ジスロマックの効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ ジスロマックは幅広い細菌に有効なマクロライド系抗生物質で、短期間の服用で効果が持続します。
- ✓ 主な副作用として消化器症状や肝機能障害があり、QT延長などの重大な副作用にも注意が必要です。
- ✓ 症状や疾患に応じて用法・用量が異なり、医師の指示に従うことが重要です。
ジスロマック(アジスロマイシン)とは?

ジスロマック(一般名:アジスロマイシン)は、マクロライド系の抗生物質であり、細菌による様々な感染症の治療に用いられます。その特徴は、体内でゆっくりと排泄されるため、短期間の服用で効果が持続することです[1]。一般的な抗生物質が数日〜1週間程度の継続服用を必要とするのに対し、ジスロマックは1日1回の服用を3日間継続するだけで、その後も数日間にわたって効果が期待できるため、患者さまの服薬アドヒアランス(指示通りに薬を服用すること)の向上に寄与すると考えられています。
この薬は、細菌のタンパク質合成を阻害することで増殖を抑える静菌作用を示します。具体的には、細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成の伸長段階を妨げます。これにより、細菌は増殖できなくなり、最終的には免疫システムによって排除されます。幅広い種類の細菌に対して有効性を示し、特にグラム陽性菌、一部のグラム陰性菌、非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジアなど)に対して強い抗菌活性を持つことが知られています[1]。
当院の皮膚科外来では、特にニキビの炎症が強い場合や、蜂窩織炎などの細菌感染症に対して、ジスロマックを処方する機会があります。患者さまからは「3日飲むだけでいいのは助かる」といった声もよく聞かれ、服薬負担の軽減に繋がっています。ただし、短期間の服用であっても、効果を最大限に引き出すためには、医師の指示通りの用法・用量を守ることが極めて重要です。
- マクロライド系抗生物質
- 細菌のタンパク質合成を阻害することで抗菌作用を発揮する抗生物質のグループ。アジスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどが含まれる。呼吸器感染症、皮膚感染症、性感染症など幅広い細菌感染症に用いられる。
ジスロマックが効く主な疾患とは?
ジスロマックは、その広範な抗菌スペクトルから、多岐にわたる感染症の治療に適用されます。主な適用疾患は以下の通りです[5]。
- 呼吸器感染症: 肺炎、気管支炎、扁桃炎、咽頭炎など。特にマイコプラズマやクラミジアといった非定型病原体による感染症に有効です。
- 皮膚感染症: 蜂窩織炎、リンパ管・リンパ節炎、化膿性爪囲炎、伝染性膿痂疹など。皮膚の細菌感染症に対して効果が期待されます。
- 尿路・性器感染症: 尿道炎、子宮頸管炎など。特にクラミジア・トラコマチスによる性感染症の治療に広く用いられます。
- 耳鼻咽喉科感染症: 中耳炎、副鼻腔炎など。
- 歯科感染症: 歯周組織炎など。
これらの疾患以外にも、トラコーマ(眼の感染症)の集団治療にも有効性が報告されています[4]。当院では、特に皮膚感染症の際に、患者さまの症状や原因菌の推定に基づいて、他の抗生物質と使い分けながら処方しています。例えば、顔に広がる重度のニキビで、炎症が強く化膿しているケースでは、ジスロマックの抗菌作用が有効な場合があります。実際の処方では、患者さまの既往歴やアレルギー歴、他の内服薬との相互作用も考慮した上で、最も適切な治療法を選択することが重要です。
ジスロマックの用法・用量は?
ジスロマックの用法・用量は、治療する感染症の種類や患者さまの状態によって異なります。添付文書に記載されている主な用法・用量を以下に示します[5]。
成人における主な用法・用量
- 一般的な細菌感染症(呼吸器感染症、皮膚感染症など):
成人にはアジスロマイシンとして、500mg(力価)を1日1回、3日間経口投与します。総投与量は1,500mg(力価)です。 - 尿道炎、子宮頸管炎:
成人にはアジスロマイシンとして、1,000mg(力価)を1回経口投与します。 - 非結核性抗酸菌症(他の抗酸菌症治療薬と併用):
成人にはアジスロマイシンとして、250mg(力価)を1日1回経口投与します。
小児における主な用法・用量
- 一般的な細菌感染症(呼吸器感染症、皮膚感染症など):
小児にはアジスロマイシンとして、体重1kgあたり10mg(力価)を1日1回、3日間経口投与します。ただし、1日最大投与量は500mg(力価)です。 - A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:
小児にはアジスロマイシンとして、体重1kgあたり10mg(力価)を1日1回、3日間経口投与します。ただし、1日最大投与量は500mg(力価)です。
当院では、小児の患者さまに処方する際は、体重に基づいた正確な用量計算を徹底し、保護者の方には服薬方法について丁寧に説明しています。特に、小児用のドライシロップ製剤は水に溶かして服用するため、溶かし方や飲ませ方について具体的なアドバイスをしています。また、飲み忘れがないよう、食前・食後どちらでも服用可能ですが、食後に服用することで胃腸への負担を軽減できる場合があることもお伝えしています。
ジスロマックは、その特性上、短期間の服用で効果が持続しますが、自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりすることは避けてください。症状が改善しても、体内に残存する細菌が耐性を獲得するリスクがあるため、医師の指示された期間、適切に服用を継続することが重要です。
ジスロマックの副作用とは?

