- ✓ オテズラはPDE4阻害作用により炎症を抑え、尋常性乾癬や関節症性乾癬の治療に用いられます。
- ✓ 消化器症状や頭痛が主な副作用として報告されており、服用開始時は漸増療法が推奨されます。
- ✓ 生物学的製剤やメトトレキサートとは異なる作用機序を持つため、治療選択肢の一つとして検討されます。
オテズラ(アプレミラスト)とは?作用機序と適応疾患

オテズラ(一般名:アプレミラスト)は、炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症作用を発揮する経口薬です。当院の皮膚科外来では、特に中等症から重症の尋常性乾癬や関節症性乾癬の患者さまに処方することが多い薬剤です。
オテズラは、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)という酵素を阻害することで、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を上昇させます。cAMP濃度が上昇すると、炎症を引き起こすTNF-α、IL-17、IL-23などのサイトカインの産生が抑制され、同時に抗炎症作用を持つIL-10の産生が促進されます[5]。このバランスの変化により、乾癬の病態を改善する効果が期待されます。
- ホスホジエステラーゼ4(PDE4)
- 細胞内でセカンドメッセンジャーとして機能するサイクリックAMP(cAMP)を分解する酵素の一種です。PDE4を阻害することでcAMP濃度が上昇し、細胞内の炎症反応を調節します。
どのような疾患に用いられる?
オテズラは、以下の疾患に対して適応が認められています[5]。
- 尋常性乾癬:光線療法や外用療法などの既存治療で効果が不十分な中等症から重症の患者さまに用いられます。特に、皮疹が広範囲に及ぶ場合や、関節症状を伴わないものの全身療法が必要な場合に検討されます。
- 関節症性乾癬:乾癬に伴う関節炎の症状を改善するために使用されます。関節の痛みや腫れを軽減し、身体機能の維持に寄与します。
近年では、軽症から中等症の尋常性乾癬患者においても有効性が示されており[3]、治療選択肢の幅が広がっています。また、小児の尋常性乾癬に対する有効性も報告されています[2]。当院では、患者さまの症状の重症度、合併症、これまでの治療歴などを総合的に判断し、オテズラが最適な治療選択肢の一つとなるか慎重に検討しています。
オテズラの効果は?臨床試験データと実感
オテズラは、尋常性乾癬および関節症性乾癬の治療において有効性が確認されています。臨床試験では、プラセボと比較して皮疹の改善や関節症状の軽減が認められています。
尋常性乾癬における効果
尋常性乾癬の患者さまを対象とした大規模な臨床試験(ESTEEM 1試験)では、オテズラ30mgを1日2回服用した患者群において、主要評価項目であるPASI 75達成率(乾癬の重症度を示すPASIスコアが75%以上改善した割合)が、プラセボ群と比較して有意に高かったことが報告されています[1]。具体的には、投与16週時点で、オテズラ群のPASI 75達成率は33.1%であったのに対し、プラセボ群では5.3%でした[1]。
また、軽症から中等症の尋常性乾癬患者を対象とした別の試験でも、オテズラはプラセボと比較して皮疹の改善効果を示しています[3]。皮膚科の臨床経験上、外来でオテズラを処方した患者さまから、約12〜16週間程度で皮疹の赤みやかゆみが軽減され、鱗屑(フケのようなもの)が減ったというフィードバックをいただくことが多い印象です。効果の実感には個人差が大きいですが、特に頭部や爪の乾癬に悩まされていた患者さまの中には、比較的早期に改善を実感される方もいらっしゃいます。
| 評価項目 | オテズラ群 (n=500) | プラセボ群 (n=250) |
|---|---|---|
| PASI 75達成率 (16週目) | 33.1% | 5.3% |
| sPGA 0/1達成率 (16週目) | 21.7% | 4.0% |
※ sPGA 0/1:医師による総合評価 (Static Physician’s Global Assessment) で「消失」または「ほぼ消失」を達成した割合[1]。
関節症性乾癬における効果
関節症性乾癬の患者さまを対象とした臨床試験では、オテズラは関節の腫れや痛み、身体機能の改善に寄与することが示されています。ACR20反応率(関節炎の症状が20%以上改善した割合)は、プラセボ群と比較して有意に高かったと報告されています[5]。実際の診察では、患者さまから「朝のこわばりが楽になった」「指の曲げ伸ばしがスムーズになった」といった具体的な改善の声をいただくことも少なくありません。
