多汗症の原因と治療

【多汗症の原因と治療】|医師が解説する対策とケア

多汗症の原因と治療|医師が解説する対策とケア

最終更新日: 2026-05-02
📋 この記事のポイント
  • ✓ 多汗症は、過剰な発汗を引き起こす疾患で、原発性と続発性に分類されます。
  • ✓ 診断には問診と発汗量の評価が重要で、治療法は症状の重症度や部位によって多岐にわたります。
  • ✓ 外用薬からボツリヌス療法、内服薬、手術まで、患者さま一人ひとりに合わせた治療選択が可能です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

多汗症の基礎知識:原因と症状とは?

発汗のメカニズムと多汗症の関連性を示す図解、原因を理解する
多汗症の発症メカニズム

多汗症とは、体温調節に必要な範囲を超えて、過剰な発汗がみられる状態を指します。この状態は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

多汗症は、主に「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2種類に分類されます。それぞれの原因や特徴を理解することは、適切な診断と治療の第一歩となります。

多汗症とは?その定義とメカニズム

多汗症は、特定の部位(手掌、足底、腋窩、顔面など)に、通常よりも著しく多い汗をかく疾患です。この過剰な発汗は、身体的な不快感だけでなく、精神的な苦痛や社会生活への支障を引き起こすことがあります[1]

発汗は、交感神経によって支配されるエクリン腺という汗腺から分泌されます。通常、エクリン腺は体温調節のために活動しますが、多汗症の患者さまでは、この交感神経の活動が過剰になることで、必要以上の汗が分泌されると考えられています[3]

エクリン腺
体温調節を主な役割とする汗腺で、全身に分布しています。多汗症における過剰な発汗の主要な原因となります。
アポクリン腺
主に腋窩や陰部などに分布し、フェロモン様の物質を分泌する汗腺です。多汗症とは直接関係ありませんが、腋臭症の原因となります。

多汗症の主な原因と分類:なぜ汗が止まらないのか?

多汗症は、その原因によって大きく二つに分けられます。

  • 原発性多汗症(特発性多汗症): 特定の原因疾患がなく、過剰な発汗がみられるタイプです。全体の約90%を占めると言われています[3]。精神的な緊張やストレス、興奮などが引き金となることが多く、思春期頃に発症することが多いです。遺伝的な要因も指摘されており、約30〜50%の患者さまに家族歴があると報告されています[3]。当院の問診の際には、患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしており、「親も手汗で悩んでいた」とおっしゃる方も少なくありません。
  • 続発性多汗症: 何らかの基礎疾患や薬剤の副作用として発汗が増加するタイプです。甲状腺機能亢進症、糖尿病、褐色細胞腫、結核、更年期障害、パーキンソン病などが原因となることがあります。また、特定の抗うつ薬や解熱鎮痛薬なども発汗を増加させることがあります[3]

当院では、初診時に「とにかく汗がひどくて困っている」と相談される患者さまも少なくありません。その際、まずは問診で発汗の状況、発症時期、家族歴、そして服用中の薬剤や既往歴を詳細に確認することで、原発性か続発性かを慎重に鑑別しています。特に続発性多汗症が疑われる場合は、必要に応じて血液検査などの追加検査をご提案し、原因となる疾患の治療を優先します。

多汗症の診断基準と検査方法

多汗症の診断は、主に問診と身体診察に基づいて行われます。特に原発性多汗症の診断基準としては、以下の項目が参考にされます[3]:

  • 局所的な過剰な発汗が6ヶ月以上持続している。
  • 以下の項目のうち2つ以上を満たす:
    • 左右対称性の発汗
    • 日常生活に支障をきたす発汗
    • 週に1回以上の発汗エピソード
    • 25歳未満での発症
    • 家族歴がある
    • 睡眠中は発汗が止まる

客観的な発汗量の評価には、ヨード・デンプン反応(マイナーテスト)が用いられることがあります。これは、ヨード液とデンプンを塗布することで汗に反応して青紫色に変色する現象を利用し、発汗範囲や量を視覚的に確認する方法です。当院では、患者さまの主観的な訴えと合わせて、これらの客観的な評価も参考にしながら、治療方針を決定しています。

多汗症の治療:効果的な選択肢と注意点

多汗症の治療法選択肢を比較するフローチャート、効果的な対策
多汗症の治療選択肢

多汗症の治療法は多岐にわたり、症状の重症度、発汗部位、患者さまの希望やライフスタイルに合わせて選択されます。当院では、患者さま一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、最適な治療プランをご提案しています。

多汗症の治療法にはどのような種類がありますか?

多汗症の治療は、主に以下の方法があります[1][2]

