やけど(熱傷)の応急処置と治療|医師が解説
- ✓ やけど(熱傷)は深さと範囲によって重症度が異なり、適切な応急処置が重要です。
- ✓ 冷やす応急処置は、流水で20分間が推奨されており、これにより損傷の進行を抑えることが期待できます[1]。
- ✓ 医療機関での治療は、やけどの深さや部位に応じて、軟膏や被覆材、場合によっては手術が選択されます。
やけど(熱傷)の基礎知識と治療

やけど(熱傷)とは、熱によって皮膚やその下の組織が損傷を受ける状態を指します。適切な応急処置と、やけどの深さや範囲に応じた医療機関での治療が、治癒を早め、合併症を防ぐ上で非常に重要です。
やけどの深さはどのように分類される?
やけどの深さは、皮膚のどの層まで損傷が及んでいるかによって、主に以下の3段階に分類されます。この分類は、治療方針を決定する上で重要な指標となります。
- Ⅰ度熱傷
- 皮膚の最も外側である表皮のみが損傷を受けた状態です。赤み、ヒリヒリとした痛みが生じますが、水ぶくれはできず、通常は数日で痕を残さずに治癒します。
- Ⅱ度熱傷
- 表皮の下にある真皮まで損傷が及んだ状態です。水ぶくれ(水疱)が生じ、強い痛みを感じます。Ⅱ度熱傷はさらに浅いもの(浅達性Ⅱ度熱傷)と深いもの(深達性Ⅱ度熱傷)に分けられます。浅達性Ⅱ度熱傷は通常2~3週間で治癒し、痕が残りにくいですが、深達性Ⅱ度熱傷は治癒に3週間以上かかり、瘢痕(きずあと)が残る可能性があります。
- Ⅲ度熱傷
- 皮膚の全層が破壊され、皮下組織にまで損傷が及んだ状態です。皮膚は白っぽく乾燥したり、黒く焦げたりすることがあります。神経末端も破壊されるため、痛みを感じないこともあります。自然治癒は難しく、植皮術などの外科的治療が必要となる場合が多いです。
当院では、初診時にやけどの深さと範囲を正確に評価することを重視しています。特に小さなお子さんの場合、大人と比べて皮膚が薄いため、同じ熱源でもより深い損傷を受けやすい傾向があります。問診の際には、熱源の種類、接触時間、応急処置の内容を詳しく伺い、適切な治療計画を立てるようにしています。
やけどの応急処置:何をすべき?
やけどを負った際の応急処置は、その後の治癒に大きく影響します。特に重要なのは「冷却」です。
冷却の重要性とその方法
やけどを負ったら、すぐに流水で患部を冷やすことが最も重要です[1]。冷却は、熱による組織の損傷の進行を止め、痛みを和らげる効果があります。適切な冷却時間は、少なくとも20分間とされています[1][2]。冷たすぎる水や氷を直接当てるのは避け、清潔な流水(水道水など)を使用してください。特に乳幼児や高齢者の場合、広範囲の冷却は体温低下を招く可能性があるため注意が必要です[1]。
- 冷却の目安: 20分間以上の流水冷却[1][2]。
- 水温: 15~25℃程度の冷たすぎない水が適切です[4]。
- 注意点: 衣服の上からやけどをした場合は、無理に脱がさずにそのまま冷やしましょう。衣服が皮膚に張り付いている場合は、ハサミなどで切り開いて冷却します。
当院の診察では、応急処置として「どれくらいの時間、どのように冷やしましたか?」と必ずお伺いしています。冷却が不十分だった場合、やけどの深さが進行しているケースをよく経験するため、初期対応の重要性を患者さまにお伝えしています。
やってはいけない応急処置
やけどの患部に民間療法として味噌や醤油、アロエなどを塗布することは、感染のリスクを高めるだけでなく、正確な診断を妨げる可能性があるため避けてください[3]。また、水ぶくれは破らず、清潔に保つことが重要です。
医療機関を受診する目安は?
以下のような場合は、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
- 水ぶくれ(水疱)ができている場合(Ⅱ度熱傷以上)
- やけどの範囲が広い場合(手のひら大以上)
- 顔、首、手、足、股間など、機能的に重要な部位のやけど
- 痛みがない、または皮膚が白く変色している場合(深達性Ⅱ度熱傷やⅢ度熱傷の可能性)
- 乳幼児や高齢者のやけど
- 化学薬品によるやけどや、電気によるやけど
特に小さなお子さんの保護者の方から「少し赤くなっただけだけど、病院に行くべきか迷った」という相談をよく受けます。乳幼児のやけどは進行が早いため、迷ったらまずは受診することをお勧めしています。早期に適切な処置を行うことで、治癒期間を短縮し、痕が残るリスクを減らすことが期待できます。
やけどの治療法にはどのようなものがある?
