- ✓ 消風散は、かゆみが強く分泌物の多い慢性湿疹やじんましんなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 体質や症状に合わせて処方され、効果の実感には数週間から数ヶ月かかることがあります。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、肝機能障害などが報告されており、体調の変化には注意が必要です。
消風散(ツムラ22)とは?湿疹・皮膚炎への作用

消風散(しょうふうさん)は、漢方医学において「風湿熱(ふうしつねつ)」と呼ばれる病態、すなわち「風(ふう)」によるかゆみ、「湿(しつ)」による分泌物やジクジクした状態、「熱(ねつ)」による炎症や赤みを伴う皮膚疾患に用いられる漢方薬です。特に、かゆみが強く、分泌物が多くてジクジクするような慢性湿疹やじんましん、皮膚炎などに効果が期待されます[1]。当院の皮膚科外来では、ステロイド外用薬だけではなかなか改善しない、あるいはステロイドの使用量を減らしたいと希望される患者さまに、補助的な治療として消風散を処方する機会が多くあります。
消風散の構成生薬とその働き
消風散は、以下の13種類の生薬から構成されています[1]。
- 荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ):風邪(ふうじゃ)を発散し、かゆみを鎮める作用
- 蒼朮(ソウジュツ)、木通(モクツウ)、沢瀉(タクシャ):湿邪(しつじゃ)を取り除き、余分な水分を排出する作用
- 石膏(セッコウ)、知母(チモ)、苦参(クジン):熱邪(ねつじゃ)を冷まし、炎症を抑える作用
- 当帰(トウキ)、地黄(ジオウ):血を補い、皮膚の乾燥やかゆみを改善する作用
- 蝉退(センタイ):かゆみを鎮める作用
- 牛蒡子(ゴボウシ):解毒作用、発疹を抑える作用
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の働きを調和し、炎症を抑える作用
これらの生薬が複合的に作用することで、かゆみ、赤み、分泌物といった湿疹の主要な症状を緩和し、皮膚の回復を促します。特に、かゆみが強く、掻きむしってしまいがちな患者さまには、かゆみ止めとしての効果も期待して処方することがあります。
どのような症状に処方される?
消風散は、主に以下のような症状や体質の方に処方されます。
- 湿疹・皮膚炎:分泌物が多く、かゆみが強いもの。慢性化しているもの。
- じんましん:慢性的に繰り返し出現し、かゆみが強いもの。
- 水虫(足白癬):特にジクジクしてかゆみが強いタイプ。
- あせも(汗疹):炎症やかゆみが強いもの。
実際の診察では、患者さまの舌の状態や脈、お腹の触診なども含めて総合的に判断し、体質(証)に合っているかを見極めて処方しています。例えば、比較的体力があり、皮膚が赤く熱感を帯びている方に適しているとされています。
- 風湿熱(ふうしつねつ)とは
- 漢方医学における病態の一つで、「風(ふう)」はかゆみや移動性の症状、「湿(しつ)」は分泌物やむくみ、ジクジクした状態、「熱(ねつ)」は炎症や赤み、熱感を表します。これらが複合的に皮膚に現れることで、湿疹やじんましんなどの皮膚疾患を引き起こすとされています。消風散は、これらの要素を同時に解消することを目指す処方です。
消風散の用法・用量と服用上の注意点
消風散は、その効果を最大限に引き出すために、適切な用法・用量を守ることが重要です。また、漢方薬特有の服用上の注意点もあります。当院では、患者さまに安心して治療を受けていただくために、これらの点を丁寧に説明しています。
標準的な用法・用量
ツムラ消風散エキス顆粒(医療用)の標準的な用法・用量は以下の通りです[1]。
- 成人:1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 小児:年齢、体重、症状に応じて適宜減量されます。
食前とは食事の30分~1時間前、食間とは食事と食事の間(食後2時間程度)を指します。胃に内容物がない状態で服用することで、生薬の吸収が良くなると考えられています。ただし、胃腸が弱い方や食前・食間の服用が難しい場合は、食後に服用することも可能ですので、医師や薬剤師にご相談ください。
服用期間について
漢方薬は即効性よりも、体質改善を促し、症状の根本的な改善を目指すものが多いため、効果を実感するまでに時間がかかることがあります。消風散も例外ではなく、湿疹の症状や体質によって異なりますが、数週間から数ヶ月の服用が必要となる場合があります。外来で消風散を使用した経験では、効果を実感されるまでに2週間〜1ヶ月程度かかる方が多い印象です。途中で自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従って継続することが大切です。
