【シングリックス(帯状疱疹ワクチン)の効果と副作用】|皮膚科医が解説|渋谷文化村通り皮膚科

シングリックス(帯状疱疹ワクチン)の効果と副作用|皮膚科医が解説

最終更新日: 2026-05-06

シングリックスとは?帯状疱疹の予防メカニズム

シングリックスが帯状疱疹ウイルスに作用し、予防効果を発揮する仕組み
シングリックスによる帯状疱疹予防
シングリックスとは、帯状疱疹の発症を予防するために開発された不活化ワクチンです。帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる疾患で、過去に水ぼうそうにかかった人が、加齢やストレス、疲労などによって免疫力が低下した際に、体内に潜伏していたVZVが再活性化することで発症します。このワクチンは、50歳以上の方を対象に、帯状疱疹の発症リスクを大幅に低減することを目的としています。
シングリックス(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)
不活化ワクチンの一種で、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の糖タンパクE(gE)を抗原とし、アジュバント(免疫増強剤)を組み合わせることで、強力な免疫応答を誘導します。生ワクチンではないため、免疫機能が低下している方にも接種が可能です。
シングリックスは、VZVの表面にある糖タンパクE(gE)という特定の成分を抗原として利用しています。このgE抗原を体内に投与することで、免疫システムがVZVを認識し、それに対する抗体や細胞性免疫を効率的に作り出すよう促します。さらに、AS01[5]というアジュバント(免疫増強剤)が配合されており、これにより免疫応答がさらに強力かつ持続的に誘導されるのが特徴です。実際の診察では、患者さまから「生ワクチンとどう違うの?」と質問されることがよくあります。生ワクチンはウイルスそのものを弱毒化して接種するのに対し、シングリックスはウイルスの成分のみを使用するため、ウイルスが体内で増殖する心配がなく、免疫不全の方にも安全に接種できる点が大きな違いです。 この強力な免疫応答は、VZVの再活性化を抑制し、帯状疱疹の発症を防ぐだけでなく、発症した場合でも重症化や合併症(特に帯状疱疹後神経痛)のリスクを低減する効果が期待されます。当院の皮膚科外来では、帯状疱疹の痛みで日常生活に支障をきたしている患者さまを多く診るため、この予防ワクチンの重要性を強く感じています。

シングリックスの帯状疱疹予防効果はどのくらい?

シングリックスは、帯状疱疹の発症予防において非常に高い有効性を示すことが、大規模な臨床試験によって確認されています。特に高齢者においてその効果は顕著です。 50歳以上の成人を対象とした臨床試験では、シングリックスを接種したグループでは、プラセボ(偽薬)を接種したグループと比較して、帯状疱疹の発症リスクが大幅に減少しました。具体的には、50歳以上の成人における帯状疱疹発症予防効果は97.2%[1]、70歳以上の成人では97.6%[2]と報告されています。この高い予防効果は、接種後少なくとも7年間は持続することが示唆されており、長期的な保護が期待できます[3]。 また、帯状疱疹の合併症として最も恐れられる帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症予防効果も高く、50歳以上の成人で88.8%[1]、70歳以上の成人で91.2%[2]と報告されています。PHNは、帯状疱疹の皮疹が治癒した後も数ヶ月から数年にわたって痛みが続くことがあり、患者さまのQOLを著しく低下させるため、その予防は非常に重要です。
対象年齢帯状疱疹発症予防効果帯状疱疹後神経痛(PHN)予防効果
50歳以上97.2%[1]88.8%[1]
70歳以上97.6%[2]91.2%[2]
皮膚科の日常診療では、帯状疱疹後神経痛で長期間苦しむ患者さまを多く見ており、その予防効果の高さは非常に重要です。当院ではシングリックスを接種した患者さまから、「接種部位は痛かったけど、帯状疱疹にならずに済んでよかった」というフィードバックをいただくことが多いです。特に、免疫機能が低下している血液悪性腫瘍患者においても、帯状疱疹発症予防効果が68.7%と報告されており[4]、幅広い層での予防効果が期待されています。

シングリックスの用法・用量と接種スケジュール

シングリックスワクチンを腕に接種する様子と接種回数のスケジュール
シングリックスの接種スケジュール
シングリックスの用法・用量は、通常、50歳以上の成人に対して、1回0.5mLを2ヶ月間隔で2回、筋肉内に接種します[5]。これは、十分な免疫応答を誘導し、長期的な予防効果を維持するために非常に重要です。