  1. 外用薬: 塩化アルミニウム製剤や抗コリン作用のある外用薬が第一選択となることが多いです。塩化アルミニウムは汗腺の出口を物理的に塞ぐことで発汗を抑制します。当院では、まず外用薬から治療を始める患者さまが多くいらっしゃいます。特に軽度から中等度の腋窩多汗症や手掌多汗症に有効性が期待できます。
  2. イオントフォレーシス: 水道水に浸した部位に微弱な電流を流すことで、汗腺の機能を一時的に低下させる治療法です。手掌や足底多汗症に特に有効で、週に数回の治療を継続することで効果を実感される方が多いです。治療を始めて1ヶ月ほどで「日常生活で紙が濡れなくなった」「握手ができるようになった」とおっしゃる方が多く、患者さまの満足度が高い治療法の一つです。
  3. ボツリヌス療法: ボツリヌス菌が産生する毒素を少量、皮膚に注射することで、アセチルコリンという神経伝達物質の放出を阻害し、汗腺の活動を抑制します。腋窩多汗症に対して特に高い有効性が報告されており、効果は通常4〜9ヶ月持続するとされています[4]。当院では、外用薬で効果が不十分な方や、より即効性を求める方に提案することがあります。注射時の痛みを懸念される方もいらっしゃいますが、細い針を使用し、冷却しながら行うことで、痛みを最小限に抑える工夫をしています。
  4. 内服薬: 抗コリン作用を持つ薬剤が用いられます。全身の発汗を抑制する効果が期待できますが、口渇、便秘、排尿障害などの副作用が生じることがあります。全身性多汗症や、他の治療法で効果が得られない場合に検討されます。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
  5. 手術療法: 交感神経遮断術(ETS)などがあります。これは、発汗を促す交感神経を切断またはクリッピングする治療法で、特に重度の手掌多汗症に有効です。しかし、代償性発汗(治療部位以外の場所で発汗が増加する現象)という副作用のリスクがあるため、慎重な適応判断が必要です[1]。当院では、手術を希望される患者さまには、メリットとデメリットを十分に説明し、専門の医療機関へのご紹介も行っています。

各治療法の比較:メリット・デメリットは?

多汗症の治療法にはそれぞれ特徴があり、患者さまの症状やライフスタイルに合わせた選択が重要です。主な治療法を比較した表を以下に示します。

治療法主な対象部位メリットデメリット・注意点
外用薬(塩化アルミニウムなど)腋窩、手掌、足底手軽に始められる、比較的安価効果に個人差、皮膚刺激(かゆみ、かぶれ)
イオントフォレーシス手掌、足底非侵襲的、副作用が少ない、自宅での継続も可能効果発現まで時間がかかる、定期的な継続が必要
ボツリヌス療法腋窩、手掌、足底、顔面高い効果、効果持続期間が長い(数ヶ月)注射時の痛み、費用、効果は一時的、手掌では筋力低下のリスク
内服薬(抗コリン薬)全身性全身の発汗を抑制口渇、便秘、排尿障害などの全身性副作用
手術療法(ETS)手掌、腋窩(重度の場合)永続的な効果が期待できる代償性発汗のリスク、侵襲的
⚠️ 注意点

多汗症の治療法は、患者さまの症状の重症度、発汗部位、ライフスタイル、そして期待する効果と副作用のリスクを総合的に考慮して選択する必要があります。自己判断せず、必ず医師と相談し、ご自身に合った治療法を見つけることが重要です。

多汗症治療の副作用とリスクは?

どの治療法にも副作用やリスクは存在します。

  • 外用薬: 皮膚刺激、かゆみ、かぶれなどが起こることがあります。
  • イオントフォレーシス: 治療部位のピリピリ感、発赤、水疱形成などが報告されています。
  • ボツリヌス療法: 注射部位の痛み、内出血、まれに周囲の筋肉の一時的な筋力低下(特に手掌への注射時)などが起こることがあります。
  • 内服薬: 口渇、便秘、排尿障害、めまい、眠気などの抗コリン作用による全身性の副作用があります。
  • 手術療法: 最も懸念されるのが代償性発汗です。これは、治療部位の発汗が止まる代わりに、背中、胸、腹部、足などに発汗が増加する現象で、術後の患者さまのQOL(生活の質)に大きく影響することがあります。

実際の診療では、患者さまがどの程度の副作用なら許容できるか、どのような生活を送りたいかを丁寧に伺い、治療選択の重要なポイントとしています。例えば、ボツリヌス療法後のフォローアップで「注射は少し痛かったけど、汗が止まって本当に快適になった」とおっしゃる方がいる一方で、「手汗が止まったのは嬉しいけど、背中の汗が増えて困っている」と代償性発汗に悩まれる方もいらっしゃいます。そのため、治療開始前にこれらのリスクを十分に説明し、患者さまご自身が納得して選択できるようサポートしています。

まとめ

多汗症の症状改善と日常生活の質向上を示す、笑顔の人物
多汗症改善後の生活

多汗症は、過剰な発汗によって日常生活に支障をきたす疾患であり、その原因によって原発性と続発性に分類されます。診断は問診と発汗量の評価に基づいて行われ、甲状腺機能亢進症などの基礎疾患が原因となる続発性多汗症の可能性も考慮し、必要に応じて検査を行います。治療法は、外用薬、イオントフォレーシス、ボツリヌス療法、内服薬、手術療法など多岐にわたり、それぞれの治療法にはメリットとデメリット、そして副作用のリスクが存在します。患者さま一人ひとりの症状、ライフスタイル、期待する効果を考慮し、医師と十分に相談した上で最適な治療法を選択することが重要です。

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よくある質問(FAQ)

多汗症は自然に治ることはありますか?
原発性多汗症の場合、自然に症状が軽快することは稀です。しかし、ストレスや緊張が原因で悪化することが多いため、生活習慣の改善やストレス管理が症状の緩和につながる可能性はあります。続発性多汗症の場合は、原因となる疾患を治療することで発汗が改善することが期待できます。
多汗症の治療は保険適用されますか?
多汗症の治療には保険適用されるものとされないものがあります。例えば、塩化アルミニウム製剤やイオントフォレーシス、特定の部位のボツリヌス療法や内服薬は保険適用となる場合があります。しかし、自由診療となる治療法もありますので、治療を開始する前に必ず医療機関で確認するようにしてください。
市販の制汗剤で多汗症は改善しますか?
市販の制汗剤は軽度の発汗には有効な場合がありますが、多汗症のように過剰な発汗に対しては十分な効果が得られないことが多いです。多汗症の症状でお悩みの場合、専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長