花粉症皮膚炎の原因と治療|皮膚科医が解説
- ✓ 花粉症皮膚炎は、花粉が皮膚に接触することでアレルギー反応を起こし、湿疹や炎症を引き起こす疾患です。
- ✓ 治療は抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬が中心で、保湿ケアや花粉対策も重要です。
- ✓ 症状が改善しない場合は、皮膚科専門医による正確な診断と適切な治療が必要です。
花粉症皮膚炎の基礎知識と治療

花粉症皮膚炎は、花粉が皮膚に直接触れることで引き起こされるアレルギー性の皮膚炎です。一般的な花粉症でみられる鼻炎や結膜炎だけでなく、皮膚にも症状が現れることがあります。
花粉症皮膚炎とは?その定義
花粉症皮膚炎とは、スギやヒノキ、イネ科、ブタクサなどの花粉が皮膚に付着し、アレルギー反応を起こすことで生じる皮膚の炎症です。特に、アトピー性皮膚炎の既往がある方や肌のバリア機能が低下している方で発症しやすい傾向にあります。顔や首、露出部の皮膚に赤み、かゆみ、湿疹などが現れるのが特徴です。
- アレルゲン
- アレルギー反応を引き起こす物質の総称。花粉症皮膚炎の場合は、スギ花粉やヒノキ花粉などが代表的なアレルゲンとなります。
主な原因とメカニズムは?
花粉症皮膚炎の主な原因は、空気中に飛散する花粉です。花粉が皮膚に付着すると、皮膚のバリア機能が低下している部位から侵入し、体内の免疫システムが過剰に反応することで炎症が起こります。このアレルギー反応には、IgE抗体という免疫グロブリンが関与しており、肥満細胞などからヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、かゆみや炎症を引き起こします[2]。特に、アトピー性皮膚炎の患者さまは、皮膚のバリア機能がもともと脆弱であるため、花粉が侵入しやすく、症状が悪化しやすいことが知られています[4]。
近年では、気候変動や大気汚染が花粉の飛散量やアレルギー反応に影響を与える可能性も指摘されています[3]。当院の皮膚科外来では、春先に顔や首の赤み、かゆみを訴える患者さまが多く、問診で花粉症の既往やアトピー性皮膚炎の有無を確認することが、診断の重要なポイントになります。
どのような症状が現れる?
花粉症皮膚炎の症状は、主に花粉が直接触れる部位に現れます。具体的には、以下のような症状がみられます。
- 顔や首の赤み、かゆみ: 特に目の周り、口の周り、首筋など、露出している部分に症状が出やすいです。
- 湿疹、ブツブツ: 赤いブツブツや小さな水ぶくれができることがあります。
- 皮膚の乾燥、落屑: かゆみを伴い、皮膚が乾燥してフケのように剥がれ落ちることがあります。
- 皮膚のゴワつき、肥厚: 慢性化すると、皮膚が厚く硬くなることがあります。
実際の診察では、患者さまから「花粉の時期になると、いつも顔がカサカサして赤くなる」「首がかゆくて、掻きむしってしまう」と質問されることがよくあります。これらの症状は、アトピー性皮膚炎の悪化や他の接触皮膚炎と区別が難しい場合もあるため、専門医による鑑別診断が重要です。
花粉症皮膚炎は、アトピー性皮膚炎と症状が似ていることが多く、自己判断で市販薬を使用すると症状が悪化する可能性があります。適切な診断と治療のためにも、皮膚科を受診することが推奨されます。
花粉症皮膚炎の治療法は?
花粉症皮膚炎の治療は、症状の緩和と再発予防を目的とします。主な治療法は以下の通りです。
1. 薬物療法
薬物療法は、症状の程度に応じて内服薬と外用薬を組み合わせて行われます。
内服薬
- 抗ヒスタミン薬: かゆみや炎症の原因となるヒスタミンの作用を抑えます。第二世代抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用が少ないとされています。
- 抗アレルギー薬: アレルギー反応の発生を抑えることで、症状を軽減します。
外用薬
- ステロイド外用薬: 皮膚の炎症を強力に抑える効果があります。症状の程度や部位に応じて、強さの異なる薬剤を使い分けます。当院では、顔などのデリケートな部位には比較的弱いランクのステロイド外用薬を処方し、症状が改善したら非ステロイド性の外用薬や保湿剤に切り替えることが多いです。
- タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)/ピメクロリムス軟膏(エリデル軟膏): 非ステロイド性の免疫抑制外用薬で、ステロイド外用薬が使いにくい部位や長期的な維持療法に用いられます。
- デルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏): 新しいタイプの非ステロイド性外用薬で、JAK阻害作用により炎症を抑えます。
2. スキンケアと生活習慣の見直し
薬物療法と並行して、日頃のスキンケアと生活習慣の見直しが非常に重要です。
- 保湿ケア: 皮膚のバリア機能を保つために、化粧水や乳液、クリームなどでしっかりと保湿を行います。特に洗顔後やお風呂上がりは、すぐに保湿することが大切です。
- 花粉対策: 花粉の飛散量が多い時期は、外出時にマスクやメガネ、帽子を着用し、帰宅後は衣類についた花粉を払い落とし、洗顔やシャワーで皮膚についた花粉を洗い流すことが推奨されます。部屋の換気は短時間にとどめ、空気清浄機を活用するのも有効です。
- 紫外線対策: 紫外線は皮膚のバリア機能を低下させる可能性があるため、日焼け止めや日傘などで紫外線対策を行うことも重要です。
当院では、花粉症皮膚炎と診断された患者さまには、具体的なスキンケア方法や花粉対策について詳しく説明する機会が多いです。特に「保湿剤はいつ塗ればいいですか?」という質問には、「洗顔後や入浴後の肌がまだ湿っているうちに、たっぷりと塗るのが効果的です」とお伝えしています。
