ケロイドの圧迫療法・シリコンシート療法|医師が解説
最終更新日: 2026-05-06
📋 この記事のポイント
- ✓ ケロイドの圧迫療法は物理的な圧力を加え、コラーゲン過剰生成を抑制する治療法です。
- ✓ シリコンシート療法は、皮膚の水分保持と圧迫効果により、ケロイドの改善が期待できます。
- ✓ 治療効果を最大化するためには、適切な選択と継続的な使用、そして専門医による定期的な評価が重要です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。
📑 目次
ケロイドとは?その特徴と治療の重要性

- ケロイド
- 皮膚の損傷後に、傷の範囲を超えて過剰に増殖する線維性組織の良性腫瘍。赤み、盛り上がり、かゆみ、痛みを伴うことがある。
- ケロイドと同様に傷跡が盛り上がるが、元の傷の範囲内に留まるものを指す。ケロイドとは異なり、時間とともに自然に改善する傾向がある。
ケロイドと肥厚性瘢痕の違いとは?
ケロイドと似た状態に「肥厚性瘢痕」があります。どちらも傷跡が盛り上がるという共通点がありますが、根本的なメカニズムと経過が異なります。| 項目 | ケロイド | 肥厚性瘢痕 |
|---|---|---|
| 増殖範囲 | 元の傷の範囲を超えて広がる | 元の傷の範囲内に留まる |
| 自然消退 | 稀 | 時間とともに改善する傾向がある |
| 再発性 | 高い | 比較的低い |
| 症状 | かゆみ、痛み、引きつれが強いことが多い | かゆみ、痛みがあることもあるが、ケロイドより軽度なことが多い |
| 治療反応 | 難治性で複合的な治療が必要な場合が多い | 単独治療で改善しやすい |
ケロイドの圧迫療法とは?そのメカニズムと効果
ケロイドの圧迫療法とは、ケロイド組織に持続的な物理的圧力を加えることで、その成長を抑制し、平坦化を促す治療法です。この治療は、ケロイドの発生初期から、あるいは外科的切除後などの再発予防として広く用いられています[1]。圧迫療法のメカニズム
圧迫療法がケロイドに作用するメカニズムは複数考えられています。- 血流の減少: 圧迫により、ケロイド組織への血流が減少します。これにより、線維芽細胞への酸素や栄養供給が制限され、コラーゲン合成が抑制されると考えられています。
- コラーゲン分解の促進: 圧力が加わることで、コラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)の活性が高まり、過剰に蓄積されたコラーゲンの分解が促進される可能性があります。
- 線維芽細胞の活動抑制: 機械的な刺激が線維芽細胞の増殖やコラーゲン産生を抑制するシグナルとなることが示唆されています。
- 水分保持: 圧迫材料によっては、皮膚の水分蒸散を防ぎ、角質層の水分量を増加させることで、ケロイド組織の軟化を促す効果も期待できます。
圧迫療法の種類と具体的な方法
圧迫療法には様々な方法があります。ケロイドの部位、大きさ、形状に応じて適切な方法を選択することが重要です。弾性包帯・弾性ガーメント
広範囲のケロイドや、関節部など動きのある部位に用いられます。オーダーメイドの弾性着衣(ガーメント)は、特定の部位に均一な圧力を長時間かけることができ、特に熱傷後の広範囲な肥厚性瘢痕やケロイドの予防・治療に有効とされています。当院では、特に熱傷や広範囲な外傷後に「傷跡が盛り上がってきた」と受診される患者さまに対して、早期からの弾性ガーメントの使用を推奨しています。治療を始めて数ヶ月ほどで「かゆみが減った」「傷跡が少し柔らかくなってきた」とおっしゃる方が多いです。テープ固定
小さなケロイドや、シリコンシートと併用して圧迫効果を高める目的で用いられます。医療用テープを用いて、ケロイドを圧迫するように固定します。テープの種類によっては、皮膚への刺激が少ないものや、伸縮性のあるものなどがあります。磁石やクリップによる圧迫
耳たぶのケロイド(ピアスによるものなど)に対しては、磁石やクリップを用いて持続的な圧迫を加える方法が有効です。磁石をケロイドの両側から挟み込むことで、強力かつ持続的な圧迫を局所的にかけることができます[3]。この方法は、特に耳介部のケロイド切除後の再発予防に効果が期待できると報告されています[4]。実際の診療では、耳のケロイドで悩む患者さまが非常に多く、切除後の再発予防として磁石による圧迫療法を提案すると、「こんな方法があるんですね」と驚かれることもあります。装着方法や日常生活での注意点について、丁寧に指導することを心がけています。圧迫療法の効果と期間
圧迫療法は、ケロイドの赤み、盛り上がり、かゆみ、痛みの軽減に効果が期待できます。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、長期間にわたる継続的な使用が不可欠です。一般的に、数ヶ月から1年以上の継続が推奨されており、1日20時間以上の装着が望ましいとされています。治療開始から数週間で症状の改善が見られることもありますが、ケロイドが完全に平坦化するまでには時間を要します[1]。⚠️ 注意点