服用上の注意点
- 飲み合わせ:他の漢方薬や西洋薬との併用には注意が必要です。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。必ず医師や薬剤師に相談してください。
- アレルギー:過去に生薬や食品などでアレルギー反応を起こしたことがある場合は、事前に医師に伝えてください。
- 持病:高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能亢進症などの持病がある方は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 妊娠・授乳中:妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
漢方薬は体質や症状によって効果が異なるため、自己判断での服用は避け、必ず医師の診察を受けてから処方されたものを服用してください。特に、市販の漢方薬を服用する際も、薬剤師に相談することをお勧めします。
消風散の副作用と対処法

どのような薬にも副作用のリスクは存在します。消風散も例外ではありませんが、正しく理解し、適切な対処を行うことで、安全に治療を進めることができます。皮膚科の臨床経験上、漢方薬は西洋薬に比べて副作用が少ないという印象がありますが、それでも注意すべき点はいくつかあります。
重大な副作用
頻度は極めて稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています[1]。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。これは甘草の大量摂取により起こる可能性があり、血圧上昇やむくみを伴うことがあります。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行により、横紋筋融解症を合併することがあります。
- 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの上昇を伴う肝機能障害や、皮膚や白目が黄色くなる黄疸があらわれることがあります。
これらの症状があらわれた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。当院では、長期にわたって漢方薬を服用される患者さまには、定期的な血液検査で肝機能や電解質のチェックを行うことがあります。
その他の副作用
比較的頻度が高い、または注意すべきその他の副作用は以下の通りです[1]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。漢方薬特有の味や匂いが原因で、飲み始めに感じることがあります。
- 皮膚症状:発疹、かゆみなど。アレルギー反応によるものや、体質に合わない場合に起こることがあります。
これらの症状が出た場合も、まずは服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。特に消化器症状は、体質に合わないサインであることもあります。当院では、患者さまから「胃の調子が悪い」といったフィードバックをいただくことがあり、その場合は服用量の調整や他の漢方薬への切り替えを検討します。
| 副作用の種類 | 症状の例 | 対処法 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 手足のだるさ、しびれ、むくみ、筋肉痛、黄疸、全身倦怠感 | 直ちに服用中止、医療機関を受診 |
| その他の副作用 | 食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢、発疹、かゆみ | 服用中止し、医師・薬剤師に相談 |
消風散とジェネリック医薬品の選択肢
医薬品には、先発医薬品とジェネリック医薬品(後発医薬品)という区分があります。消風散にもジェネリック医薬品が存在し、患者さまの選択肢を広げています。当院では、患者さまの経済的負担も考慮し、ジェネリック医薬品について説明する機会が多くあります。
ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック医薬品は、先発医薬品(新薬)の特許期間が満了した後に、同じ有効成分を使って製造される医薬品のことです。有効成分、効能・効果、用法・用量、品質、安全性などが先発医薬品と同等であることが国によって承認されています。開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも安価に提供されるのが一般的です。
消風散のジェネリック医薬品
