脂漏性皮膚炎の原因と治療|医師が解説
- ✓ 脂漏性皮膚炎は皮脂の過剰分泌とマラセチア菌の増殖が主な原因で、遺伝的要因や生活習慣も影響します。
- ✓ 治療は抗真菌薬の外用・内服、ステロイド外用薬が中心で、症状の程度や部位に応じて選択されます。
- ✓ 適切なスキンケアと生活習慣の改善が再発予防に不可欠であり、医師との連携が重要です。
脂漏性皮膚炎の基礎知識

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、皮脂腺が発達した部位、特に顔面(鼻の周り、眉間、額、耳の後ろ)、頭皮、胸部などに発症する慢性的な炎症性皮膚疾患です。赤み、かゆみ、フケのような鱗屑(りんせつ)[1]を伴うことが特徴で、乳児期と思春期以降の成人によく見られます。このセクションでは、脂漏性皮膚炎の基本的な情報、原因、症状、そして治療法について詳しく解説します。
脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が活発な部位に生じる湿疹性の皮膚疾患です。皮膚の常在菌であるマラセチア菌が関与していると考えられており、皮膚の炎症やフケ、かゆみを引き起こします[2]。乳児期に発症する「乳児脂漏性皮膚炎」と、思春期以降に発症する「成人脂漏性皮膚炎」に大別されます。
- マラセチア菌
- 皮膚の表面に常在する酵母菌の一種で、皮脂を栄養源として増殖します。脂漏性皮膚炎の病態形成に深く関与しているとされています。
脂漏性皮膚炎の主な原因は何ですか?
脂漏性皮膚炎の正確な原因は完全に解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています[1]。主な要因としては、以下の点が挙げられます。
- 皮脂の過剰分泌: 皮脂腺の活動が活発な部位に発生するため、皮脂の分泌量が多いことが関与していると考えられます。皮脂はマラセチア菌の栄養源となります。
- マラセチア菌の増殖: 皮膚の常在菌であるマラセチア菌(特にMalassezia globosaやMalassezia restricta)が、皮脂を分解して遊離脂肪酸を生成し、これが皮膚を刺激して炎症を引き起こすと考えられています[1]。
- 遺伝的要因: 家族歴がある場合に発症しやすい傾向が見られることがあります。
- ホルモンバランスの乱れ: 思春期やストレス、妊娠などによるホルモンバランスの変化が皮脂分泌に影響を与えることがあります。
- 免疫機能の低下: ストレス、疲労、特定の病気(例: パーキンソン病、HIV感染症)などが免疫機能を低下させ、マラセチア菌の異常増殖を許容しやすくなることがあります[1]。
- 生活習慣の乱れ: 睡眠不足、偏った食生活(特に脂質の多い食事)、過度な飲酒、喫煙なども症状を悪化させる要因となり得ます。
- 頭皮: 最も一般的な部位で、乾燥したフケ、または脂っぽいフケが大量に出ることがあります。頭皮の赤み、かゆみ、ひどい場合にはかさぶたや湿潤を伴うこともあります。
- 顔面: 眉毛、眉間、鼻の周り(鼻唇溝)、額の生え際、耳の後ろや耳の中に赤みと脂っぽい鱗屑が見られます。かゆみを伴うこともあります。
- 胸部・脇の下・股部: 胸の中央、脇の下、乳房の下、股の付け根など、皮膚が擦れやすく湿潤しやすい部位にも発症することがあります。赤みと鱗屑、かゆみが特徴です。
- 抗真菌薬: マラセチア菌の増殖を抑える目的で使用されます。ケトコナゾール[5]やシクロピロクス[6]などが含まれるシャンプーやクリーム、ローションがあります。これらは炎症の原因となるマラセチア菌を直接的に減少させるため、治療の第一選択となることが多いです。
- ステロイド外用薬: 炎症を強力に抑える効果があります。赤みやかゆみが強い場合に短期間使用されます。長期連用は皮膚が薄くなるなどの副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。
- 非ステロイド性抗炎症薬: ステロイド外用薬が使用できない部位や、症状が比較的軽度な場合に使用されることがあります。タクロリムス軟膏やピメクロリムスリームなどが該当します。
- 抗真菌薬: イトラコナゾールなどの内服抗真菌薬が、マラセチア菌の全身的な増殖を抑えるために処方されることがあります[4]。
- ビタミンB群: ビタミンB2やB6の不足が脂漏性皮膚炎の悪化に関与するとも言われており、補助的に処方されることがあります。
- 適切な洗顔・洗髪: 刺激の少ない洗浄料を使用し、優しく洗い、しっかりとすすぐことが大切です。特に頭皮の場合、抗真菌成分配合のシャンプーを週に数回使用することが推奨されます。
- 保湿: 乾燥はかゆみや炎症を悪化させる可能性があるため、洗顔後や入浴後には保湿剤で肌を整えることが推奨されます。ただし、油分の多い保湿剤は皮脂腺を刺激する可能性もあるため、さっぱりとしたタイプを選ぶと良いでしょう。
- 生活習慣の見直し: 十分な睡眠、バランスの取れた食事(特にビタミンB群を意識した食事)、ストレスの軽減、適度な運動などが症状の改善に繋がります。当院では、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「フケが減ってかゆみが楽になった」「肌の赤みが引いてきた」とおっしゃる方が多いですが、同時に「食生活を見直したら体調も良くなった」と、生活習慣改善の効果を実感される方も少なくありません。
- 症状の悪化因子を避ける: 紫外線、乾燥、過度な発汗、アルコールの摂取、脂質の多い食事などは症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
- 自己判断での治療中断を避ける: 症状が軽快しても、医師の指示なく治療を中断すると再発しやすくなります。特にステロイド外用薬は、急に中止するとリバウンドを起こすことがあります。
- 定期的な受診: 症状のコントロールには時間がかかることがあります。定期的に受診し、医師と相談しながら治療計画を調整していくことが大切です。当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして日常生活での注意点を守れているかを確認するようにしています。これにより、患者さま一人ひとりに合わせたきめ細やかな治療を提供できるよう努めています。
当院では、初診時に「頭皮が痒くてフケがひどい」「顔のTゾーンが赤くなり、カサカサする」と相談される患者さまも少なくありません。問診の際には、これらの症状がいつから始まったか、どのような生活習慣があるか、ストレスの有無、家族歴などを詳しく伺うようにしています。特に、睡眠不足や食生活の乱れを訴える方が多く、これらが症状悪化の一因となっているケースをよく経験します。
脂漏性皮膚炎の症状はどのように現れますか?
