酒さの原因と治療|医師が解説する対策とケア
- ✓ 酒さは顔の赤みやニキビのような発疹が特徴の慢性炎症性疾患です。
- ✓ 治療は病型や重症度に応じて、外用薬、内服薬、レーザー治療などを組み合わせます。
- ✓ 症状悪化因子を避けることや適切なスキンケアが重要です。
酒さ(しゅさ)の基礎知識とは?

酒さ(Rosacea)は、主に顔面に慢性的な赤みや血管の拡張、丘疹(きゅうしん)や膿疱(のうほう)といったニキビに似た症状が現れる皮膚疾患です。思春期以降の成人に多く見られ、特に白人女性に多いとされていますが、日本人にも少なくありません[1]。
酒さの主な症状と病型
酒さの症状は多岐にわたり、国際酒さ専門委員会(National Rosacea Society Expert Committee)は、以下の4つの病型に分類しています[2]。
- 紅斑性酒さ(Erythematotelangiectatic Rosacea; ETR): 顔の中心部、特に頬や鼻、額に持続的な赤み(紅斑)が見られ、毛細血管拡張(いわゆる「赤ら顔」)を伴うことが特徴です。灼熱感やヒリヒリ感を訴える患者さまも多くいらっしゃいます。
- 丘疹膿疱性酒さ(Papulopustular Rosacea; PPR): 紅斑に加え、ニキビに似た赤いブツブツ(丘疹)や膿を持ったブツブツ(膿疱)が顔に現れます。思春期ニキビと間違われやすいですが、面皰(めんぽう、コメド)がない点で異なります。
- 瘤腫性酒さ(Phymatous Rosacea): 鼻や顎、額などの皮膚が厚くなり、表面がでこぼこになる病型です。特に鼻に生じると「鼻瘤(びりゅう)」と呼ばれ、男性に多く見られます。組織の線維化と皮脂腺の増殖が関与しています。
- 眼型酒さ(Ocular Rosacea): 目の症状が主で、目の充血、異物感、乾燥、まぶたの炎症(眼瞼炎)などを引き起こします。皮膚症状に先行して現れることもあります。
当院では、初診時に「顔が常に赤く、化粧で隠しきれない」「ニキビだと思って治療しても良くならない」と相談される患者さまが少なくありません。特に頬や鼻の赤み、そしてヒリヒリとした刺激感を訴える方が多い印象です。
酒さの原因は何ですか?
酒さの正確な原因はまだ完全に解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています[3]。
- 遺伝的要因: 家族歴がある場合に発症リスクが高まることが示唆されています。診察の中で、問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしています。
- 免疫系の異常: 自然免疫系の過剰な反応が炎症を引き起こすと考えられています。特にカテリシジンという抗菌ペプチドの異常が注目されています[4]。
- 血管の異常: 顔の血管が拡張しやすく、血管新生(新しい血管が作られること)が促進されることが関与しています。
- 皮膚常在菌・寄生虫: 顔ダニの一種であるデモデックス(ニキビダニ)が酒さの悪化に関与している可能性が指摘されています。デモデックスの数が多いほど、炎症が強くなる傾向があるという報告もあります[5]。
- 紫外線: 紫外線は酒さの症状を悪化させる主要な要因の一つです。紫外線によって炎症性サイトカインが放出され、血管拡張や炎症が促進されます。
- その他: ストレス、香辛料の効いた食べ物、アルコール、熱い飲み物、急激な温度変化なども症状を悪化させる誘因となることがあります。
- カテリシジンとは
- カテリシジンは、皮膚や粘膜に存在する抗菌ペプチドの一種で、体の防御機構の一部を担っています。酒さの患者さまでは、このカテリシジンの異常な活性化や分解産物の増加が炎症反応に関与していると考えられています。
酒さの診断はどのように行われますか?
酒さの診断は、特徴的な臨床症状に基づいて行われます。特定の検査で確定診断できるわけではなく、医師による視診と問診が中心となります。当院では、まず患者さまの症状の経過、悪化因子、既往歴、使用中の化粧品やスキンケア製品について詳しくお伺いします。特に、ステロイド外用薬の長期使用歴がある場合は、ステロイド酒さとの鑑別も重要になります。また、ニキビや脂漏性皮膚炎など、他の皮膚疾患との鑑別も慎重に行います。
酒さはニキビやアトピー性皮膚炎と症状が似ていることがありますが、治療法が異なるため自己判断は避け、皮膚科専門医の診断を受けることが重要です。
酒さの治療法とスキンケアのポイント