接種対象者

シングリックスは、主に以下の条件を満たす方が接種対象となります[5]
  • 50歳以上の成人
  • 免疫機能が低下している、または免疫抑制療法を受けている18歳以上の成人(医師の判断による)

接種スケジュール

標準的な接種スケジュールは以下の通りです[5]
  1. 1回目接種
  2. 2ヶ月後:2回目接種
ただし、2回目の接種は1回目から2ヶ月後以降6ヶ月後までの間に行うことができます[5]。この期間を過ぎてしまうと、十分な免疫効果が得られない可能性があるため、スケジュール通りに接種を完了することが重要です。当院では、1回目の接種時に2回目の接種日を予約していただくことで、患者さまが接種間隔を忘れないよう工夫しています。また、接種間隔が多少ずれても、6ヶ月以内であれば効果に大きな影響はないことを説明し、安心して接種を継続できるよう配慮しています。
⚠️ 注意点

接種間隔が6ヶ月を超えた場合、再度1回目から接種し直す必要はありませんが、医師と相談し、適切な対応を検討することが推奨されます。

シングリックスの副作用にはどのようなものがある?

シングリックスの接種後に起こりうる副作用は、他のワクチンと同様に存在します。ほとんどの副作用は軽度から中等度で一過性のものであり、数日以内に自然に改善することが多いです。しかし、まれに重篤な副作用が発生する可能性もゼロではありません。

重大な副作用[5]

  • アナフィラキシー反応:頻度不明。重篤なアレルギー反応で、呼吸困難、じんましん、意識障害などを引き起こすことがあります。接種後すぐに発現することが多いため、接種後は医療機関でしばらく安静にすることが推奨されます。

その他の副作用[5]

シングリックスの副作用は、主に注射部位の反応と全身症状に分けられます。臨床試験において報告された主な副作用は以下の通りです。
  • 非常に多い(10%以上)
    • 注射部位の痛み、発赤、腫脹
    • 疲労
    • 頭痛
    • 筋肉痛
    • 悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸症状
  • 多い(1%以上10%未満)
    • 発熱
    • 関節痛
    • かゆみ
当院では、接種後のフォローアップで「注射した腕が痛くて上がらない」「熱が出た」といった声をよく聞きます。これらの症状は、体が免疫反応を起こしている証拠であり、通常は1〜3日程度で治まります。痛みや発熱に対しては、市販の解熱鎮痛剤の使用をお勧めすることもあります。実際の臨床経験では、2回目の接種でより強く反応が出る方もいらっしゃいますが、ほとんどの方が問題なく接種を完了されています。接種後の症状が強く、日常生活に支障をきたす場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。
⚠️ 注意点

アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応は稀ですが、接種後30分は医療機関で安静にし、体調の変化がないか確認することが重要です。

🩺 診察でよく聞かれる質問
Q. 以前に帯状疱疹にかかったことがありますが、シングリックスを接種できますか?
A. はい、接種可能です。帯状疱疹にかかった後も、再発のリスクは存在します。当院では、帯状疱疹の症状が完全に治まってから、一定期間(通常は6ヶ月程度)経過していれば、再発予防のためにシングリックスの接種をお勧めしています。患者さまの病状や免疫状態を考慮し、最適な接種時期を判断します。
Q. シングリックスと他のワクチン(インフルエンザワクチンなど)を同時に接種できますか?
A. 他の不活化ワクチンであれば、同時接種は可能です。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどとの同時接種は、接種機会を逃さないためにも有効な選択肢です。ただし、接種部位は異なる腕にするなど、適切な方法で行います。生ワクチンとの同時接種については、医師にご相談ください。
Q. 接種後の腕の痛みや腫れは、どのように対処すれば良いですか?
A. 注射部位の痛みや腫れは、シングリックスで最もよく見られる副作用です。当院では、冷湿布などで冷やすことや、市販の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)を服用することで症状が緩和されることをお伝えしています。無理に腕を動かさず安静にすることも有効ですが、日常生活に支障がない範囲で腕を動かすことで、血行が促進され痛みが和らぐこともあります。症状が数日経っても改善しない場合や悪化する場合は、再度受診してください。
Q. 2回目の接種を忘れてしまいました。どうすれば良いですか?
A. 2回目の接種は1回目から2ヶ月後以降6ヶ月後までの間に行うことが推奨されています。もしこの期間を過ぎてしまった場合でも、再度1回目から接種し直す必要はありません。可能な限り早く2回目の接種を受けることで、十分な免疫効果が期待できます。当院では、患者さまの接種履歴を確認し、最適なタイミングで2回目接種をご案内いたしますので、まずはご相談ください。
Q. 接種費用はどのくらいかかりますか?保険は適用されますか?
A. シングリックスは任意接種ワクチンであり、健康保険は適用されません。そのため、費用は全額自己負担となります。費用は医療機関によって異なりますが、当院では接種前に明確な料金をご提示しています。一部の自治体では、帯状疱疹ワクチンの費用助成を行っている場合がありますので、お住まいの自治体の窓口にご確認いただくことをお勧めします。

