脂漏性皮膚炎の原因・症状・治療皮膚科医が解説
頭皮や顔の赤み、フケ、かゆみを手がかりに、原因、似た病気、薬・シャンプー、セルフケア、皮膚科へ相談する目安を整理します。

- 脂漏性皮膚炎は、頭皮、眉間、鼻のわき、耳の周囲など皮脂の多い部位に、赤み、細かな皮むけ、フケ、かゆみが現れやすい皮膚炎です。
- 皮脂だけで決まる病気ではなく、皮膚の常在真菌であるマラセチアへの反応、皮膚バリア、免疫反応などが関与すると考えられています。
- 治療は部位と炎症の程度に応じて、抗真菌薬、ステロイド外用薬などを使い分けます。乾癬、白癬、接触皮膚炎などとの鑑別も重要です。
気になる項目から、治療と相談の目安を確認できます。
- 症状頭皮や顔の赤み、皮むけ、フケ、かゆみ、痛み、脱毛の有無を確認します。確認する
- 部位眉間、鼻のわき、耳周囲、生え際、胸など皮脂の多い部位との一致を見ます。確認する
- 原因マラセチア、皮脂、皮膚バリア、免疫反応の関与を確認します。確認する
- 鑑別乾癬、白癬、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さを見分けます。確認する
- 治療抗真菌薬と抗炎症薬を、部位と炎症の程度に応じて選択します。確認する
- 薬の注意リンデロンの自己流用や、承認状況の異なるシャンプーの扱いを確認します。確認する
- セルフケアこすらない洗浄、十分なすすぎ、製品と症状の記録を続けます。確認する
- 受診目安長引く症状、脱毛、痛み、膿、発熱、急な広がりは早めに相談します。確認する
- FAQうつるか、再発、リンデロン、抗真菌シャンプーを確認できます。確認する
脂漏性皮膚炎の症状と出やすい部位
脂漏性皮膚炎では、赤みのある皮膚に白色から黄色みを帯びた細かな鱗屑(りんせつ、皮むけ)が付着し、フケやかゆみとして気づくことがあります。頭皮だけでなく、眉毛や眉間、鼻のわき、耳の中や後ろ、髪の生え際、胸の中央、わきなど、皮脂腺の多い部位に左右対称に現れることがあります。かゆみの強さには個人差があり、見た目の赤みやフケの量と必ずしも一致しません。

頭皮では、洗髪してもフケが続く、髪の生え際が赤い、耳の周りまで皮むけが広がるといった経過がみられます。顔では、鼻のわきや眉間が赤く、脂っぽい皮むけを伴うことがあります。ただし、乾いたフケ、赤み、かゆみは脂漏性皮膚炎だけに特有の症状ではありません。市販のフケ用製品で改善しない場合や、範囲が広がる場合は診断を確認することが大切です。
受診前に確認したいこと
診察では、いつから続いているか、どの部位に出たか、かゆみや痛みの有無、季節や体調による変化、これまで使ったシャンプー・整髪料・化粧品・外用薬を確認します。症状が強い日の写真、製品名、使用期間、塗った部位をメモしておくと、接触皮膚炎や薬による刺激も含めて検討しやすくなります。当院では、初診時に「頭皮が痒くてフケがひどい」「顔のTゾーンが赤くなり、カサカサする」と相談される患者さまも少なくありません。問診の際には、これらの症状がいつから始まったか、どのような生活習慣があるか、ストレスの有無、家族歴などを詳しく伺うようにしています。特に、睡眠不足や食生活の乱れを訴える方が多く、これらが症状悪化の一因となっているケースをよく経験します。これは監修医の診療経験であり、生活習慣だけを原因と断定するものではありません。
原因と悪化に関わる要因
脂漏性皮膚炎の発症機序は一つに決まっていません。皮膚に通常存在する酵母様真菌のマラセチア、皮脂の組成と分解産物、皮膚バリア、個人の免疫反応などが複合的に関与すると考えられています[1]。マラセチアは健康な皮膚にも存在するため、検出されたことだけで病気や不潔さを意味するわけではありません。
睡眠不足、精神的負担、季節、発汗などと症状の変化を感じる人はいますが、特定の生活習慣だけを原因と断定することはできません。食事だけで発症を説明したり、特定の食品を一律に禁止したりする根拠も十分ではありません。悪化のタイミングがある場合は、食事を極端に制限するより、症状、体調、使用製品を記録し、治療への反応と合わせて評価します。
年齢や基礎疾患との関係
脂漏性皮膚炎は乳児期と成人にみられます。成人では青年期以降に始まり、良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。神経疾患や免疫機能が低下する病態に伴って症状が強くなることも報告されていますが、脂漏性皮膚炎があるだけでこれらの病気を意味するわけではありません[3]。急に重症化した場合や通常の治療に反応しにくい場合は、診察で全身状態も含めて確認します。
診断と似た病気の見分け方
診断は、発疹の見た目、分布、経過、使用している製品や薬を確認して行います。多くは診察で判断できますが、経過が典型的でない場合は、真菌検査、ダーモスコピー、接触歴の確認、まれに皮膚生検などを検討します。脂漏性皮膚炎と別の病気が重なっている場合もあります。