消風散は、複数の製薬会社からジェネリック医薬品が販売されています。例えば、ツムラの消風散は医療用漢方製剤の代表的なものですが、コタロー、クラシエ、オースギなど、他のメーカーからも同様の消風散エキス顆粒が提供されています。これらは、基本的にツムラの消風散と同じ生薬構成、同じ効能・効果を持つものとして承認されています。
ジェネリック医薬品の選択は、患者さまの判断に委ねられますが、医師や薬剤師は、その選択をサポートするために情報を提供します。価格以外の面では、メーカーによって顆粒の味や溶けやすさ、パッケージなどが異なる場合があります。実際の処方では、患者さまから「以前飲んでいたものと味が違う」というご意見をいただくこともあり、その際はメーカーの違いをご説明しています。
ジェネリック医薬品を選ぶメリット
- 医療費の削減:薬価が安いため、患者さまの自己負担額を減らすことができます。これは、特に長期にわたって服用が必要な慢性疾患の治療において大きなメリットとなります。
- 医療保険財政への貢献:国全体の医療費抑制にもつながります。
ジェネリック医薬品を希望される場合は、診察時に医師または薬局で薬剤師にその旨をお伝えください。ただし、特定のメーカーの製品にアレルギーがある場合や、どうしても特定のメーカーの製品が良いという希望がある場合は、医師にご相談いただければ可能な範囲で対応いたします。
消風散と他の湿疹治療薬との併用・使い分け

湿疹の治療は、症状の程度や病態に応じて様々なアプローチがあります。消風散は単独で用いられることもありますが、多くの場合、他の治療薬と併用することでより効果的な治療が期待できます。皮膚科の日常診療では、患者さまのライフスタイルや症状の重症度に合わせて、これらの薬をどのように組み合わせるかが治療のポイントになります。
ステロイド外用薬との併用
湿疹治療の基本となるのは、炎症を抑えるステロイド外用薬です。消風散は、ステロイド外用薬の効果を補助し、炎症やかゆみを内側から鎮める目的で併用されることがあります。特に、ステロイド外用薬を塗ってもかゆみが治まらない場合や、ステロイドの量を減らしたい場合に有効です。当院では、ステロイド外用薬で急性期の炎症を抑えつつ、消風散で体質改善を図り、長期的な症状の安定を目指すケースが多く見られます。
抗ヒスタミン薬との併用
かゆみが強い湿疹やじんましんでは、抗ヒスタミン薬の内服が併用されることがあります。抗ヒスタミン薬は、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑えることで、即効性のあるかゆみ止めとして機能します。消風散は、かゆみの根本的な原因にアプローチする漢方薬であるため、抗ヒスタミン薬と併用することで、より多角的にかゆみをコントロールできる可能性があります。診察の現場では、患者さまの夜間のかゆみによる睡眠障害を改善するために、これらの併用を提案する機会が多いです。
他の漢方薬との使い分け
湿疹に用いられる漢方薬は消風散以外にも複数あります。例えば、乾燥が強く、かゆみがある湿疹には当帰飲子、体力があまりなく冷えやすい方の湿疹には十味敗毒湯など、患者さまの体質(証)によって使い分けられます。消風散は、比較的体力があり、熱感や分泌物が多い湿疹に適しているとされています。どの漢方薬が最適かは、専門医の判断が不可欠です。
- 消風散:かゆみが強く、分泌物が多くてジクジクする、熱感を伴う湿疹
- 当帰飲子:乾燥が強く、かゆみが慢性的に続く湿疹、冷えを伴う場合
- 十味敗毒湯:比較的体力があり、化膿傾向のある湿疹、初期の湿疹
これらの薬は、個々の患者さまの症状や体質に合わせて、医師が適切に判断し処方します。自己判断で複数の薬を併用することは避け、必ず医師の指示に従ってください。
まとめ
消風散(ツムラ22)は、かゆみが強く、分泌物が多くてジクジクするような慢性湿疹やじんましんなどに用いられる漢方薬です。荊芥、防風、石膏、当帰など13種類の生薬が複合的に作用し、「風湿熱」の病態を改善することで、炎症やかゆみを鎮め、皮膚の回復を促します。服用は1日2~3回、食前または食間が一般的で、効果を実感するには数週間から数ヶ月かかることがあります。
重大な副作用として偽アルドステロン症や肝機能障害が稀に報告されていますが、頻度は極めて稀です。消化器症状や皮膚症状などのその他の副作用も起こりうるため、体調の変化には注意し、異変を感じたら速やかに医師に相談することが重要です。ジェネリック医薬品も存在し、医療費の負担軽減に貢献します。
消風散は、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬など他の治療薬と併用されることも多く、患者さまの症状や体質に合わせて最適な治療計画が立てられます。漢方薬は体質や症状によって効果が異なるため、必ず専門医の診察を受け、指示に従って服用してください。
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