床ずれの基礎知識と予防|医師が解説する対策
- ✓ 床ずれは皮膚の圧迫による血流障害で発生し、仙骨部や踵に好発します。
- ✓ 定期的な体位変換、適切なスキンケア、十分な栄養管理が予防の三原則です。
- ✓ ブレーデンスケールなどを用いてリスクを評価し、早期発見・早期対応が重要です。
床ずれ(褥瘡)とは?原因・好発部位・ステージ分類

床ずれ(褥瘡)は、身体の一部が長時間圧迫され、血流が滞ることで皮膚や皮下組織が損傷する状態を指します。特に寝たきりの方や、車椅子で長時間過ごす方に多く見られます。
床ずれの主な原因は、持続的な圧迫、摩擦、ずれの3つが挙げられます。持続的な圧迫は、骨と外部の間に皮膚が挟まれることで、毛細血管の血流が阻害され、組織への酸素や栄養供給が不足することが原因です。摩擦は、皮膚がベッドシーツなどと擦れることで表皮が損傷すること、ずれは、体位変換時に皮膚が引っ張られることで、皮下組織が骨からずれて血管が引き伸ばされ、血流が妨げられることを指します。これらの要因が複合的に作用することで、褥瘡が発生しやすくなります。
床ずれの好発部位はどこですか?
床ずれは、骨が突出している部位に特に発生しやすい傾向があります。具体的には、仰向けで寝ている場合は仙骨部(お尻の真ん中)、後頭部、肩甲骨部、踵(かかと)などが挙げられます。横向きで寝ている場合は、大転子部(股関節の外側)、くるぶし、耳介などに発生することがあります。当院では、初診時に「お尻のあたりが赤くなっていて、痛みがある」と相談される患者さまも少なくありません。問診の際には、普段の体位や活動状況を詳しく伺い、これらの好発部位に注意して診察を行っています。
床ずれのステージ分類とは?
床ずれの重症度は、その深さや組織損傷の程度によって分類されます。国際的な分類として、NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)によるステージ分類が広く用いられています。
- ステージI
- 皮膚の表面に発赤が見られる段階で、指で押しても色が消えない(非虚血性発赤)。皮膚は損傷していないが、圧迫によるダメージが始まっている状態です。
- ステージII
- 表皮や真皮の一部が失われ、浅い開放創や水疱が形成される段階。皮膚のバリア機能が損なわれ、感染のリスクが高まります。
- ステージIII
- 皮下組織まで損傷が及び、脂肪組織が見える段階。骨や腱、筋肉は露出していません。深いクレーター状の潰瘍が形成されることがあります。
- ステージIV
- 骨、腱、筋肉などの支持組織が露出している最も重度の段階。感染のリスクが非常に高く、全身状態に影響を及ぼす可能性もあります。
- 判定不能(Unstageable)
- 潰瘍の底部が壊死組織(黒色痂皮)やスラー(黄色の付着物)で覆われているため、実際の深さが確認できない状態。これらを除去することでステージが判明します。
- 深部組織損傷疑い(Suspected Deep Tissue Injury: SDTI)
- 皮膚表面は無傷またはわずかな変色(紫色、暗赤色など)に見えるが、皮下組織に深部の損傷がある可能性が高い状態。圧迫やずれによる組織損傷を示唆します。
これらの分類を理解することは、適切な治療計画を立て、予防策を講じる上で非常に重要です。早期に発見し、適切なケアを行うことで、重症化を防ぐことができます。
床ずれの予防法(体位変換・スキンケア・栄養管理)