| 似た病気 | 確認する手がかり | 検査・対応の例 |
|---|---|---|
| 乾癬 | 境界が比較的はっきりした厚い皮むけ、頭皮の生え際を越える発疹、肘や膝、爪の変化 | 全身の皮疹と爪を確認し、必要に応じて皮膚生検を検討 |
| 白癬 | 環状に広がる発疹、片側性、脱毛や切れ毛、家族や動物との接触 | KOH直接鏡検や培養などで真菌を確認 |
| 接触皮膚炎 | 新しいシャンプー、毛染め、整髪料、化粧品を使った部位と一致する赤み・かゆみ | 原因候補の中止、必要に応じてパッチテスト |
| アトピー性皮膚炎 | 慢性的なかゆみ、乾燥、年齢に応じた分布、本人や家族のアレルギー歴 | 全身の分布と経過を合わせて判断 |
| 酒さ | 顔の持続する赤み、ほてり、毛細血管拡張、丘疹・膿疱 | 刺激症状と薬歴を確認し治療を分ける |
頭皮の白癬にステロイド外用薬だけを使うと見た目が変化して診断が遅れることがあります。円形の脱毛、切れ毛、痛み、膿を伴う場合は、市販薬を重ねず皮膚科へ相談してください。病気の一般的な説明は、旧記事から掲載しているMSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性皮膚炎」、患者向けのMSDマニュアル家庭版「脂漏性皮膚炎」も参考になります。
脂漏性皮膚炎の治療
治療は、頭皮か顔か、赤みとかゆみの強さ、皮むけの厚さ、再発の頻度、これまでの薬による刺激を確認して組み立てます。抗真菌薬はマラセチアに関連する要素へ、抗炎症薬は赤みやかゆみへ働きかけます。両者を同時または時期を分けて使うことがあります。改善後も同じ強さ・頻度で漫然と続けるのではなく、再発状況に応じて使用方法を見直します。実際の診療では、患者さまの症状の程度、発症部位、生活習慣などを総合的に判断して最適な治療法を提案しています。
抗真菌薬
日本では、ケトコナゾール外用薬が脂漏性皮膚炎の効能・効果で承認されています。クリームやローションなどの剤形があり、部位と毛の有無、刺激の出やすさに応じて選択します。抗真菌薬の有効性は複数の臨床研究と系統的レビューで検討されていますが、製剤や比較条件に違いがあり、全員に同じ反応が得られるわけではありません[5]。塗布部位に強い刺激、腫れ、ただれが出た場合は中止して処方元へ相談します。
炎症を抑える外用薬
赤みやかゆみが強い時期には、ステロイド外用薬を短期間用いることがあります。顔、耳、頭皮、体では皮膚の厚さや吸収が異なるため、薬の強さ、剤形、塗る量、期間を調整します。眼の周囲への使用や長期連用は特に注意が必要です。カルシニューリン阻害薬などを検討する場合もありますが、脂漏性皮膚炎に対する日本で承認された効能・効果、部位、年齢を確認し、適応外使用を含む場合は医師が理由と注意点を説明したうえで個別に判断します。
内服治療について
かゆみに対して抗ヒスタミン薬を補助的に用いることはありますが、皮膚炎そのものの原因を取り除く薬ではありません。内服抗真菌薬は、海外の研究で検討されていますが、エビデンスの質は全体として限定的で、相互作用や肝機能障害などの確認も必要です[6]。一般的な軽症例で最初から routine に使用する治療ではなく、診断と重症度を確認したうえで個別に検討します。医師の診察により、患者さまの状態や治療方針に応じて処方・施術の必要性を個別に判断します。
| 治療選択肢 | 主な目的 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 抗真菌外用薬 | マラセチアに関連する要素を抑える | 剤形、塗布部位、刺激、使用頻度 |
| ステロイド外用薬 | 赤み、かゆみ、炎症を抑える | 部位に合う強さ、量、期間、眼周囲の使用 |
| その他の抗炎症外用薬 | 炎症を調整する | 承認状況、年齢、部位、刺激感 |
| 内服薬 | 強いかゆみの補助、難治例での個別検討 | 適応、相互作用、肝機能などの安全性 |
薬・シャンプーとリンデロンの注意点
ケトコナゾールの位置づけ
ケトコナゾール外用薬は、脂漏性皮膚炎に対する日本で承認された効能・効果を持つ抗真菌薬です。現在の効能・用法・注意事項はPMDAの医療用医薬品情報および電子化された添付文書で確認できます。旧記事で参照していたケトコナゾール外用薬の添付文書(JAPIC)も、薬剤名を取り違えずに掲載しています。処方された製品の指示を優先してください。
リンデロンを自己判断で使わない
「リンデロン」は複数の製剤名に使われており、成分や剤形が同じとは限りません。脂漏性皮膚炎で用いられることがあるステロイド外用薬も、顔と頭皮では適する強さや剤形が異なります。以前処方されたリンデロンを、診断が分からない発疹へ自己判断で塗ることは避けてください。白癬などの感染症が隠れている場合や、酒さ様皮膚炎、にきび、眼周囲の副作用を考慮すべき場合があります。
