湿疹・皮膚炎の原因と治療|医師が解説
- ✓ 湿疹・皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎など様々な種類があり、それぞれ原因が異なります。
- ✓ 治療はステロイド外用薬や免疫抑制外用薬が中心ですが、重症度に応じて内服薬や生物学的製剤も検討されます。
- ✓ 日常生活でのスキンケアや原因物質の特定・回避が、症状の悪化を防ぎ、治療効果を高める上で非常に重要です。
湿疹・皮膚炎は、皮膚の炎症によってかゆみ、赤み、ブツブツ、水ぶくれ、かさつきなどが生じる状態の総称です。その原因は多岐にわたり、体質的なものから外部刺激によるものまで様々です。適切な診断と治療を行うためには、それぞれの湿疹・皮膚炎の種類と原因を理解することが不可欠です。
湿疹の種類と原因とは?

湿疹・皮膚炎は、皮膚に炎症が起こり、かゆみや発疹などを引き起こす状態を指します。その種類は非常に多く、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが代表的です。
アトピー性皮膚炎の主な原因は何ですか?
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下とアレルギー反応が複雑に絡み合って発症する慢性的な皮膚疾患です。遺伝的要因が大きく関与しており、アレルギー体質を持つ家族に多く見られる傾向があります[1]。皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激物質やアレルゲンが侵入しやすくなり、免疫反応が過剰に起こることで炎症が生じます。
当院の診察では、初診時に「子どもの頃から肌が弱くて、季節の変わり目になると特にひどくなります」と相談される患者さまも少なくありません。問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしており、ご両親やご兄弟にアレルギー疾患の既往があるかどうかも診断の重要な手がかりとなります。
アレルゲンとしては、ダニ、ハウスダスト、花粉、食物などが挙げられます。また、汗、乾燥、ストレスなども症状を悪化させる要因となります。特に、乾燥しやすい冬場は皮膚のバリア機能が低下しやすいため、症状が悪化する方が多くいらっしゃいます。
接触皮膚炎(かぶれ)はなぜ起こるのでしょうか?
接触皮膚炎、いわゆる「かぶれ」は、特定の物質が皮膚に触れることで炎症反応が引き起こされる状態です。これは大きく分けて「刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」の二種類があります。
- 刺激性接触皮膚炎
- 皮膚に触れた物質自体が持つ刺激性によって炎症が起こるもので、誰にでも起こり得ます。例えば、洗剤、石鹸、酸、アルカリなどが原因となります。特に手は様々な物質に触れる機会が多いため、手湿疹(手荒れ)として発症することがよくあります[2]。
- アレルギー性接触皮膚炎
- 特定の物質に対して体がアレルギー反応を起こすことで生じます。一度感作されると、少量でも反応が起こるようになります。原因物質としては、金属(ニッケル、コバルトなど)、化粧品、植物(ウルシなど)、医薬品(外用薬)、ゴムなどが挙げられます。当院では、新しい化粧品を使い始めてから顔がかぶれた、アクセサリーをつけたら赤くなった、といったケースをよく経験します。パッチテストで原因物質を特定することが重要になります。
その他の湿疹・皮膚炎にはどのようなものがありますか?
湿疹・皮膚炎には他にも多くの種類があります。
- 脂漏性皮膚炎: 皮脂の分泌が多い部位(顔、頭皮、胸など)に発生し、赤みやフケのようなかさつきが特徴です。マラセチア菌という常在菌が関与していると考えられています。
- 貨幣状湿疹: コインのような円形の湿疹で、強いかゆみを伴います。乾燥や虫刺され、金属アレルギーなどが誘因となることがあります。
- 皮脂欠乏性湿疹: 主に高齢者の乾燥肌に生じやすく、かゆみを伴う湿疹です。皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激に弱くなることで発症します。
- うっ滞性皮膚炎: 下肢の静脈うっ滞(血流の停滞)により、皮膚に炎症や色素沈着が生じるものです。
これらの湿疹は、見た目が似ていても原因や治療法が異なるため、正確な診断が重要です。当院では、問診と視診に加え、必要に応じてアレルギー検査や皮膚生検を行い、適切な診断を下すようにしています。
湿疹の治療法にはどのようなものがありますか?

