- ✓ セファクロルは幅広い細菌感染症に用いられるセフェム系抗生物質です。
- ✓ 皮膚科領域では、表在性皮膚感染症や深在性皮膚感染症などに効果を発揮します。
- ✓ 副作用として消化器症状が比較的多く、アレルギー反応にも注意が必要です。
セファクロル(ケフラール)とは?その特徴と作用機序

セファクロル(一般名: Cefaclor、商品名: ケフラールなど)は、セフェム系と呼ばれる抗生物質の一つで、細菌が原因となる様々な感染症の治療に用いられます。セファクロルは、細菌の細胞壁合成を阻害することで細菌を殺菌する作用を持っています[5]。この作用機序により、幅広い種類の細菌に対して効果を示すことが特徴です[1]。
当院の皮膚科外来では、細菌感染を伴う湿疹や、蜂窩織炎、伝染性膿痂疹(とびひ)などの患者さまにセファクロルを処方することが多いです。特に、ペニシリン系抗生物質にアレルギーがある方や、特定の菌種が疑われる場合に選択肢の一つとして検討します。
- セフェム系抗生物質
- β-ラクタム系抗生物質の一種で、細菌の細胞壁の合成を阻害することで殺菌作用を発揮します。ペニシリン系抗生物質と並び、幅広い感染症に用いられる主要な抗生物質群です。
セファクロルの作用機序
セファクロルは、細菌の細胞壁の主要構成成分であるペプチドグリカン合成に関わる酵素、特にペニシリン結合タンパク(PBP)に結合します。これにより、細菌の細胞壁が正常に作られなくなり、細菌は細胞内圧に耐えられず破壊されて死滅します[5]。この殺菌作用は、感染症の早期治療において非常に重要です。実際の診察では、患者さまから「この薬はどのように効くのですか?」と質問されることがよくあります。その際には、細菌の壁を壊して退治する薬であることを分かりやすく説明するように心がけています。
適応菌種と適応症
セファクロルは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して抗菌活性を示します。特に、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、インフルエンザ菌、大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属など、多くの一般的な病原菌に有効です[5]。
これらの菌種が原因となる以下のような感染症に適用されます[5]:
- 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症:伝染性膿痂疹(とびひ)、蜂窩織炎、丹毒、毛嚢炎、せつ、ようなど。
- リンパ管・リンパ節炎
- 慢性膿皮症
- 乳腺炎
- 咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
- 膀胱炎、腎盂腎炎、精巣上体炎
- 中耳炎、副鼻腔炎
- 歯周組織炎、顎炎
皮膚科の日常診療では、特に皮膚の細菌感染症に対してこの薬が有効な選択肢となります。例えば、小さな傷から細菌が侵入して広範囲に炎症を起こす蜂窩織炎や、子供に多い伝染性膿痂疹などでは、適切な抗菌薬治療が病状の悪化を防ぎ、治癒を促進します。セファクロルは経口薬であるため、入院を要するような重症例を除き、外来での治療に適しています。
セファクロルの用法・用量と注意点
セファクロルは、効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるために、適切な用法・用量を守ることが重要です。処方された通りに服用し、自己判断で中断したり量を変更したりしないようにしてください。
一般的な用法・用量
セファクロルの一般的な用法・用量は以下の通りです[5]:
- 成人:通常、セファクロルとして1日750mg(力価)を3回に分割して経口投与します。
- 小児:通常、セファクロルとして1日20〜40mg/kg(力価)を3回に分割して経口投与します。
- 重症または分離菌の感受性が比較的低い場合:成人では1日1500mg(力価)まで増量できます。小児では1日60mg/kg(力価)まで増量できます。
年齢や症状によって適宜増減されますが、増量する場合は1日1500mg(力価)を超えないこととされています。処方する際は、患者さまの腎機能や体重、感染症の重症度を考慮して患者さまに合った用法を選択しています。特に小児の場合、体重に基づいた正確な用量計算が不可欠です。
服用上の注意点
- 指示された期間の服用:症状が改善しても、医師の指示があるまで服用を続けることが重要です。途中で中断すると、細菌が完全に死滅せず、再燃したり薬剤耐性菌が出現したりする可能性があります。
- アレルギー歴の確認:ペニシリン系抗生物質や他のセフェム系抗生物質でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。交差アレルギー(異なる種類の薬でも同様のアレルギー反応を起こすこと)の可能性があります[5]。
- 腎機能障害のある患者:腎機能が低下している患者さまでは、薬の排泄が遅れるため、用量調整が必要になる場合があります[5]。
- 妊婦・授乳婦:妊娠中または授乳中の場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。必ず医師に相談してください[5]。
セファクロルは、ウイルス感染症(風邪など)には効果がありません。不必要な抗生物質の服用は、薬剤耐性菌の出現を招く可能性があるため、医師の指示に従い正しく使用することが重要です。
セファクロルの副作用にはどのようなものがある?

