- ✓ 五虎湯は気管支喘息や気管支炎、小児喘息、鼻炎など、炎症を伴う咳や喘鳴に用いられる漢方薬です。
- ✓ 配合生薬の麻黄に含まれるエフェドリン類が気管支拡張作用や鎮咳作用をもたらし、石膏が熱を冷ます効果を発揮します。
- ✓ 副作用として、動悸や不眠、食欲不振などが報告されており、特に麻黄の作用による注意が必要です。
五虎湯とは?その基本情報と適応疾患

五虎湯(ゴコトウ)とは、漢方医学で「五虎」の名の通り、5つの生薬(麻黄、石膏、甘草、杏仁、桑白皮)から構成される漢方薬です。主に、気管支喘息、気管支炎、小児喘息、鼻炎、感冒、痔の痛みなどの疾患で、特に咳や喘鳴、呼吸困難感を伴う場合に用いられます[1]。炎症を鎮め、気管支を広げ、咳を和らげる作用が期待されます。当院の皮膚科外来では、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎に合併する喘息症状の患者さまに処方することがあります。
五虎湯は、特に「熱証」と呼ばれる、体に熱がこもり炎症が強い状態の患者さまに適しているとされています。具体的には、顔色が赤く、のどが渇き、痰が黄色いといった症状が見られる場合に効果を発揮しやすいとされます。漢方薬は個人の体質や症状に合わせて処方されるため、自己判断での服用は避け、医師や薬剤師にご相談ください。
- 漢方医学における「熱証」
- 漢方医学における「熱証」とは、体内に過剰な熱が存在し、炎症や興奮状態を示す病態を指します。具体的には、発熱、のどの渇き、赤ら顔、イライラ、便秘、濃い尿、黄色い痰などの症状が見られます。五虎湯は、この熱を冷ます「清熱(せいねつ)」作用を持つ生薬(石膏など)を含むため、熱証を伴う呼吸器症状に適応されます。
五虎湯が適応される主な疾患
- 気管支喘息・小児喘息: 咳や喘鳴が強く、呼吸困難感を伴う場合に用いられます。特に炎症が強く、痰が絡むような症状に適しています。
- 気管支炎: 咳がひどく、痰が絡んで呼吸が苦しい場合に効果が期待されます。
- 鼻炎: アレルギー性鼻炎などで鼻詰まりや鼻水、くしゃみがひどく、特に炎症が強い場合に考慮されます。
- 感冒: 風邪の症状で、特に咳や喘鳴が顕著な場合に処方されることがあります。
- 痔の痛み: 炎症を伴う痔の痛みに対しても、その消炎作用が利用されることがあります。
実際の診察では、患者さまから「風邪をひくといつも咳が長引いて、夜も眠れない」と相談されることがよくあります。このような場合、五虎湯は咳を鎮め、呼吸を楽にする効果が期待できるため、症状の緩和に役立つことがあります。ただし、症状の原因や患者さまの体質を詳細に把握した上で、適切な漢方薬を選択することが重要です。
五虎湯の作用メカニズムと配合生薬の働き
五虎湯の作用メカニズムは、配合されている5つの生薬がそれぞれ異なる働きをすることで、総合的に効果を発揮します。これらの生薬が持つ薬理作用が、気管支の炎症を抑え、呼吸を楽にする効果につながります。
主要な配合生薬とその薬理作用
| 生薬名 | 主な作用 | 五虎湯における役割 |
|---|---|---|
| 麻黄(マオウ) | 気管支拡張作用、鎮咳作用、発汗作用、中枢神経興奮作用 | 咳や喘鳴を鎮め、呼吸を楽にする主薬。エフェドリン類を含有。 |
| 石膏(セッコウ) | 清熱作用(熱を冷ます)、鎮静作用、消炎作用 | 体内の熱や炎症を鎮め、麻黄の興奮作用を和らげる。 |
| 甘草(カンゾウ) | 鎮痛作用、抗炎症作用、鎮痙作用、緩和作用 | 他の生薬の作用を調和し、のどの痛みや咳を和らげる。 |
| 杏仁(キョウニン) | 鎮咳作用、去痰作用 | 咳を鎮め、痰の排出を助ける。 |
| 桑白皮(ソウハクヒ) | 鎮咳作用、利尿作用、降圧作用 | 咳を鎮め、肺の熱を取り除く。 |
特に重要なのは麻黄と石膏の組み合わせです。麻黄に含まれるエフェドリン類は、交感神経を刺激して気管支を拡張させ、咳を鎮める作用があります。しかし、同時に心拍数増加や不眠などの副作用を引き起こす可能性もあります。そこで、石膏が持つ清熱作用や鎮静作用が、麻黄の過剰な興奮作用を和らげ、全体のバランスを保つ役割を果たします。この絶妙なバランスが、五虎湯の効果と安全性を両立させていると言えるでしょう。
皮膚科の日常診療では、五虎湯を処方する際に、患者さまの脈拍や血圧、睡眠状況などを確認し、麻黄による影響がないかを慎重に評価しています。特に、高齢の患者さまや心疾患の既往がある患者さまには、少量から開始するなど、個別の状態に合わせた配慮が治療のポイントになります。
五虎湯の正しい用法・用量と服用上の注意点