医療機関でのやけど治療は、やけどの深さ、範囲、部位、患者さんの年齢や全身状態によって異なります。
外用薬と被覆材による治療
軽度から中程度のやけど(Ⅰ度熱傷、浅達性Ⅱ度熱傷)では、主に外用薬(軟膏など)と被覆材(ドレッシング材)を用いた治療が行われます。外用薬には、感染予防や炎症を抑える効果が期待できるものが使用されます。被覆材は、患部を保護し、適度な湿潤環境を保つことで、皮膚の再生を促します。これにより、痛みの軽減や治癒の促進が期待できます。
外科的治療
深達性Ⅱ度熱傷やⅢ度熱傷、広範囲のやけどの場合には、外科的治療が必要となることがあります。壊死した組織を除去し、皮膚の移植(植皮術)を行うことで、機能回復と感染予防を図ります。植皮術には、患者さん自身の皮膚を用いる自家植皮や、一時的に他人の皮膚や人工皮膚を用いる方法があります。
全身管理とリハビリテーション
広範囲の重症熱傷の場合、脱水や感染症、呼吸器合併症など、全身的な管理が不可欠です。集中治療室での治療が必要となることもあります。また、やけどが治癒した後も、瘢痕による引きつれ(拘縮)を防ぐためのリハビリテーションが重要です。理学療法士や作業療法士と連携し、関節の可動域訓練や圧迫療法などが行われます。
やけどの治療期間と経過観察
やけどの治療期間は、その深さや範囲によって大きく異なります。Ⅰ度熱傷であれば数日で治癒しますが、深達性Ⅱ度熱傷では数週間、Ⅲ度熱傷では数ヶ月から年単位の治療とリハビリテーションが必要となることもあります。
当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。特に、治療を始めて2〜3週間ほどで「痛みが引いてきた」「水ぶくれが小さくなった」とおっしゃる方が多いです。しかし、見た目が良くなっても、内部で皮膚の再生が続いているため、医師の指示に従って最後まで治療を続けることが重要です。
経過観察では、瘢痕形成の有無や、色素沈着・脱失などの皮膚の変化を注意深く診察します。必要に応じて、瘢痕を改善するための治療(ステロイド注射、レーザー治療など)を検討することもあります。
| やけどの深さ | 主な症状 | 推奨される治療 | 治癒期間の目安 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ度熱傷 | 赤み、痛み | 冷却、保湿 | 数日 |
| 浅達性Ⅱ度熱傷 | 水ぶくれ、強い痛み、赤み | 冷却、軟膏、被覆材 | 2~3週間 |
| 深達性Ⅱ度熱傷 | 水ぶくれ、痛み(比較的少ないことも)、白っぽい皮膚 | 軟膏、被覆材、外科的処置の検討 | 3週間以上、瘢痕の可能性 |
| Ⅲ度熱傷 | 皮膚の全層損傷、痛みなし、白〜黒色 | 外科的治療(植皮術)、全身管理 | 数ヶ月~年単位 |
まとめ

やけど(熱傷)は、熱による皮膚の損傷であり、その深さや範囲によって重症度が異なります。やけどを負った際には、まず20分間の流水冷却を行うことが最も重要な応急処置です。水ぶくれができている場合や広範囲のやけど、顔や手足などの部位のやけど、乳幼児や高齢者のやけどは、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。医療機関では、やけどの深さに応じて軟膏や被覆材を用いた治療、あるいは外科的治療が選択されます。適切な初期対応と専門的な治療、そして継続的な経過観察が、やけどの治癒を促し、合併症や瘢痕形成のリスクを軽減するために不可欠です。
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よくある質問(FAQ)
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- David J Read, Swee Chin Tan, Linda Ward et al.. Burns first aid treatment in remote Northern Australia.. Burns : journal of the International Society for Burn Injuries. 2019. PMID: 28811053. DOI: 10.1016/j.burns.2017.07.013
- Andrew David Kilshaw, Sharmila Jivan. Smartphone apps on burns first aid: A review of the advice.. Burns : journal of the International Society for Burn Injuries. 2021. PMID: 33279340. DOI: 10.1016/j.burns.2020.04.022
- J C Lawrence. First-aid measures for the treatment of burns and scalds.. Journal of wound care. 1996. PMID: 8954420. DOI: 10.12968/jowc.1996.5.7.319
- Julieann Coombes, Holger Möeller, Sarah Fraser et al.. Administration of Burns First Aid Treatment to Aboriginal and Torres Strait Islander children in community settings.. Burns : journal of the International Society for Burn Injuries. 2024. PMID: 39317542. DOI: 10.1016/j.burns.2024.07.023