セファクロルは一般的に安全性の高い薬ですが、他の薬と同様に副作用が起こる可能性があります。副作用は頻度や重症度によって分類され、患者さまには事前に説明を行うようにしています。
重大な副作用
発生頻度は稀ですが、以下のような重大な副作用が報告されています。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください[5]。
- ショック、アナフィラキシー:呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)、全身潮紅、浮腫、蕁麻疹、冷汗、血圧低下などの症状。
- 急性腎障害:尿量減少、むくみ、全身倦怠感など。
- 偽膜性大腸炎、出血性大腸炎:激しい腹痛、頻回の下痢(血便を伴うこともある)。
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群):発熱、紅斑、水疱、びらん、眼充血、口内炎などの広範囲な皮膚・粘膜症状。
- 肝機能障害、黄疸:全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる。
- 無顆粒球症、溶血性貧血、血小板減少:発熱、のどの痛み、倦怠感、青あざができやすい、出血しやすいなど。
- 間質性肺炎、PIE症候群:発熱、咳、呼吸困難、胸部X線異常。
その他の副作用
比較的頻度が高いものから低いものまで、様々な副作用が報告されています[5]。
| 頻度 | 副作用の種類 | 具体的な症状 |
|---|---|---|
| 0.1%〜5%未満 | 消化器 | 下痢、軟便、悪心、嘔吐、腹部不快感 |
| 過敏症 | 発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒 | |
| 血液 | 好酸球増多 | |
| 0.1%未満 | 消化器 | 食欲不振 |
| 過敏症 | 発熱、リンパ腺腫脹、関節痛(血清病様反応) | |
| 肝臓 | AST、ALT、ALPの上昇 | |
| 腎臓 | BUN、クレアチニンの上昇 | |
| 菌交代症 | 口内炎、カンジダ症 | |
| その他 | 頭痛、めまい、全身倦怠感 |
皮膚科の臨床経験上、セファクロルを処方した患者さまから、下痢や軟便といった消化器症状のフィードバックをいただくことが多い印象です。これらの症状は、腸内細菌叢のバランスが一時的に崩れることで生じることがあります。症状が軽度であれば、整腸剤の併用などで対応可能ですが、ひどい場合は医師に相談してください。また、発疹などの過敏症は、服用開始後比較的早期に現れることがあるため、注意が必要です。
ジェネリック医薬品について
セファクロルには、先発医薬品である「ケフラール」の他に、複数のジェネリック医薬品(後発医薬品)が存在します。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分、効果、安全性、品質が同等であることが国によって認められています。
ジェネリック医薬品の利点
- 薬価が安い:開発費用がかからないため、先発医薬品よりも安価で提供されます。これにより、患者さまの医療費負担を軽減できます。
- 選択肢の増加:様々な製薬会社から供給されるため、剤形(錠剤、カプセル、ドライシロップなど)や味、色などが異なる製品を選ぶことができます。
当院では、患者さまの医療費負担を考慮し、ジェネリック医薬品の選択肢がある場合には積極的に情報提供を行っています。特に長期的な治療が必要な場合や、複数の薬剤を服用している患者さまにとって、ジェネリック医薬品への切り替えは経済的なメリットが大きいでしょう。
先発医薬品とジェネリック医薬品の比較
セファクロルの先発医薬品である「ケフラール」とジェネリック医薬品は、有効成分は同じ「セファクロル」であり、薬効や安全性に違いはありません。しかし、添加物や製剤の形状、味などが異なる場合があります[6]。
| 項目 | 先発医薬品(ケフラール) | ジェネリック医薬品(セファクロル〇〇) |
|---|---|---|
| 有効成分 | セファクロル | セファクロル |
| 薬効・安全性 | 同等 | 同等 |
| 薬価 | 比較的高価 | 安価 |
| 剤形・味・色 | 特定の製品に準ずる | メーカーにより異なる場合がある |
| 開発経緯 | 新薬として開発されたもの | 先発医薬品の特許期間満了後に製造・販売されたもの |
ジェネリック医薬品への変更を希望される場合は、処方時に医師や薬剤師にご相談ください。ジェネリック医薬品に関する詳細情報も参考にしてください。
セファクロルに関する患者さまからのご質問
セファクロルと他の抗生物質との比較

セファクロルはセフェム系抗生物質の一つですが、他の抗生物質と比較して、その特性を理解することは適切な治療選択に役立ちます。皮膚科の日常診療では、感染症の種類や重症度、患者さまのアレルギー歴などを考慮して、様々な抗生物質を使い分けています。
セファクロルと他のセフェム系抗生物質
セフェム系抗生物質は、その開発時期や抗菌スペクトルの違いにより、第1世代から第4世代に分類されます。セファクロルは第2世代セフェムに分類され、第1世代よりもグラム陰性菌に対する抗菌力が強化されている点が特徴です[1]。例えば、第1世代のセファレキシン(ケフレックス)やセファドロキシル(セフゾン)は主にグラム陽性菌に強い抗菌力を持ち、皮膚感染症によく用いられますが、セファクロルはインフルエンザ菌など一部のグラム陰性菌にも有効性を示します[4]。
実際の診察では、感染部位や疑われる菌種によって、セファクロルと他のセフェム系抗生物質の使い分けについて説明する機会が多いです。例えば、単純な表在性皮膚感染症であれば第1世代セフェムで十分な場合もありますが、呼吸器感染症を合併している場合などでは、より広範囲な抗菌スペクトルを持つセファクロルが選択されることがあります[3]。
セファクロルとペニシリン系抗生物質
