- ✓ 真菌症は、白癬菌、カンジダ菌、マラセチア菌など様々な真菌が原因で起こる感染症です。
- ✓ 症状は感染部位や原因菌によって異なり、皮膚の赤み、かゆみ、鱗屑、水疱などが現れます。
- ✓ 適切な診断と抗真菌薬による治療が重要であり、自己判断での市販薬使用は症状を悪化させる可能性があります。
真菌症は、カビの一種である真菌が皮膚や粘膜、爪などに感染することで発症する病気の総称です。一口に真菌症といっても、原因となる真菌の種類は多岐にわたり、それぞれ異なる症状や特徴を示します。この記事では、代表的な真菌症の種類とその症状、原因、治療法について、エビデンスに基づきながら分かりやすく解説します。
- 真菌症とは
- 真菌症は、真菌(カビ)がヒトの体表や体内に感染して引き起こされる病気の総称です。皮膚、爪、毛髪などの表面的な感染から、内臓や全身に及ぶ重篤な感染まで様々な病態があります。代表的な真菌には、白癬菌、カンジダ菌、マラセチア菌などがあります[1]。
白癬(水虫・たむし・いんきんたむし)の種類と症状

白癬は、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌が皮膚の角質層、毛、爪などに感染して起こる真菌症です。感染部位によって「水虫(足白癬)」「たむし(体部白癬)」「いんきんたむし(股部白癬)」「しらくも(頭部白癬)」「爪白癬」など様々な名称で呼ばれます[3]。
足白癬(水虫)とは?症状と特徴
足白癬、一般に「水虫」と呼ばれる病気は、足の指の間や足の裏、かかとなどに皮膚糸状菌が感染して起こります。主な症状としては、かゆみ、皮膚の赤み、小さな水ぶくれ(小水疱)、皮膚の皮むけ(鱗屑)などが挙げられます。特に指の間では、皮膚が白くふやけてジュクジュクしたり、ひび割れたりすることもあります。かかとでは皮膚が厚く硬くなり、ひび割れを伴うこともあります。
当院では、初診時に「足がかゆくて皮がむける」「市販薬を使ってもなかなか治らない」と相談される患者さまが少なくありません。問診の際には、家族に水虫の人がいないか、温泉やプールなど不特定多数の人が利用する場所に行ったかなど、感染経路になりうる状況を詳しく伺うようにしています。症状が似ている他の皮膚疾患との鑑別も重要です。
体部白癬(たむし)と股部白癬(いんきんたむし)の症状
体部白癬は体の皮膚に、股部白癬は股の付け根や陰部に感染する白癬です。これらは環状の紅斑(赤い発疹)を特徴とすることが多く、縁が盛り上がって中心部が治癒傾向を示す「環状病変」を形成することがあります。強いかゆみを伴うことが一般的です。特に股部白癬は、高温多湿になりやすい部位であるため、症状が悪化しやすい傾向にあります。スポーツをする方や、長時間座って仕事をする方に多く見られます。
爪白癬とは?爪の変形と治療の難しさ
爪白癬は、爪に白癬菌が感染した状態を指します。初期には爪が白く濁ったり、黄色っぽく変色したりすることが多く、進行すると爪が厚くなり、もろくなってボロボロと崩れることがあります。かゆみがないため気づきにくいことも多く、放置すると他の爪や周囲の皮膚に感染が広がる可能性があります。当院の診察では、爪の変形を主訴に来院され、検査の結果、爪白癬と診断されるケースをよく経験します。内服薬での治療が中心となるため、肝機能などの定期的なチェックが重要です。
カンジダ皮膚炎の症状と治療
カンジダ皮膚炎は、カンジダ属の真菌、特にCandida albicans(カンジダ・アルビカンス)が皮膚や粘膜に感染して炎症を起こす病気です。カンジダ菌は健康な人の口の中や消化管、皮膚などにも常在していますが、免疫力の低下や特定の条件下で異常増殖することで症状を引き起こします[2]。
カンジダ皮膚炎の主な症状とは?
