- ✓ 思春期ニキビはホルモンバランスの変化、皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖が主な原因です。
- ✓ 正しいスキンケア、生活習慣の改善、そして必要に応じた皮膚科での治療が効果的な対処法となります。
- ✓ 自己判断でのケアは悪化を招く可能性があるため、専門医への相談が重要です。
思春期ニキビは、10代の若者に多く見られる皮膚の炎症性疾患で、顔や胸、背中などに発生します。この時期にニキビができるのはごく自然なことですが、放置すると跡が残ったり、精神的な負担になったりすることもあります。正しい知識と適切なケアで、思春期ニキビを乗り越えましょう。
思春期ニキビとは?その特徴とメカニズム

思春期ニキビは、主に10代の第二次性徴期に発生するニキビ(尋常性ざ瘡)の一種です。この時期に特有のホルモンバランスの変化が深く関与しています。
- 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)
- 一般的に「ニキビ」と呼ばれる皮膚疾患の医学的名称です。毛包と皮脂腺の慢性炎症性疾患で、面皰(めんぽう)、丘疹(きゅうしん)、膿疱(のうほう)などの症状が見られます。
思春期になると、男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が活発になります。これは男女ともに起こる生理現象であり、このホルモンが皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を増加させます。過剰な皮脂は毛穴を詰まらせやすくし、アクネ菌(Cutibacterium acnes、旧Propionibacterium acnes)が皮脂を栄養源として増殖しやすい環境を作り出します。アクネ菌が増殖すると、炎症を引き起こし、赤みや腫れを伴うニキビへと進行します。
ニキビは、世界中の思春期における最も一般的な皮膚疾患の一つであり、その有病率は国や地域によって異なりますが、多くの研究で高い割合が報告されています。例えば、サウジアラビアの男子学生を対象とした調査では、思春期ニキビの有病率が80.8%に達したと報告されています[4]。また、ヨーロッパ7カ国の若者を対象としたオンライン調査でも、ニキビの有病率が高いことが示されています[3]。
思春期ニキビの主な原因は何ですか?
思春期ニキビの発生には複数の要因が複雑に絡み合っています。主な原因は以下の4つです。
- ホルモンバランスの変化と皮脂の過剰分泌: 思春期にはアンドロゲンという男性ホルモンの分泌が増加し、皮脂腺を刺激して皮脂の分泌が活発になります。この過剰な皮脂がニキビの主な原因の一つです。
- 毛穴の詰まり: 皮脂の過剰分泌に加え、古い角質が毛穴の出口を塞ぐことで、皮脂がスムーズに排出されなくなり、毛穴の中に溜まってしまいます。これが「面皰(めんぽう)」と呼ばれるニキビの初期段階です。
- アクネ菌の増殖: 毛穴に皮脂が詰まると、酸素が少ない環境を好むアクネ菌が増殖しやすくなります。アクネ菌は皮脂を分解して炎症を引き起こす物質を作り出し、赤く腫れたニキビを形成します。
- 炎症: アクネ菌の増殖や皮脂の分解産物、毛穴の壁の損傷などにより、皮膚に炎症が生じます。この炎症が、赤ニキビや黄ニキビといった目に見える症状として現れます。
これらの主要因に加えて、遺伝的要因、ストレス、食生活、睡眠不足、不適切なスキンケアなどもニキビの悪化に関与すると考えられています。特に、食生活とニキビの関係については、乳製品の摂取がニキビの発症リスクを高める可能性を示唆する研究も存在します[1]。当院の診察の中で、初診時に「親も若い頃ニキビがひどかったんです」と相談される患者さまも少なくなく、遺伝的な体質もニキビの出やすさに影響すると実感しています。
思春期ニキビを悪化させる要因には何がありますか?

思春期ニキビは自然に治ることもありますが、特定の要因によって悪化し、治療が必要になるケースも少なくありません。悪化要因を理解し、避けることが大切です。
- 不適切なスキンケア: 洗顔のしすぎや、刺激の強い洗顔料の使用は、肌のバリア機能を低下させ、かえって皮脂分泌を促すことがあります。また、保湿不足も肌の乾燥を招き、角質層が厚くなることで毛穴が詰まりやすくなります。
- ニキビを潰す行為: ニキビを指で潰すと、炎症が悪化し、アクネ菌が周囲に広がる可能性があります。また、色素沈着やクレーター状のニキビ跡が残る原因にもなります。
- ストレスと睡眠不足: ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌を増加させることがあります。睡眠不足も肌のターンオーバーを妨げ、ニキビの治りを遅らせる原因となります。
- 食生活の乱れ: 高GI食品(血糖値を急激に上げる食品)や乳製品の過剰摂取がニキビを悪化させる可能性が指摘されています[1]。バランスの取れた食事が重要です。
- 物理的刺激: 髪の毛や帽子、マスク、衣類による摩擦や圧迫もニキビを刺激し、悪化させることがあります。
当院では、ニキビが悪化して来院される患者さまの多くが、自己流のケアや、ついニキビを触ってしまう癖があることを問診で確認しています。特に、マスク生活が長引いた時期には、マスクによる摩擦や蒸れが原因で頬や顎のニキビが悪化するケースをよく経験しました。
思春期ニキビの正しいセルフケアとは?