シングリックス接種に関する注意点と禁忌事項

シングリックス接種前の問診票と医師による注意点の説明
シングリックス接種前の確認事項
シングリックスの接種を検討する際には、いくつかの注意点と禁忌事項があります。これらを事前に理解しておくことで、安全かつ効果的にワクチン接種を受けることができます。

接種前の確認事項

  • アレルギー歴:シングリックスの成分や、過去に他のワクチンで重篤なアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師に伝えてください。
  • 発熱や急性疾患:発熱がある場合や、重い急性疾患にかかっている場合は、体調が回復するまで接種を延期することが推奨されます。
  • 妊娠・授乳中:妊娠している可能性のある女性や授乳中の女性に対する安全性は確立されていません。接種の必要性については、医師と十分に相談してください。
  • 免疫不全状態:免疫抑制剤を使用している方や、免疫不全の疾患を持つ方でもシングリックスは接種可能ですが、個々の状態に応じて医師が判断します。

禁忌事項[5]

以下に該当する方は、シングリックスを接種できません。
  • シングリックスの成分に対して過敏症の既往歴がある方。
当院では、問診票でアレルギー歴や現在の健康状態を詳細に確認し、患者さま一人ひとりに合わせた接種の可否を判断しています。特に、複数の持病をお持ちの患者さまや、常用薬がある患者さまに対しては、薬の飲み合わせや病状への影響がないかを慎重に確認することが、安全な接種のために不可欠です。診察の中で「持病があるからワクチンは無理だと思っていた」とおっしゃる方も少なくありませんが、シングリックスは不活化ワクチンであるため、生ワクチンでは接種が難しかった免疫不全の方にも接種できる場合があります。そのため、自己判断せずにまずはご相談いただくことが重要です。

まとめ

シングリックスは、50歳以上の成人を対象とした不活化帯状疱疹ワクチンであり、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛に対して非常に高い予防効果が期待できます。2ヶ月間隔で2回接種することで、長期にわたる免疫を獲得することが可能です。主な副作用は注射部位の痛みや腫れ、疲労、頭痛などですが、これらはほとんどが軽度から中等度で一過性のものです。接種前にはアレルギー歴や現在の健康状態を医師に伝え、安全に接種を受けるための確認が必要です。免疫機能が低下している方でも接種できる場合があるため、帯状疱疹の予防に関心がある方は、ぜひ医療機関にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

シングリックスにジェネリック医薬品はありますか?
現在、シングリックスのジェネリック医薬品は存在しません。シングリックスは比較的新しいワクチンであり、特許期間が存続しているため、現時点では先発品のみが提供されています。
シングリックスの接種費用はどのくらいですか?
シングリックスは任意接種ワクチンであるため、健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。費用は医療機関によって異なりますが、1回あたり2万円台後半から3万円台が目安となることが多いです。2回接種が必要なため、合計で5万円以上かかることが一般的です。一部の自治体では助成制度を設けている場合がありますので、お住まいの自治体にご確認ください。
シングリックスは、以前の帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)と何が違いますか?
シングリックスは「不活化ワクチン」であるのに対し、以前からある帯状疱疹ワクチンは「生ワクチン」です。生ワクチンは弱毒化したウイルスを接種するのに対し、シングリックスはウイルスの成分のみを使用するため、免疫力が低下している方にも接種が可能です。また、シングリックスの方が帯状疱疹の発症予防効果がより高く、長期的な持続が期待できるとされています。