オテズラの用法・用量は?飲み始めの注意点

オテズラは経口薬であり、通常、成人にはアプレミラストとして1回30mgを1日2回、朝・夕に服用します[5]。しかし、服用開始時は消化器症状などの副作用を軽減するため、段階的に増量する「漸増療法」が推奨されています。
標準的な漸増療法
添付文書に記載されている標準的な漸増療法は以下の通りです[5]。
- 1日目:朝10mg
- 2日目:朝10mg、夕10mg
- 3日目:朝10mg、夕20mg
- 4日目:朝20mg、夕20mg
- 5日目:朝20mg、夕30mg
- 6日目以降:朝30mg、夕30mg
この漸増期間は、患者さまが薬剤に慣れるための重要なステップです。特に最初の数日間は、吐き気や下痢などの消化器症状が出やすい傾向があります。当院では、この期間中に患者さまから「飲み始めにお腹の調子が悪い」と質問されることがよくあります。そのため、処方する際は、飲み始めの症状について丁寧に説明し、無理なく服用を継続できるようアドバイスしています。食後に服用することで症状が軽減される場合もありますので、ご自身の体調に合わせて調整してください。
服用上の注意点
- 食事との関係:食事の影響を受けにくいため、食前・食後どちらでも服用可能ですが、消化器症状が気になる場合は食後の服用が良いでしょう。
- 腎機能障害患者:重度の腎機能障害のある患者さま(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)では、用量調節が必要となる場合があります。この場合は、1回30mgを1日1回に減量して服用します[5]。
- 飲み忘れた場合:飲み忘れた場合は、気がついた時点で1回分を服用し、次の服用は通常の時間に服用してください。ただし、2回分を一度に服用することは避けてください。
自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりしないでください。必ず医師の指示に従って服用を継続することが重要です。特に、飲み始めの副作用が辛い場合でも、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。
オテズラの副作用は?頻度と対策
オテズラは比較的忍容性の高い薬剤ですが、いくつかの副作用が報告されています。特に服用開始初期に消化器症状が現れることが多く、皮膚科の日常診療では、これらの症状への対処法が治療のポイントになります。
重大な副作用
頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が報告されています[5]。
- 重度の下痢:脱水症状を引き起こす可能性があります。
- 重度の悪心・嘔吐:食事摂取が困難になる場合があります。
- 体重減少:食欲不振や消化器症状が持続することで、体重が著しく減少することがあります。
- うつ病、自殺企図:既存のうつ病を悪化させたり、新たなうつ病を発症させたりする可能性があります。精神状態の変化に注意が必要です。
これらの症状が現れた場合は、速やかに医師に連絡してください。
その他の副作用
臨床試験で報告された主な副作用は以下の通りです[5]。
- 消化器症状(非常に多い:10%以上)
- 下痢、悪心、腹痛、嘔吐
- 神経系障害(非常に多い:10%以上)
- 頭痛
- 感染症および寄生虫症(多い:1%〜10%未満)
- 上気道感染、鼻咽頭炎、気管支炎
- その他(多い:1%〜10%未満)
- 背部痛、疲労、食欲減退、インフルエンザ、不眠症、片頭痛、咳嗽
副作用への対策
消化器症状は、服用開始時の漸増療法によってある程度軽減されますが、それでも症状が続く場合は、整腸剤や吐き気止めなどの対症療法を併用することがあります。また、食後に服用することで症状が和らぐこともあります。頭痛も比較的よく見られる副作用ですが、市販の鎮痛剤で対応可能な場合が多いです。これらの症状は、服用を続けるうちに体が慣れてきて軽減される傾向があります。
当院では、患者さまが副作用で困った際に、いつでも相談できる体制を整えています。特に、精神的な変化については、ご自身では気づきにくい場合もあるため、ご家族にも協力を仰ぎ、異変があればすぐに連絡していただくようお願いしています。
オテズラと他の乾癬治療薬との違いは?
