床ずれの外科的治療(デブリードマン・植皮術)

【床ずれの外科的治療(デブリードマン・植皮術):デブリードマン・植皮術とは?】

床ずれの外科的治療(デブリードマン・植皮術):デブリードマン・植皮術とは?
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • ✓ 床ずれ(褥瘡)の外科的治療は、壊死組織の除去(デブリードマン)と、欠損した皮膚を補う(植皮術・皮弁術)が主な柱です。
  • ✓ デブリードマンは感染源を除去し、創傷治癒を促進するために不可欠な処置であり、様々な方法があります。
  • ✓ 植皮術や皮弁術は、広範囲の皮膚欠損を閉鎖し、再発を予防するために行われ、患者さんの状態に応じた術式が選択されます。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

床ずれ(褥瘡)は、体の同じ部位に長時間圧力がかかることで血流が悪くなり、皮膚やその下の組織が損傷を受ける状態を指します。特に重症化した床ずれは、感染のリスクが高まり、自然治癒が困難になるため、外科的治療が必要となる場合があります。外科的治療の主な目的は、感染源の除去と、失われた組織の再建です。

床ずれ(褥瘡)とは?外科的治療が必要なケースは?

床ずれ(褥瘡)の重症度を示すステージ分類と外科的治療の必要性
褥瘡のステージ分類と治療方針

床ずれは、寝たきりの患者さんや麻痺のある患者さんなど、体位変換が困難な方に多く見られる皮膚の損傷です。仙骨部、臀部、かかとなど、骨が突出している部位に発生しやすいとされています。初期段階では皮膚の発赤や水疱が見られますが、進行すると皮膚が壊死し、深い潰瘍を形成することがあります。

床ずれの重症度分類

床ずれの重症度は、その深さや組織の損傷度合いによって分類されます。一般的には、国際的な分類システムであるNPUAP/EPUAPの分類が用いられます。

ステージ1
皮膚の損傷はなく、圧迫を除去しても消えない発赤が見られます。
ステージ2
真皮までの部分的な皮膚欠損があり、水疱や浅い潰瘍として現れます。
ステージ3
皮下組織までの全層性皮膚欠損で、脂肪組織が見えることがあります。
ステージ4
筋肉、腱、骨などの深部組織まで露出する全層性皮膚欠損です。
判定不能
潰瘍底部が壊死組織や痂皮で覆われ、深さの判定ができない状態です。
深部組織損傷が疑われる褥瘡(DTI)
圧迫による皮膚下の軟部組織損傷が疑われるが、皮膚表面は無傷または軽度の損傷に見える状態です。

ステージ3以上の深い床ずれや、感染を伴う床ずれ、広範囲にわたる壊死組織がある床ずれでは、外科的治療が検討されます。特に、骨髄炎を合併している場合や、全身状態が悪化している場合には、早期の外科的介入が重要となります[1]。当院の診察では、初診時に「仙骨部の深い傷がなかなか治らない」「嫌な匂いがする」と相談される患者さまも少なくありません。このような場合、視診と触診で重症度を判断し、外科的治療の必要性を検討します。

デブリードマンとは?その目的と種類を解説

デブリードマン(debridement)とは、床ずれの創部から壊死組織、感染組織、異物などを外科的に除去する処置のことです。これは、創傷治癒を妨げる要因を取り除き、清潔な創面を形成することで、治癒を促進し、感染の拡大を防ぐために不可欠なステップです。

デブリードマンの主な目的

  • 感染の制御: 壊死組織は細菌の温床となりやすく、感染が全身に広がる敗血症のリスクを高めます。デブリードマンにより感染源を除去します。
  • 創傷治癒の促進: 壊死組織は肉芽組織の形成を阻害し、創傷の治癒を遅らせます。これを除去することで、健康な組織が再生しやすい環境を整えます。
  • 悪臭の軽減: 壊死組織や感染による悪臭は、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させます。デブリードマンにより悪臭を軽減できます。

