片頭痛 薬とは?トリプタン・予防薬を医師が解説
- ✓ 片頭痛の薬は発作を抑える急性期治療薬と、発作の頻度や重症度を減らす予防薬に大別されます。
- ✓ トリプタン系薬剤は片頭痛に特化した急性期治療薬で、早期服用が効果を高める鍵です。
- ✓ 予防薬は月4回以上の片頭痛や生活に支障がある場合に検討され、継続的な服用で効果が期待できます。
片頭痛は、日常生活に大きな影響を与える頭痛の一種であり、その治療には適切な薬の選択が重要です。この記事では、片頭痛の治療に用いられる薬の種類、特にトリプタン系薬剤と予防薬に焦点を当て、その効果や正しい使い方、注意点について詳しく解説します。
片頭痛の薬とは?主な種類と治療の考え方

片頭痛の薬とは、片頭痛の発作を和らげる「急性期治療薬」と、片頭痛の発作が起こる頻度や重症度を減らす「予防薬」の大きく2種類に分けられます。治療の目標は、患者さんの生活の質(QOL)を改善し、頭痛による苦痛を最小限に抑えることです。
急性期治療薬:発作が起きた時に使用する薬
急性期治療薬は、片頭痛の発作が始まった際に、その痛みや随伴症状(吐き気、光・音過敏など)を速やかに抑えるために使用されます。主なものとして、一般的に市販されている鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)や、片頭痛に特異的な作用を持つトリプタン系薬剤があります[1]。当院では、患者さまの頭痛の程度や頻度、過去の治療経験などを詳しく伺い、最適な急性期治療薬を選択するようにしています。特に、市販薬で効果が不十分な場合や、頭痛に伴う吐き気が強い場合には、トリプタン系薬剤を積極的に検討します。
予防薬:発作の頻度や重症度を減らす薬
予防薬は、片頭痛の発作が頻繁に起こる場合(例えば、月に4回以上)や、発作が重症で日常生活に大きな支障をきたす場合に、定期的に服用することで発作の頻度や程度を軽減することを目指します。予防薬には、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、抗うつ薬など、様々な種類の薬剤が用いられます。近年では、CGRP関連抗体薬という新しいタイプの注射薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。診察の中で、患者さまが「毎月のように頭痛で仕事を休んでしまう」「市販薬が手放せない」と相談されるケースも少なくありません。そのような場合、予防薬の導入を検討し、生活の質の向上を目指します。
- 急性期治療薬
- 片頭痛の発作が起きた際に、痛みや随伴症状を速やかに和らげることを目的とした薬。トリプタン系薬剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが含まれます。
- 予防薬
- 片頭痛の発作の頻度や重症度を減らすことを目的として、定期的に服用する薬。β遮断薬、カルシウム拮抗薬、CGRP関連抗体薬などが代表的です。
トリプタン系薬剤とは?効果と正しい使い方を解説
トリプタン系薬剤とは、片頭痛に特異的に作用する急性期治療薬であり、セロトニン5-HT1B/1D受容体に作用することで、拡張した脳血管を収縮させ、炎症性物質の放出を抑制することで片頭痛の痛みや随伴症状を和らげます[3]。当院では、片頭痛の診断が確定した患者さまには、まずトリプタン系薬剤の試用をお勧めすることが多いです。特に「市販薬では全く効かない」「吐き気がひどくて何もできない」といった患者さまには、トリプタン系薬剤が非常に有効な選択肢となります。
トリプタン系薬剤の種類と特徴
トリプタン系薬剤にはいくつかの種類があり、それぞれ作用発現時間や半減期、剤形(錠剤、口腔内崩壊錠、点鼻薬、注射薬)が異なります。患者さまの頭痛の特徴やライフスタイルに合わせて選択されます。
| 薬剤名(一般名) | 主な商品名 | 剤形 | 作用発現時間 | 半減期 |
|---|---|---|---|---|
| スマトリプタン | イミグラン | 錠剤、点鼻液、注射 | 30分~1時間 | 約2時間 |
| ゾルミトリプタン | ゾーミッグ | 錠剤、口腔内崩壊錠、点鼻液 | 30分~1時間 | 約3時間 |
| エレトリプタン | レルパックス | 錠剤 | 30分~1時間 | 約4時間 |
| リザトリプタン | マクサルト | 錠剤、口腔内崩壊錠 | 30分~1時間 | 約2~3時間 |
