- ✓ 桂枝加竜骨牡蛎湯は、神経過敏や不眠、小児夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 体力中等度以下で、疲れやすく、興奮しやすい方の症状に適用されます。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチーに注意が必要です。
桂枝加竜骨牡蛎湯(ツムラ26)とは?その特徴と適応

桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)は、漢方医学における「桂枝湯」に竜骨と牡蛎を加えた処方で、神経過敏や不眠、小児の夜泣きなどの精神神経症状に用いられる漢方薬です。この薬は、体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で興奮しやすい方の症状を緩和することを目的としています[1]。当院の皮膚科外来では、湿疹やアトピー性皮膚炎などで皮膚症状に加えて精神的なストレスや不眠を訴える患者さまに、補助的な治療として処方することがあります。
桂枝加竜骨牡蛎湯の構成生薬と作用メカニズム
桂枝加竜骨牡蛎湯は、以下の生薬から構成されています[1]。
- 桂皮(ケイヒ):体を温め、発汗を促し、血行を改善する作用があります。
- 芍薬(シャクヤク):鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげます。
- 大棗(タイソウ):滋養強壮作用があり、消化器系の働きを整えます。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、消化を助ける作用があります。
- 甘草(カンゾウ):炎症を抑え、他の生薬の作用を調和させる働きがあります。
- 竜骨(リュウコツ):精神安定作用があり、興奮を鎮めます。
- 牡蛎(ボレイ):精神安定作用があり、動悸や不眠を改善します。
これらの生薬が複合的に作用することで、自律神経のバランスを整え、精神的な緊張を緩和し、不眠や不安といった症状の改善に寄与すると考えられています。特に竜骨と牡蛎は、精神を落ち着かせ、興奮を抑える効果が期待される生薬です。実際の診察では、患者さまから「夜中に何度も目が覚めてしまう」「ちょっとしたことでイライラしてしまう」と質問されることがよくあります。このような場合、西洋薬の睡眠導入剤や抗不安薬に抵抗がある方に対し、漢方薬の選択肢として桂枝加竜骨牡蛎湯を提案することがあります。
- 桂枝加竜骨牡蛎湯
- 漢方医学における処方の一つで、桂枝湯に竜骨と牡蛎を加えたもの。体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で興奮しやすい方の、不眠、神経症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、動悸などに用いられる。
どのような症状に効果が期待できる?
桂枝加竜骨牡蛎湯は、主に以下のような症状に効果が期待されます[1]。
- 神経症、不眠症:精神的な不安や緊張が強く、寝つきが悪い、眠りが浅いといった症状。
- 小児夜泣き、夜尿症:小児の興奮状態や不安による夜間の症状。
- 眼精疲労:目の疲れに伴う頭痛や肩こりなど。
- 動悸、息切れ:精神的な緊張による心臓の動悸や息苦しさ。
- てんかん:興奮を伴う発作の軽減。
皮膚科の日常診療では、アトピー性皮膚炎の患者さまが皮膚の痒みで眠れない、掻き壊しによってさらにストレスが溜まるという悪循環に陥ることがあります。このような場合、桂枝加竜骨牡蛎湯を併用することで、精神的な安定を図り、睡眠の質を改善し、結果として皮膚症状の悪化を防ぐ一助となることがあります。当院では、患者さまの訴えを丁寧に聞き取り、皮膚症状だけでなく全身状態や精神面も考慮した上で、この漢方薬の適用を検討しています。
桂枝加竜骨牡蛎湯の用法・用量と服用上の注意点
桂枝加竜骨牡蛎湯は、その効果を最大限に引き出し、安全に服用するために、正しい用法・用量を守ることが重要です。また、服用に際してはいくつかの注意点があります。
標準的な用法・用量
ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)の標準的な用法・用量は以下の通りです[1]。
- 成人:1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与する。
- 小児:年齢、体重、症状に応じて適宜減量する。
