセチア毛包炎では、特徴的な酵母様真菌が多数観察されます。これは最も確実な診断方法の一つです。
- ダーモスコピー: 皮膚の表面を拡大して観察するダーモスコピー検査も、診断の補助として用いられることがあります。
当院の診療フローでは、まず患者さまの症状を詳しくお聞きし、視診でニキビとの違いを評価します。特に鑑別が難しいケースや、治療への反応が思わしくない場合には、積極的に顕微鏡検査を実施し、マラセチア菌の存在を確認することで、より確実な診断と治療方針の決定に繋げています。この検査は痛みも少なく、その場で結果を確認できるため、患者さまにも安心して受けていただけます。
- KOH直接鏡検
- 皮膚の角質などを採取し、水酸化カリウム(KOH)溶液で溶かして顕微鏡で観察する検査です。真菌感染症の診断に広く用いられ、マラセチア菌のようなカビの有無や形態を確認できます。
マラセチア毛包炎の治療法と使用される薬剤は?

マラセチア毛包炎の治療は、原因であるマラセチア菌の増殖を抑える抗真菌薬が中心となります。症状の範囲や重症度に応じて、外用薬と内服薬が使い分けられます。
外用薬による治療
軽度から中程度のマラセチア毛包炎には、抗真菌成分を含む外用薬が第一選択となります。これらの薬剤は、皮膚に直接塗布することで、患部のマラセチア菌に作用し、増殖を抑制します。
- ケトコナゾール: 広く用いられる抗真菌薬で、クリームやローション、シャンプータイプがあります。特に広範囲にわたる場合や、頭皮に症状がある場合にシャンプータイプが有効です[5]。
- ルリコナゾール、エフィナコナゾール: 新しい世代の抗真菌薬で、より高い抗真菌活性を持つとされています。
外用薬は通常、1日1〜2回、患部に塗布します。症状が改善した後も、再発予防のためにしばらく継続して使用することが推奨される場合があります。当院では、治療を始めて1ヶ月ほどで「かゆみが落ち着いて、新しいブツブツができなくなった」とおっしゃる方が多いです。特に背中や胸の広範囲に症状がある患者さまには、塗りやすいローションタイプや、お風呂で使えるシャンプータイプを提案し、継続しやすいように工夫しています。
内服薬による治療
外用薬だけでは効果が不十分な場合や、症状が広範囲にわたる場合、再発を繰り返す場合には、内服の抗真菌薬が検討されます。内服薬は体の内側からマラセチア菌に作用するため、より高い効果が期待できます。
- イトラコナゾール: マラセチア毛包炎の治療に頻繁に用いられる内服抗真菌薬です。通常、短期間(1週間程度)の内服で効果が期待できることが多いです[6]。
- フルコナゾール: イトラコナゾールと同様に、真菌感染症に用いられる内服薬です。
内服薬は、肝機能障害などの副作用のリスクがあるため、医師の指示に従い、定期的な血液検査が必要となる場合があります。当院では、内服薬を処方する際には、必ず患者さまの既往歴や服用中の薬剤を確認し、副作用のリスクについて丁寧に説明しています。治療開始後も定期的なフォローアップを行い、効果の確認だけでなく、体調の変化がないか、治療を継続できているかを確認するようにしています。多くの患者さまが、内服薬の開始から2週間程度で劇的な改善を実感されています。
抗真菌薬は、細菌性のニキビ治療薬とは作用機序が異なります。自己判断で市販の抗真菌薬を使用するのではなく、必ず皮膚科医の診断を受け、適切な薬剤を処方してもらうことが重要です。特に内服薬は、医師の指示なく服用すると健康を損なう可能性があります。
マラセチア毛包炎の予防と日常生活での注意点は?
マラセチア毛包炎は再発しやすい疾患であるため、治療後の予防策や日常生活での注意点が非常に重要です。日々のスキンケアや生活習慣を見直すことで、再発リスクを低減し、健やかな肌を保つことができます。
再発を防ぐためのスキンケアとは?
マラセチア菌の増殖を抑えるためには、皮脂の過剰な分泌をコントロールし、皮膚を清潔に保つことが基本です。
- 適切な洗浄: 刺激の少ない洗浄料を使用し、優しく丁寧に洗いましょう。特に汗をかいた後は、シャワーなどで速やかに洗い流すことが大切です。ゴシゴシと強くこすると、皮膚バリアが損傷し、かえって症状を悪化させる可能性があります。
- 保湿ケア: 洗浄後は、保湿剤で肌のバリア機能を保つことが重要です。ただし、油分の多い保湿剤はマラセチア菌の栄養源となる可能性があるため、オイルフリーやノンコメドジェニック処方の製品を選ぶと良いでしょう。
- 抗真菌成分配合のシャンプー・ボディソープ: 医師の指示のもと、ケトコナゾールなどの抗真菌成分が配合されたシャンプーやボディソープを定期的に使用することで、マラセチア菌の増殖を抑制し、再発予防に役立つことがあります。
当院では、治療が一段落した患者さまには、再発予防のためのスキンケア指導を丁寧に行っています。「どのようなボディソープを選べば良いか」「保湿剤は使っても大丈夫か」といった具体的な質問が多く寄せられるため、個々の肌質や生活習慣に合わせた製品選びのアドバイスを心がけています。特に、汗をかきやすい方には、通気性の良い衣類を選ぶことや、こまめに汗を拭き取ることの重要性をお伝えしています。
日常生活で気をつけるべきことは?