ニキビの悪化を防ぎ、改善を促すためには、日々の正しいセルフケアが非常に重要です。皮膚科での治療と並行して行うことで、より良い結果が期待できます。
適切な洗顔方法
洗顔は、過剰な皮脂や汚れ、古い角質を除去し、毛穴の詰まりを防ぐために不可欠です。しかし、洗いすぎは肌に必要な潤いを奪い、かえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
- 1日2回: 朝と晩の1日2回、洗顔料を使って優しく洗いましょう。それ以上の頻度で洗顔すると、肌に負担がかかることがあります。
- 低刺激性の洗顔料: ニキビ肌用の製品や、敏感肌向けの低刺激性の洗顔料を選びましょう。スクラブ入りやアルコール含有量の多いものは避けるのが賢明です。
- 泡で優しく: 洗顔料をよく泡立て、泡で肌を包み込むように優しく洗い、指でゴシゴシ擦らないようにしましょう。
- ぬるま湯で洗い流す: 熱すぎるお湯は肌の乾燥を招き、冷たすぎる水は毛穴が閉じやすくなります。人肌程度のぬるま湯で、洗顔料が残らないようにしっかりと洗い流しましょう。
保湿ケアの重要性
「ニキビがあるから保湿は不要」と考える方もいますが、これは誤解です。保湿は肌のバリア機能を維持し、乾燥による皮脂の過剰分泌を防ぐために非常に重要です。
- ノンコメドジェニック製品: ニキビができにくい処方(ノンコメドジェニック)と表示された化粧水や乳液を選びましょう。
- 洗顔後はすぐに: 洗顔後は肌が乾燥しやすいので、すぐに化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで蓋をして潤いを閉じ込めましょう。
生活習慣の改善
スキンケアだけでなく、日々の生活習慣もニキビに大きく影響します。
- バランスの取れた食事: 野菜や果物を多く摂り、加工食品や高糖質、高脂肪の食品は控えめにしましょう。
- 十分な睡眠: 成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、肌の修復や再生を促します。7~8時間程度の質の良い睡眠を心がけましょう。
- ストレス管理: 適度な運動や趣味の時間を持つなどして、ストレスを上手に解消しましょう。
- 清潔な環境: 寝具や枕カバーはこまめに洗濯し、肌に触れるものは清潔に保ちましょう。
当院では、ニキビ治療を開始する患者さまには、必ず洗顔方法や保湿の重要性、そして生活習慣について詳しく説明しています。特に、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「ニキビは減ったけど、肌の乾燥が気になる」「もっと早く保湿をしっかりすればよかった」とおっしゃる方が多いです。正しいスキンケアと生活習慣は、薬の効果を最大限に引き出す上で非常に重要なポイントになります。
市販薬や自己判断でのケアで改善が見られない場合、またはニキビが悪化している場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。適切な診断と治療が、ニキビ跡を残さないためにも重要です。
皮膚科での治療法にはどのような選択肢がありますか?

セルフケアだけでは改善が難しい思春期ニキビに対しては、皮膚科での専門的な治療が非常に効果的です。症状の程度や種類に応じて、様々な治療法が選択されます[2]。
外用薬(塗り薬)
ニキビ治療の基本となるのが外用薬です。毛穴の詰まりを改善したり、アクネ菌の増殖を抑えたり、炎症を鎮めたりする効果があります。
- アダパレン: 毛穴の詰まりを改善し、ニキビの初期段階である面皰の形成を抑える効果があります。
- 過酸化ベンゾイル: アクネ菌に対する殺菌作用と、角質剥離作用により毛穴の詰まりを改善する効果があります。耐性菌ができにくいという特徴もあります。
- 抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど): アクネ菌の増殖を抑え、炎症を鎮める効果があります。耐性菌の出現を防ぐため、単独ではなく他の外用薬と併用されることが多いです。
- 硫黄製剤: 角質を軟化させ、皮脂の分泌を抑制する効果があります。
内服薬(飲み薬)
炎症の強いニキビや、広範囲にわたるニキビ、外用薬だけでは効果が不十分な場合に内服薬が検討されます。
- 抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系など): アクネ菌を殺菌し、炎症を抑える効果があります。長期間の使用は耐性菌のリスクがあるため、医師の指示に従って服用します。
- ビタミン剤: ビタミンB群は皮脂の分泌を調整し、ビタミンCは抗酸化作用や肌のターンオーバーを助ける効果が期待されます。
- 漢方薬: 体質改善を目的として処方されることがあります。
その他の治療法
- 面皰圧出(めんぽうあっしゅつ): 専門の器具を使って、毛穴に詰まった皮脂や角質(面皰)を物理的に除去する処置です。炎症が悪化する前に取り除くことで、ニキビの悪化を防ぎます。
- ケミカルピーリング: 特殊な薬剤を肌に塗布し、古い角質を除去することで、肌のターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを改善します。ニキビ跡の改善にも効果が期待できます。
- レーザー・光治療: 炎症性のニキビやニキビ跡の色素沈着、赤みなどに効果が期待できる場合があります。
当院では、患者さまのニキビの状態を詳しく診察し、一人ひとりに最適な治療プランを提案しています。特に、外用薬の処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。治療開始から数週間で「赤みが引いてきた」「新しいニキビができにくくなった」といった効果を実感される方が多いです。
ニキビ跡を残さないための予防策は?
