乳児湿疹・おむつかぶれの原因と治療|医師が解説
- ✓ 乳児湿疹とおむつかぶれは、乳児期に特に多い皮膚トラブルで、それぞれ原因や症状が異なります。
- ✓ 適切なスキンケアと保湿が治療と予防の基本であり、症状に応じた薬物療法も重要です。
- ✓ 症状が改善しない場合や悪化する場合には、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
乳児の皮膚トラブル:乳児湿疹とおむつかぶれの原因と治療

乳児期は皮膚が未熟なため、様々な皮膚トラブルが生じやすい時期です。特に乳児湿疹とおむつかぶれは、多くの赤ちゃんが経験する一般的な皮膚疾患であり、適切なケアと治療が重要となります。
乳児湿疹とは?その特徴と種類
乳児湿疹とは、生後数週間から数ヶ月の赤ちゃんに見られる湿疹の総称です。主に顔や頭、首などに赤みや小さなブツブツ、かさつき、かゆみなどが現れます。当院では、初診時に「顔や頭が赤くてカサカサしている」「痒がって顔をこすりつける」といった相談をされる患者さまが少なくありません。
乳児湿疹の主な種類
- 新生児ざ瘡(しんせいじざそう):生後間もなく見られるニキビのような湿疹です。母親のホルモンの影響で皮脂分泌が活発になることが原因とされています。
- 乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん):生後2〜3ヶ月頃に多く見られ、頭皮や顔、特に眉毛や鼻の周りに黄色っぽいかさぶたやフケのようなものが付着します。皮脂腺の活動が活発な部位に発生しやすいのが特徴です。
- アトピー性皮膚炎:乳児期から発症することがあり、強いかゆみと湿疹が特徴です。乾燥肌や皮膚のバリア機能の低下が背景にあり、アレルギー体質との関連も指摘されています。
乳児湿疹の主な原因
乳児湿疹の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。
- 皮脂分泌の過剰:新生児期は母親からのホルモンの影響で皮脂分泌が活発になり、毛穴が詰まりやすくなります。
- 皮膚のバリア機能の未熟さ:赤ちゃんの皮膚は大人に比べて薄く、バリア機能が未熟なため、外部からの刺激に弱いです。乾燥もしやすく、アレルゲンや刺激物質が侵入しやすくなります。
- 汗や汚れ:汗やミルクの吐き戻し、よだれなどが皮膚に付着したままになると、刺激となり湿疹を引き起こすことがあります。
- アレルギー:食物アレルギーや環境アレルゲン(ダニ、ハウスダストなど)が関与している場合もあります。
おむつかぶれとは?その症状と原因
おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)とは、おむつが触れる部位に生じる皮膚炎です。お尻や股の周りが赤くなり、ひどくなるとただれたり、小さなブツブツができたりします。当院の診察では、おむつ交換の頻度や使用しているおむつの種類、おしりふきの使い方などを詳しく伺うようにしています。
おむつかぶれの主な原因
おむつかぶれは複数の要因が複合的に絡み合って発生することが多いです。
- 摩擦と蒸れ:おむつと皮膚の摩擦、そしておむつ内の高温多湿な環境が皮膚のバリア機能を低下させます[3]。
- 尿や便による刺激:尿に含まれるアンモニアや便に含まれる酵素が皮膚を刺激し、炎症を引き起こします。特に下痢をしている時は、便の刺激が強く、かぶれが悪化しやすい傾向があります[2]。
- カンジダ菌の増殖:湿った環境は真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌が繁殖しやすい条件です。おむつかぶれが長引いたり、赤いブツブツが広範囲に広がったりする場合は、カンジダ性皮膚炎を合併している可能性があります[4]。
乳児湿疹とおむつかぶれの治療法とは?