カンジダ皮膚炎は、皮膚が擦れやすく湿潤しやすい部位に発生しやすい特徴があります。主な症状は、境界がはっきりした赤い斑(紅斑)で、その周囲に小さな赤いブツブツ(衛星病変)が散在することが典型的です。強いかゆみやヒリヒリとした痛み、ただれを伴うこともあります。
- 間擦疹型カンジダ症: 股の付け根、脇の下、乳房の下、おむつが当たる部位など、皮膚が常に湿っている場所に発生します。乳児のおむつ皮膚炎の原因となることもあります。
- 口腔カンジダ症: 口腔内に白い苔状の病変や赤みが生じます。痛みや嚥下困難を伴うことがあります。
- 膣カンジダ症: 女性の性器に発生し、強いかゆみ、白いカッテージチーズ状の帯下(おりもの)、外陰部の赤みや腫れなどが特徴です。
当院では、特に高齢の患者さまや糖尿病をお持ちの患者さまで、皮膚の擦れる部位にカンジダ皮膚炎を発症するケースをよく経験します。治療を始めて数週間ほどで「かゆみが落ち着いてきた」「赤みが引いてきた」とおっしゃる方が多いです。治療には、外用抗真菌薬が第一選択となりますが、重症例や広範囲に及ぶ場合は内服薬を併用することもあります。
カンジダ皮膚炎の治療と予防策は?
カンジダ皮膚炎の治療には、主に抗真菌薬の塗り薬が用いられます。症状の改善が見られても、自己判断で中断せずに医師の指示に従い治療を継続することが重要です。再発を防ぐためには、感染部位を清潔に保ち、乾燥させることが大切です。通気性の良い下着を着用したり、入浴後はしっかりと水分を拭き取ったりするなどの対策が有効です。また、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、その管理も重要になります。
マラセチア関連皮膚疾患(脂漏性皮膚炎・毛包炎)

マラセチア菌は、皮膚の常在菌の一つである酵母様真菌です。特に皮脂腺が豊富な部位に生息しており、通常は無害ですが、皮脂の過剰分泌や免疫バランスの乱れなどの要因によって異常増殖すると、脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎などの皮膚疾患を引き起こします。
脂漏性皮膚炎の症状とマラセチア菌の関与
脂漏性皮膚炎は、頭皮、顔(特に鼻の周り、眉間、耳の後ろ)、胸の中央など、皮脂腺の多い部位に発生する慢性的な炎症性皮膚疾患です。主な症状は、赤み、フケのような白い鱗屑(うろこ状の皮むけ)、かゆみです。乳児期に発症する「乳児脂漏性皮膚炎」と、思春期以降に発症する「成人型脂漏性皮膚炎」があります。
マラセチア菌は、皮脂を分解して遊離脂肪酸を生成し、これが皮膚を刺激して炎症を引き起こすと考えられています。当院の診察では、頭皮のフケやかゆみ、顔の赤みを訴える患者さまが多く、特にストレスや睡眠不足が続くと症状が悪化するとおっしゃる方が少なくありません。治療は抗真菌成分を含むシャンプーや外用薬が中心となります。
マラセチア毛包炎とは?症状と治療
マラセチア毛包炎は、マラセチア菌が毛穴(毛包)に感染して炎症を起こす疾患です。背中、胸、肩、二の腕などに、かゆみを伴う赤い小さなブツブツ(丘疹や膿疱)が多数発生します。ニキビと間違われやすいですが、マラセチア毛包炎はかゆみが強く、ニキビ治療薬では改善しない点が特徴です。特に、汗をかきやすい方や、ステロイド外用薬を長期使用している方に多く見られます。
実際の診療では、ニキビだと思って市販薬を試したが効果がなく、来院される患者さまをよく診ます。問診でかゆみの有無や発症部位を確認し、診断を確定するために皮膚の検査を行うこともあります。治療には、マラセチア菌に有効な抗真菌薬の外用や内服が用いられます。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
真菌症の診断と治療の進め方
真菌症は、原因となる真菌の種類や感染部位によって症状が多様であり、適切な診断と治療が不可欠です。自己判断で市販薬を使用すると、症状が悪化したり、診断が遅れたりする可能性もあるため、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
真菌症の診断方法とは?