五虎湯は、その効果を最大限に引き出し、かつ安全に服用するために、正しい用法・用量を守ることが非常に重要です。添付文書に記載されている用法・用量を厳守し、不明な点があれば必ず医師や薬剤師に確認してください。
用法・用量[1]
- 成人: 通常、1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します。
- 小児: 小児への投与は、年齢、体重、症状に応じて適宜減量されます。医師の指示に従ってください。
服用方法は、一般的に顆粒やエキス剤として提供されるため、水またはぬるま湯で服用します。食前または食間とは、食事の30分〜1時間前、または食後2時間程度の空腹時を指します。
服用上の注意点
五虎湯の服用は、患者さまの体質や既往歴、併用薬によって注意が必要です。特に、麻黄に含まれるエフェドリン類は、心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、緑内障、糖尿病、前立腺肥大症の患者さまには慎重な投与が求められます。また、高齢者や妊婦、授乳婦への投与も医師の判断が必要です[1]。
- 長期服用: 長期にわたる服用が必要な場合は、定期的に医師の診察を受け、効果と副作用の有無を確認することが重要です。
- 他の薬剤との併用: 他の漢方薬や西洋薬との併用により、相互作用が生じる可能性があります。特に、麻黄を含む他の漢方薬や、交感神経刺激作用のある薬剤との併用は注意が必要です。必ず医師や薬剤師に相談してください。
- アレルギー歴: 過去に漢方薬や生薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、服用前に医師に伝えてください。
当院では、五虎湯を処方する際は、患者さまの既往歴や現在服用中の薬剤を詳細に問診で確認し、相互作用のリスクがないかを評価しています。特に、不眠や動悸を訴える患者さまには、夕方以降の服用を避けるよう指導するなど、個別の生活スタイルに合わせたアドバイスを心がけています。
五虎湯で起こりうる副作用とは?
五虎湯は一般的に安全性の高い漢方薬ですが、体質や服用状況によっては副作用が現れることがあります。副作用を早期に発見し、適切に対処するためには、どのような症状に注意すべきかを知っておくことが大切です。
重大な副作用[1]
- 偽アルドステロン症: 尿量が減少したり、顔や手足がむくんだり、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が上がる、頭痛などの症状が現れることがあります。これは甘草の成分によるもので、重症化すると血圧上昇や心臓への負担が増す可能性があります。
- ミオパチー: 偽アルドステロン症の進行により、脱力感、筋肉痛、四肢のけいれん、麻痺などの症状が現れることがあります。これは筋肉の障害を示すもので、重篤な場合は横紋筋融解症に至る可能性もあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
その他の副作用[1]
- 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。
- 精神神経系症状: 不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身倦怠感、精神興奮など。これらは麻黄の成分(エフェドリン類)による影響が考えられます。
- 皮膚症状: 発疹、蕁麻疹など。アレルギー反応によるものです。
これらの症状が見られた場合も、医師や薬剤師に相談し、適切な指示を仰いでください。特に、麻黄による動悸や不眠は、患者さまの生活の質に大きく影響するため、当院では患者さまの訴えを丁寧に聞き取り、必要に応じて服用量の調整や他の漢方薬への変更を検討しています。皮膚科の臨床経験上、麻黄による副作用は個人差が大きいと感じています。
五虎湯に関する患者さまからのご質問

ジェネリック医薬品について
五虎湯には、ツムラ、クラシエ、コタローなど複数の製薬会社から販売されている医療用漢方製剤があります。これらは厳密にはジェネリック医薬品とは異なりますが、同じ生薬構成と効能・効果を持つ同等品として扱われます。各社の製品は、配合生薬の含有量や製法に若干の違いがある場合もありますが、基本的には同じ効果が期待できます。
医療用漢方製剤の種類
- ツムラ五虎湯エキス顆粒(医療用): ツムラが製造販売する五虎湯です。医療現場で最も広く処方されています。
- クラシエ五虎湯エキス細粒: クラシエが製造販売する五虎湯です。
- コタロー五虎湯エキス細粒: 小太郎漢方製薬が製造販売する五虎湯です。
これらの製品は、いずれも医師の処方箋に基づいて調剤される医療用医薬品であり、保険適用となります。患者さまが特定のメーカーの製品を希望される場合は、医師や薬剤師にご相談ください。ただし、薬局での在庫状況や流通の関係で、ご希望に沿えない場合もあります。
当院では、主にツムラの製品を処方していますが、患者さまの体質や過去の服用経験、あるいは薬局での入手しやすさなどを考慮して、他のメーカーの製品を検討することもあります。重要なのは、どのメーカーの五虎湯であっても、医師の指示に従って正しく服用することです。
まとめ
五虎湯は、気管支喘息や気管支炎、鼻炎など、炎症を伴う咳や喘鳴に効果が期待される漢方薬です。麻黄と石膏の組み合わせにより、気管支拡張作用と清熱作用をバランス良く発揮します。しかし、麻黄による動悸や不眠、甘草による偽アルドステロン症などの副作用には注意が必要です。服用に際しては、添付文書の用法・用量を守り、既往歴や併用薬を医師や薬剤師に正確に伝えることが重要です。妊娠中や授乳中の方、高齢者、特定の疾患をお持ちの方は、必ず事前に相談してください。五虎湯には複数の製薬会社から同等品が販売されており、いずれも医師の処方箋に基づいて服用されます。症状の改善が見られない場合や、気になる症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
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