デブリードマンの種類

デブリードマンには、様々な方法があり、創部の状態や患者さんの全身状態に応じて選択されます。

種類方法特徴・利点
外科的デブリードマンメスやハサミで壊死組織を切除最も迅速かつ効果的。深部感染や広範囲の壊死に適用。
酵素的デブリードマン壊死組織を分解する酵素製剤を塗布選択的に壊死組織を除去。痛みが少ない。
自己融解デブリードマン湿潤環境を保つドレッシング材を使用し、自己融解を促進生理的で痛みが少ない。壊死組織が少ない場合に有効。
機械的デブリードマンガーゼによる擦過、ハイドロセラピーなど比較的簡便だが、健康な組織を傷つける可能性も。
生物学的デブリードマンウジ虫(マゴット)を利用して壊死組織を食べる選択性が高く、抗菌作用も期待できる。

当院では、壊死組織の範囲や深さ、感染の有無に応じて、適切なデブリードマンの方法を選択しています。特に、広範囲にわたる黒色壊死組織が見られる場合や、骨まで達する深い潰瘍の場合には、全身麻酔下での外科的デブリードマンを検討することが多く、「痛みが心配」という患者さまには、術後の疼痛管理についても詳しく説明し、不安を軽減するように努めています。

植皮術・皮弁術とは?床ずれ治療における役割

床ずれの外科的治療における植皮術と皮弁術の適用部位と手順
植皮術と皮弁術による褥瘡治療

デブリードマンによって清潔な創面が形成された後、広範囲の皮膚欠損がある場合や、骨が露出している場合には、植皮術や皮弁術といった再建手術が検討されます。これらの手術は、創部を閉鎖し、感染リスクを低減し、機能回復を目指す上で重要な役割を果たします。

植皮術(Skin Graft)

植皮術は、患者さん自身の健康な皮膚の一部(ドナーサイト)を採取し、床ずれの創部(レシピエントサイト)に移植する手術です。主に、浅い広範囲の皮膚欠損や、筋肉・骨の露出がない場合に適用されます。

  • 分層植皮術: 皮膚の表皮と真皮の一部を薄く採取する方法です。採取部位の治癒が早く、広範囲の移植が可能です。
  • 全層植皮術: 皮膚の表皮と真皮の全層を採取する方法です。生着率は分層植皮術より低い傾向がありますが、移植後の収縮が少なく、美容的に優れる場合があります。

皮弁術(Flap Surgery)

皮弁術は、皮膚だけでなく、皮下脂肪、筋肉、血管、神経などを含む組織を、元の部位から切り離さずに移動させ、欠損部を覆う手術です。骨の露出がある深い潰瘍や、再発を繰り返す床ずれに対して有効です。皮弁は、その栄養血管を保ったまま移動させるため、血流が良好で生着率が高いという特徴があります。

  • 局所皮弁: 創部の周囲の組織を利用して移動させる方法です。
  • 遠隔皮弁: 創部から離れた部位の組織を、血管茎を保ったまま移動させる方法です。
  • 遊離皮弁: 組織を完全に切り離し、顕微鏡下で血管と神経を再吻合して移植する方法です。

皮弁術は、植皮術に比べて大規模な手術となることが多いですが、より強固な組織で欠損部を再建できるため、特に仙骨部や坐骨部の深い床ずれに有効とされています[3]。当院では、患者さまの床ずれの深さ、大きさ、周囲組織の状態、そして全身状態を総合的に評価し、最適な術式を提案しています。術後には、移植した皮膚や皮弁の生着を促すため、適切な圧迫管理や体位変換指導を徹底しており、患者さまからは「手術して痛みが減り、生活が楽になった」という声をいただくこともあります。

術前・術後の管理と合併症のリスク

床ずれの外科的治療は、手術そのものだけでなく、術前・術後の適切な管理が成功の鍵を握ります。合併症のリスクを最小限に抑え、良好な治療成績を得るためには、多職種連携による包括的なケアが不可欠です。