床ずれの予防は、発生してからの治療よりもはるかに重要です。効果的な予防策には、体位変換、スキンケア、栄養管理の3つの柱があります。これらを総合的に実施することで、床ずれのリスクを大幅に低減できます。
定期的な体位変換はなぜ重要ですか?
体位変換は、特定の部位への圧迫を分散させ、血流を維持するために最も基本的な予防策です。一般的に、ベッド上では2時間ごと、車椅子では1時間ごとの体位変換が推奨されています[1]。しかし、患者さまの状態によっては、より頻繁な体位変換が必要な場合もあります。当院では、患者さまの活動レベルや皮膚の状態を評価し、個別の体位変換計画を立てるようにしています。特に、仙骨部や踵など、骨が突出している部位には、クッションやポジショニングピローを使用して、圧迫を避ける工夫が重要です。体位変換の際には、皮膚の「ずれ」を最小限に抑えるよう、ゆっくりと慎重に行うことが大切です。
適切なスキンケアの方法とは?
皮膚の清潔と保湿を保つことは、皮膚のバリア機能を維持し、床ずれを防ぐ上で不可欠です。排泄物による汚染は皮膚を刺激し、浸軟(ふやけること)を引き起こし、皮膚の脆弱性を高めます。そのため、排泄後は速やかに清潔にし、刺激の少ない洗浄剤を使用することが推奨されます。また、乾燥した皮膚は亀裂が生じやすく、損傷のリスクが高まるため、保湿剤を用いて皮膚の潤いを保つことが重要です。当院で指導するスキンケアでは、特に高齢の患者さまや皮膚が脆弱な患者さまに対しては、摩擦を避けるために優しく洗うこと、保湿剤は皮膚に擦り込まず、軽く塗布するようアドバイスしています。また、シリコンフォームドレッシングなどの予防的なドレッシング材も、特に仙骨部や踵の予防に有効であることが報告されています[3]。
皮膚をゴシゴシと強く擦ることは、摩擦による損傷を引き起こすため避けてください。また、過度なマッサージは、深部組織に損傷を与える可能性があるため推奨されません。
栄養管理は床ずれ予防にどう影響しますか?
十分な栄養摂取は、皮膚や組織の健康を維持し、損傷した組織の修復を促進するために極めて重要です。特に、タンパク質、ビタミンC、亜鉛などは、コラーゲン合成や免疫機能に関与し、皮膚の抵抗力を高める上で不可欠な栄養素です。低栄養状態にある患者さまは、皮膚が脆弱になりやすく、床ずれのリスクが高まります。当院の診療では、患者さまの食事内容や体重変化を定期的に確認し、必要に応じて栄養士と連携して栄養指導を行っています。特に、食欲不振や嚥下困難がある患者さまには、高カロリー・高タンパク質の栄養補助食品の活用を検討するなど、個々の状況に応じた栄養サポートを提案しています。栄養状態が改善することで、「以前よりも肌にハリが出てきた気がする」とおっしゃる患者さまもいらっしゃり、予防効果を実感しています。
| 予防の柱 | 具体的な対策 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 体位変換 | 2時間ごとの体位変換、ポジショニングピロー使用 | 圧迫の分散、血流の維持 |
| スキンケア | 清潔保持、保湿、摩擦・ずれの軽減 | 皮膚のバリア機能維持、炎症予防 |
| 栄養管理 | 高タンパク・高カロリー食、ビタミン・ミネラル補給 | 組織の修復促進、免疫力向上 |
床ずれのリスク評価(ブレーデンスケール)と早期発見のポイント
床ずれの予防を効果的に行うためには、患者さま一人ひとりのリスクを正確に評価し、早期に変化を察知することが不可欠です。リスク評価ツールを活用し、定期的な皮膚観察を行うことで、重症化する前に介入できます。
ブレーデンスケールとは何ですか?
ブレーデンスケールは、床ずれ発生のリスクを客観的に評価するために広く用いられているツールです。以下の6つの項目を評価し、それぞれの点数を合計することで、リスクの程度を数値化します。
- 知覚の認知:痛みや不快感をどの程度感じ、表現できるか
- 湿潤:皮膚が常に湿潤しているか(汗、尿失禁など)
- 活動性:歩行や体位変換をどの程度行えるか
- 可動性:体位を自力で変えられるか
- 栄養:通常の食事をどの程度摂取できているか
- 摩擦とずれ:摩擦やずれのリスクがどの程度あるか
各項目は1〜4点(摩擦とずれは1〜3点)で評価され、合計点数が低いほどリスクが高いと判断されます。例えば、合計18点以下であればリスクがあるとされ、特に12点以下では高リスクと見なされます。当院では、入院患者さまや在宅医療の患者さまに対して、定期的にブレーデンスケールを用いてリスク評価を実施し、その結果に基づいて個別的な予防計画を立案しています。理学療法士の知識が褥瘡予防に重要であることも報告されています[2]。
早期発見のための皮膚観察のポイントは何ですか?
床ずれの早期発見には、日々の丁寧な皮膚観察が最も重要です。特に、仙骨部、踵、後頭部など、圧迫を受けやすい部位を重点的に観察します。観察のポイントは以下の通りです。
- 皮膚の色の変化:発赤、紫斑、暗赤色などの変色がないか。指で押しても消えない発赤(非虚血性発赤)は、ステージIの兆候です。
- 皮膚の温度:周囲の皮膚に比べて熱感や冷感がないか。
- 皮膚の硬さ:硬結や浮腫がないか。
- 水疱や皮膚剥離:皮膚の表面に水ぶくれやめくれがないか。
- 患者さまの訴え:痛み、かゆみ、不快感などの自覚症状がないか。
これらの変化は、床ずれが進行しているサインである可能性があります。当院では、訪問看護師や介護スタッフと連携し、定期的な皮膚観察の重要性を共有しています。また、ご家族にも観察のポイントをお伝えし、少しでも気になる変化があれば速やかに医療機関に相談するようお願いしています。早期に発見し、適切な処置を行うことで、床ずれの悪化を防ぎ、患者さまの苦痛を軽減することが可能になります。
まとめ

床ずれ(褥瘡)は、持続的な圧迫、摩擦、ずれが原因で発生する皮膚組織の損傷であり、寝たきりの方や活動性が低下した方に多く見られます。仙骨部や踵などの骨突出部位に好発し、その重症度はステージIからIV、さらに判定不能や深部組織損傷疑いとして分類されます。予防には、定期的な体位変換による圧迫の分散、皮膚の清潔と保湿を保つ適切なスキンケア、そして皮膚組織の健康を支える十分な栄養管理が三原則として重要です。また、ブレーデンスケールなどのリスク評価ツールを活用し、日々の皮膚観察によって早期に異常を発見することが、床ずれの重症化を防ぐ鍵となります。これらの予防策と早期発見のポイントを理解し実践することで、患者さまの生活の質を維持し、苦痛を軽減することにつながります。
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- Susana Gaspar, Miguel Peralta, Adilson Marques et al.. Effectiveness on hospital-acquired pressure ulcers prevention: a systematic review.. International wound journal. 2020. PMID: 31264345. DOI: 10.1111/iwj.13147
- Ozlem Ozcan, Hayriye Kul Karaali. Physiotherapists’ knowledge on pressure ulcer prevention.. International wound journal. 2023. PMID: 36535803. DOI: 10.1111/iwj.14049
- E Hahnel, M El Genedy, T Tomova-Simitchieva et al.. The effectiveness of two silicone dressings for sacral and heel pressure ulcer prevention compared with no dressings in high-risk intensive care unit patients: a randomized controlled parallel-group trial.. The British journal of dermatology. 2021. PMID: 31628863. DOI: 10.1111/bjd.18621
