床ずれのリスク評価(ブレーデンスケール)と早期発見のポイント
- ✓ 床ずれは早期発見と適切なリスク評価が重要です。
- ✓ ブレーデンスケールは床ずれのリスクを客観的に評価する有効なツールです。
- ✓ 皮膚の変化やバイオマーカー、サーモグラフィなどの早期発見技術が注目されています。
床ずれ(褥瘡)は、寝たきりの方や活動が制限される方に発生しやすい皮膚の損傷であり、早期発見と適切なリスク評価が非常に重要です。適切な対策を講じることで、重症化を防ぎ、患者さんのQOL(生活の質)を維持することができます。
床ずれ(褥瘡)とは?そのメカニズム

床ずれは、身体の一部が長時間圧迫されることで血流が悪くなり、皮膚やその下の組織が損傷する状態です。ここでは、床ずれの基本的な定義と発生メカニズムについて解説します。
- 床ずれ(褥瘡)
- 身体の同じ部位が長時間にわたって圧迫され、血流が阻害されることで、皮膚や皮下組織が壊死に至る状態を指します。特に骨が突出している部位(仙骨部、踵、肘など)に発生しやすいとされています。
床ずれの主な原因は、持続的な「圧迫」と「ずれ」です。圧迫により毛細血管が閉塞し、組織への酸素や栄養供給が途絶えることで細胞が損傷します。また、身体がベッドや車椅子上で動く際に生じる「ずれ」の力も、皮膚の下の組織にせん断力を加え、血流障害を引き起こす要因となります。
さらに、摩擦、湿潤(汗や尿失禁などによる皮膚のふやけ)、栄養状態の悪化、加齢による皮膚の脆弱性なども、床ずれの発生リスクを高める要因として知られています。
ブレーデンスケールとは?リスク評価の重要性

床ずれのリスクを客観的に評価するために、ブレーデンスケールが広く用いられています。このスケールを用いることで、どの患者さんが特に注意が必要かを早期に特定できます。
ブレーデンスケールは、以下の6つの項目で構成されており、それぞれの項目を1〜4点(または1〜3点)で評価し、合計点数でリスクを判断します。点数が低いほど、床ずれ発生のリスクが高いと判断されます[1]。
- 知覚の認知: 痛みや不快感をどの程度感じ、表現できるか。
- 湿潤: 皮膚がどの程度湿っているか(尿失禁、発汗など)。
- 活動性: 身体活動の程度。
- 可動性: 身体の位置をどの程度自分で変えられるか。
- 栄養: 食事摂取状況や栄養状態。
- 摩擦とずれ: 身体が動く際に生じる摩擦やずれの程度。
ブレーデンスケールの予測妥当性に関するメタアナリシスでは、成人における床ずれリスク評価において有効なツールであることが示されています[1]。当院では、入院時や定期的な診察の際に、患者さまの身体状況を総合的に評価し、ブレーデンスケールを用いてリスクを数値化しています。特に高齢の患者さまや、脳損傷などにより意識レベルが低下している患者さまの問診時には、ご家族から普段の生活状況を詳しく伺うようにしています。これにより、見落としがちなリスク因子を特定し、早期介入に繋げています[4]。
ブレーデンスケールはあくまでリスク評価ツールであり、スコアが低いからといって必ず床ずれが発生するわけではありません。また、スコアが高いからといって必ず発生するわけでもありません。個々の患者さんの状態に応じた細やかな観察とケアが不可欠です。
床ずれの早期発見のポイントは?
床ずれは一度発生すると治癒に時間がかかり、患者さんの負担も大きくなるため、発生前の早期発見が極めて重要です。ここでは、早期発見のための具体的なポイントを解説します。
視診・触診による皮膚の変化
床ずれの最も初期の兆候は、皮膚の色の変化です。特に、発赤(赤み)や熱感、硬結(硬さ)がないか、骨が突出している部位を中心に注意深く観察することが重要です。指で押しても消えない発赤は、すでに組織損傷が始まっている可能性を示唆します。
- 発赤: 指で押しても色が消えない場合は注意が必要です。
- 熱感: 周囲の皮膚と比べて温かい部分がないか。
- 硬結: 皮膚が硬くなっている部分がないか。
- 浮腫: むくみがないか。
当院の回診では、看護師が患者さまの皮膚状態を毎日確認し、わずかな変化も見逃さないよう努めています。特に「お尻が少し赤くなっている気がする」「足の裏がいつもより熱い」といった患者さまからの訴えは、早期発見の重要な手がかりとなるため、注意深く耳を傾けるようにしています。
バイオマーカーやサーモグラフィの活用は?
近年、肉眼での観察だけでなく、より客観的な早期発見技術の研究が進んでいます。バイオマーカーやサーモグラフィはその代表例です。
- バイオマーカー: 血液や尿中の特定の物質を測定することで、組織損傷の初期段階を検出する試みです。例えば、炎症反応を示すサイトカインや、組織の壊死によって放出される酵素などが研究対象となっています[2]。
- サーモグラフィ: 皮膚表面の温度変化を画像化する技術です。床ずれの初期段階では、血流の変化により皮膚表面の温度が上昇することがあり、これを検出することで肉眼では見えない変化を捉えることができます[3]。
これらの技術はまだ臨床現場での普及は限定的ですが、将来的に床ずれの超早期発見に貢献する可能性を秘めています。当院でも、最新の研究動向を注視し、患者さまのケアに役立つ技術の導入を検討しています。
床ずれリスクが高い場合の予防策とは?