ニキビ跡は、ニキビの炎症が皮膚の深部にまで及び、組織が損傷されることで発生します。一度できてしまうと完全に消すのが難しい場合もあるため、ニキビ跡を残さないための予防が非常に重要です。
ニキビ跡の種類
ニキビ跡にはいくつかの種類があり、それぞれ治療法が異なります。
| ニキビ跡の種類 | 主な特徴 | 発生原因 |
|---|---|---|
| 赤み(炎症後紅斑) | ニキビが治った後に残る赤み | 炎症による毛細血管の拡張 |
| 色素沈着(炎症後色素沈着) | 茶色や黒っぽいシミ | 炎症によるメラニン色素の過剰生成 |
| クレーター(瘢痕) | 肌表面の凹凸、陥没 | 真皮層の組織破壊 |
ニキビ跡予防のポイント
- ニキビを潰さない: 最も重要な予防策です。炎症を悪化させ、真皮にまでダメージが及ぶのを防ぎます。
- 早期治療: ニキビができたら、悪化する前に適切な治療を開始することが大切です。炎症が軽いうちに抑えることで、跡が残るリスクを減らせます。
- 紫外線対策: 紫外線は炎症後色素沈着を悪化させる原因になります。日焼け止めを塗る、帽子をかぶるなどして、紫外線から肌を守りましょう。
- 保湿を徹底する: 肌のバリア機能を正常に保ち、炎症を鎮めるためにも保湿は欠かせません。
診察の中で「ニキビは治ったけど、跡が残ってしまって…」と悩みを打ち明ける患者さまも多くいらっしゃいます。特に、クレーター状のニキビ跡は治療に時間がかかり、費用も高くなる傾向があるため、そうなる前に適切なケアと治療を行うことの重要性を強くお伝えしています。
まとめ
思春期ニキビは、ホルモンバランスの変化に伴う皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖、そして炎症が主な原因で発生します。多くの若者が経験する生理現象ですが、適切な対処を怠るとニキビ跡として残ってしまう可能性があります。
正しい洗顔と保湿を基本としたスキンケア、バランスの取れた食事や十分な睡眠といった生活習慣の改善は、ニキビの予防と悪化防止に不可欠です。しかし、セルフケアだけでは改善が見られない場合や、炎症が強い場合は、皮膚科での専門的な治療を検討することが重要です。外用薬や内服薬、面皰圧出などの治療法を適切に選択することで、ニキビの症状を効果的にコントロールし、ニキビ跡を残さずに健康な肌を保つことができます。自己判断でニキビを潰したり、不適切なケアを続けたりせず、早めに専門医に相談し、適切なアドバイスと治療を受けるようにしましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Christian R Juhl, Helle K M Bergholdt, Iben M Miller et al.. Dairy Intake and Acne Vulgaris: A Systematic Review and Meta-Analysis of 78,529 Children, Adolescents, and Young Adults.. Nutrients. 2018. PMID: 30096883. DOI: 10.3390/nu10081049
- Kurt Gebauer. Acne in adolescents.. Australian family physician. 2019. PMID: 29464224
- P Wolkenstein, A Machovcová, J C Szepietowski et al.. Acne prevalence and associations with lifestyle: a cross-sectional online survey of adolescents/young adults in 7 European countries.. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology : JEADV. 2018. PMID: 28707712. DOI: 10.1111/jdv.14475
- Nagah M Abo El-Fetoh, Naif G Alenezi, Nasser G Alshamari et al.. Epidemiology of acne vulgaris in adolescent male students in Arar, Kingdom of Saudi Arabia.. The Journal of the Egyptian Public Health Association. 2017. PMID: 27749646. DOI: 10.1097/01.EPX.0000492401.39250.62
- ディフェリン(アダパレン)添付文書(JAPIC)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)添付文書(JAPIC)
- ダラシン(クリンダマイシン)添付文書(JAPIC)
- アクアチム(ナジフロキサシン)添付文書(JAPIC)