食前とは食事の30分~1時間前、食間とは食事と食事の間(食後2時間程度)を指します。漢方薬は空腹時に服用することで吸収が良くなるとされていますが、胃腸が弱い方や吐き気を感じやすい方は、食後に服用することも可能です。当院では、患者さまの生活スタイルに合わせて、飲みやすいタイミングを相談しながら処方しています。特に、不眠の改善を目的とする場合は、夕食後や就寝前に服用するよう指導することが多いです。
用法・用量はあくまで目安であり、患者さまの症状や体質によって医師が調整します。自己判断での増量や減量は避け、必ず医師の指示に従ってください。
服用上の注意点
桂枝加竜骨牡蛎湯を服用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 飲み合わせ:他の漢方薬や西洋薬との併用には注意が必要です。特に甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高める可能性があります。当院では、問診で現在服用中の全ての薬剤を確認し、安全性を確保しています。
- アレルギー歴:過去に漢方薬や特定の生薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
- 妊娠・授乳中の方:妊娠中または授乳中の方は、服用前に医師に相談してください。
- 特定の疾患がある方:高血圧、心臓病、腎臓病のある方は、服用前に医師に相談が必要です。甘草の成分が症状を悪化させる可能性があります。
皮膚科の臨床経験上、漢方薬は比較的副作用が少ないとされていますが、体質や体調によっては思わぬ反応が出ることがあります。何か異常を感じた場合は、すぐに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
桂枝加竜骨牡蛎湯の副作用はある?頻度別に解説

桂枝加竜骨牡蛎湯は一般的に安全性が高いとされていますが、他の医薬品と同様に副作用のリスクは存在します。副作用の頻度は稀ですが、どのような症状に注意すべきかを知っておくことは重要です。
重大な副作用
添付文書に記載されている重大な副作用は以下の通りです[1]。
- 偽アルドステロン症:頻度不明。尿量が減る、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がる、頭痛などの症状が現れることがあります。これは、甘草の成分(グリチルリチン酸)が体内の電解質バランスに影響を与えることで生じることがあります。
- ミオパチー:頻度不明。脱力感、手足のしびれ、こわばり、筋肉痛などが現れ、次第に強くなることがあります。偽アルドステロン症と関連して起こることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。当院の診察では、特に高齢の患者さまや、高血圧・腎臓病の既往がある患者さまには、これらの副作用のリスクについて丁寧に説明し、定期的な血圧測定や血液検査を推奨することがあります。
その他の副作用
重大な副作用に比べ頻度は低いものの、以下のような症状が報告されています[1]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢など。
- 皮膚症状:発疹、かゆみなど。
これらの症状は、服用開始初期に現れることがあり、多くは軽度で自然に治まる傾向があります。しかし、症状が続く場合や悪化する場合は、服用を中止して医師に相談してください。皮膚科の臨床経験上、漢方薬による皮膚症状は比較的稀ですが、アレルギー体質の患者さまでは注意が必要です。当院では桂枝加竜骨牡蛎湯を処方した患者さまから、胃のむかつきというフィードバックをいただくことがありますが、服用タイミングの調整や、少量からの開始で改善されることが多い印象です。
| 副作用の種類 | 症状の例 | 対応 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇)、ミオパチー(脱力感、筋肉痛) | 直ちに服用中止し医療機関受診 |
| その他の副作用 | 消化器症状(食欲不振、吐き気、下痢)、皮膚症状(発疹、かゆみ) | 症状が続く・悪化する場合は医師に相談 |
桂枝加竜骨牡蛎湯に関する患者さまからのご質問
ジェネリック医薬品について

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品(新薬)と同じ有効成分を同じ量含み、同等の効能・効果、安全性を持つと国から認められた医薬品です。開発費用が抑えられるため、先発医薬品よりも安価に提供されます。
桂枝加竜骨牡蛎湯のジェネリック医薬品