圧迫療法は、適切な圧力がかかっているか、皮膚トラブルがないかを定期的に確認する必要があります。過度な圧迫は血行障害や皮膚の損傷を引き起こす可能性があるため、必ず医師の指導のもとで行ってください。
シリコンシート療法とは?その作用と使い方

シリコンシートの作用メカニズム
シリコンシートがケロイドに作用するメカニズムは、主に以下の点が挙げられます。- 皮膚の水分保持(閉塞効果): シリコンシートは、皮膚からの水分蒸散を防ぎ、角質層の水分量を増加させます。これにより、ケロイド組織が軟化し、かゆみや痛みが軽減されると考えられています。水分量の増加は、コラーゲン線維の再配列を促し、ケロイドの平坦化に寄与するとも言われています。
- 軽度の圧迫効果: シートを貼付することで、ケロイドに軽度ながらも持続的な圧力が加わります。この圧迫が、前述の圧迫療法と同様に、血流を減少させ、線維芽細胞の活動を抑制する効果が期待できます。
- 酸素透過性の調整: シリコンシートは酸素を透過するため、皮膚呼吸を妨げずに、適切な湿潤環境を維持できるとされています。
シリコンシートの種類と選び方
シリコンシートには、様々な形状や厚み、粘着性のものがあります。ケロイドの部位や大きさに合わせて適切なものを選ぶことが重要です。- シートタイプ: 薄いシリコンゲルでできたシートで、ハサミで自由にカットして使用できます。粘着性があり、皮膚に直接貼付します。
- ジェルタイプ: 塗布するタイプのシリコン製剤です。シートを貼りにくい関節部や顔面など、目立つ部位に適しています。乾燥すると薄い膜を形成し、シートと同様の閉塞効果が期待できます。
- 特殊形状: 耳たぶ用や、特定の部位に合わせた形状の製品もあります。
シリコンシートの正しい使い方と注意点
シリコンシートの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方と継続が重要です。- 清潔な皮膚に貼付: 貼る前に、ケロイド部位を石鹸で優しく洗い、完全に乾燥させます。
- 適切なサイズにカット: ケロイドより少し大きめにカットし、ケロイド全体を覆うように貼付します。
- 長時間貼付: 1日12時間以上、可能であれば24時間近く貼付することが推奨されます。入浴時以外はできるだけ貼り続けるように指導しています。
- 定期的な洗浄: シリコンシートは、毎日中性洗剤で優しく洗い、自然乾燥させることで再利用可能です。粘着力が落ちてきたら交換します。
- 治療期間: 数ヶ月から1年以上の継続が推奨されています[2]。効果が見られるまでには時間がかかるため、根気強く続けることが大切です。
⚠️ 注意点
シリコンシートを貼付する際に、皮膚に発疹やかゆみ、かぶれなどの異常が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談してください。特に敏感肌の方は、パッチテストを行うことも検討されます。
圧迫療法とシリコンシート療法の併用は効果的?
ケロイドの治療において、圧迫療法とシリコンシート療法はそれぞれ単独でも有効ですが、これらを併用することで、より高い治療効果が期待できる場合があります。特に、難治性のケロイドや、外科的切除後の再発予防において、併用療法は重要な選択肢となります[1]。併用療法の相乗効果
圧迫療法とシリコンシート療法は、異なるメカニズムでケロイドに作用するため、併用することで相乗効果が期待できます。- 強力な圧迫と湿潤環境の維持: シリコンシートによる湿潤環境の維持効果に加え、弾性ガーメントやテープ、磁石などによる外部からの強力な圧迫を加えることで、ケロイド組織への物理的刺激と水分保持効果を同時に高めることができます。これにより、線維芽細胞の活動抑制とコラーゲン分解促進がより効率的に行われると考えられます。
- 症状の早期改善: 併用により、かゆみや痛みの軽減、ケロイドの軟化、平坦化がより早く実感される可能性があります。
- 再発リスクの低減: 特に外科的切除後のケロイドは再発率が高いことで知られています。切除直後からシリコンシートと圧迫療法を組み合わせることで、再発リスクを効果的に低減できると報告されています[3][4]。
併用療法の具体的な例
- 耳たぶのケロイド: 外科的切除後に、シリコンシートを貼付し、その上から専用の磁石やクリップで圧迫します[3][4]。
- 広範囲のケロイド: シリコンシートやジェルを塗布した後、その上からオーダーメイドの弾性ガーメントを着用します。
- 小さなケロイド: シリコンシートを貼付し、その上から医療用テープでさらに圧迫固定します。
治療効果を最大化するためのポイントと注意点

早期からの介入がなぜ重要なのか?
