- ✓ トレムフィアはIL-23を標的とする生物学的製剤で、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、クローン病の治療に用いられます。
- ✓ 投与は皮下注射で、効果発現までの期間や持続性には個人差がありますが、多くの患者さまで症状の改善が期待できます。
- ✓ 主な副作用として感染症のリスクが挙げられ、事前のスクリーニング検査と治療中の注意深い観察が重要です。
トレムフィア(グセルクマブ)とは?

トレムフィア(一般名:グセルクマブ)とは、中等症から重症の尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、および中等症から重症の活動期クローン病の治療に用いられる生物学的製剤です[5]。この薬剤は、疾患の発症や悪化に関与するサイトカインであるインターロイキン-23(IL-23)の働きを特異的に阻害することで、炎症を抑え、症状の改善を図ります。
当院の皮膚科外来では、従来の治療法で十分な効果が得られない乾癬患者さまに対して、トレムフィアを含む生物学的製剤の選択肢を提示することが多く、患者さまの生活の質(QOL)向上に大きく貢献しています。特に、皮疹が広範囲に及ぶ方や、関節症状を伴う方にとって、この治療は非常に有効な選択肢となり得ます。
- 生物学的製剤とは
- 生物学的製剤とは、生物が産生する物質(タンパク質など)を応用して作られた医薬品の総称です。特定の免疫細胞やサイトカイン(細胞間の情報伝達物質)の働きをピンポイントで阻害することで、病気の原因に直接作用し、高い治療効果が期待されます。従来の化学合成された薬剤とは異なり、分子標的薬の一種として位置づけられます。
IL-23阻害のメカニズムとは?
IL-23は、免疫細胞の一種であるT細胞の分化や活性化を促進し、炎症性サイトカイン(IL-17など)の産生を誘導することで、乾癬やクローン病といった自己免疫疾患の病態形成に深く関与しています。トレムフィアは、このIL-23に特異的に結合し、その受容体への結合を阻害することで、IL-23が引き起こす炎症反応の連鎖を断ち切ります。これにより、皮膚の過剰な増殖や炎症、関節の炎症、消化管の炎症といった症状が改善されると考えられています[5]。
トレムフィアの対象疾患と効果は?
トレムフィアは、炎症性疾患である乾癬とクローン病に対して承認されています。それぞれの疾患において、臨床試験でその有効性が確認されています。
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症への効果
乾癬は、皮膚の炎症と細胞の異常な増殖を特徴とする慢性的な自己免疫疾患です。トレムフィアは、中等症から重症の乾癬患者さまを対象とした複数の臨床試験で、皮膚症状の顕著な改善を示しました。例えば、VOYAGE 1試験では、治療開始16週の時点で、トレムフィア投与群の約85%の患者さまでPASIスコア(乾癬の重症度を示す指標)が75%以上改善し、約73%でPASI 90(90%以上の改善)を達成しました[1]。これは、従来の生物学的製剤と比較しても高い改善率と言えます。また、VOYAGE 2試験においても、16週時点で約70%の患者さまがPASI 90を達成し、その効果は長期にわたって維持されることが示されています[3]。関節症性乾癬においても、関節の腫れや痛みといった症状の改善が認められています。
皮膚科の臨床経験上、トレムフィアを処方した患者さまから、「赤みやかゆみが劇的に減った」「皮が剥がれ落ちることがなくなり、人前で肌を出すことに抵抗がなくなった」といったフィードバックをいただくことが多いです。特に、頭皮や爪など、他の治療では改善しにくい部位の乾癬にも効果が期待できることがあります。
クローン病への効果
クローン病は、消化管の慢性的な炎症を特徴とする自己免疫疾患です。トレムフィアは、中等症から重症の活動期クローン病患者さまを対象とした臨床試験でも有効性が示されています。GALAXI試験では、トレムフィアの静脈内導入療法と皮下維持療法により、48週時点で臨床的寛解(症状の消失)および内視鏡的改善が認められました[4]。また、GRAVITI試験でも、皮下導入療法後の維持療法において、臨床的寛解率の向上が報告されています[2]。これらの結果は、トレムフィアがクローン病の新たな治療選択肢となる可能性を示唆しています。
トレムフィアの用法・用量は?

トレムフィアは皮下注射によって投与されます。疾患の種類によって投与スケジュールが異なりますので、医師の指示に従うことが非常に重要です。
乾癬の場合の投与スケジュールは?
尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の場合、通常、成人にはグセルクマブとして100mgを初回、4週後、以後8週間の間隔で皮下投与します[5]。最初の数回は医療機関で投与指導を受け、その後は自己注射が可能となる場合もあります。自己注射を行う際には、適切な手技と保管方法について十分な指導が必要です。
実際の診察では、患者さまから「いつから効果が出始めますか?」と質問されることがよくあります。外来でトレムフィアを使用した経験では、多くの患者さまが2〜3回目の注射後、つまり投与開始から8〜12週間程度で効果を実感されることが多い印象です。ただし、効果の現れ方には個人差が大きいため、焦らず治療を継続することが大切です。
クローン病の場合の投与スケジュールは?
中等症から重症の活動期クローン病の場合、通常、成人にはグセルクマブとして初回200mgを皮下投与し、以後4週間の間隔で100mgを皮下投与します[5]。乾癬とは異なる投与スケジュールであるため、誤って投与しないよう注意が必要です。クローン病の治療においては、消化器内科医との連携が不可欠であり、当院では他科との連携を密に行い、患者さまにとって最適な治療計画を立てるよう努めています。
トレムフィアの投与スケジュールは疾患によって異なります。必ず医師の指示に従い、自己判断で投与量や間隔を変更しないでください。また、自己注射を行う場合は、適切な手技を習得し、清潔な環境で行うことが感染症予防のために重要です。
トレムフィアの副作用と注意点は?
トレムフィアは効果の高い薬剤ですが、副作用や使用上の注意点も存在します。特に、免疫系に作用する薬剤であるため、感染症のリスクには十分な注意が必要です。
重大な副作用とは?
トレムフィアで報告されている重大な副作用には、以下のようなものがあります[5]。
- 重篤な感染症:肺炎、敗血症、蜂巣炎、帯状疱疹、結核など。免疫抑制作用により、感染症にかかりやすくなったり、既存の感染症が悪化したりする可能性があります。投与開始前には、結核やB型肝炎などの感染症のスクリーニング検査が必須です。
- 重篤な過敏症:アナフィラキシー、血管浮腫など。まれに、投与後すぐに重篤なアレルギー反応を起こすことがあります。
皮膚科の日常診療では、患者さまに感染症の兆候(発熱、倦怠感、咳、皮膚の赤みや腫れなど)がないか、常に注意深く問診し、早期発見・早期対応に努めています。特に、高齢の患者さまや糖尿病などの基礎疾患をお持ちの患者さまには、より一層の注意を払う必要があります。
その他の副作用は?
比較的頻度が高いその他の副作用としては、以下のようなものがあります[5]。
- 注射部位反応(紅斑、腫脹、疼痛など)
- 上気道感染症(鼻咽頭炎など)
- 頭痛
- 関節痛
- 下痢
これらの副作用の多くは軽度で一過性ですが、症状が続く場合や悪化する場合は、速やかに医師に相談してください。処方する際は、これらの副作用について十分に説明し、患者さまが安心して治療を受けられるようサポートしています。
使用上の注意点と禁忌は?
以下に該当する患者さまには、トレムフィアを投与できません[5]。
- トレムフィアの成分に対し過敏症の既往歴のある患者さま
- 臨床的に重要な活動性感染症(敗血症、肺炎等)のある患者さま
また、生ワクチン接種との併用は避けるべきであり、妊娠中や授乳中の女性への投与は慎重に検討されます。これらの注意点を踏まえ、患者さま一人ひとりの状態を総合的に評価し、治療の可否を判断します。
トレムフィアに関する患者さまからのご質問
トレムフィアと他の生物学的製剤との比較は?

乾癬やクローン病の治療には、トレムフィア以外にも様々な生物学的製剤が使用されています。それぞれの薬剤には異なる作用機序や特徴があり、患者さまの状態や病態、これまでの治療歴などを考慮して選択されます。
IL-17阻害薬との違いは?