術前の準備

  • 全身状態の改善: 貧血、低栄養、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、術前に可能な限り改善させることが重要です。特に低栄養状態は創傷治癒を遅らせるため、栄養士によるサポートも行われます。
  • 感染の制御: 創部に感染がある場合は、術前に抗生物質投与や局所の消毒、デブリードマンを繰り返し行い、感染をコントロールします。陰圧閉鎖療法(NPWT)が用いられることもあります[2]
  • 禁煙指導: 喫煙は血流を悪化させ、創傷治癒を阻害するため、術前の禁煙が強く推奨されます。

術後の管理と注意点

  • 安静と体位変換: 移植した皮膚や皮弁の生着を促すため、術後は創部に圧力がかからないように厳重な体位管理が必要です。
  • 創部の観察とケア: 感染徴候(発赤、腫脹、疼痛、膿)や血腫、壊死の有無を注意深く観察し、適切な創部ケアを行います。
  • 栄養管理: 術後も引き続き、創傷治癒に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルを十分に摂取できるよう栄養管理を行います。
  • リハビリテーション: 早期にリハビリテーションを開始し、ADL(日常生活動作)の改善と再発予防を目指します。

起こりうる合併症とは?

外科的治療には、以下のような合併症のリスクが伴います。

  • 感染: 最も一般的な合併症です。術後の創部感染は、移植した組織の生着を妨げ、治療を長期化させる可能性があります。
  • 血腫・漿液腫: 創部に血液や体液が貯留することで、感染や皮弁の生着不全を引き起こすことがあります。
  • 皮弁・植皮の壊死: 血流不全や感染により、移植した組織が壊死してしまうことがあります。
  • 再発: 術後も適切なケアが継続されない場合、同じ部位や他の部位に床ずれが再発する可能性があります。
⚠️ 注意点

床ずれの外科的治療は、一度手術をすれば終わりではありません。術後の再発予防が非常に重要であり、日々のケアや体位変換、栄養管理、リハビリテーションが継続的に必要となります。当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして再発予防のための生活指導が守られているかを確認するようにしています。

陰圧閉鎖療法(NPWT)は外科的治療とどう連携する?

陰圧閉鎖療法(NPWT)が床ずれの外科的治療と連携する仕組み
NPWTと外科的治療の連携

陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy; NPWT)は、創部に特殊なドレッシング材を貼付し、持続的に陰圧をかけることで、創傷治癒を促進する治療法です。床ずれの外科的治療においても、デブリードマン後の創面管理や、皮弁術後の合併症予防に重要な役割を果たします[4]

NPWTのメカニズムと効果

NPWTは、以下のようなメカニズムで創傷治癒を促進します。

  • 余分な滲出液の除去: 創部から過剰な滲出液を吸引し、創周囲の皮膚の浸軟を防ぎ、感染リスクを低減します。
  • 肉芽組織の形成促進: 陰圧により創部に機械的な刺激が加わり、血流が改善され、肉芽組織の形成が促進されます。
  • 創縁の収縮: 陰圧により創縁が引き寄せられ、創が小さくなる効果が期待できます。
  • 細菌負荷の軽減: 滲出液の除去と創部の密閉により、細菌の増殖を抑制します。

外科的治療におけるNPWTの活用

当院では、床ずれの外科的治療において、NPWTを以下のような場面で活用しています。

  • デブリードマン後の創面調整: 広範囲のデブリードマン後に、肉芽組織の形成を促進し、感染リスクを低減するために一時的にNPWTを適用します。これにより、その後の植皮術や皮弁術の成功率を高めることができます。
  • 皮弁術後の合併症予防: 皮弁術後に、皮弁下の血腫や漿液腫の形成を防ぎ、皮弁の生着を安定させる目的でNPWTを使用することがあります。

実際の診療では、NPWTを導入した患者さまから「傷の治りが早くなった気がする」「ドレッシング交換の回数が減って楽になった」といったお声をいただくことも多く、治療効果を実感しています。