湿疹の治療は、炎症を抑え、かゆみを軽減し、皮膚のバリア機能を回復させることを目的とします。原因や重症度に応じて、外用薬、内服薬、生活習慣の改善などを組み合わせた治療が行われます。
湿疹の基本的な治療薬は何ですか?
湿疹の治療の中心となるのは、外用薬です。特に以下の2種類がよく用いられます。
- ステロイド外用薬: 炎症を強力に抑える効果があり、湿疹治療の第一選択薬として広く用いられています。強さのランクがいくつかあり、症状の重症度や部位によって適切な強さのものが選択されます[5]。当院では、患者さまの症状を詳しく診察し、適切な強さのステロイド外用薬を処方しています。治療を始めて1〜2週間ほどで「赤みが引いてかゆみが楽になった」とおっしゃる方が多いです。副作用を心配される方もいらっしゃいますが、医師の指示通りに適切に使用すれば、安全性は高い薬剤です。
- 免疫抑制外用薬: ステロイド外用薬と同様に炎症を抑える効果がありますが、ステロイドとは異なる作用機序を持ちます。タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)やピメクロリムス軟膏(エリデル軟膏)などがあり、特にアトピー性皮膚炎の治療に用いられます[6]。顔など皮膚の薄い部位や、ステロイド外用薬を長期的に使用しにくい部位に選択されることがあります。
これらの外用薬に加えて、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬の内服が併用されることもあります。また、皮膚の乾燥が湿疹を悪化させる原因となるため、保湿剤によるスキンケアも非常に重要です。
重症な湿疹にはどのような治療法がありますか?
外用薬や一般的な内服薬で改善が見られない重症な湿疹、特にアトピー性皮膚炎や慢性的な手湿疹[3]に対しては、より強力な治療法が検討されます。
- 全身性ステロイド薬: 短期間、内服することで強い炎症を速やかに抑える効果が期待できます。ただし、長期使用には副作用のリスクがあるため、医師の厳重な管理のもとで使用されます。
- 免疫抑制剤(内服): 免疫反応を抑制することで炎症を抑えます。シクロスポリンなどが用いられ、重症のアトピー性皮膚炎などに適用されます。
- 生物学的製剤: 炎症を引き起こす特定の物質(サイトカインなど)の働きをピンポイントで抑える注射薬です。アトピー性皮膚炎の治療に導入されており、高い効果が報告されています[1]。当院では、従来の治療でなかなか症状が安定しない患者さまに対し、生物学的製剤の導入を検討することがあります。治療開始後数ヶ月で「長年悩んでいたかゆみが劇的に改善した」というお声を多くいただいており、生活の質の向上に大きく貢献しています。
- JAK阻害薬: 炎症に関わる細胞内の情報伝達を阻害する内服薬です。生物学的製剤と同様に、アトピー性皮膚炎の新たな治療選択肢として注目されています。
- 紫外線療法(PUVA療法、ナローバンドUVB療法など): 特定の波長の紫外線を患部に照射することで、免疫反応を調整し、炎症を抑える治療法です。
- アレルゲン免疫療法: アレルギー性のアトピー性皮膚炎に対して、原因アレルゲンを少量ずつ投与することで体を慣らし、アレルギー反応を軽減させる治療法です[4]。
湿疹の治療は長期にわたることも多く、自己判断で薬の使用を中断したり、使用量を変更したりすることは症状の悪化につながる可能性があります。必ず医師の指示に従い、定期的な診察を受けるようにしてください。
湿疹治療における生活習慣の改善ポイントは何ですか?
湿疹の治療効果を最大限に引き出し、再発を防ぐためには、薬物療法と並行して日常生活でのスキンケアや原因物質の回避が非常に重要です。
- 適切なスキンケア: 低刺激性の石鹸で優しく洗い、入浴後すぐに保湿剤を塗布して皮膚の乾燥を防ぎましょう。保湿は皮膚のバリア機能を維持するために不可欠です。
- 原因物質の回避: 接触皮膚炎の場合は、パッチテストなどで特定された原因物質との接触を避けることが最も重要です。アトピー性皮膚炎の場合は、ダニやハウスダスト対策、ペットの毛の管理なども有効です。
- 衣類の選択: 刺激の少ない綿素材などの衣類を選び、汗をかいたらこまめに着替えるようにしましょう。
- ストレス管理: ストレスは湿疹の症状を悪化させることが知られています。十分な睡眠や適度な運動、リラックスできる時間を作ることも大切です。
実際の診療では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして日常生活でどのような工夫をしているかを確認するようにしています。患者さま一人ひとりのライフスタイルに合わせたアドバイスを提供し、症状の改善だけでなく、長期的な皮膚の健康維持をサポートすることが重要だと考えています。
| 治療法 | 主な対象 | 期待される効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ステロイド外用薬 | 軽度〜重度の湿疹全般 | 強力な抗炎症作用 | 適切な強さ・期間での使用が重要 |
| 免疫抑制外用薬 | アトピー性皮膚炎(顔など) | 炎症抑制、ステロイドの代替・減量 | 初期の刺激感、医師の指示遵守 |
| 生物学的製剤 | 重症アトピー性皮膚炎 | 高い抗炎症作用、かゆみ軽減 | 注射による投与、費用、感染症リスク |
| 保湿剤 | すべての湿疹患者 | 皮膚バリア機能の改善、乾燥予防 | 継続的な使用が重要 |
まとめ

湿疹・皮膚炎は、その種類や原因が多岐にわたる皮膚疾患であり、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが代表的です。アトピー性皮膚炎は遺伝的要因と皮膚バリア機能の低下が関与し、接触皮膚炎は外部からの刺激物質やアレルゲンとの接触によって引き起こされます。治療は、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬が中心となり、重症度に応じて全身性ステロイド薬、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、紫外線療法などが検討されます。薬物療法に加え、適切なスキンケア、原因物質の回避、ストレス管理といった生活習慣の改善が、症状のコントロールと再発予防に不可欠です。自己判断での治療中断は避け、医師の指示に従い、継続的な治療とケアを行うことが重要です。
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- Sinéad M Langan, Alan D Irvine, Stephan Weidinger. Atopic dermatitis.. Lancet (London, England). 2020. PMID: 32738956. DOI: 10.1016/S0140-6736(20)31286-1
- Stephan Weidinger, Natalija Novak. Hand eczema.. Lancet (London, England). 2024. PMID: 39615508. DOI: 10.1016/S0140-6736(24)01810-5
- Elke Weisshaar. Chronic Hand Eczema.. American journal of clinical dermatology. 2024. PMID: 39300011. DOI: 10.1007/s40257-024-00890-z
- Juan José Yepes-Nuñez, Gordon H Guyatt, Luis Guillermo Gómez-Escobar et al.. Allergen immunotherapy for atopic dermatitis: Systematic review and meta-analysis of benefits and harms.. The Journal of allergy and clinical immunology. 2023. PMID: 36191689. DOI: 10.1016/j.jaci.2022.09.020
- ステロイド外用薬 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- グラセプター(タクロリムス)添付文書(JAPIC)