どのような薬剤にも副作用のリスクは存在し、ジスロマックも例外ではありません。副作用は、その発現頻度や重症度によって「重大な副作用」と「その他の副作用」に分類されます。患者さまに安心して治療を受けていただくためにも、これらの情報を正しく理解しておくことが大切です。
重大な副作用
ジスロマックの重大な副作用は、発現頻度は低いものの、重篤な健康被害につながる可能性があるため、特に注意が必要です。もしこれらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください[5]。
- ショック、アナフィラキシー: 呼吸困難、喘鳴、血管浮腫、蕁麻疹など。
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性汎発性発疹性膿疱症、薬剤性過敏症症候群(DIHS): 高熱、発疹、水疱、目の充血、口内炎、皮膚の剥離など。
- 肝機能障害、黄疸、肝不全: 全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなるなど。
- 急性腎障害: 尿量の減少、むくみ、全身倦怠感など。
- 偽膜性大腸炎、出血性大腸炎: 激しい腹痛、頻回の下痢、血便など。
- 間質性肺炎、好酸球性肺炎: 息切れ、乾いた咳、発熱など。
- QT延長、心室性頻拍(Torsades de Pointesを含む): 動悸、めまい、失神など。心臓に既往のある患者さまや、他のQT延長作用のある薬剤との併用時にリスクが高まる可能性があります[2]。
- 白血球減少、顆粒球減少、血小板減少: 感染しやすくなる、出血しやすくなるなど。
- 横紋筋融解症: 筋肉痛、脱力感、尿の色が濃くなるなど。
その他の副作用
その他の副作用は、比較的発現頻度が高く、多くは軽度で一過性のものですが、症状が続く場合や悪化する場合は医師に相談してください[5]。
- 消化器症状: 下痢(5%以上)、腹痛、悪心、嘔吐、便秘、消化不良など。これらはマクロライド系抗生物質に共通して見られる症状です。
- 精神神経系: 頭痛、めまい、不眠、しびれ感など。
- 過敏症: 発疹、蕁麻疹、かゆみなど。
- 肝臓: AST、ALT、γ-GTP、LDH、ALPの上昇など。
- 血液: 好酸球増多など。
- その他: 倦怠感、カンジダ症など。
皮膚科の臨床経験上、ジスロマックを処方した患者さまから最も多くいただくフィードバックは「お腹がゆるくなる」という消化器症状です。特に、空腹時に服用すると症状が出やすい傾向があるため、当院では食後の服用をおすすめすることが多いです。また、稀に発疹やかゆみを訴える方もいらっしゃいますが、多くは軽度で、服用中止により改善します。しかし、皮膚症状が全身に広がる、水疱ができる、発熱を伴うなどの場合は、重大な副作用の可能性も考慮し、すぐに受診するよう指導しています。
ジスロマックの注意点と飲み合わせ
ジスロマックを安全かつ効果的に使用するためには、いくつかの注意点と、他の薬剤との飲み合わせ(相互作用)について理解しておく必要があります。これらは治療効果や副作用の発現に影響を与える可能性があるため、服薬前に必ず医師や薬剤師に確認しましょう。
服用上の注意点
- アレルギー歴の確認: 過去にマクロライド系抗生物質や、他の薬剤でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
- 肝機能障害・腎機能障害: 肝臓や腎臓に疾患がある場合、薬の代謝や排泄に影響が出ることがあります。医師は患者さまの肝機能・腎機能の状態を考慮して、用量を調整したり、慎重に投与したりする場合があります。
- 心疾患の既往: QT延長症候群や不整脈などの心疾患がある場合、ジスロマックの服用により症状が悪化する可能性があります。必ず医師に申告してください[2]。
- 妊婦・授乳婦: 妊娠中または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。必ず医師に相談してください。
- 高齢者: 高齢者では生理機能が低下していることが多いため、副作用の発現に注意し、慎重に投与されます。
飲み合わせに注意が必要な薬剤
ジスロマックは、他の薬剤と併用することで、相互作用を引き起こす可能性があります。特に以下の薬剤との併用には注意が必要です[5]。
| 薬剤の種類 | 相互作用の内容 | 注意すべき点 |
|---|---|---|
| ワルファリン(抗凝固薬) | ワルファリンの作用を増強し、出血傾向を増す可能性があります。 | 併用時は血液凝固能のモニタリングを強化します。 |
| シクロスポリン(免疫抑制剤) | シクロスポリンの血中濃度を上昇させ、腎毒性などの副作用を増強する可能性があります。 | シクロスポリンの血中濃度を測定し、用量調整が必要です。 |
| ジゴキシン(強心薬) | ジゴキシンの血中濃度を上昇させ、ジゴキシン中毒を引き起こす可能性があります。 | ジゴキシンの血中濃度を測定し、用量調整が必要です。 |
| 制酸剤(アルミニウムまたはマグネシウム含有) | ジスロマックの吸収を低下させ、効果を弱める可能性があります。 | ジスロマック服用後2時間以上あけて制酸剤を服用してください。 |
| QT延長作用のある薬剤(抗不整脈薬など) | 心電図のQT時間をさらに延長させ、重篤な不整脈(Torsades de Pointesなど)のリスクを高める可能性があります。 | 併用は可能な限り避けるか、心電図モニタリングを考慮します。 |
当院の診察では、患者さまが現在服用しているすべての薬剤(市販薬、サプリメントを含む)について詳しく伺うようにしています。特に、他の医療機関で処方されている薬がある場合は、お薬手帳などで確認し、相互作用のリスクがないかを慎重に判断します。患者さまから「普段飲んでいるサプリメントは大丈夫ですか?」と質問されることも少なくありませんが、どのようなものでも必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
ジスロマックに関する患者さまからのご質問

ジスロマックのジェネリック医薬品は?