| ナラトリプタン | アマージ | 錠剤 | 1~2時間 | 約6時間 |
| フロバトリプタン | ミグシス | 錠剤 | 2~3時間 | 約26時間 |
エレトリプタン(レルパックス)は、比較的速効性があり、効果の持続時間も適度なため、多くの患者さまに処方される薬剤の一つです[5]。月経関連片頭痛の予防にも有効性が示唆されています[2]。フロバトリプタン(ミグシス)は、作用発現は遅いものの半減期が非常に長く、頭痛の再発を抑える効果が期待されます[6]。当院では、頭痛の再発に悩む患者さまにミグシスを検討することがあります。
トリプタン系薬剤の正しい使い方と注意点
トリプタン系薬剤は、片頭痛の痛みが軽いうちに服用するのが最も効果的とされています。痛みがピークに達してからでは効果が十分に得られないことがあります。また、前兆がある片頭痛の場合、前兆が消えて痛みが始まった直後に服用することが推奨されます。当院では、患者さまに「頭痛が始まったら我慢せずに、早めに服用してください」と具体的にアドバイスしています。服用タイミングが遅れると、「薬が効かない」と感じてしまう方が多いため、初回処方時には特に詳しく説明するようにしています。
トリプタン系薬剤は血管を収縮させる作用があるため、心臓病や脳卒中の既往がある方、コントロール不良の高血圧の方などには禁忌とされています。また、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を避けるため、月に10日以上の服用は避けるべきです。必ず医師の指示に従って使用してください[1]。
片頭痛予防薬の種類と効果的な選び方とは?

片頭痛予防薬とは、片頭痛の発作の頻度や重症度を減らすために、継続的に服用する薬剤です。片頭痛の頻度が多い、急性期治療薬の効果が不十分、または副作用で使用できないといった場合に検討されます。当院では、月に4回以上の片頭痛発作がある方や、頭痛によって学校や仕事を休むことが多く、生活に支障が出ている患者さまに対して、予防薬の導入を提案することがよくあります。患者さまからは「予防薬を飲み始めてから、頭痛の回数が減って、精神的にも楽になった」という声を多く聞きます。
主な片頭痛予防薬の種類
片頭痛予防薬には、様々な作用機序を持つ薬剤があります。患者さまの基礎疾患や併用薬、年齢、性別などを考慮して選択されます。
- β遮断薬(プロプラノロールなど): 心拍数を抑え、血管を広げる作用があります。高血圧や狭心症を合併している患者さまにも選択肢となります。
- カルシウム拮抗薬(ロメリジンなど): 脳血管の収縮を抑える作用があります。特に、高齢の患者さまやβ遮断薬が使えない場合に検討されます。
- 抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマートなど): 神経の過剰な興奮を抑える作用があり、片頭痛の発生を抑制します。
- 抗うつ薬(アミトリプチンなど): 鎮痛作用や神経の調整作用により、片頭痛の予防に用いられることがあります。
- CGRP関連抗体薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど): 片頭痛の発症に関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを阻害する新しいタイプの注射薬です。月に1回または3ヶ月に1回の注射で効果が期待でき、従来の予防薬で効果が不十分だった患者さまに有効な選択肢となっています。
予防薬の効果的な選び方と注意点
予防薬の選択は、患者さま一人ひとりの状態に合わせて慎重に行われます。例えば、高血圧を合併している患者さまにはβ遮断薬が適している場合があり、月経関連片頭痛が主訴の患者さまには特定のホルモン療法やトリプタン系薬剤の予防的投与が有効なこともあります[2]。当院では、問診の際に患者さまの既往歴や他の病気の有無、服用中の薬などを詳しく伺い、最も適した予防薬を提案するようにしています。また、予防薬は効果が出るまでに時間がかかることが多く、数週間から数ヶ月の継続的な服用が必要となるため、患者さまにはその旨を事前に説明し、根気強く治療に取り組んでいただくようお願いしています。治療を始めて3ヶ月ほどで「頭痛の頻度が半分以下になった」「痛み止めを飲む回数が減った」とおっしゃる方が多いです。
予防薬も副作用のリスクがあるため、定期的な診察で効果や副作用の有無を確認することが重要です。例えば、β遮断薬では倦怠感や徐脈、トピラマートではしびれや体重減少などが報告されています。これらの症状が出た場合は、速やかに医師に相談してください。
