- ✓ イルミアはIL-23を選択的に阻害する生物学的製剤で、尋常性乾癬の治療に用いられます。
- ✓ 長期的な効果持続が期待でき、特に頭部乾癬に対しても有効性が示されています[1]。
- ✓ 主な副作用は感染症であり、発現時には速やかに医師に相談することが重要です。
イルミア(チルドラキズマブ)とは?

イルミア(一般名:チルドラキズマブ)は、尋常性乾癬の治療に用いられる生物学的製剤の一つです。この薬剤は、乾癬の発症に深く関与するサイトカインであるインターロイキン-23(IL-23)を選択的に阻害することで、皮膚の炎症を抑え、乾癬の症状を改善します。
尋常性乾癬は、免疫系の異常によって皮膚の細胞が過剰に増殖し、炎症を起こす慢性疾患です。当院の皮膚科外来では、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬などの局所療法で効果が不十分な患者さまや、皮疹が広範囲に及ぶ患者さまに対して、生物学的製剤を含む全身療法を検討することが多く、イルミアもその選択肢の一つとして処方しています。特に、乾癬の病態生理学が解明されるにつれて、IL-23のような特定のサイトカインを標的とする治療薬の開発が進み、より効果的で副作用の少ない治療が可能になってきました。
イルミアは、IL-23のp19サブユニットに特異的に結合し、IL-23のシグナル伝達を阻害します。これにより、炎症性サイトカインの産生が抑制され、乾癬の病態が改善されると考えられています[5]。この作用機序は、乾癬の治療において重要な役割を果たすことが示されています。
- 生物学的製剤
- 生物が産生するタンパク質などを応用して作られた医薬品の総称です。特定の免疫物質の働きをピンポイントで抑えることで、病気の原因に直接作用し、高い治療効果を発揮することが期待されます。乾癬治療においては、IL-17やIL-23、TNF-αといったサイトカインを標的とする薬剤が開発されています。
イルミアの作用機序は?
イルミアは、ヒト型抗IL-23p19モノクローナル抗体であり、インターロイキン-23(IL-23)というサイトカインのp19サブユニットに特異的に結合します。IL-23は、乾癬の炎症反応において中心的な役割を果たすTh17細胞の分化・増殖・維持に関与しています。IL-23のシグナル伝達が阻害されることで、Th17細胞からのIL-17AやIL-22などの炎症性サイトカインの産生が抑制され、皮膚の炎症や細胞の異常増殖が改善されると考えられています[5]。この選択的な作用は、乾癬治療における効果と安全性のバランスを考慮した上で非常に重要です。
ジェネリック医薬品はある?
イルミア(チルドラキズマブ)は比較的新しい生物学的製剤であり、現在、ジェネリック医薬品(後発医薬品)は存在しません。生物学的製剤は、その製造過程が複雑であるため、一般的にジェネリック医薬品の開発には時間がかかります。バイオシミラーと呼ばれる同等性・同質性が証明された後続品が登場する可能性はありますが、現時点では先発品のみが利用可能です。
イルミアの効果と有効性について
イルミアは、中等症から重症の尋常性乾癬患者さまにおいて、皮疹の改善に高い有効性を示すことが臨床試験で確認されています。実際の診察では、患者さまから「どれくらいの期間で効果を実感できますか?」と質問されることがよくあります。多くの患者さまが、治療開始後比較的早期に皮疹の改善を実感される傾向にあります。
国際的な臨床試験(reSURFACE 1およびreSURFACE 2)では、中等症から重症の尋常性乾癬患者さまを対象に、イルミアの有効性が評価されました。これらの試験では、主要評価項目であるPASI 75(乾癬面積重症度指数が75%以上改善)の達成率が、プラセボ群と比較して有意に高かったことが報告されています。具体的には、治療12週目において、イルミア100mg投与群でPASI 75達成率が58.9%〜64.2%に達しました[5]。さらに、PASI 90(90%以上改善)やPASI 100(完全に消失)といったより高い改善度も多くの患者さまで達成されています。
長期的な有効性も確認されており、52週間の治療後も高いPASI改善率が維持されることが示されています[2]。皮膚科の臨床経験上、生物学的製剤による治療は、効果の持続性も重要な評価ポイントであり、イルミアは長期にわたる症状コントロールに寄与する薬剤であると考えています。
頭部乾癬への効果は?