ペニシリン系抗生物質も広く用いられる抗生物質ですが、セファクロルとは作用機序は類似しているものの、抗菌スペクトルやアレルギー反応のリスクが異なります。ペニシリンアレルギーがある患者さまに対しては、セファクロルを含むセフェム系抗生物質が代替薬として検討されることがあります。ただし、ペニシリン系とセフェム系の間には交差アレルギー(両方にアレルギー反応を起こすこと)の可能性が約5〜10%程度あるとされているため、アレルギー歴の確認は非常に重要です[5]。
抗生物質の選択は、感染症の原因菌、重症度、患者さまのアレルギー歴、腎機能、併用薬などを総合的に判断して行われます。自己判断で抗生物質を変更したり、服用を中止したりすることは、治療効果の低下や薬剤耐性菌の発生につながるため、絶対に避けてください。
セファクロル服用中の日常生活での注意点
セファクロルを服用している間は、治療効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを低減するために、いくつかの日常生活上の注意点があります。皮膚科の臨床経験上、患者さまがこれらの点に注意することで、よりスムーズに治療を進められると感じています。
服薬の継続と自己判断での中止の禁止
最も重要なのは、医師から指示された期間、薬を飲み続けることです。症状が改善したからといって自己判断で服用を中止すると、体内に残った細菌が再び増殖し、感染症が再燃したり、薬剤耐性菌が発生するリスクが高まります。薬剤耐性菌は、将来的に他の抗生物質も効かなくなる可能性があるため、社会全体の問題としても重要です[2]。当院では、患者さまにこの点を繰り返し説明し、治療の完遂を促しています。
アレルギー症状への注意
セファクロルによるアレルギー反応は、服用開始後比較的早期に現れることがあります。発疹、蕁麻疹、かゆみ、呼吸困難などの症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師または薬剤師に連絡してください。特に、過去に他の薬でアレルギー反応を起こしたことがある方は、より注意が必要です。
消化器症状への対処
下痢や軟便といった消化器症状は、セファクロルで比較的よく見られる副作用です。これらの症状は、腸内細菌のバランスが一時的に変化することで起こることが多いです。症状が軽度であれば、様子を見ても問題ありませんが、激しい下痢や血便、腹痛が続く場合は、偽膜性大腸炎などの重大な副作用の可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。整腸剤の併用が有効な場合もありますので、症状が気になる場合は医師に相談しましょう。
食事や飲酒について
セファクロルは食事の影響をほとんど受けませんが、胃腸への負担を考慮して食後の服用が推奨されることが多いです。飲酒については、直接的な相互作用は少ないものの、感染症治療中は体力が低下していることが多いため、アルコール摂取は控えることが望ましいです。アルコールは薬の代謝に影響を与えたり、体調不良を悪化させたりする可能性もあります。
腎機能障害のある患者さまへの配慮
腎機能が低下している患者さまの場合、セファクロルが体外へ排泄されにくくなり、体内に薬が蓄積する可能性があります。そのため、医師は腎機能の状態に応じて用量を調整したり、他の抗生物質を選択したりすることがあります。腎臓病の既往がある場合は、必ず医師に伝えてください。
まとめ
セファクロル(ケフラール)は、幅広い細菌感染症に有効なセフェム系抗生物質であり、皮膚科領域においても表在性・深在性皮膚感染症などの治療に広く用いられています。細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌作用を発揮し、多くの一般的な病原菌に効果が期待できます。
用法・用量は症状や年齢によって調整されますが、医師の指示に従い、最後まで服用を続けることが重要です。副作用としては、下痢などの消化器症状が比較的多く見られますが、稀にショックや重篤な皮膚症状などの重大な副作用も発生する可能性があります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
セファクロルにはジェネリック医薬品も存在し、薬価を抑える選択肢として利用できます。治療中は、アレルギー症状や消化器症状に注意し、飲酒を控えるなど、日常生活での配慮も大切です。ご自身の状態や服用中の薬について、不明な点があれば遠慮なく医師や薬剤師にご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
- B R Meyers. Cefaclor revisited.. Clinical therapeutics. 2000. PMID: 10743978. DOI: 10.1016/S0149-2918(00)88477-5
- W Brumfitt, J M Hamilton-Miller. Cefaclor into the millennium.. Journal of chemotherapy (Florence, Italy). 1999. PMID: 10435677. DOI: 10.1179/joc.1999.11.3.163
- R McCabe, L Rumans, R Perrotta et al.. Comparison of the efficacy and safety of ceftibuten and cefaclor in the treatment of pneumonia and bronchiectasis.. Journal of chemotherapy (Florence, Italy). 1993. PMID: 8515295. DOI: 10.1080/1120009x.1993.11739220
- F N Ballantyne. Comparative efficacy of cefadroxil and cefaclor in the treatment of skin and soft-tissue infections.. Clinical therapeutics. 1985. PMID: 4016827
- セファクロル 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ケフレックス(ケフラール)添付文書(JAPIC)