真菌症の診断は、主に以下の方法で行われます。
- 視診・問診: 症状の部位、見た目、かゆみの有無、発症時期、生活習慣などを詳しく伺います。
- 顕微鏡検査(直接鏡検): 患部から採取した皮膚や爪の一部を水酸化カリウム溶液で処理し、顕微鏡で真菌の有無や種類を確認します。この検査は比較的短時間で結果が得られ、診断の確定に非常に有用です。
- 真菌培養検査: 採取した検体を特殊な培地で培養し、真菌を増殖させて種類を特定します。結果が出るまでに数日から数週間かかることがありますが、より正確な診断に役立ちます。
当院では、顕微鏡検査を積極的に行い、その場で患者さまに真菌の存在を確認していただくこともあります。これにより、患者さまもご自身の病状を理解しやすくなり、治療へのモチベーション向上につながると実感しています。
真菌症の一般的な治療法と注意点
真菌症の治療は、原因となる真菌の種類、感染部位、症状の重症度によって異なりますが、主に抗真菌薬が用いられます。
- 外用抗真菌薬: 皮膚の表面的な感染(水虫、たむし、カンジダ皮膚炎など)に対しては、塗り薬やスプレー剤が処方されます。症状が改善しても、真菌が完全にいなくなるまで一定期間継続して使用することが重要です。
- 内服抗真菌薬: 爪白癬や頭部白癬、広範囲に及ぶ皮膚真菌症、外用薬で効果が見られない場合などには、飲み薬が用いられます。内服薬は効果が高い一方で、肝機能への影響など副作用のリスクもあるため、定期的な血液検査を行いながら慎重に治療を進めます。
治療期間は数週間から数ヶ月、爪白癬では半年から1年以上かかることもあります。症状が改善しても自己判断で治療を中断すると再発しやすいため、医師の指示に従い、最後まで治療を継続することが非常に重要です。また、家族内での感染を防ぐために、バスマットやタオルを共有しない、足を清潔に保つ、靴を乾燥させるなどの生活習慣の改善も大切です。
| 真菌症の種類 | 主な原因菌 | 主な症状 | 治療法(一般的) |
|---|---|---|---|
| 白癬(水虫、たむし、爪白癬など) | 皮膚糸状菌 | かゆみ、赤み、鱗屑、水疱、爪の変形 | 外用抗真菌薬、内服抗真菌薬 |
| カンジダ皮膚炎 | カンジダ菌 | 境界明瞭な紅斑、衛星病変、ただれ、強いかゆみ | 外用抗真菌薬、内服抗真菌薬 |
| マラセチア毛包炎 | マラセチア菌 | かゆみを伴う赤い丘疹・膿疱(背中、胸など) | 外用抗真菌薬、内服抗真菌薬 |
| 脂漏性皮膚炎 | マラセチア菌 | 赤み、鱗屑(フケ)、かゆみ(頭皮、顔など) | 抗真菌薬外用、ステロイド外用、抗真菌シャンプー |
真菌症の症状は他の皮膚疾患と似ていることが多く、自己判断での市販薬の使用は症状を悪化させたり、適切な診断を遅らせたりする可能性があります。特にステロイド剤を誤って使用すると、真菌が増殖して「ステロイド皮膚症」と呼ばれる状態になることもあります。正確な診断と適切な治療のためにも、皮膚科専門医への受診をお勧めします。
まとめ

真菌症は、皮膚糸状菌、カンジダ菌、マラセチア菌など様々な真菌が原因で起こる感染症の総称です。足白癬(水虫)、カンジダ皮膚炎、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎などが代表的な種類として挙げられ、それぞれ異なる症状や好発部位があります。症状はかゆみ、赤み、皮むけ、水ぶくれ、爪の変形など多岐にわたります。正確な診断には、顕微鏡検査や真菌培養検査が不可欠であり、治療には外用または内服の抗真菌薬が用いられます。症状が改善しても自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従い完治を目指すことが重要です。気になる症状がある場合は、早めに皮膚科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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- Julia R Köhler, Bernhard Hube, Rosana Puccia et al.. Fungi that Infect Humans.. Microbiology spectrum. 2017. PMID: 28597822. DOI: 10.1128/microbiolspec.FUNK-0014-2016
- Kazuo Satoh, Koichi Makimura, Yayoi Hasumi et al.. Candida auris sp. nov., a novel ascomycetous yeast isolated from the external ear canal of an inpatient in a Japanese hospital.. Microbiology and immunology. 2009. PMID: 19161556. DOI: 10.1111/j.1348-0421.2008.00083.x
- J Brasch, R Gläser. [Dynamic diversity of dermatophytes].. Der Hautarzt; Zeitschrift fur Dermatologie, Venerologie, und verwandte Gebiete. 2019. PMID: 31098690. DOI: 10.1007/s00105-019-4427-3
- Anderson Messias Rodrigues, Ferry Hagen, Rosana Puccia et al.. Paracoccidioides and Paracoccidioidomycosis in the 21st Century.. Mycopathologia. 2023. PMID: 36633737. DOI: 10.1007/s11046-022-00704-y