頭部乾癬は、尋常性乾癬の中でも特に治療が困難な部位の一つです。かゆみやフケ、脱毛などの症状が生活の質を著しく低下させることがあります。最近の研究では、イルミアが頭部乾癬に対しても高い有効性を示すことが報告されています[1]。ある研究では、中等症から重症の頭部乾癬患者さまを対象に、イルミアの有効性と安全性が評価されました。その結果、治療16週目において、対象患者の多くで頭部乾癬の重症度が有意に改善したことが示されています[1]。52週間の長期データでも、その効果は維持されることが確認されています[2]。頭部乾癬の治療に悩む患者さまにとって、イルミアは有望な選択肢の一つとなり得ます。
早期発症型と晩期発症型での効果の違いは?
乾癬は発症年齢によって早期発症型(若年発症型)と晩期発症型(高齢発症型)に分けられることがありますが、イルミアの有効性は発症年齢に関わらず認められることが示唆されています。ある解析では、早期発症型と晩期発症型の乾癬患者さまにおけるイルミアの有効性と安全性を比較したところ、両群で同様の治療効果が確認されました[3]。これは、イルミアが幅広い年齢層の尋常性乾癬患者さまに適用可能であることを示唆しています。
イルミアの用法・用量と投与スケジュール

イルミアは皮下注射で投与される薬剤です。適切な用法・用量を守ることは、治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑える上で非常に重要です。処方する際は、患者さまの病状や生活スタイルを考慮して、最適な投与スケジュールを提案しています。
添付文書に記載されている用法・用量は以下の通りです[5]。
- 通常、成人にはチルドラキズマブとして100mgを初回、4週後、12週後に皮下投与し、以降12週間隔で皮下投与します。
治療開始初期は、効果を早期に発現させるために投与間隔が短く設定されていますが、症状が安定した後は、投与間隔が12週間に延長されます。これにより、患者さまの通院負担が軽減され、治療の継続性が高まることが期待されます。当院では、この投与スケジュールを患者さまに丁寧に説明し、自己注射の指導も行っています。
投与を忘れた場合は、気がついた時点で速やかに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与してください。ただし、次に予定されている投与日までの期間が短い場合は、その回の投与は行わず、次の投与日に投与してください。自己判断せずに、必ず医師または薬剤師に相談してください。
イルミアの主な副作用と注意点
イルミアは高い有効性を持つ一方で、他の生物学的製剤と同様に副作用のリスクも存在します。特に、免疫系に作用する薬剤であるため、感染症への注意が必要です。当院では、イルミアを処方した患者さまから、「風邪をひきやすくなった気がする」というフィードバックをいただくことがあります。そのため、治療開始前には、患者さまの既往歴や現在の健康状態を詳しく確認し、感染症のリスクを評価することが重要です。
重大な副作用
添付文書に記載されている重大な副作用は以下の通りです[5]。
- 重篤な感染症:肺炎、蜂巣炎、帯状疱疹などの重篤な細菌、真菌、ウイルス感染症が報告されています。免疫抑制作用により、感染症にかかりやすくなったり、既存の感染症が悪化したりする可能性があります。治療開始前には、結核やB型肝炎などの感染症のスクリーニングが必須です。発熱、倦怠感、咳、皮膚の赤みや腫れなどの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 重篤な過敏症:アナフィラキシーなどの重篤な過敏症が起こる可能性があります。呼吸困難、血圧低下、意識障害などの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
その他の副作用
比較的頻度の高い副作用としては、以下のようなものが報告されています[5]。
- 感染症:上気道感染(鼻咽頭炎など)、気管支炎、インフルエンザなど。
- 注射部位反応:紅斑、腫脹、疼痛など。
- 頭痛:軽度から中程度の頭痛が報告されることがあります。
- 下痢:消化器症状として下痢がみられることがあります。
- 倦怠感:全身性の倦怠感が報告されることがあります。
これらの副作用は、多くの場合軽度であり、時間とともに改善することが多いですが、症状が続く場合や悪化する場合は、遠慮なく医師に相談してください。皮膚科の日常診療では、患者さまが安心して治療を継続できるよう、副作用の早期発見と適切な対処が治療のポイントになります。
抗薬物抗体(ADA)の形成について
生物学的製剤では、体内で薬剤に対する抗体(抗薬物抗体、ADA)が産生されることがあります。ADAが産生されると、薬剤の効果が減弱したり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。イルミアにおいてもADAの産生が報告されていますが、臨床的にはADAの産生が有効性や安全性に及ぼす影響は限定的であると考えられています[4]。しかし、個々の患者さまにおいては、ADAの有無やその影響に個人差が大きいと感じています。治療効果が不十分な場合や、これまで経験しなかった副作用が現れた場合には、ADAの関与も考慮して対応を検討します。
イルミアに関する患者さまからのご質問

イルミア治療中の生活上の注意点