片頭痛薬の副作用とは?安全な使用のための知識
片頭痛の薬は効果が期待できる一方で、副作用が生じる可能性もあります。薬剤の種類によって副作用の種類や程度は異なりますが、安全に治療を継続するためには、どのような副作用があるのかを知り、適切に対処することが重要です。当院では、新しい薬を処方する際には、必ず予想される副作用について詳しく説明し、患者さまが安心して治療を受けられるように心がけています。特に、トリプタン系薬剤で「胸の圧迫感」を訴える患者さまがいらっしゃいますが、多くは一過性のものであり、心臓への影響は少ないことを説明し、不安を軽減するようにしています。
トリプタン系薬剤の主な副作用
トリプタン系薬剤で比較的よく見られる副作用には、以下のようなものがあります。
- 胸部圧迫感、喉のつかえ感: 血管収縮作用によるものと考えられており、多くは一時的で軽度です。しかし、胸痛が持続したり、呼吸困難を伴う場合は心臓への影響の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。
- めまい、眠気: 薬の作用によるもので、車の運転や危険な作業は避けるべきです。
- 吐き気、口の渇き: 消化器系の症状として現れることがあります。
- 倦怠感、脱力感: 薬の効果が切れた後に感じることがあります。
これらの副作用は、薬剤の種類や個人差によって異なります。特にエレトリプタン(レルパックス)の添付文書には、重大な副作用として心筋梗塞、狭心症、不整脈、痙攣、ショック、アナフィラキシーなどが記載されており、注意が必要です[5]。
予防薬の主な副作用
予防薬の副作用も薬剤の種類によって様々です。
- β遮断薬: 徐脈、低血圧、倦怠感、気管支喘息の悪化など。
- カルシウム拮抗薬: 浮腫、便秘、めまいなど。
- 抗てんかん薬: 眠気、めまい、吐き気、体重増加または減少、手足のしびれなど。特にトピラマートでは認知機能障害が報告されることもあります。
- CGRP関連抗体薬: 注射部位の反応(痛み、赤み、腫れ)、便秘、アレルギー反応など。
これらの副作用は、服用開始時や増量時に現れやすい傾向があります。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。もし副作用が強く出て治療の継続が難しい場合は、薬剤の変更や減量を検討します。
妊娠中・授乳中の薬の使用は?
妊娠中や授乳中の片頭痛治療は、胎児や乳児への影響を考慮し、特に慎重に行う必要があります。一般的に、アセトアミノフェンが第一選択薬とされますが、トリプタン系薬剤や予防薬の使用は、リスクとベネフィットを十分に検討し、医師と相談の上で決定されます[4]。当院では、妊娠を希望される方や妊娠中の患者さまに対しては、薬の選択肢を丁寧に説明し、安全性を最優先した治療計画を立てるようにしています。
薬以外の片頭痛対策とは?生活習慣の改善と非薬物療法

片頭痛の治療は薬物療法が中心となりますが、薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善や非薬物療法を組み合わせることで、より効果的に片頭痛を管理し、発作の頻度や重症度を減らすことが期待できます。当院では、薬を処方するだけでなく、患者さまのライフスタイル全体を見直し、片頭痛の誘因を特定し、それを避けるための具体的なアドバイスを行うことに力を入れています。多くの患者さまが「生活習慣を見直すことで、薬に頼る回数が減った」と実感されています。
片頭痛の誘因を避ける
片頭痛には様々な誘因があることが知られています。これらを避けることは、予防薬と同様に重要です。主な誘因としては、以下のようなものが挙げられます。
- ストレス: ストレスは片頭痛の大きな誘因の一つです。ストレスを完全に避けることは難しいですが、ストレス解消法を見つけたり、リラックスする時間を作ったりすることが大切です。
- 睡眠不足・過眠: 睡眠のリズムが乱れると片頭痛が誘発されやすくなります。規則正しい睡眠を心がけましょう。
- 特定の食べ物・飲み物: 赤ワイン、チーズ、チョコレート、カフェイン(摂取過多や離脱)などが誘因となることがあります。
- 強い光や音、匂い: 片頭痛の発作中は特に敏感になるため、静かで暗い場所で休むことが推奨されます。
- 気圧の変化: 天候の変化(低気圧など)も誘因となることがあります。