ジスロマックは、アジスロマイシンを有効成分とする先発医薬品です。先発医薬品の特許期間が満了すると、同じ有効成分、同じ効能・効果を持つ「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」が製造・販売されるようになります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同等の品質、有効性、安全性が国によって保証されており、開発費用が抑えられるため、一般的に先発医薬品よりも安価に提供されます。
アジスロマイシンを有効成分とするジェネリック医薬品も、現在では多数製造・販売されています。例えば、「アジスロマイシン錠〇〇mg『△△』」といった名称で、様々な製薬会社から供給されています。これらのジェネリック医薬品は、先発品であるジスロマックと同じように、各種細菌感染症の治療に用いられます。
ジェネリック医薬品の選択肢
ジェネリック医薬品には、先発品と同じ成分が同じ量だけ含まれており、効果や安全性も同等とされています。そのため、医療費の負担を軽減したいと考える患者さまにとって、ジェネリック医薬品は有効な選択肢となります。当院でも、患者さまの希望に応じて、ジェネリック医薬品を処方することが可能です。
実際の診察では、患者さまから「ジェネリックでも効果は同じですか?」という質問をよくいただきます。その際には、「有効成分は全く同じであり、国が定めた厳しい基準をクリアしているため、効果や安全性に違いはありません」と説明しています。ただし、添加物や製剤の形状(錠剤の色や大きさ、味など)は異なる場合があるため、アレルギー体質の方や、特定の添加物に敏感な方は、事前に医師や薬剤師に相談することが重要です。当院では、患者さまが納得して治療を受けられるよう、先発品とジェネリック医薬品それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明し、選択をサポートしています。
まとめ
ジスロマック(アジスロマイシン)は、幅広い細菌感染症に有効なマクロライド系抗生物質です。その最大の特徴は、短期間の服用で効果が持続する点で、患者さまの服薬負担軽減に貢献します。肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症、蜂窩織炎などの皮膚感染症、クラミジアによる性感染症など、多岐にわたる疾患に適用されます。
主な副作用としては消化器症状が挙げられますが、ショック、肝機能障害、QT延長などの重大な副作用にも注意が必要です。服用に際しては、アレルギー歴、肝機能・腎機能、心疾患の既往などを医師に伝えることが重要であり、ワルファリンやシクロスポリンなど、特定の薬剤との飲み合わせには特に注意が必要です。
ジスロマックにはジェネリック医薬品も存在し、医療費の負担を抑えたい患者さまにとって有効な選択肢となります。医師や薬剤師の指示に従い、適切な用法・用量で服用することで、安全かつ効果的な治療が期待できます。
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よくある質問(FAQ)
- Anton Firth, Praveen Prathapan. Azithromycin: The First Broad-spectrum Therapeutic.. European journal of medicinal chemistry. 2020. PMID: 32871342. DOI: 10.1016/j.ejmech.2020.112739
- Hui Li, Ding-Hui Liu, Lu-Lu Chen et al.. Meta-analysis of the adverse effects of long-term azithromycin use in patients with chronic lung diseases.. Antimicrobial agents and chemotherapy. 2014. PMID: 24189261. DOI: 10.1128/AAC.02067-13
- Francisco Casas-Maldonado. Bronchiectasis and Azithromycin.. Archivos de bronconeumologia. 2018. PMID: 28757281. DOI: 10.1016/j.arbres.2017.06.025
- A M Fry, H C Jha, T M Lietman et al.. Adverse and beneficial secondary effects of mass treatment with azithromycin to eliminate blindness due to trachoma in Nepal.. Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America. 2002. PMID: 12145722. DOI: 10.1086/341414
- アジマイシン(ジスロマック)添付文書(JAPIC)
- アジマイシン(アジスロマイシン)添付文書(JAPIC)