乳児湿疹とおむつかぶれの治療は、原因に応じた適切なスキンケアと薬物療法が中心となります。当院では、症状の程度や赤ちゃんの肌質に合わせて、きめ細やかな治療計画を立てています。
基本的な治療とケア
- 清潔の保持:入浴やシャワーで皮膚を清潔に保つことが基本です。石鹸は低刺激性のものを選び、よく泡立てて優しく洗い、十分に洗い流します。
- 保湿:入浴後はすぐに保湿剤を塗布し、皮膚の乾燥を防ぎバリア機能を補います。特に乾燥しやすい冬場やアトピー性皮膚炎の傾向がある赤ちゃんには、こまめな保湿が重要です。
- おむつ交換の頻度:おむつかぶれの場合、おむつをこまめに交換し、お尻を清潔で乾燥した状態に保つことが最も重要です。汚れたらすぐに交換し、ぬるま湯で優しく洗い流すか、刺激の少ないおしりふきで拭き取ります。
薬物療法
症状が強い場合や、スキンケアだけでは改善しない場合には、医師の診断のもとで薬物療法が行われます。
- ステロイド外用薬:炎症を抑える効果があり、湿疹の赤みやかゆみを軽減します。赤ちゃんの皮膚は薄いため、適切な強さのステロイドを短期間使用することが推奨されます。医師の指示に従い、正しく使用することが重要です。
- 非ステロイド性抗炎症薬:ステロイドに抵抗がある場合や、軽症の場合に用いられることがあります。
- 抗真菌薬:カンジダ性皮膚炎を合併している場合には、抗真菌薬の外用薬が処方されます。
- 亜鉛華軟膏(あえんかこう):おむつかぶれの場合、皮膚を保護し、炎症を和らげる目的で用いられます。
処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。治療を始めて1週間ほどで「赤みが引いてきた」「痒がらなくなった」とおっしゃる方が多いです。
自己判断で市販薬を使用したり、治療を中断したりすると、症状が悪化する可能性があります。必ず医師の指示に従って治療を進めてください。特に、新生児の皮膚トラブルは多岐にわたるため、自己判断は避けるべきです[1]。
どのような時に受診すべきか?
以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
- 湿疹や赤みが広範囲に広がっている、または悪化している
- 強いかゆみがあり、赤ちゃんが不機嫌になったり、夜眠れなかったりする
- 皮膚がただれている、ジクジクしている、膿が出ている
- 発熱や活気がないなど、全身症状を伴う場合
- おむつかぶれが2~3日経っても改善しない、または悪化している
当院では、問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしており、アレルギー体質の有無なども考慮して診断を行っています。
- 皮膚のバリア機能
- 皮膚の一番外側にある角質層が持つ、外部からの刺激や異物の侵入を防ぎ、体内の水分が蒸発するのを防ぐ機能です。この機能が低下すると、皮膚は乾燥しやすくなり、アレルゲンや刺激物質が侵入しやすくなるため、湿疹などの皮膚トラブルが起こりやすくなります。
| 項目 | 乳児湿疹 | おむつかぶれ |
|---|---|---|
| 好発部位 | 顔、頭、首、体幹など | おむつが当たる部位(お尻、股、下腹部など) |
| 主な原因 | 皮脂過剰、皮膚バリア機能未熟、アレルギー、汗、汚れ | 尿・便の刺激、摩擦、蒸れ、カンジダ菌 |
| 症状 | 赤み、ブツブツ、かさつき、かゆみ、黄色いかさぶた | 赤み、ただれ、小さなブツブツ、皮膚の剥がれ |
| 治療の基本 | 清潔、保湿、ステロイド外用薬など | こまめなおむつ交換、清潔、保護、ステロイド・抗真菌薬など |
まとめ

乳児湿疹とおむつかぶれは、乳児期に多く見られる皮膚トラブルですが、それぞれ原因や症状が異なります。どちらも皮膚のバリア機能が未熟な赤ちゃんにとって、適切なスキンケアと早期の対応が非常に重要です。日頃から赤ちゃんの肌状態をよく観察し、清潔と保湿を心がけることで、多くの皮膚トラブルは予防・改善が期待できます。症状が改善しない場合や悪化する場合には、自己判断せずに速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
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よくある質問(FAQ)
- Angad Chadha, Marla Jahnke. Common Neonatal Rashes.. Pediatric annals. 2019. PMID: 30653638. DOI: 10.3928/19382359-20181206-01
- M C Schanzer, J K Wilkin. Diaper dermatitis.. American family physician. 1982. PMID: 6461232
- Yalçın Tüzün, Ronni Wolf, Süleyman Bağlam et al.. Diaper (napkin) dermatitis: A fold (intertriginous) dermatosis.. Clinics in dermatology. 2016. PMID: 26051065. DOI: 10.1016/j.clindermatol.2015.04.012
- Alexandro Bonifaz, Rubí Rojas, Andrés Tirado-Sánchez et al.. Superficial Mycoses Associated with Diaper Dermatitis.. Mycopathologia. 2017. PMID: 27193417. DOI: 10.1007/s11046-016-0020-9