乾癬の治療薬には様々な種類があり、オテズラもその一つですが、作用機序や服用方法、副作用プロファイルにおいて他の薬剤と異なる特徴を持っています。実際の診察では、患者さまから「生物学的製剤とどう違うの?」と質問されることがよくあります。
生物学的製剤との比較
生物学的製剤は、特定の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-23など)を直接的に阻害することで、強力な効果を発揮する注射薬です。効果発現が早く、皮疹の改善度も高い傾向にあります。しかし、免疫抑制作用が強いため、感染症のリスクが比較的高く、費用も高額になる傾向があります。
一方、オテズラは経口薬であり、生物学的製剤と比較して免疫抑制作用が穏やかであると考えられています。そのため、感染症のリスクは低いとされていますが、効果発現は生物学的製剤よりも緩やかである場合があります。生物学的製剤が適応とならない患者さまや、注射薬に抵抗がある患者さまにとって、オテズラは良い選択肢となり得ます。
メトトレキサート(MTX)との比較
メトトレキサート(MTX)は、古くから乾癬治療に用いられている免疫抑制剤で、葉酸代謝を阻害することで細胞増殖を抑制し、炎症を抑えます。経口薬であり、費用も比較的安価ですが、肝機能障害や骨髄抑制などの副作用に注意が必要で、定期的な血液検査が必須です。
オテズラはMTXとは異なる作用機序を持ち、肝機能障害や骨髄抑制のリスクは低いとされています。そのため、肝機能に懸念がある患者さまや、MTXが合わなかった患者さまの次の選択肢として検討されることがあります。当院では、患者さまの全身状態や合併症、ライフスタイルを考慮して、これらの薬剤の使い分けについて説明する機会が多いです。
ジェネリック医薬品について
オテズラ(アプレミラスト)は、2024年5月現在、先発医薬品のみであり、ジェネリック医薬品はまだ販売されていません。将来的にジェネリック医薬品が販売される可能性はありますが、現時点では先発医薬品を服用することになります。
🩺 オテズラに関する患者さまからのご質問
オテズラ処方における注意点と禁忌事項
オテズラを安全かつ効果的に使用するためには、いくつかの注意点や禁忌事項があります。処方する際は、患者さまの既往歴や現在の健康状態を詳細に確認することが不可欠です。
処方前の確認事項
- 腎機能障害:重度の腎機能障害がある患者さまには、用量調整が必要です[5]。
- うつ病の既往:うつ病や自殺念慮の既往がある患者さまでは、症状が悪化する可能性があります。慎重な観察が必要です[5]。
- 体重減少の既往:原因不明の体重減少がある患者さまでは、症状が悪化する可能性があります。
- 他の薬剤との併用:特にCYP450誘導剤(リファンピシン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、フェニトインなど)との併用は、オテズラの血中濃度を低下させ、効果を減弱させる可能性があるため、原則として併用を避けるべきです[5]。
禁忌事項
以下の患者さまには、オテズラを投与してはいけません[5]。
- オテズラの成分に対し過敏症の既往歴のある患者さま
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性
皮膚科の臨床経験上、オテズラは比較的安全性の高い薬剤ですが、これらの注意点を遵守することで、より安心して治療を継続できます。特に、患者さまが服用中の薬剤やサプリメントについては、お薬手帳などで正確に把握し、相互作用のリスクを最小限に抑えるよう努めています。
まとめ
オテズラ(アプレミラスト)は、PDE4阻害作用により炎症性サイトカインの産生を抑制し、尋常性乾癬および関節症性乾癬の治療に用いられる経口薬です。生物学的製剤とは異なる作用機序を持ち、注射薬に抵抗がある方や、より穏やかな免疫調節作用を求める方にとって有効な治療選択肢となります。
主な副作用として消化器症状(下痢、悪心、腹痛など)や頭痛がありますが、これらは服用開始時の漸増療法によって軽減されることが多く、服用を続けるうちに体が慣れてくる傾向があります。重大な副作用としてうつ病や重度の消化器症状も報告されているため、異変を感じた場合は速やかに医師に相談することが重要です。
オテズラは、患者さまの症状の重症度、これまでの治療歴、合併症、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、適切に選択・使用することで、乾癬の症状改善に大きく貢献し得る薬剤です。定期的な診察と医師との密なコミュニケーションを通じて、安全かつ効果的な治療を継続していきましょう。
お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
よくある質問(FAQ)
- Kim Papp, Kristian Reich, Craig L Leonardi et al.. Apremilast, an oral phosphodiesterase 4 (PDE4) inhibitor, in patients with moderate to severe plaque psoriasis: Results of a phase III, randomized, controlled trial (Efficacy and Safety Trial Evaluating the Effects of Apremilast in Psoriasis [ESTEEM] 1).. Journal of the American Academy of Dermatology. 2015. PMID: 26089047. DOI: 10.1016/j.jaad.2015.03.049
- Loretta Fiorillo, Emily Becker, Raul de Lucas et al.. Efficacy and safety of apremilast in pediatric patients with moderate-to-severe plaque psoriasis: 16-week results from SPROUT, a randomized controlled trial.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2024. PMID: 38266683. DOI: 10.1016/j.jaad.2023.11.068
- Linda Stein Gold, Kim Papp, David Pariser et al.. Efficacy and safety of apremilast in patients with mild-to-moderate plaque psoriasis: Results of a phase 3, multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2022. PMID: 34343599. DOI: 10.1016/j.jaad.2021.07.040
- Roudin H Alhasawi, Esraa A Shaheen, Noura M Alshabanat et al.. The efficacy of apremilast in pemphigus: a systematic review of case reports.. Dermatology reports. 2025. PMID: 40341768. DOI: 10.4081/dr.2025.10245
- オテズラ(オテズラ)添付文書(JAPIC)