塗る回数を急に変えることが必ず問題になるわけではありませんが、炎症が残ったまま自己中断すると症状が再燃したように見えることがあります。一方で、改善後も同じ強さで長期間使い続けると、皮膚萎縮、毛細血管拡張、感染症などのリスクが高まります。中止・減量・再開の判断は、処方時の指示と診察時の皮膚所見に沿って行います。
抗真菌シャンプー・フケ用シャンプー
抗真菌成分や角質に働く成分を含むシャンプーは、国や製品により医薬品、医薬部外品、化粧品としての位置づけが異なります。日本で購入できる製品でも、脂漏性皮膚炎を治療する医薬品として承認されているとは限りません。表示された使用方法を守り、顔や眼に入れず、刺激が強い場合は中止します。フケ用シャンプーだけで赤みやかゆみが続く場合は、洗浄回数を増やす前に診断を確認してください。
毎日の洗浄とセルフケア
セルフケアの目標は、皮脂や整髪料を過不足なく落とし、こすりすぎによる刺激を避けることです。洗髪回数は皮脂量、発汗、髪質、使用製品、外用薬によって調整します。「毎日なら必ず良い」「洗わない方が良い」と一律には決められません。ぬるめの湯で予洗いし、シャンプーを手で泡立て、爪を立てずに指の腹で洗い、すすぎ残しを避けます。

顔や耳のケア
顔は低刺激性の洗浄料をよく泡立ててやさしく洗い、タオルで押さえるように水分を取ります。乾燥やつっぱりがある部位は、香料や刺激の少ない保湿剤を少量から試します。油分が多い製品を一律に避ける必要はありませんが、塗った後に赤みやかゆみが増える場合は中止し、成分と症状の関係を確認します。化粧水を何種類も重ねたり、スクラブやピーリングで皮むけを取ったりしないでください。
経過を記録する
症状が出た部位、赤み・フケ・かゆみの程度、使った薬と回数、シャンプーや化粧品の変更、刺激の有無を1〜2週間単位で記録すると、治療の反応を評価しやすくなります。写真は同じ照明と距離で撮影します。良くなった時期のケアも記録しておくと、再発時に必要以上の製品を追加することを避けられます。当院では、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「フケが減ってかゆみが楽になった」「肌の赤みが引いてきた」とおっしゃる方が多いですが、同時に「食生活を見直したら体調も良くなった」と、生活習慣改善の効果を実感される方も少なくありません。当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして日常生活での注意点を守れているかを確認するようにしています。これにより、患者さま一人ひとりに合わせたきめ細やかな治療を提供できるよう努めています。これらは監修医の診療経験に基づく記述で、治療反応、期間、生活習慣との関係には個人差があります。
悪化を防ぐために避けたい行動
- 皮むけを爪や器具で剥がす: びらんや出血、二次感染につながることがあります。
- 洗浄回数や洗浄力を急に上げる: 刺激で赤みやかゆみが強くなることがあります。
- 複数の市販薬を同時に試す: 効果と刺激の原因が分かりにくくなります。
- 以前のステロイド外用薬を自己判断で流用する: 部位、診断、薬の強さが合わない可能性があります。
- 自然由来なら安全と考える: 精油、植物エキス、香料などでも接触皮膚炎を起こすことがあります。
薬を塗ると一時的にしみることがありますが、強い痛み、腫れ、水ぶくれ、急な悪化がある場合は「効いている反応」と決めつけず中止して相談してください。自己判断で塗布範囲や回数を増やす前に、薬の名前と使用方法を確認します。
皮膚科へ相談する目安
フケや赤みが数週間続く、市販のフケ用製品を使っても改善しない、顔や耳、胸まで広がる、かゆみで眠れない、繰り返して生活に支障がある場合は皮膚科で相談してください。円形の脱毛や切れ毛、強い痛み、膿、じゅくじゅく、発熱を伴う場合は、白癬や細菌感染など別の病気も考えるため早めの受診が必要です。
目の周囲の腫れ、目の痛みや見えにくさ、顔全体の急な腫れ、息苦しさ、口や舌の腫れ、急速に広がる発疹や発熱がある場合は、脂漏性皮膚炎だけと考えず速やかに医療機関へ相談してください。乳児、高齢者、妊娠・授乳中の方、免疫機能に関わる病気や治療がある方は、使用できる薬や受診時期を個別に確認します。
まとめ
脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔など皮脂の多い部位に赤み、皮むけ、フケ、かゆみが現れやすい皮膚炎です。マラセチア、皮脂、皮膚バリア、免疫反応など複数の要因が関わると考えられ、清潔不足や特定の食事だけで説明できる病気ではありません。
治療では、抗真菌薬と抗炎症薬を部位と症状に応じて使い分け、洗いすぎを避けたケアを組み合わせます。乾癬、白癬、接触皮膚炎、酒さなど似た病気があるため、自己判断のリンデロンやシャンプーで長引く場合は診断を確認してください。症状、使用製品、薬の経過を記録しておくと、治療の調整や再発時の相談に役立ちます。
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