乾癬治療でよく用いられる生物学的製剤には、IL-23を阻害するトレムフィアのような薬剤の他に、IL-17を阻害する薬剤(例:コセンティクス、トルツ、スキリージ)があります。IL-23はIL-17の産生を誘導する上流のサイトカインであり、IL-17は直接的に炎症を引き起こすサイトカインです。両者は乾癬の病態に関与していますが、作用する段階が異なります。臨床試験の結果から、IL-23阻害薬であるトレムフィアは、長期的な皮膚症状の改善において高い効果と持続性を示すことが報告されています[1][3]。どちらの薬剤がより適しているかは、患者さまの症状のタイプ、重症度、合併症、これまでの治療歴などを総合的に判断して決定されます。
診察の現場では、IL-23阻害薬とIL-17阻害薬の使い分けについて説明する機会が多いです。例えば、IL-23阻害薬は投与間隔が長く、自己注射の負担が少ないというメリットを説明し、患者さまのライフスタイルに合わせた選択肢を提示しています。
| 項目 | トレムフィア(IL-23阻害薬) | IL-17阻害薬の一般的な特徴 |
|---|---|---|
| 作用機序 | IL-23を阻害 | IL-17A、またはIL-17A/Fを阻害 |
| 主な対象疾患 | 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、クローン病 | 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎 |
| 投与頻度(乾癬) | 初回、4週後、以後8週間隔 | 導入期は週1回、維持期は2〜4週間隔(薬剤による) |
| 期待される効果 | 高い皮膚症状改善効果、長期的な効果持続 | 比較的早期の皮膚症状改善効果、関節症状への効果 |
| 副作用の傾向 | 感染症、注射部位反応など | 感染症(特にカンジダ感染)、注射部位反応など |
ジェネリック医薬品はある?
現在、トレムフィア(グセルクマブ)のジェネリック医薬品は存在しません。トレムフィアは生物学的製剤であり、その製造には高度な技術と設備が必要です。化学合成された一般的な薬剤とは異なり、生物学的製剤のジェネリック医薬品は「バイオシミラー」と呼ばれます。
バイオシミラーの開発には、先発品と品質、安全性、有効性が同等であることを示す厳格な試験が求められます。トレムフィアは比較的新しい薬剤であるため、現時点ではバイオシミラーは承認されていませんが、将来的に開発される可能性はあります。処方する際は、患者さまから「ジェネリックはありますか?」と質問されることがよくあります。その際には、バイオシミラーの特性と現状について丁寧に説明し、ご理解いただくようにしています。
まとめ
トレムフィア(グセルクマブ)は、IL-23を標的とする生物学的製剤であり、中等症から重症の尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、および中等症から重症の活動期クローン病の治療に用いられます。高い皮膚症状の改善効果や、クローン病における臨床的寛解の維持が期待され、多くの患者さまのQOL向上に貢献しています。
主な副作用として感染症のリスクがありますが、事前のスクリーニング検査や治療中の注意深い観察により、リスクを管理することが可能です。投与は皮下注射で行われ、疾患によって異なる投与スケジュールが設定されています。自己注射が可能な場合もありますが、適切な手技と保管方法の指導が重要です。現在、ジェネリック医薬品(バイオシミラー)は存在しません。治療の選択にあたっては、患者さまの病状、これまでの治療歴、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、医師と十分に相談することが大切です。
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当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
- Andrew Blauvelt, Kim A Papp, Christopher E M Griffiths et al.. Efficacy and safety of guselkumab, an anti-interleukin-23 monoclonal antibody, compared with adalimumab for the continuous treatment of patients with moderate to severe psoriasis: Results from the phase III, double-blinded, placebo- and active comparator-controlled VOYAGE 1 trial.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2017. PMID: 28057360. DOI: 10.1016/j.jaad.2016.11.041
- Ailsa Hart, Remo Panaccione, Flavio Steinwurz et al.. Efficacy and Safety of Guselkumab Subcutaneous Induction and Maintenance in Participants With Moderately to Severely Active Crohn’s Disease: Results From the Phase 3 GRAVITI Study.. Gastroenterology. 2025. PMID: 40113101. DOI: 10.1053/j.gastro.2025.02.033
- Kristian Reich, April W Armstrong, Peter Foley et al.. Efficacy and safety of guselkumab, an anti-interleukin-23 monoclonal antibody, compared with adalimumab for the treatment of patients with moderate to severe psoriasis with randomized withdrawal and retreatment: Results from the phase III, double-blind, placebo- and active comparator-controlled VOYAGE 2 trial.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2017. PMID: 28057361. DOI: 10.1016/j.jaad.2016.11.042
- Remo Panaccione, Brian G Feagan, Anita Afzali et al.. Efficacy and safety of intravenous induction and subcutaneous maintenance therapy with guselkumab for patients with Crohn’s disease (GALAXI-2 and GALAXI-3): 48-week results from two phase 3, randomised, placebo and active comparator-controlled, double-blind, triple-dummy trials.. Lancet (London, England). 2025. PMID: 40684778. DOI: 10.1016/S0140-6736(25)00681-6
- トレムフィア(グセルクマブ)添付文書(JAPIC)