マラセチア毛包炎の予防には、日常生活における以下の点に注意することが推奨されます。
- 通気性の良い服装: 汗をかきやすい季節や運動時は、吸湿性・速乾性に優れた素材や、ゆったりとした通気性の良い衣類を選びましょう。
- 汗対策: 汗をかいたら放置せず、清潔なタオルで優しく拭き取るか、シャワーで洗い流しましょう。
- 食生活の見直し: 皮脂の分泌を促す可能性のある高脂肪食や糖分の多い食事を控えめにし、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
- ストレス管理: ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌に影響を与えることがあります。十分な睡眠やリラックスできる時間を作り、ストレスを適切に管理しましょう。
- 清潔な寝具: 寝具は皮脂や汗を吸い込むため、定期的に洗濯し、清潔に保つことが重要です。
実際の診療では、患者さまのライフスタイルに合わせて、これらの注意点を具体的にアドバイスしています。特に、スポーツをされる方や、仕事で汗をかきやすい方には、運動後のシャワーや着替えの重要性を強調しています。これらの生活習慣の改善は、治療効果の維持だけでなく、全身の健康にも繋がるため、患者さまが前向きに取り組めるようサポートしています。
マラセチア毛包炎と間違えやすい疾患は?

マラセチア毛包炎は、その症状が他の皮膚疾患と似ているため、誤診されることがあります。特に一般的なニキビ(尋常性ざ瘡)との鑑別が重要ですが、他にも注意すべき疾患がいくつか存在します。
マラセチア毛包炎と鑑別すべき疾患
- 尋常性ざ瘡(一般的なニキビ): 最も鑑別が難しい疾患です。マラセチア毛包炎は均一な大きさの赤い丘疹が多く、面皰が少ないのに対し、尋常性ざ瘡は様々な大きさの面皰や炎症性病変が混在します。原因菌も異なるため、治療法が全く異なります。
- 細菌性毛包炎: ブドウ球菌などの細菌が毛穴に感染して炎症を起こす疾患です。マラセチア毛包炎と同様に赤いブツブツや膿疱が見られますが、かゆみよりも痛みを伴うことが多い傾向があります。治療には抗菌薬が用いられます。
- 薬剤性ざ瘡: 特定の薬剤(ステロイド、抗てんかん薬など)の副作用として、ニキビに似た発疹が現れることがあります。薬剤の中止や変更で改善することが多いですが、自己判断は危険です。
- 脂漏性皮膚炎: マラセチア菌が関与する疾患ですが、毛包炎とは異なり、顔や頭皮に赤み、かゆみ、フケのような落屑(らくせつ)が主な症状です。
- アトピー性皮膚炎: 強いかゆみを伴う湿疹が特徴ですが、マラセチア毛包炎と合併することもあります。
当院では、初診時に「ニキビだと思って治療していたけど、全然良くならない」と相談される患者さまも少なくありません。特に、背中や胸に広がる赤いブツブツで、かゆみが強い場合は、マラセチア毛包炎を強く疑い、鑑別診断を進めます。この鑑別を怠ると、不適切な治療が続き、症状が改善しないだけでなく、かえって悪化させてしまうリスクもあります。そのため、問診の際に患者さまの既往歴や、これまでの治療経過を詳しく伺うようにしています。
なぜ鑑別が重要なのか?
鑑別が重要な理由は、原因菌が異なるため、治療法が根本的に違うからです。例えば、マラセチア毛包炎に一般的なニキビ治療で用いられる抗菌薬を使用しても効果は期待できず、むしろ皮膚の常在菌バランスを崩し、マラセチア菌のさらなる増殖を招く可能性もあります。一方で、細菌性毛包炎に抗真菌薬を使用しても効果はありません。
正確な診断は、患者さまが早期に症状から解放され、不必要な治療や費用を避けるために不可欠です。当院では、視診だけでなく、必要に応じて顕微鏡検査などの補助診断も活用し、正確な診断に基づいて、患者さま一人ひとりに最適な治療計画を提案しています。また、治療開始後も定期的な診察で経過を観察し、症状の改善度や副作用の有無を確認しながら、必要に応じて治療内容を調整することで、より良い治療結果を目指しています。
まとめ
マラセチア毛包炎は、マラセチア菌という真菌が毛穴で増殖することで生じる皮膚疾患で、一般的なニキビと症状が酷似しているため、専門医による正確な診断が非常に重要です。胸、背中、肩、顔などに赤い小さなブツブツが多発し、かゆみを伴うことが特徴です。診断には視診に加え、顕微鏡検査でマラセチア菌の有無を確認することが有効です。治療は抗真菌薬の外用薬や内服薬が中心となり、症状の改善が期待できます。再発を防ぐためには、適切なスキンケアと日常生活での注意点(汗対策、通気性の良い服装、食生活の見直しなど)が不可欠です。ニキビだと思って治療しても改善しない場合は、マラセチア毛包炎の可能性を考慮し、皮膚科専門医に相談することをお勧めします。
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よくある質問(FAQ)
- Alejandro Barrera-Godínez, Grecia Figueroa-Ramos. Malassezia Folliculitis in the Setting of COVID-19.. Current fungal infection reports. 2023. PMID: 36741270. DOI: 10.1007/s12281-023-00450-8
- Mattias As Henning, Gregor B Jemec, Ditte Ml Saunte. [Malassezia folliculitis].. Ugeskrift for laeger. 2021. PMID: 33215579
- Richard M Rubenstein, Sarah A Malerich. Malassezia (pityrosporum) folliculitis.. The Journal of clinical and aesthetic dermatology. 2014. PMID: 24688625
- Natalia V Chalupczak, Shari R Lipner. Malassezia Folliculitis: An Underdiagnosed Mimicker of Acneiform Eruptions.. Journal of fungi (Basel, Switzerland). 2025. PMID: 41003208. DOI: 10.3390/jof11090662
- ケトコナゾール(ケトコナゾール)添付文書(JAPIC)
- イトラコナゾール(イトラコナゾール)添付文書(JAPIC)