床ずれの再発予防と長期的なケア

床ずれの外科的治療が成功しても、再発のリスクは常に存在します。特に、根本的な原因である圧迫やずれ、栄養状態の悪化が改善されない限り、再発は避けられない問題となります。そのため、長期的な視点での予防とケアが極めて重要です。

再発予防の主なポイント

  • 適切な体位変換: 長時間同じ体位を続けないよう、定期的な体位変換が不可欠です。2時間ごとの体位変換が目安とされますが、個々の患者さんの状態に合わせて調整します。
  • 除圧用具の活用: エアーマットや体圧分散マットレス、クッションなどを適切に使用し、体圧を分散させます。
  • 皮膚の清潔保持と保湿: 排泄物などによる皮膚の汚染を防ぎ、清潔に保ちます。乾燥肌は損傷しやすいため、保湿ケアも重要です。
  • 十分な栄養摂取: 創傷治癒と皮膚の健康維持には、十分なタンパク質、ビタミン、ミネラルが不可欠です。
  • リハビリテーション: 活動性の向上は、体位変換の頻度を増やし、血流を改善することで再発予防に貢献します。

当院では、手術後の患者さまに対して、退院後も定期的な通院や訪問看護師との連携を通じて、これらの再発予防策が適切に実施されているかを確認しています。特に、ご家族や介護者の方々には、体位変換の方法やスキンケアのポイントを丁寧に指導し、「自宅でも安心してケアができるようになった」とおっしゃる方が多いです。問診の際に患者さまの家族歴や生活環境を詳しく伺うようにしています。

まとめ

床ずれの外科的治療は、重症化した床ずれに対する有効な選択肢であり、デブリードマンによる壊死組織の除去と、植皮術や皮弁術による組織再建が主な柱となります。これらの治療は、感染の制御、創傷治癒の促進、そして患者さんのQOL向上に大きく貢献します。しかし、手術が成功した後も、再発予防のための継続的なケアが不可欠です。適切な体位変換、除圧用具の活用、栄養管理、スキンケア、そしてリハビリテーションを組み合わせた包括的なアプローチが、長期的な良好な予後を得るために重要です。医療従事者と患者さん、そしてご家族が一体となって取り組むことで、床ずれの克服と再発予防を目指すことができます。

お近くのグループクリニック

当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。

📍 渋谷エリアの方

渋谷文化村通り皮膚科

渋谷駅徒歩5分|院長: 倉田照久(医療法人理事長)

▸ 渋谷院の詳細・ご予約はこちら

📍 池袋エリアの方

池袋サンシャイン通り皮膚科

池袋駅徒歩3分|院長: 吉井恭平

▸ 池袋院の詳細・ご予約はこちら

よくある質問(FAQ)

床ずれの手術は痛いですか?
手術の種類や範囲によりますが、外科的デブリードマンや植皮術・皮弁術は、通常、全身麻酔や局所麻酔下で行われるため、手術中の痛みは感じません。術後には痛みが伴うことがありますが、適切な鎮痛剤を使用し、痛みをコントロールします。当院では、患者さまの痛みの程度に応じて、きめ細やかな疼痛管理を行っています。
手術費用はどのくらいかかりますか?
床ずれの外科的治療は、多くの場合、保険診療の対象となります。手術の種類、入院期間、使用する薬剤や材料によって費用は異なります。具体的な費用については、患者さまの症状や治療計画によって変動するため、診察時に医師や医療事務スタッフにご相談ください。
手術後の回復期間はどれくらいですか?
回復期間は、床ずれの重症度、手術の種類、患者さまの全身状態、術後の合併症の有無によって大きく異なります。植皮術や皮弁術の場合、移植した組織が生着するまでに数週間を要し、その後も創部の安定やリハビリテーションが必要となります。数ヶ月から半年以上の長期的なケアが必要となることもあります。医師と相談し、個別の治療計画を確認することが重要です。
この記事の監修医
👨‍⚕️
倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長