ケロイドの治療において、早期からの介入は非常に重要です。傷が治り始めた段階や、ケロイドが形成され始めた初期に治療を開始することで、ケロイドの増殖を効果的に抑制し、より良い治療結果が期待できます。ケロイドが大きくなってからでは、治療に要する期間が長くなり、治療効果も限定的になる傾向があります。 当院では、手術後の傷跡管理として、抜糸後早期からのシリコンシートや圧迫療法の開始を強く推奨しています。特に「傷が治ったと思ったら、赤く盛り上がってきた」という段階で受診された患者さまには、すぐに治療を開始することで、ケロイドへの進行を食い止め、良好な経過をたどるケースを多く経験しています。実際の診療では、患者さまに「傷が赤く盛り上がってきたら、すぐに相談してください」と伝えるようにしています。継続的な治療の重要性
圧迫療法もシリコンシート療法も、短期間で劇的な効果が得られるものではありません。数ヶ月から1年、あるいはそれ以上の長期間にわたる継続的な治療が不可欠です[1][2]。治療を途中で中断してしまうと、ケロイドが再び増殖したり、治療効果が失われたりする可能性があります。 治療の継続を促すために、当院では患者さまのモチベーション維持にも力を入れています。定期的な診察でケロイドの状態を評価し、わずかな改善でも患者さまと共有することで、「続けてよかった」という実感を持っていただけるよう努めています。また、治療器具の装着方法や皮膚ケアに関する具体的なアドバイスを提供し、日常生活での負担を軽減できるようサポートしています。皮膚トラブルへの対応
圧迫療法やシリコンシート療法は、皮膚に直接作用するため、皮膚トラブルが発生することがあります。主なトラブルとしては、かぶれ、かゆみ、発疹、毛嚢炎(もうのうえん)などがあります。- かぶれ・発疹: シリコンシートや圧迫材料によるアレルギー反応や、汗による刺激が原因となることがあります。
- かゆみ: 湿潤環境や圧迫による刺激が原因となることがあります。
- 毛嚢炎: 圧迫や湿潤環境により、毛穴に細菌が繁殖して炎症を起こすことがあります。
他の治療法との組み合わせは?
圧迫療法やシリコンシート療法は、ケロイド治療の基本となりますが、他の治療法と組み合わせることで、さらに効果を高めることができます。例えば、ステロイド局所注射、レーザー治療、外科的切除、放射線療法などがあります[1]。- ステロイド局所注射: ケロイド内に直接ステロイドを注射することで、炎症を抑え、線維芽細胞の増殖を抑制します。圧迫療法やシリコンシート療法と併用することで、より高い効果が期待できます。
- 外科的切除: 大きなケロイドや、他の治療法で効果が見られない場合に検討されます。ただし、切除単独では再発率が高いため、術後に圧迫療法やシリコンシート療法、放射線療法などを組み合わせることが不可欠です。
- レーザー治療: ケロイドの赤みを軽減したり、かゆみを抑えたりする効果が期待できます。
まとめ
ケロイドの圧迫療法とシリコンシート療法は、ケロイドの治療と予防において非常に重要な役割を果たす治療法です。圧迫療法は物理的な圧力によりコラーゲン合成を抑制し、シリコンシート療法は皮膚の水分保持と軽度の圧迫効果でケロイドの軟化と平坦化を促します。これらの治療法は、それぞれ単独でも効果が期待できますが、併用することで相乗効果を発揮し、特に外科的切除後の再発予防に有効とされています。治療効果を最大化するためには、早期からの介入、長期間にわたる継続的な使用、そして皮膚トラブルへの適切な対応が不可欠です。患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立て、医師の指導のもとで根気強く治療に取り組むことが、ケロイドの症状改善と生活の質の向上につながります。お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
よくある質問(FAQ)
📖 参考文献
- Laura A Walsh, Ellen Wu, David Pontes et al.. Keloid treatments: an evidence-based systematic review of recent advances.. Systematic reviews. 2023. PMID: 36918908. DOI: 10.1186/s13643-023-02192-7
- Lisa O’Brien, Daniel J Jones. Silicone gel sheeting for preventing and treating hypertrophic and keloid scars.. The Cochrane database of systematic reviews. 2014. PMID: 24030657. DOI: 10.1002/14651858.CD003826.pub3
- Le Zhuang, Jieyan Su, Jing Jiao et al.. Utilizing magnetic discs combined with thin silicone gel sheets for pressure therapy in earlobe keloid postexcision.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2025. PMID: 39307354. DOI: 10.1016/j.jaad.2024.06.111
- Tae Hwan Park, Dong Kyun Rah. Successful eradication of helical rim keloids with surgical excision followed by pressure therapy using a combination of magnets and silicone gel sheeting.. International wound journal. 2017. PMID: 26593457. DOI: 10.1111/iwj.12547
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長