桂枝加竜骨牡蛎湯は、ツムラから「ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)」として販売されていますが、他の製薬会社からも同等の漢方エキス製剤がジェネリック医薬品として提供されています。例えば、クラシエやコタロー、オースギなどからも桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒が製造・販売されています[1]。
これらのジェネリック医薬品は、ツムラの製品と同様に、体力中等度以下で神経過敏な方の不眠や神経症などに用いられます。有効成分の含有量や効能・効果は先発品と同等とされていますが、添加物や風味、顆粒の溶けやすさなどが異なる場合があります。当院では、患者さまの希望や薬局での在庫状況に応じて、ジェネリック医薬品を選択することが可能です。実際の処方では、患者さまから「ジェネリックでも効果は同じですか?」と質問されることがよくあります。その際には、有効成分は同じであり、効果も同等である旨を説明し、安心して服用いただけるよう努めています。
ジェネリック医薬品を選ぶメリット
ジェネリック医薬品を選ぶ主なメリットは、薬代を抑えられる点にあります。長期にわたって服用が必要な場合、経済的な負担を軽減できることは大きな利点です。当院では、患者さまの経済的な状況も考慮し、ジェネリック医薬品の選択肢があることを積極的に情報提供しています。ただし、漢方薬の場合、メーカーによって風味や溶けやすさに違いがあるため、服用感の好みも考慮して選択することが、継続的な服用につながる大切なポイントになります。
桂枝加竜骨牡蛎湯の服用期間と効果の評価
桂枝加竜骨牡蛎湯の効果を適切に評価し、安全に服用を継続するためには、服用期間と効果のモニタリングが重要です。漢方薬は西洋薬とは異なり、比較的穏やかに作用するため、効果が実感できるまでに時間がかかることがあります。
効果を実感するまでの期間
桂枝加竜骨牡蛎湯の効果を実感するまでの期間は、個人の体質、症状の程度、服用方法によって異なります。一般的には、数日から数週間で何らかの変化を感じ始めることが多いとされています。特に精神的な症状(不眠、イライラ、不安など)に対しては、比較的早期に効果を実感できる場合があります。
当院の経験では、不眠や神経過敏の症状で桂枝加竜骨牡蛎湯を処方した患者さまの場合、1~2週間程度で「寝つきが良くなった」「夜中に目が覚める回数が減った」「以前より落ち着いて過ごせるようになった」といったフィードバックをいただくことが多いです。しかし、症状が慢性化している場合や、体質改善を目的とする場合は、数ヶ月間の服用が必要となることもあります。皮膚科の日常診療では、皮膚症状の改善と並行して精神的な安定を図るため、アトピー性皮膚炎などの治療と合わせて数ヶ月間継続して服用いただくケースも少なくありません。
効果の評価と服用継続の判断
服用を開始したら、定期的に医師の診察を受け、効果の有無や副作用の出現について報告することが重要です。医師は、患者さまの自覚症状の変化、睡眠の質、精神状態などを総合的に評価し、服用継続の可否や用量の調整を判断します。当院では、診察の際に以下の点を重点的に確認しています。
- 症状の変化:不眠や神経過敏の程度は改善したか、夜泣きや夜尿症の頻度はどうか。
- 副作用の有無:胃部不快感、むくみ、だるさなど、気になる症状はないか。
- 生活の質の向上:薬の服用によって、日常生活がより快適になったか。
効果が十分に得られない場合でも、自己判断で服用を中止したり、他の薬に切り替えたりせず、必ず医師に相談してください。症状によっては、他の漢方薬や西洋薬への変更、または併用が検討されることもあります。皮膚科の臨床経験上、治療効果には個人差があるため、患者さま一人ひとりに合った最適な治療法を見つけることが、治療成功の鍵となります。
まとめ
桂枝加竜骨牡蛎湯(ツムラ26)は、体力中等度以下で疲れやすく、神経過敏で興奮しやすい方の不眠、神経症、小児夜泣きなどに用いられる漢方薬です。桂皮、芍薬、大棗、生姜、甘草、竜骨、牡蛎などの生薬が複合的に作用し、自律神経のバランスを整え、精神的な緊張を緩和する効果が期待されます。用法・用量は1日7.5gを2~3回に分割して食前または食間に服用することが一般的ですが、個々の症状や体質に応じて調整が必要です。重大な副作用として偽アルドステロン症やミオパチーが報告されており、むくみや脱力感などの症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。ジェネリック医薬品も存在し、薬代を抑える選択肢として検討できます。効果実感までの期間には個人差がありますが、数日から数週間で変化を感じ始めることが多く、継続的な服用と医師による定期的な評価が重要です。
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