治療薬の用法・用量と副作用
ここでは、花粉症皮膚炎でよく用いられる薬剤の中から、代表的なステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬について解説します。
ステロイド外用薬
ステロイド外用薬は、その抗炎症作用により皮膚の赤みやかゆみを効果的に抑えます。強さによって5段階に分類され、症状や部位に応じて適切なランクの薬剤が選択されます。
- ステロイド外用薬のランク
- Strongest(最強)、Very Strong(非常に強力)、Strong(強力)、Medium(中程度)、Weak(弱い)の5段階で分類され、疾患の重症度や部位によって使い分けられます。
用法・用量
- 通常、1日1~数回、適量を患部に塗布します。医師の指示に従い、決められた量を守って使用することが重要です。
副作用
重大な副作用:
- 長期にわたる広範囲への大量使用により、全身性の副作用(クッシング症候群など)が稀に報告されています。
その他の副作用:
- 皮膚の萎縮、毛細血管拡張、ニキビ、多毛、色素沈着、感染症の誘発・悪化などが報告されています。
- 顔面への長期使用では、酒さ様皮膚炎や口囲皮膚炎のリスクがあります。
皮膚科の臨床経験上、ステロイド外用薬は正しく使えば非常に効果的な薬剤ですが、「怖い薬」というイメージを持たれている患者さまも少なくありません。処方する際は、使用量や塗布範囲、期間について丁寧に説明し、副作用のリスクとベネフィットを理解していただくよう心がけています。
ジェネリック医薬品
多くのステロイド外用薬にはジェネリック医薬品が存在します。有効成分や効果は先発品と同等とされています。
抗ヒスタミン薬(内服)
花粉症皮膚炎のかゆみや炎症を内側から抑えるために処方されます。第二世代抗ヒスタミン薬は、眠気などの副作用が比較的少ないとされています。
用法・用量
- 薬剤の種類によって異なりますが、通常1日1回または2回、経口投与します。
副作用
重大な副作用:
- アナフィラキシーショック、肝機能障害、黄疸などが稀に報告されています。
その他の副作用:
- 眠気、口渇、倦怠感、胃部不快感などが報告されています。
処方する際は、患者さまのライフスタイル(車の運転の有無など)を考慮して、眠気の少ない薬剤を選択するようにしています。当院では抗ヒスタミン薬を処方した患者さまから、「かゆみが落ち着いて夜よく眠れるようになった」というフィードバックをいただくことが多いです。
ジェネリック医薬品
多くの抗ヒスタミン薬にもジェネリック医薬品があります。
まとめ

花粉症皮膚炎は、花粉が皮膚に接触することで引き起こされるアレルギー性の皮膚炎です。顔や首などの露出部に赤み、かゆみ、湿疹などの症状が現れ、特にアトピー性皮膚炎の患者さまは症状が悪化しやすい傾向にあります。治療は、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬、非ステロイド性外用薬による薬物療法が中心となります。これに加え、日頃からの丁寧な保湿ケアと、花粉との接触を避けるための生活習慣の見直しが非常に重要です。症状が改善しない場合や悪化する場合には、自己判断せずに皮膚科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。医師の指示に従い、正しく薬を使用し、スキンケアを継続することで、つらい花粉症皮膚炎の症状を効果的にコントロールすることが期待できます。
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よくある質問(FAQ)
- L A Gordon. Compositae dermatitis.. The Australasian journal of dermatology. 1999. PMID: 10439521. DOI: 10.1046/j.1440-0960.1999.00341.x
- J Čelakovská, E Čermáková, P Boudková. The interaction between the expression of CD23 molecule on B- lymphocytes and the level of specific IgE against molecular components of pollen in atopic dermatitis patients with and without dupilumab therapy.. Journal of immunotoxicology. 2025. PMID: 40432597. DOI: 10.1080/1547691X.2025.2507311
- Gennaro D’Amato, Maria D’Amato. Climate change, air pollution, pollen allergy and extreme atmospheric events.. Current opinion in pediatrics. 2023. PMID: 36917187. DOI: 10.1097/MOP.0000000000001237
- T Biedermann, L Winther, S J Till et al.. Birch pollen allergy in Europe.. Allergy. 2020. PMID: 30829410. DOI: 10.1111/all.13758
- コレクチム(デルゴシチニブ)添付文書(JAPIC)