酒さの治療は、病型や重症度、患者さまのライフスタイルに合わせて、外用薬、内服薬、レーザー治療などを組み合わせる集学的アプローチが基本となります。症状の改善だけでなく、再発予防や悪化因子の管理も重要です。
酒さの主な治療薬にはどのようなものがありますか?
酒さの治療には、炎症を抑えたり、顔ダニの増殖を抑制したりする様々な薬剤が用いられます。当院では、患者さまの症状を詳しく診察し、最適な治療法を提案しています。
外用薬
- メトロニダゾール(Metronidazole): 抗菌作用と抗炎症作用を持ち、丘疹膿疱性酒さの治療に広く用いられます。炎症性病変の数を減少させる効果が期待できます[6]。治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「赤みが落ち着いてきた」「ブツブツが減った」とおっしゃる方が多いです。
- アゼライン酸(Azelaic acid): 抗菌作用、抗炎症作用、角質溶解作用を持ち、紅斑性酒さや丘疹膿疱性酒さの両方に効果が期待されます。ニキビ治療にも使われる成分です[7]。
- イベルメクチン(Ivermectin): 顔ダニ(デモデックス)の数を減らす作用があり、特にデモデックスが関与する丘疹膿疱性酒さに有効性が報告されています[8]。
- ブリモニジン(Brimonidine): 血管収縮作用により、紅斑性酒さの一時的な赤みを軽減する効果が期待できます。即効性がありますが、効果は一時的です。
内服薬
- テトラサイクリン系抗生物質(例: ドキシサイクリン): 少量で抗炎症作用を発揮し、丘疹膿疱性酒さの炎症性病変を減少させます。抗菌作用だけでなく、炎症を抑える目的で用いられます[9]。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
- イソトレチノイン(Isotretinoin): 重症の丘疹膿疱性酒さや瘤腫性酒さに用いられることがあります。皮脂腺の活動を抑制し、抗炎症作用も持ちますが、副作用も強いため、専門医の厳重な管理下で使用されます。日本では未承認薬ですが、海外では酒さ治療に用いられることがあります。
レーザー治療や光治療は有効ですか?
レーザー治療や光治療は、特に紅斑や毛細血管拡張が目立つ酒さに対して有効な選択肢となります。当院でも、症状に合わせてこれらの治療を提案しています。
- 色素レーザー(Vascular laser): 拡張した毛細血管に選択的に吸収され、血管を破壊することで赤みを軽減します。数回の治療で効果を実感される方が多いです。
- IPL(Intense Pulsed Light): さまざまな波長の光を照射することで、毛細血管の赤みや炎症を改善します。肌全体のトーンアップ効果も期待できます。
実際の診療では、レーザー治療を受ける患者さまから「治療直後は少し赤みや腫れが出たけど、数日後には顔の赤みが軽減された」という声をよく聞きます。治療効果には個人差がありますが、継続することで徐々に改善が見られるケースが多いです。
| 治療法 | 主な効果 | 適応病型 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| メトロニダゾール外用 | 抗炎症、抗菌 | 丘疹膿疱性酒さ | 刺激感、乾燥 |
| イベルメクチン外用 | 顔ダニ駆除、抗炎症 | 丘疹膿疱性酒さ | 刺激感 |
| ドキシサイクリン内服 | 抗炎症 | 丘疹膿疱性酒さ | 光線過敏症、胃腸障害 |
| 色素レーザー | 毛細血管収縮、赤み軽減 | 紅斑性酒さ | 内出血、腫れ、色素沈着 |
日常生活でできる酒さのセルフケアと予防策は?
酒さの治療効果を高め、再発を防ぐためには、日常生活でのセルフケアが非常に重要です。当院では、患者さま一人ひとりの症状や生活習慣に合わせたアドバイスを行っています。
- 悪化因子の特定と回避: 患者さま自身が悪化因子を把握し、避けることが大切です。問診や日々の記録を通じて、どのような刺激で症状が悪化するかを一緒に見つけていきます。一般的な悪化因子には、紫外線、熱い飲み物、アルコール、香辛料の効いた食べ物、ストレス、急激な温度変化などがあります[10]。
- 適切なスキンケア: 敏感になった肌には、刺激の少ないスキンケア用品を選ぶことが重要です。洗顔は優しく、ぬるま湯で行い、保湿は低刺激性の製品を使用しましょう。アルコールや香料、防腐剤などが含まれていない製品が推奨されます。
- 紫外線対策: 紫外線は酒さの悪化因子の中でも特に重要です。日焼け止めはSPF30以上、PA+++以上のものを選び、帽子や日傘も活用しましょう。
- ストレス管理: ストレスは酒さの症状を悪化させる可能性があります。十分な睡眠やリラックスできる時間を作るなど、ストレスを軽減する工夫も大切です。
これらのセルフケアは、治療薬の効果を最大限に引き出し、症状の安定に繋がります。治療と並行して、日々の肌の状態と向き合い、適切なケアを継続することが、酒さの長期的な管理には不可欠です。
まとめ

酒さは顔の慢性的な赤みやニキビに似た発疹を特徴とする皮膚疾患であり、紅斑性、丘疹膿疱性、瘤腫性、眼型の4つの病型に分類されます。原因は多岐にわたり、遺伝、免疫系の異常、血管の異常、顔ダニ、紫外線などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。診断は臨床症状に基づいて行われ、他の皮膚疾患との鑑別が重要です。
治療は病型や重症度に応じて、メトロニダゾール、アゼライン酸、イベルメクチンなどの外用薬、ドキシサイクリンなどの内服薬、さらに色素レーザーやIPLといったレーザー・光治療が選択されます。治療効果を最大限に引き出し、再発を防ぐためには、悪化因子の回避、低刺激性のスキンケア、徹底した紫外線対策、ストレス管理といった日常生活でのセルフケアが不可欠です。酒さは慢性疾患ですが、適切な診断と治療、そして日々のケアによって症状をコントロールし、快適な生活を送ることが可能です。
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- National Rosacea Society. Rosacea: A Common but Misunderstood Condition.
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- アネメトロ(メトロニダゾール)添付文書(JAPIC)
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