脂漏性皮膚炎の症状は、発症部位によって異なりますが、共通して見られるのは皮膚の赤みと鱗屑です[2]。
乳児の場合、頭皮に厚い黄色いかさぶた(乳児脂漏性湿疹、いわゆる「乳痂」)が見られることが多く、おむつが触れる部位にも発疹が出ることがあります。成人の場合、症状は慢性的に経過し、季節の変わり目やストレスによって悪化しやすい傾向があります。
脂漏性皮膚炎の治療法にはどのようなものがありますか?
脂漏性皮膚炎の治療は、症状の軽減と再発予防を目的とします。主に外用薬が用いられますが、症状が重い場合には内服薬も検討されます[3]。実際の診療では、患者さまの症状の程度、発症部位、生活習慣などを総合的に判断して最適な治療法を提案しています。
外用薬による治療
外用薬は、炎症を抑えたり、マラセチア菌の増殖を抑制したりする目的で使用されます。
内服薬による治療
外用薬で効果が不十分な場合や、症状が広範囲に及ぶ場合には内服薬が検討されることがあります。
内服薬は肝機能障害などの副作用のリスクがあるため、医師の指示に従い、定期的な検査を受けながら使用することが重要です。自己判断での中止や増量は避けてください。
スキンケアと生活習慣の改善
治療薬と並行して、適切なスキンケアと生活習慣の改善が非常に重要です。これらは症状の改善だけでなく、再発予防にも大きく寄与します。
| 治療法 | 主な効果 | 使用上の注意点 |
|---|---|---|
| 抗真菌薬外用 | マラセチア菌の増殖抑制 | 指示された期間、用法用量を守る |
| ステロイド外用薬 | 炎症(赤み・かゆみ)の抑制 | 長期連用による皮膚萎縮などに注意 |
| 抗真菌薬内服 | 全身のマラセチア菌抑制 | 肝機能障害などの副作用、定期的な検査 |
| スキンケア・生活習慣 | 症状の改善、再発予防 | 継続が重要、即効性はない |
脂漏性皮膚炎の経過と注意点は?
脂漏性皮膚炎は慢性的な経過をたどることが多く、一度症状が改善しても、ストレスや体調の変化、不適切なスキンケアなどにより再発する可能性があります。そのため、治療だけでなく、日頃からのセルフケアと定期的な経過観察が重要です。
まとめ

脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌とマラセチア菌の増殖が主な原因で、遺伝的要因や生活習慣も影響する慢性的な皮膚疾患です。頭皮や顔面、胸部などに赤み、かゆみ、フケのような鱗屑が生じます。治療は、抗真菌薬やステロイド外用薬が中心となり、重症例では内服薬も検討されます。適切なスキンケアと生活習慣の改善が症状のコントロールと再発予防に不可欠であり、自己判断せず、医師と連携しながら治療を継続することが重要です。
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よくある質問(FAQ)
- Clio Dessinioti, Andreas Katsambas. Seborrheic dermatitis: etiology, risk factors, and treatments: facts and controversies.. Clinics in dermatology. 2013. PMID: 23806151. DOI: 10.1016/j.clindermatol.2013.01.001
- Robert A Schwartz, Christopher A Janusz, Camila K Janniger. Seborrheic dermatitis: an overview.. American family physician. 2006. PMID: 16848386
- Josiah Sowell, Sandra M Pena, Boni E Elewski. Seborrheic Dermatitis in Older Adults: Pathogenesis and Treatment Options.. Drugs & aging. 2022. PMID: 35394260. DOI: 10.1007/s40266-022-00930-5
- Aditya K Gupta, Robyn Bluhm, Elizabeth A Cooper et al.. Seborrheic dermatitis.. Dermatologic clinics. 2003. PMID: 12956195. DOI: 10.1016/s0733-8635(03)00028-7
- ケトコナゾール(ケトコナゾール)添付文書(JAPIC)
- シクロピロクス 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