- 月経周期: 女性ホルモンの変動が片頭痛を誘発することがあります(月経関連片頭痛)。
患者さまには、頭痛ダイアリーをつけてもらい、どのような状況で頭痛が起こりやすいかを記録してもらうことを推奨しています。これにより、ご自身の誘因を客観的に把握し、対策を立てやすくなります。
生活習慣の改善
誘因を避けることと並行して、健康的な生活習慣を維持することも片頭痛の予防につながります。
- 規則正しい生活: 毎日同じ時間に起床・就寝し、食事を摂ることで、体のリズムを整えます。
- 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で継続的な運動を取り入れることは、ストレス軽減にもつながります。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らないようにしましょう。
- 十分な水分補給: 脱水も頭痛の誘因となることがあります。
非薬物療法
薬物療法以外にも、片頭痛の症状緩和や予防に役立つ方法があります。
- リラクゼーション: 深呼吸、瞑想、ヨガ、マッサージなどは、ストレスを軽減し、片頭痛の頻度を減らすのに役立つことがあります。
- バイオフィードバック療法: 自分の心拍数や筋肉の緊張などを意識的にコントロールする訓練で、片頭痛の軽減に効果が期待できる場合があります。
- 認知行動療法: 頭痛に対する考え方や行動パターンを変えることで、頭痛による苦痛を軽減し、対処能力を高めることを目指します。
- ボツリヌス療法: 慢性片頭痛(月に15日以上の頭痛があり、そのうち8日以上が片頭痛の特徴を持つ場合)に対して、特定の部位にボツリヌス毒素を注射する治療法です。
当院では、薬物療法とこれらの非薬物療法を組み合わせることで、患者さまがより快適な日常生活を送れるよう、包括的なサポートを提供しています。特に、生活習慣の改善は、薬の効果を最大限に引き出すためにも非常に重要なポイントになります。
まとめ
片頭痛の治療薬には、発作時に痛みを和らげる急性期治療薬と、発作の頻度や重症度を減らす予防薬があります。トリプタン系薬剤は片頭痛に特異的な急性期治療薬であり、早期の服用が効果を高める鍵となります。予防薬は、片頭痛が頻繁に起こり、生活に支障がある場合に検討され、継続的な服用で効果が期待できます。どの薬も副作用のリスクがあるため、医師の指示に従い、正しく使用することが重要です。また、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善や非薬物療法を組み合わせることで、より効果的な片頭痛の管理が可能となります。ご自身の症状に合った治療法を見つけるためには、専門医との相談が不可欠です。
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よくある質問(FAQ)
- Drugs for Migraine.. The Medical letter on drugs and therapeutics. 2021. PMID: 33434187
- Dawn A Marcus, Cheryl D Bernstein, Erin A Sullivan et al.. Perimenstrual eletriptan prevents menstrual migraine: an open-label study.. Headache. 2010. PMID: 20236337. DOI: 10.1111/j.1526-4610.2010.01628.x
- Debashish Chowdhury. Acute management of migraine.. The Journal of the Association of Physicians of India. 2010. PMID: 21049703
- Susan Hutchinson, Michael J Marmura, Anne Calhoun et al.. Use of common migraine treatments in breast-feeding women: a summary of recommendations.. Headache. 2013. PMID: 23465038. DOI: 10.1111/head.12064
- レルパックス(エレトリプタン)添付文書(JAPIC)
- セイブル(ミグシス)添付文書(JAPIC)