ブレーデンスケールで高リスクと判断された場合や、早期発見の兆候が見られた場合には、速やかに予防策を講じることが重要です。
体位変換と除圧
最も基本的な予防策は、定期的な体位変換です。これにより、特定の部位への圧迫を分散させ、血流を確保します。一般的には2時間ごとの体位変換が推奨されますが、患者さんの状態に合わせて頻度を調整します。当院では、体位変換の介助時に「少し動くだけで楽になるわ」とおっしゃる患者さまが多くいらっしゃいます。
また、エアマットやウレタンマットなどの除圧用具の活用も有効です。これらの用具は、身体にかかる圧力を分散させ、特定の部位への集中を防ぐ効果があります。当院では、患者さまの身体状況やリスクレベルに応じて、最適な除圧用具を選定し、使用方法についても詳しくご説明しています。
スキンケアと栄養管理
皮膚を清潔に保ち、乾燥や湿潤から守ることも重要です。保湿剤の使用や、失禁時の迅速な清拭・乾燥は、皮膚のバリア機能を維持し、損傷を防ぎます。また、十分な栄養摂取は、皮膚や組織の再生能力を高め、床ずれの発生リスクを低減します。特にタンパク質やビタミンC、亜鉛などは、皮膚の健康維持に不可欠な栄養素です。
当院では、皮膚トラブルを抱える患者さまに対して、専門の看護師が個別のスキンケア指導を行っています。また、管理栄養士が患者さまの栄養状態を評価し、必要に応じて栄養補助食品の提案や食事内容の調整を行うことで、全身状態の改善にも努めています。
| 予防策 | 具体的な内容 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 体位変換 | 2時間ごとの体位変換、ポジショニング | 圧迫の分散、血流改善 |
| 除圧用具 | エアマット、ウレタンマット、クッション | 身体にかかる圧力の低減 |
| スキンケア | 清潔保持、保湿、乾燥防止 | 皮膚のバリア機能維持、摩擦・湿潤対策 |
| 栄養管理 | 高タンパク食、ビタミン・ミネラル補給 | 組織再生促進、全身状態の改善 |
まとめ
床ずれの予防と早期発見は、患者さんの健康と生活の質を守る上で非常に重要です。ブレーデンスケールを用いた客観的なリスク評価と、皮膚の注意深い観察、そして最新の早期発見技術の活用が、その鍵となります。当院では、多職種連携のもと、患者さん一人ひとりに合わせた最適なケアを提供し、床ずれの発生予防と早期治療に努めています。
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よくある質問(FAQ)
- Can Huang, Yuxia Ma, Chenxia Wang et al.. Predictive validity of the braden scale for pressure injury risk assessment in adults: A systematic review and meta-analysis.. Nursing open. 2021. PMID: 33630407. DOI: 10.1002/nop2.792
- Ning Wang, Lin Lv, Fanghong Yan et al.. Biomarkers for the early detection of pressure injury: A systematic review and meta-analysis.. Journal of tissue viability. 2023. PMID: 35227559. DOI: 10.1016/j.jtv.2022.02.005
- Miriam Viviane Baron, Paulo Ricardo Hernandes Martins, Cristine Brandenburg et al.. Accuracy of Thermographic Imaging in the Early Detection of Pressure Injury: A Systematic Review.. Advances in skin & wound care. 2023. PMID: 36812081. DOI: 10.1097/01.ASW.0000912000.25892.3f
- Binyang Wang, Tong Sun, Shiping Wang et al.. Prognostic value of the Braden scale for short-term mortality in critically ill patients with traumatic brain injury.. Scientific reports. 2026. PMID: 41372358. DOI: 10.1038/s41598-025-31290-w