イルミアによる治療を効果的かつ安全に進めるためには、日常生活においてもいくつかの注意点があります。これらを患者さまに理解していただくことが、治療成功の鍵となります。皮膚科の臨床経験上、治療効果は薬剤だけでなく、患者さま自身の生活習慣や自己管理能力にも大きく左右されると感じています。
感染症予防の徹底
イルミアは免疫系に作用するため、感染症のリスクが上昇します。そのため、日頃からの感染症予防が非常に重要です。
- 手洗い・うがい:外出後や食事前など、こまめな手洗いとうがいを心がけましょう。
- 人混みを避ける:感染症が流行している時期は、できるだけ人混みを避けましょう。
- 十分な睡眠と栄養:免疫力を維持するために、バランスの取れた食事と十分な睡眠を確保しましょう。
- 皮膚の清潔保持:乾癬の皮疹がある部位も清潔に保ち、二次感染を防ぎましょう。
発熱や咳、喉の痛み、倦怠感など、いつもと違う体調の変化があった場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。早期に発見し、適切な処置を行うことが重症化を防ぐ上で重要です。
定期的な受診と検査
イルミアによる治療中は、効果の評価と副作用の早期発見のために、定期的な受診と血液検査などの検査が必要です。当院では、投与スケジュールに合わせて定期的に受診していただき、治療の状況を詳細に確認しています。特に、肝機能や腎機能、血球数などに異常がないかを確認し、安全に治療を継続できるよう管理しています。
また、治療効果が不十分な場合や、副作用が強く現れた場合には、投与量の調整や他の治療法への切り替えも検討します。患者さまご自身も、体調の変化や気になる症状があれば、次回の受診を待たずに医師に相談することが大切です。
飲酒・喫煙について
乾癬の症状は、飲酒や喫煙によって悪化することが知られています。特に喫煙は、乾癬の発症リスクを高め、治療効果を低下させる可能性があるため、禁煙を強く推奨しています。飲酒も過度になると免疫機能に影響を与え、乾癬の症状を悪化させる可能性があるため、控えることが望ましいです。健康的な生活習慣を心がけることは、イルミアの治療効果を最大限に引き出し、乾癬の症状を安定させる上で非常に重要です。
まとめ
イルミア(チルドラキズマブ)は、中等症から重症の尋常性乾癬に対する有効な生物学的製剤であり、IL-23を選択的に阻害することで、長期的な皮疹の改善が期待できます。特に頭部乾癬に対しても有効性が示されており、多くの患者さまの生活の質の向上に貢献しています。主な副作用として感染症のリスクがあるため、治療中は感染予防と体調管理に十分な注意が必要です。定期的な受診と医師との密な連携を通じて、安全かつ効果的な治療を継続することが重要となります。
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よくある質問(FAQ)
- Kurt Gebauer, Lynda Spelman, Paul S Yamauchi et al.. Efficacy and safety of tildrakizumab for the treatment of moderate-to-severe plaque psoriasis of the scalp: A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, Phase 3b study.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2024. PMID: 38554938. DOI: 10.1016/j.jaad.2024.03.025
- Howard L Sofen, Kurt Gebauer, Lynda Spelman et al.. Efficacy and safety of tildrakizumab for the treatment of moderate-to-severe plaque psoriasis of the scalp: Week 52 results from a phase 3b, randomized, double-blind, placebo-controlled trial.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2025. PMID: 39722400. DOI: 10.1016/j.jaad.2024.12.018
- April W Armstrong, Andrew Blauvelt, Mark Lebwohl et al.. Efficacy and safety of tildrakizumab in patients with early- vs. late-onset psoriasis.. The British journal of dermatology. 2025. PMID: 40365708. DOI: 10.1093/bjd/ljaf171
- A B Kimball, T Kerbusch, F van Aarle et al.. Assessment of the effects of immunogenicity on the pharmacokinetics, efficacy and safety of tildrakizumab.. The British journal of dermatology. 2021. PMID: 30916381. DOI: 10.1111/bjd.17918
- イルミア(チルドラキズマブ)添付文書(JAPIC)
